トップドーナーとなった我が国の経済援助の中で,森林の再生や植林事業に関する援助目的や受入れ側の意向について検討した。そしてより有効で効率的な国際協力のあり方について提案することを目的とした。特に,東南アジアの中で経済成長率が高く,森林減少が激しい国であるとともに,我が国と関係の深いタイを取り上げた。近年における熱帯林の減少は,地球規模の環境問題が台頭する中で,経済活動は以前からの目的であった人道的考慮や相互依存性の認識に加え,地球上の生物全ての将来に関わる重大な問題として取り上げられるようになった。援助の方向性は,環境造林あるいは産業造林に加え,地域住民を対象にした社会林業の2面性が認められた。また,タイの場合,急速な資本主義段階において農業国から工業国へと転換し,現受取人を求めて若年層が都市に集中するなど,産業構造が変化することともに,地域における森林の役割や土地利用のあり方に変化があると考えられ,経済援助のあり方も再検討する必要があるだろう。
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