小学校英語教育学会誌
Online ISSN : 2424-1768
Print ISSN : 1348-9275
ISSN-L : 2188-5966
18 巻, 01 号
PART I
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
実践報告
  • ―ジョイント・ストーリーテリングを活用して―
    池上 真由美
    2018 年 18 巻 01 号 p. 4-17
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究は,英語特区の公立小学校第6学年の児童23 名に対して,平成28 年9月~11 月の3か月間,ジョイント・ストーリーテリングの手法を用いて行った授業実践の報告である。単元の出口に「幼稚園で発表する」という目的を設定して単元構成をすることで,児童の学習意欲を高めたり日常生活における児童の発話を増やしたりすることができるのではないかと考えた。実施前後の児童の変容を児童アンケートと行動観察により分析した結果,児童の英語を学ぼうとする意欲や英語学習への必要感が高まる傾向が見られた。また,学級全体でこのプロジェクトに取り組むことにより,学級の連帯感・所属感が高まり,日常生活において英語を使おうとする児童が増加した。 物語を丸ごと覚えて学級全体で再話するジョイント・ストーリーテリングの手法により,意味のある文脈の中で大量の英語をインプットすることが可能になり,学ぶ目的をはっきりさせたプロジェクト型の単元学習として構成することにより,学習後,児童は高い達成感をもつことができた。それにより,児童の英語への学習意欲が高まり,さらに読む活動への興味を喚起するという効果もあると考えられる

研究論文
  • ―小学校の「理想の外国語授業」イメージの質的分析-
    篠村 恭子
    2018 年 18 巻 01 号 p. 20-35
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究は,初等教育教員養成段階の大学生の小学校での「理想の外国語授業1」のイメージ(以下,「理想の授業」)が児童英語教育関連科目の1 年間(前期・後期)の受講を通してどのように変容するかを明らかにすることを目的とする。調査は,平成28 年度に計4 回(前期・後期講義それぞれの初回と最終回)行い,毎回の講義終了時に学生に記録させた振り返りレポートの記述と併せて分析した。 受講した学生のうち,中学校英語科教員免許状を取得予定で自身の英語運用能力に対する自信が高い学生(学生A)と取得予定は無く英語運用能力に対する自信が低い学生(学生B)の2 名を抽出し, SCATSteps for Coding and Theorization,以下,SCAT;大谷,2011)という質的分析の手法を用いて分 析を行った。その結果,学生A は受講を通して「理想の授業」に変容が見られ,徐々に外国語授業の「指導者」としての視点を獲得していったが,学生B については1 年間を通して「理想の授業」に大きな変容は見られず,外国語授業の「指導者」としての視点の獲得も見られなかった。

  • 佐藤 剛
    2018 年 18 巻 01 号 p. 36-51
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究は,小学生を対象とした語彙サイズテストを開発する前段階として,小学生のための受容語彙リストの作成を目的としたものである。その過程から,データソースの対象とした8種類の教材の特徴を語彙の面から考察し,小学生の語彙知識を反映する可能性のある語彙リストとは,どのようなものかを明らかにする。そのため,Hi, friends!,『英語ノート』,教室英語辞典,中学校検定教科書,絵本に加え,Picture DictionaryL1 児童用教材,L1 児童用語彙リストの言語データからコーパスを構築し,そのFrequency(頻度)とRange(使用範囲)を基に主成分分析を行い,第1主成分得点から小学生のための受容語彙リストを作成した。また,特徴語の分析やクラスター分析の結果から,Hi, friends!や『英語ノート』,中学校1年生用の検定教科書においては,一人称と二人称の主語,please let’shello hi などの表現が多いこと,絵本には,一般的な語彙リストには高頻度で出現しない,様々な名詞が出現していること,機能語の頻度が特徴的に低いことが,小学生用の教材と一般的な英語の違いであり,さらに,Hi, friends!や『英語ノート』,中学校1年生用の検定教科書などの日本の教材と,絵本やPicture Dictionary,海外のリーディング教材とを分ける要因ともなっていることが明らかになった。機能語をどのように扱うかが小学校英語の指導における課題であることが示唆された

  • ― 音素操作タスクに見られるモーラ認識の影響 ―
    池田 周
    2018 年 18 巻 01 号 p. 52-67
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    音韻認識の発達はリテラシー獲得の必要条件と考えられている。しかし母語習得過程で発達した音韻認識が第2言語の読み書き技能習得に及ぼす影響については,非アルファベット言語での研究があまり進んでいない。音韻認識の測定や指導では,様々な音韻単位で音の「分解」,「結合」,「削除」,「置き換え」などを行うタスクが用いられる。本研究では,音韻認識タスクの困難度について,「扱う音韻単位の違い」や「ターゲット音の単語内での位置」,「タスクそのものの違い」の観点から先行研究に基づいて考察し,「操作」タスクの方が「認識」よりも認知的負荷が高いことなどを指摘した。そして,これまで認識タスクによって測定してきた日本語を母語とする小学生の英語音韻認識を,音を口頭操作するタスクを通してより包括的に記述するための調査を行った。結果から,音素レベルで単語から音の削除や置き換えを行う際に,日本語の基本的音韻単位であるモーラ(CV)で音声言語を区切ろうとする影響が明らかになった。さらに,英語リテラシー発達のレディネスとなるレベルまで小さな音韻単位の認識が自然に発達することは期待しづらいことから,英語の読み書き導入までに,ローマ字指導とも組合わせながら,口頭での「音遊び」として音韻認識を高めておく必要性を論じた

  • 一英語分節音(音素)の知覚・産出能力の実態検証一
    河合 裕美
    2018 年 18 巻 01 号 p. 68-83
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    外国語活動が高学年で必修化されて6年経つが,音声指溝中心とされる小学校外国語活動において,英語音声の具体的な指導法はいまだ確立されていないのが実情である。諸外国の早期学習者対象の英語学習時間に比べ,年間35時間という極端に短い学習時間の制限がある中で,本人高学年児童(older children)のための適切な英語音声指導法を検討していくためには,まず児童の知覚・産出の実態を明 らかにすることが必要である。年度から始まる教科化と同時に始まる「読み書き」の指導において音声指導は重要な役割を担っている(田中・河合,と思われることから,本研究では,英語を母語とする子ども(以下,英語拇語子ども)の音声処理システムモデルに基づいて,日本人児童の英語分節音(音素)の知覚・産出能力の実態とそれらの関係性を明らかにした。東京都内公立小学校の5年生児童104名が本研究に参加した。知覚能力を測定するために4つの聴解テストを行い, の産出能力を測るテストを実施した。収集データは,StackhouseandWells(1997)が提案する英語母語子どもを対象とした音声処理システムのモデルに基づいて量的に分析した。その結果,(1)分節音の産出より知覚の能力が高い,(2)日本語にない分節音の判別は困難であるが,子音の産出は可能である,(3)母音の知覚・産出が子音に比べて困難である,意味表象の有無が英語分節音の知覚や産出に影響している,(5) 知覚能力が産出能力に影響を及ぼすなどの点が明らかとなった。これらの概括的な結果から,高学年児童にどのように明示的な発音指導を行うべきか示唆を試みた。

  • 文間の意味的な関連度に基づいて
    名畑目 真吾
    2018 年 18 巻 01 号 p. 84-99
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    小学校における外国語教育の教科化と低学年化の動きに伴い,英語教材としての絵本や物語文(ストーリー)に対する関心度が近年高まっている。ストーリーを教材として用いる意義の1 つには,まとまった英語を提示でき,意味のある文脈とともにインプットを与えられることがある(アレン玉井, 2010)。これまでの研究はストーリー教材を用いた指導の方法やその成果,教材選定のポイント等を報 告したものが多く,ストーリー教材の特徴を客観的に分析・評価した研究はほとんど行われていない。 そこで本研究では,コーパスと統計分析によって算出される文間の意味的な関連度に基づき,小学生向けストーリー教材における文脈の特徴を分析することを試みた。日本人の小学生向けに作成された 10 のストーリー教材のテキストを対象として,各教材における隣接する文間の意味的な関連度を算出 し,その平均やばらつき,具体的な文脈の記述内容を検討した。その結果,本研究で対象とした教材における文間の意味的な関連度は,先行研究で報告されている大人の学習者を主な対象とした教材の値よりも全体的に高く,文間の意味的な関連度は教材が対象とする学習者の発達段階を反映する可能性が示唆された。また,文脈の記述内容の検討から,文間の意味的な関連度に基づけば,「類似した意味を持つ文脈で出現しやすい単語が文間で含まれているか」という観点からストーリーの文脈を評価できることが確証された。これらの結果に基づき,文間の意味的な関連度に基づいて小学生向けのストーリー教材を評価する意義と,教材開発・改善への利用可能性について述べた

  • ―小学校教員養成課程外国語(英語)コア・カリキュラムの点から―
    酒井 英樹, 内野 駿介
    2018 年 18 巻 01 号 p. 100-115
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    本論文は,「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」(東京学芸大学, 2017)が提案する知識・技能及び英語運用能力の点から,小学校教諭免許状の取得を希望する大学生が大学における養成期間中に何を学び,身に付ける必要があるのかを調べるために行った調査研究の結果を報告するものである。初等英語科指導法の受講生に対して「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」の項目の理解度及び自身の英語力の自己評価を問う質問紙調査を行った。また,受講生からTOEIC の得点を得た。受講生のうち2 年生103 名の回答を分析した。その結果,全ての項目について自己評価が低かったが,特に指導法に関する内容についての項目の自己評価が低かった。英語力の自己評価については,受容能力に比べて産出能力の自己評価が低かった。コア・カリキュラムで求めているB1 レベルについては,読むことについては59.2%の学生が肯定的な自己評価(「ややできると思う」と「できると思う」)をしていたが,聞くこと,話すこと[やり取り],書くこと,話すこと[発表]の順で肯定的な回答の割合が少なくなり,話すこと[発表]については27.3%の学生しか肯定的な自己評をしていなかった。また,英語運用能力については,コア・カリキュラムで提案しているB1 以上に達している学生は19 人(18%)であった。これらの結果に基づき,カリキュラムの改善・充実のための示唆を考察した

  • 狩野 晶子, 尾関 はゆみ
    2018 年 18 巻 01 号 p. 116-131
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    ALT) 655名を対象に行った質間紙調査における自由記述回答の分析結呆を報告する。日本の小学校で 外国語の指導にあたる外国人ALTを対象に行った大規模質問紙調査の結呆より,本稿では自由記述質閲への回答として書かれた「JTEとの関わり」に関するコメント及び「児童との関わり」に関するコ た自由記述回答をその内容に応じて分類し項目化し,各コメントの内容に対してコーディングを行い,それぞれの項目での集計と分析を行った。外国人ALTのコメントから共通して浮かび上がる問題意識が総数の多さで客観的に示され,一例として日本人教員のクラスマネジメントカヘの高い評価と期待が見られた。また,授業前後の日本人教員とのコミュニケーションがあることが満足度につながること,授業内で自分の強みが生かされていると感じることが外国人ALTのモチベーションを高めることも示された。児童との関係においては学年特性への言及が多く出され,また特別な配慮を必要とする児童との関わりについて専門知識や研修を求めるコメントも見られた。本研究は日本の小学校での外国語指導の実情と,日本人教員や児童との教室内外での関わり方の現状について外国人ALTが持つ意見を集約し示すことで,今後の小学校外国語活動及び教科としての外国語における指導者の活用と育成や研修内容への具体的な課題と方向性に示唆を与えるものである。 本研究では全国の小学校で外国語1の授業に携わる外国籍のAssistantLanguage Teacher (以下外国人 との関わり」に関するコメントを中心に,外国人ALTが綴っ

  • −<share>1 の「意味」と「感覚」−
    岩坂 泰子
    2018 年 18 巻 01 号 p. 132-147
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    本稿は, ある公立小学校5年生の語彙の学習において児童が描いた絵を媒介的道具として,具体的なことばの概念を理解してゆくプロセスを社会文化理論(SCT)の視点から分析したものである。発達心理学分野のVygostky1978)らの思想を源流に持つ社会文化的アプローチ(Wertsch, 1991)では, 発達は個人と個人をとりまく社会的関係や環境との相互作用の中で, 言語や人工物, そして他者とのインタラクションなどを媒介的道具として起こると考える。この授業では,英語絵本の中に出てくる<share>ということばを取り上げ,その意味を明示的に示すのではなく,絵本の内容を理解した上で, 具体的な生活体験の中でそれぞれの児童がshare する何かと関連づけながら,ことばの「感覚」を実感させることをめざした。児童たちには,それぞれがshare するものを絵に描かせたが,児童は<share>というよくわからない外国語のことばの理解を具体的に表現した道具(絵)を利用して, 他者との対話の中でことばと遊び, お互いのストーリーに共感しながらことばを繰り返し, 模倣をしながら<share>という行為の「感覚」を実感していった。つまり,SCT の見方からすれば,児童の描いた絵は,それぞれにとっての<share>の意味を表象すると同時に, クラス内で共有することで,児童らの<share>の意味を形成することを支援する媒介的道具としても機能したと言える。言語の発達は, 様々な活動を通して「他」(者, 物, 事)との関係を見出し, 「他」との共感的な関係を再構築してゆく中でおこる。本研究の事例では, 以上のような外国語学習・発達のプロセスにおいて関係性が再構築されることにより, 児童の主体性あるいは自発的な意思が発現することが明らかになった。

課題研究
  • 執行 智子, カレイラ松崎 順子 , 舩田 まなみ , 村上 千春
    2018 年 18 巻 01 号 p. 150-165
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究では,韓国で使用されている小学3 年生から小学6 年生のe 教科書4 冊を分析し,コンテクストの特定化および対話構造を調べた。その結果,対話者の国籍および対話場所がすべて特定されており,コンテクストの特定化率は非常に高いということが明らかになった。さらに,学年が上がるにつれて対話者の一方が韓国人,もう一方が韓国人以外の場合が多く,また対話場面も学年が上がるにつれて,より日常的な場面が多くなり,学習者である小学生の発達・認知・社会的段階を踏まえて制作されていることがわかった。対話構造では,対話の基本である2 ターンがどの学年においても大半を占め,概ね単純な対話から構成されていることがわかったが,2 ターンの対話を詳細に見ると,学年が上がるにつれてターンの組み合わせが体系的に増加し豊富になっていくことが明らかとなった

  • 川村 一代, 鷹巣 雅英, 岡村 里香, 岡井 崇
    2018 年 18 巻 01 号 p. 166-181
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    平成32 年度から小学校高学年において英語が教科化されるにあたり,年間35 単位時間増となる時数をどう確保するかが大きな課題となっている。文部科学省(以下文科省)(2017a)には,「小学校高学年において年間35 単位時間増となる時数を確保するためには,ICT 等も活用しながら1015 分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う短時間学習(帯学習,モジュール学習)を含めた弾力的な授業時間の設定や時間割編成とそのために必要な『カリキュラム・マネジメント』を,教育課程全体を見通しながら実現していくことが求められている」と述べられている。言語学習の特性から,基本的な語句や表現などは繰り返し学習することで身に付けることが期待できるため,教科化に伴い増加する時数を短時間学習で充てることは,児童の英語力向上に効果的であると考える。 う「意味のあるやり取りや発表」がより確実に行えると考え,56 年生を対象に45 分授業を補完する短時間学習の実践を行った。本稿では,短時間学習の特性を踏まえ,年間を通して行った6 年生の実践を報告し,実践を行う中で見えてきた効果的な短時間学習の在り方を提案したい。 45 分授業で学んだ語彙や表現に繰り返し触れる機会が短時間学習で確保されれば,45 分授業で

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