小学校英語教育学会誌
Online ISSN : 2424-1768
Print ISSN : 1348-9275
ISSN-L : 2188-5966
14 巻, 01 号
PART1
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実践報告
  • 川村 一代, 小林 ゆかり, 北岡 美代子
    2014 年 14 巻 01 号 p. 4-19
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    “Hi, friends! 2”のLesson 7「オリジナルの物語を作ろう」は「桃太郎」というまとまった英語の話を扱っており,児童は「桃太郎」をベースにしたオリジナル劇を作って演じる。今回,様ざまな立場で外国語活動に関わる筆者三人は文科省の指導案例をもとに授業を構成し,自主研修でお互いの状況を情報交換しつつ,「Lesson 7 オリジナルの物語を作ろう」の授業に取り組んだ。授業を進めるにつれてLesson 7 は二年間の外国語活動の総仕上げともいえる単元で,“Hi, friends! 1, 2”の中でももっとも重要な単元であることがわかってきた。また,二年間の外国語活動は学級担任が中心となって6 年生の最後にオリジナル英語劇を作り演じるということを視野に入れて進める必要があることを痛感した。本稿は筆者たちが試行錯誤しながら取り組んだ「桃太郎」のオリジナル劇の授業実践報告である。まず外国語活動における英語劇の意義を確認し,「Lesson 7 オリジナルの物語を作ろう」の教材観を示したい。次にそれに基づき構成した授業実践を報告し,実践を検証することから見えてきたLesson7 の具体的な指導法や外国語活動の進め方について提案したい。

  • 渋谷 玉輝
    2014 年 14 巻 01 号 p. 20-35
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本研究は,2001 年に小学校に英語教育を導入した台湾で,実際にどのような授業が展開されているか,また児童が英語の授業をどう意識しているのかを調査して,外国語活動の教育内容を今後より発展させる際に役立つ資料を提供することを目的とする。教育委員会の協力を得られた竹北市と新竹市の設立形態の異なる3 校の小学校の4 クラスの英語の授業を横断的に調査した。まず,各クラスの授業を観察し,担当教員の母語,使用言語,教科書,活動の主体などを分析した。次に,文部科学省 (2010) の「英語教育改善のための調査研究事業に関するアンケート調査 児童用」から8 つの質問を北京語に翻訳して使用し,児童に「英語」と「英語の授業」に関する意識調査を実施した。授業観察の結果, (1) 台湾人の教員の英語運用力が非常に高く,(2) 3 クラスの授業は英語のみで行われ,(3) 教科書に は日本の中学校2 年生で扱われる言語材料が導入されている,という3 点が明らかになった。意識調査では,(1) 「英語」や「英語の授業」に好意的な回答が全体的に多く,(2) 「英語の授業」は,一般公立小学校で台湾人の教員が検定教科書を使用しているクラスが最も好意的な回答が多く,選抜の国立小学校で母語話者が指導するクラスは,中間的な回答が多いこと,などが分かった。 台湾では,(3) 詰め込み型の授業よりも,児童を活動の主体としたクラスの方が,英語への好感度が高くなることが推察された。

  • 松岡 美幸, 中山 晃
    2014 年 14 巻 01 号 p. 36-49
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本稿では,平成24 年度に北海道内の公立小学校(特別支援学級)にて,自立活動の時間に行った英語を扱った活動と,交流学習において通常学級の児童と一緒に行った外国語活動の内容を報告する。 特に,リズムチャンツや感情と表情を一致させるための活動など,児童の特性に合わせて特別支援学級内で実施した3 つのアクティビティ及び,それらと並行して行った交流学習1 に際しての工夫や留意点,授業中の児童の様子や反応から得られた知見を報告する。一連の実践を通して,「自己肯定感が高まり情緒が安定したこと」や「他者の表情から気持ちを読み取る方法を理解したこと」,「アクティビティや日常会話時の表情が豊かになったこと」などの効果がみられた。また,ICT を活用しながら特別支援学級における自立活動とより接点をもった活動を仕組むことで,自立活動と外国語活動の両方の活動に相乗効果が期待できるという先行研究結果(久保・金森・中山, 2012; 塚田・吉田・中山, 2013)をあらためて支持することができた。さらに,事前に特別支援学級内でトレーニングを行った 後,交流学習で同じ内容を扱うことで,児童が自信をもって活動に臨める姿が見られた

  • 井上 桃子, 山本 長紀
    2014 年 14 巻 01 号 p. 50-65
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本稿は,2011 年度に行った日本の小学校とウィーンの小学校との交流授業を通して,外国語活動において児童がどのような国際交流を求めており,そのために何を行って欲しいと考えているのか,交流授業の実践報告を交えて明らかにする。交流授業は2012 年1月〜2012 年3月に行った。交流授業では,日本の児童が学校生活を紹介するビデオと手紙を作成し,それをウィーンの小学生と筆者らを介しやり取りをした。児童に対しアンケート調査を行い,交流授業を通してどのようなことを感じたのかグラウンデッド・セオリー・アプローチを用い分析をした。その結果,英語に不安を感じていた児童は,交流授業を通して英語を使用することの楽しさを実感し,国際交流をすることで喜びを得ていたことが明らかになった。さらに交流授業を通して,児童は英語を学び使うことに対する自信や意欲を育んでいることが明らかとなった。国際交流のために,児童は「自分の思いを伝えるための英語」を学びたいと思っていると考えられる。交流授業とアンケート調査を踏まえると,児童の思いを伝えるための確かな技能の学びと海外の子どもたちとの交流を外国語活動に取り入れることで,児童は英語を学ぶことへの関心・意欲を育むと言えるのではないだろうか

  • 二五 義博
    2014 年 14 巻 01 号 p. 66-81
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,最近ヨーロッパで浸透しているCLIL を日本の小学校英語教育で実践した場合,主に動機づけや「聞く」「話す」のコミュニケーション能力育成の視点からいかなる効果があるのかを探り,ひいては他教科の内容を学びながら言語も同時に習得する二刀流成功の鍵は何なのかを示唆することにある。研究方法としては,広島市の公立小学校5・6年生の児童を対象とし,年間の何回かの英語の授業で社会科内容を取り入れ,CLIL の4つの柱「内容」「言語」および「思考」「協学」を意識した実践を行い,授業実践後には4点法による選択式と感想を聞く記述式のアンケートを実施し,児童の反応を分析した。その結果,①内容が簡単すぎたり難しすぎたりしない限り,CLIL の4つを軸とする活動は児童の知的好奇心を刺激し,社会科の教材により児童の英語学習意欲は高められること,②他教科を学びながらコミュニケーションをとることで,英語学習を強く意識することなく,インプット量を自然に増やし「聞く」「話す」の定着を図ることができること,が明らかになった。また,クラス全員が社会科を好きという訳ではないので,嫌いな子でも活躍の場が持てるように,視覚や身体などの得意な多重知能(MI)を生かす個性重視の指導も併用し,それがより効果的な学習者中心の指導に繋がることも分かった。

研究論文
  • Adrian LEIS
    2014 年 14 巻 01 号 p. 84-99
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    The goal of the current paper is to provide empirical evidence to support the idea that praising students on their academic achievements is detrimental to the progress and self-confidence of those who have experienced failure under the same conditions. Based on the results of an experiment using crossword puzzle tests, which included puzzles that induced failure by being impossible to complete, and feedback from a sample of 74 young learners of English, the researcher argues that a combination of the experience of failure on behalf of the students and success-oriented praise from the teacher caused a lack of significant academic improvement and a salient decline in subjects' confidence to complete future tasks. Furthermore, such praise did not bring about any significant increase in the self-confidence of those students who were able to complete the puzzles successfully. Drawing upon previous studies related to Covington's (1992) Self-worth Theory, and achievement motivation literature (e.g., Dweck, 2006), the author concludes that for teachers of English in an English as a foreign language (EFL) environment, it is essential that praise for students be a reflection of their efforts, not of their ability to produce the correct answer.

  • 佐藤 彩香
    2014 年 14 巻 01 号 p. 100-114
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本研究では,英語学習の入門期にある生徒児童を対象に,母語を用いた語彙指導法の効果を検証した。第二言語学習に母語の語彙知識が与える影響は大きいことから (アレン玉井, 2010),母語の語彙ネットワーク理論に基づく単語の意味的関連性を利用した英語語彙学習を行った。意味的に結びつきの強い語ペアを語彙学習に用いることが有効であることから (Kasahara, 2010),実験1 では日本人中学 1 年生32 名に対し意味的関連性判定課題を行い,生徒の母語ではシンタグマティックとパラディグマ ティックな意味的関連性にある単語どうしの結びつきが強いことを確認した。この結果に基づき,実験2 では日本人中学1 年生94 名が目標語12 語を意図的に学習した。その際,目標語と特定の意味的関連性にある母語の手掛かり語を結びつける形で学習させた。その後,直後再生テストと遅延再生テストを,母語の手掛かり語が提示される条件と,提示されない条件で行った。結果から,(a) 生徒は目標語と意味的関連性の強い手掛かり語を活かすことで目標語を学習すること,および (b) パラディグマティックな意味的関連性を利用した語彙学習が最も効果的であったことが明らかになった

  • 糸井 江美
    2014 年 14 巻 01 号 p. 115-130
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    可能自己理論に基づき、小学校教員を目指す英文科所属の大学4 年生、3 名の学習動機を質的研究により調べた。主なデータは10 ヶ月間に4 回実施したインタビュー、文章に表した理想の教師像(2012 年の4 月と2013 年の1 月)、教育実習ノート、実習期間中に毎日送信されたe メールによる報告などである。ナラティブ分析により、3 人は4 週間の教育実習を経験することでより具体的な理想的自己(理想とする将来の教師像)を持つことになったと同時に、英語運用能力が足りないことを自覚することで避けたい可能自己(英語が話せなくて人前で恥をかく英語教師)を強く持つようになったことが分かった。英語が流暢に話せる教師になるために、英語検定試験の受験を考えたり、発音の教材を購入したりしたが結局積極的に取り組むことはなかった。避けたい可能自己を持つことで十分動機付けはされたが、それは教育実習中に恥ずかしい思いをしたことから生まれたもので、将来教えることになる子どもたちへの教育的影響を考慮したものではなかったと考えられた。経験不足や情報不足である学生はたとえ4 週間の教育実習で現場の状況を感じることができても遠い未来展望を持つことができず、現場から離れた後は時間の経過とともに可能自己の動機付け効果が弱くなったと推測された。 大学では英語を話すことを中心としたクラスを増やし教育実習生の英語運用能力を高めると同時に、遠い将来を展望できる想像力を養うことも重要である

  • 名畑目 真吾
    2014 年 14 巻 01 号 p. 131-146
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本稿の研究は,小学校教員を志す大学生の英語活動に関する意識調査を報告し,大学における望ましい小学校教員養成を考える一助とすることを目的としたものである。この目的の下,小学校教員を志望する大学1 年生を対象に,小学校英語活動への印象,英語活動の実践に必要だと考える能力・資質,英語活動の実践のために大学で学びたいことの3 つを観点として,項目に対する5 段階評価と自由記述を含むアンケート調査を行った。その結果,協力した学生は小学校における英語活動の必要性は高いと感じている一方で,その多くは自身が教員になって活動を実践することへ不安を感じていることが明らかになった。また,協力した学生は英語活動の実践に様々な能力・資質が必要だと感じていたものの,その中でも特に発音を含む教員のスピーキング力が肝要であると考えている傾向にあった。英語活動の実践のために大学で学びたいことについては,多くの学生が4 技能に関わる自身の英語力を高めることや,指導法を学ぶための授業見学・実習などの機会が与えられることを強く望んでいた。さらに,英語活動における小中連携への意識が希薄である学生の存在も調査結果から指摘された。これらの結果に加え,協力者を英語の好き嫌いなどの属性で分類して比較した結果も踏まえて,本調査に協力した学生に対する望ましい教員養成課程の在り方について検討した

  • 河合 裕美
    2014 年 14 巻 01 号 p. 147-162
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本稿は,小学生児童の英語リズムの発達段階を測定するための手段として,早期英語教育において頻繁に使用されている言語材料「リズムチャンツ」を取り上げ,その測定方法を提案するとともに,小学校英語活動期にある児童の英語音声のうち,韻律面の発達の特徴を報告するものである。早期英語学習者の英語音声産出の発達段階を測定することは,英語学習の入門期にあたり,自発的発話能力やリーディング能力が未熟なために,成人学習者と同様の測定を実施することができず困難を極める。そのため,音声中心の教授が行われているにもかかわらず,その産出,特に韻律面を評価する研究はほとんどなされておらず,測定方法も確立されていない。そこで小学 1 年生から英語活動を始めた公立小学校児童の英語能力のうち,児童期の英語活動に重視される 音声面の発達を英語リズムの観点から測定方法を検討し,語彙テストと質問紙による事前調査から5・6 年生の児童を抽出し,リズムチャンツを用いた音声テストを実施した。参加児童の音声を音響分析による量的測定と質的観察した結果,5 年生は3 群,6 年生は4 群のクラスターに分かれた。各群の特徴をまとめると,総じて5 年生より6 年生の人数がより多く,また語彙力の高い児童が英語母語話者に近い英語リズムを発達させている一方で,語彙力がありながら英語リズムを崩してしまっている6 年生の群が存在した。リズムチャンツを効果的に英語活動に使用し,音声習得と他の領域との関係を探索する必要性が示唆された。

  • 長谷部 郁子, 神谷 昇
    2014 年 14 巻 01 号 p. 163-178
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,児童用英語教材や中学生用英語検定教科書で扱われる英語を用いた活動や「定型表現」に関する調査結果を報告し,児童英語教育における英語を用いた活動の運営だけでなく,小中英語教育の連携をも視野に入れた提言を行うことである。このような目的をふまえ,本研究では,英語を用いた活動を基本的なもの (Basic Activities) と発展的なもの (Advanced Activities) 2 分類し,児童用英語教材と中学生用英語検定教科書にはそれぞれどのようなBasic Activities Advanced Activities が含まれていて,それらは互いにどのような共通点や相違点,関連性を持つのかということを調査し,児童用英語教材で扱われている基本的な活動を中学生用英語検定教科書においてもそのまま活用することが可能であると主張する。また,そうした調査結果や主張をもとに,中学生用英語検定教科書において,児童用英語教材のBasic Activities をどのように応用することができるのかを議論する。さらに,中学生用英語検定教科書に含まれる英語活動で使用する「定型表現」はどのようなものかを明らかにし,本研究の今後の課題について触れる

  • 中村香恵子, 志村 昭暢
    2014 年 14 巻 01 号 p. 179-194
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,現在小学校外国語活動の授業で行われている授業実践の特徴を知り,そうした実践の違いに影響を及ぼしている要因を探索することである。授業実践,教師の個人的要因(指導観,外国語学習者としてのビリーフ,外国語学習動機)と教育環境要因(教師生徒間関係,教師の協力体制,外国語活動に関係する教師の学び)に関する質問紙調査を実施した。 分析の結果,小学校外国語活動は他教科と比較してより実技教科と共通した特徴をもつことが示された。また,実践の違いに関して,個々の教師のもつ個人的要因よりも教師の協力体制といった教師をとりまく教育環境要因や専門職能開発としての教師の学びが関わっていることが示唆された

  • 早瀬 沙織
    2017 年 14 巻 01 号 p. 195-209
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    日本の小学校外国語活動では「コミュニケーション能力の素地を養う」ことが大きな目標として掲げられている。しかし,4 技能の視点から『小学校学習指導要領』を見てみると,「聞くこと」「話すこと」は積極的に導入しているが,「読むこと」「書くこと」に関しては消極的な姿勢を見せているのが現状である。果たして,「読むこと」「書くこと」は小学校の段階では必要ないのであろうか。その問題を解決すべく,授業の基盤となっている「教科書」を見ていくことにした。本稿では,日本・韓国・中国の小学校英語教育で最も使用されている「教科書」を1 種類ずつ選び,4 技能の視点から詳細な分析を試みた。その結果,韓国・中国の教科書では学年が高くなるほど教科書における「読むこと」「書くこと」の割合が増えていることが明らかとなった。一方,日本の教科書は僅かな増加のみであった。このことは,さらに児童の発達面からの研究,そして日本の英語教育体制の現状を含め,今後小学校の英語教育の発展を考えていく上で検討していくべき重要な点であると考える。

  • 黒田 真由美
    2014 年 14 巻 01 号 p. 210-225
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本稿では,ALTが指導する小学校の英語活動において,子どもが何に関心を持っているのか,何を考えながら英語活動に取り組んでいるのかについて,子どもの思いの一端を明らかにすることを目指した。英語活動の観察を行い、そこでみられた子どものつぶやきについてカテゴリ分析と事例分析を行った。その結果,以下のことが明らかになった。(1)1学期には,子どもは理解できているかどうかということを他者と比較するのではなく,自分の活動に意識を向け,英語活動に自分自身が正しく取り組むことを重視していた。(2)2学期になると,正しく理解できているかどうかということは気にしつつも,英語活動に積極的に参加しようとする姿勢をみせるようになった。英語活動に関心を示し,ALT の働きかけに自主的に応じるようになると共に,自分なりの英語活動への取り組みをするようになった。間違えることを意識した消極的参加から自分の考えを自分なりに表現する積極的参加の姿勢へ移行するという変化がつぶやきにみられた。積極的に取り組むようになったのは子どもの正誤に対する意識が低下したためであると考えられる。2つの調査において,このような変化は共通してみられており,多くの子どもが抱く思いであるといえよう。そのため,特に英語活動初期において,子どもが積極的に取り組めるように教師がサポートすることの重要となる。今後の課題としては,現行のプログラムに沿って子どもの思いを把握し,さらなる指針を得ることが必要であろう。

課題研究
  • 泉 惠美子, 萬谷 隆一, アレン玉井 光江, 長沼 君主, 田縁 眞弓, 大田 亜紀, 島崎 貴代, 森本 敦子
    2014 年 14 巻 01 号 p. 228-243
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校外国語活動で最もよく用いられている自己評価を用いて,4段階を示したCan-Do 評価を用いた振り返りシートを使用した。従来の振り返りカードとの違いを教授者や児童の声から分析した結果,教授者は,単元や毎時の指導目標を明確にし,指導目標に応じたタスクを検討し,特に「言語への慣れ親しみ」における達成度,すなわち評価規準を設定し,評価基準を4 段階で具体的に記述し,児童に判断させる自己評価を毎時間行うことで,児童にとっては目当てがはっきり分かり,自分を振り返り,評価をすることを通して学びが促進されることが分かった。また,教員には児童の実態が把握でき,授業計画力と分析力が高まり,授業改善につながるといった効果が表れた。その際公立小学校,私立小学校,低学年,高学年と様々な児童によって違いが見られた。また自己評価とアンケート結果における児童の認識や態度,リタラシー指導の成果と児童英語検定(児童英検)といった外部テストによる英語力との相関も検証したが,それぞれに興味深い結果が得られた

  • 浦田 貴子, 柏木 賀津子, 中田葉月, 井手眞理
    2014 年 14 巻 01 号 p. 244-259
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    小中連携リンクユニットとは, 小学校外国語活動で音声として慣れ親しんだ「ひとかたまりの表現」を, 中学校外国語科での文構造, 文法規則などの理解に繋ぐことをねらいとし, そのねらい達成のための効果的な指導方法を用いて行う指導過程のことである。理論面では, アイテム学習における児童の「ひとまとまりの表現」の蓄積と音声面からの「文のパターン」の発見について述べ, 教師の構造化されたインプット(structured input)等で言葉の仕組みに気づかせる手立ての提案を行う。実践面では, 小学校6 年生と中学校1 年生で, 同じ言語材料「I can swim」を扱う単元をリンクする授業実践におけるリスニング調査を実施し, 児童が「can の用法」や動詞フレーズの音声と意味を繋いでること, 非文に対する違和感や語順への感覚を持ちつつあることが分かった。また「I can swim」の単元を発展させ, 内容言語統合型学習(CLIL)の視点から「環境問題」を扱った実践においては, 母語の背景知識と内容に関する思考が, 言語使用と深く結びつく傾向を観察した

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