上巳の節供は、祓の行事と平安時代の雛遊びが結びついたといわれる。古くは、艾餅を用いて節供を祝ったとされ、江戸時代には、菱餅がお供えとして見られるようになる。
本研究では、調査資料として『日本の食生活全集』全50巻及び主たる参考資料として『諸国風俗問状答』を用いることとした。主に江戸時代に刊行された文献により菱餅が供えられるようになった経緯を明らかにし、全国各地の菱餅の調査からその特徴と地域差の要因を解明することを目的とした。
結論として大正期から昭和初期における菱餅の主流は、三色であり、色数には江戸時代から続く慣習が見られたことが明らかとなった。また、各地域に点在した菱餅には地域差が見られ、御所風、武家風、寺院風などの歴史的背景が考えられた。
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