本稿は、近江国滋賀郡本堅田村(現滋賀県大津市本堅田)の商家(北村家)に残された「通」の分析を通じて、江戸時代後期の食料消費動向を解明しようとするものである。江戸時代の物品購入は、月末や年末に店ごとにまとめて支払う方法が通例で、日々の購入記録は店から購入者に手渡される「通」に記録された。「通」には詳細な購入履歴(店舗・日付・商品・金額・数量など)が残されているため、日々の消費動向を読み取ることができる。今回は、当時最も一般的な食材の一つであった「豆腐」に注目して、北村家の消費全体における豆腐の位置づけ、購入店舗数、購入地域、購入回数、購入商品、購入金額の検討を試みた。その結果、豆腐屋の店舗数の多さ、購入頻度の高さ、店舗別の購入商品や購入金額の違いを明らかにし、店ごとの「品揃え」の違いが消費者の店舗選択の要因として大きく作用していたという結論を導き出した。本稿は、消費実態の具体的な検討を通して食生活に関わる消費行動全体を捉え直すことを試みた。今後も豊富な分析事例を重ねていくことで、江戸時代の食生活の実態解明に迫りたい。
インドネシアの伝統的発酵食品は保存性と特徴的な風味を持つだけでなく、多様性に富むことが知られている。近年、食品の大量生産と冷蔵輸送の発展や輸入の増加によって、インドネシアにおいても食文化は次第に変化している。そこで、次世代の食文化を担う若年層において、伝統的発酵食品がどのように認識され、購買されているのかを知るため、アンケート調査を行った。10–20代の男性37人、女性88人計125人を対象とした調査の結果、テンペのみが身近で、かつ最も購買頻度の高い発酵食品であった。発酵調味料は購買頻度が高いものの、代表的な発酵食品として挙げられることが少ないものも認められた。一方で、インドネシアの伝統食品ではないヨーグルトが若年層にとっては身近な発酵食品であり、購入頻度も高くなっていた。発酵食品の購買行動と単身世帯や家族世帯などの生活様式、民族、出身地に明らかな関連性は認められなかった。
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