会誌食文化研究
Online ISSN : 2436-0015
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研究ノート
  • 畑 有紀, 佐藤 茉美
    2024 年20 巻 p. 2-14
    発行日: 2024/12/25
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル フリー

    本稿では、近世の本草書に「薬酒」、料理書に「料理酒」などと表記される、既成の酒類に食材を浸漬して造る酒について、菊花を用いた「菊酒」を例に、当時の文献の記載をもとにそれを模した溶液を作製し、培養細胞を用いた実験でその効能を検証することで、当時の人々の生活における薬酒や酒類の意義を考察した。

    本草書・料理書を中心とする文献調査からは、「菊酒」の製法には、麹米と菊花の煮汁とを合わせて発酵させる方法と、焼酎に菊花を浸漬する方法、清酒に菊花を浸漬する方法の3通りがあったことを指摘した。また、その主な効能は、(1)頭風(頭痛)を治すこと、(2)耳や目を明らかにすること、(3)諸病を治すこと、(4)萎痺(手足のしびれ)を取り除くことの4点に大別され、これらが多くの人々に関わる健康リスクであることを見出した。

    そして、菊花を清酒、焼酎に浸して得た菊花抽出液を用い、(1)(2)に着目した実験を行った。(1)では清酒のみ、清酒または焼酎による抽出液を免疫細胞株に添加すると、発痛と発熱に関わる遺伝子COX2の発現が有意に低下した。(2)では「肝眼連関」の考えに基づき、肝細胞株に清酒または焼酎による抽出液を加えると、肝臓の抗酸化能と解毒能維持を担うグルタチオンが有意に上昇した。焼酎は菊花の存在下でのみ、上述の効果を示した。

    以上から、菊花の有効成分抽出によって「菊酒」の効能を得るためには、清酒より焼酎のほうがベースとなる酒類として優れており、清酒よりも焼酎を用いて「菊酒」を造ることに意義があったと結論づけた。

  • 當眞 瑞代
    2024 年20 巻 p. 15-26
    発行日: 2024/12/25
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル フリー

    高度経済成長期は、人々のライフスタイルや食文化を含めて、日本社会全体が大きな変化を遂げ、現在の菓子の消費に多大な影響を与え、菓子メーカーの新商品開発、菓子業界の市場に変化を促し、業界構造を変えるに至った。本研究は、高度経済成長期を中心に1985年までを対象に、流通やライフスタイル、食文化などの影響を受けた嗜好の変化を背景に、菓子の消費動向や菓子の市場の変化について、また、市場での販売と関わる菓子業界のマーケティングの変遷について明らかにするものである。

    分析方法は、家計調査を数量データとして洋菓子、和菓子に区分し、マクロの視点でその消費動向を定量的に分析し、また、いくつかの対象品目を選定し、流通の変化との関係を検討する。そして、菓子業界の各メーカーなどの社史や資料を基に定性的に分析し、菓子業界のマーケティングの変遷を見ていく。

    その結果、菓子業界は、高度経済成長期の日本経済の高成長を背景に、洋菓子による「量」の拡大と「質」の変化がみられ、1976年に和・洋菓子の構成比が逆転することで、消費の面から見ても、消費者の嗜好は洋風化し、洋菓子市場が拡大傾向にあることが明らかになった。

    また、1985年11月、貿易自由化に伴う大きな課題を菓子業界が一丸となって対応するため全日本菓子協会が発足したことは、菓子業界の構造が変わったことを表す象徴的な出来事であったことが明らかになった。

  • 宇都宮 由佳, 中澤 弥子, 伊尾木 将之, 瀬尾 弘子, 江原 絢子, 大久保 洋子
    2024 年20 巻 p. 27-38
    発行日: 2024/12/25
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル フリー

    日本の正月行事と食の実態の年次変化とコロナ禍の影響をみるため2023年1月3~31日18–89歳、2586名を対象にオンライン調査によるアンケートを実施した。2017年、2020年、2023年の調査と比較して、大掃除、年越しそば、雑煮やおせち料理の摂取は年々減少しているが、実施内容はほぼ同じ傾向であった。世代別では雑煮やおせち料理の担い担い手である50歳以上の実施率が大幅に減少していた。コロナ禍の影響について、半数は大掃除や正月料理を簡略、親戚と集まるのをやめ、残り半数は「変化なし」であった。コロナをきっかけに「正月行事をするようになった」人のうち「今後も継続して実施」が8割いた。またコロナ禍で「行事を簡略した」人のうち半数以上が「復活」させており、特に若い世代で、その傾向がみられた。正月に家族や親戚で集まることの大切さを重視するようになったとの回答は10代・20代で高かった。コロナが伝統行事を見直す機会になっていた。

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