林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
Print ISSN : 0285-1598
1995 巻, 127 号
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  • 原稿種別: 表紙
    1995 年 1995 巻 127 号 p. Cover1-
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
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  • 原稿種別: 表紙
    1995 年 1995 巻 127 号 p. Cover2-
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    1995 年 1995 巻 127 号 p. Toc1-
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
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  • 林業経済学会幹事会
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 1-
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
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  • 1995年春季大会運営委員会
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 2-
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
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  • 遠藤 日雄
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 3-12
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
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    (1)わが国の木材産業は,自動車,造船,石油化学などの煙突産業に遅れた形で,21世紀に本格的な工業化社会に突入するが,そこでは製品の大量化,均質化,規格化が求められ,そのインパクトは森林・林業にも波及する。(2)こうしたなかで,1980年代後半以降わが国の林材業に大きな変化が生じている。それは,(1)1980年代後半から国内の外材産地の再編が完了,さらに南九州を中心に外材に対抗できる川上-川下一体になった林材業の展開が見られること。(2)1990年代に入ると,米国の自然保護運動の高揚を契機に米材価格が高騰したにもかかわらず,国産材の安定供給ができないため,「値が値を呼ぶ」状況が起こり,北欧を中心に世界各地から木材輸入の道が開かれた。一方,南九州は1990年代に入っても依然としてビビッドな展開をしており,わが国林材業の工業化社会への突入の前兆と考えられる。(3)南九州の動向のなかで,特に注目されるのは,中小規模森林所有者を中心にした自伐の広汎な存在であり,地域林業政策→流域管理システムへの政策的文脈のなかで,森組が森林所有者の自伐を組織化しながら素材生産力を拡大していくことが肝要で,今後それに沿った新たな政策が求められている。
  • 柿沢 宏昭
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 13-22
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
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    社会・経済における森林の位置付けが大きく変化し,生物多様性の維持など生態系保全への要請が高まる中で,林政は大きな転換を迫られている。これまでの林政は極めて単純化して森林を認識した上で,生産力向上を目的として構成されてきた。このため林政の基礎となる森林資源などのデータ収集や森林管理技術・技術者の養成が軽視され,林政を支える基盤が弱体化・空洞化してきている。また,森林を構成する林木以外の構成要素や森林の多面的な機能,さらには土地利用管理といった分野が林政の対象となることはほとんどなかった。このため無秩序な土地利用が進んで資源を劣化させるとともに,生産・生活に様々な影響を与えている。これからの森林政策を構想する場合は,流域を一体とした土地利用管理のなかに森林を位置づけつつ,複雑な生態系として森林を認識してこれを総合的に管理する枠組みが必要とされている。また,森林も社会も極めて多様であるので,地域をベースとして広範な市民の参加によって政策が形成されるべきである。
  • 笠原 義人
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 23-32
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    本論文は,第一に戦後国有林政策の展開とその帰結,第二に国有林再建政策のあり方,そして第三に具体的政策を提起することを課題とする。国有林政策の展開は,戦後復興期,事業展開期,「経営改善」第一段階期,「経営改善」第二段階期の4期に区分する。国有林政策の帰結は,(1)国有森林が荒廃の度を深め,木材の供給力を低下させ,他方,森林の公益的機能を後退させていること,(2)直接雇用による生産的労働力の激減,(3)木材生産と森林環境管理の現場管理組織の大幅な縮小,そして(4)林業技術の霧散化である。国有林再建のあり方は,林野庁解体論,現行改善計画路線実行論,直営経営基本の抜本的改革論の三つに類型できる。地球規模の環境問題が人類生存の重要課題となっている今日,袋小路の中で縮小・解体の危機にある有林野事業の再建策を,これらのあり方類型の検討を踏まえて具体的に提起することを訴える。
  • 畠山 武道
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 33-40
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    アメリカ合衆国では,1960年代後半以後に市民運動としての環境保護運動が本格化し,多数の公害規制法・環境保護法が制定された。環境保護団体は,その後も裁判などを通して活発な活動を続けており,連邦や州の環境政策に大きな影響を与えている。ところで,国有林を管轄する森林局は,これまで森林管理の専門家として国民の高い支持を得てきたが,1950年代以降に国有林伐採量が増加するにつれて,さまざまの環境保護運動に遭遇するようになった。また,1964年の原生自然法,70年の連邦環境政策法,73年の絶滅のおそれのある種の法,76年の国有林管理法のように,国有林管理に制約を課す多くの法律が制定され,裁判においても森林局に不利な判決がつぎつぎと下されている。時間は要するが,住民参加のもとに国有林のあり方を広く議論することが求められているといってよい。さらに最近は,野生生物保護をめぐって森林管理のあり方が問われており,エコシステム全体の保全を考慮した森林管理の方向をさぐることが不可避の課題になっている。
  • 小林 紀之
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 41-46
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
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  • 東 慶久
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 47-52
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 酒井 寛二
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 53-58
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
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  • 福士 淳治
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 59-64
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 孝昭
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 65-70
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    「経済構造調整」政策下,農林家の農業経営の分化,分解がこれまでになく進み,人工林施業から離脱せざるをえない層が多数うみだされ,農家経済を補完するための伐採を積極的に施業を実施しているものとして評価できない複雑さをもたらしている。この論稿では,1970年代の稲作減反農政下で集落内の農家間で個別的単一経営化による規模の拡大を伴った複合経営が確立され,それを基盤に経営各層が経営山林の人工林化を急速に促進した岩手県北部畑作地帯に位置する集落の状況をふまえ,1985年以降における農林家の農業経営とそのもとでの森林経営の状況を農業経営階層別に検討した。まず,集落の耕地面積と作物収穫面積,農業従事者の推移をみ,つぎに,農林家の森林施業を農業経営とその従事主体をとおしてみた。人工林施業を継続している主体は農地,山林経営規模とも比較的大きい層であるが,農業経営を維持させるための伐採も行われ,これらの階層が人工林を含む森林の育成管理を担うためには専従的農業後継者を確保できる営農組織が必要である。
  • 和智 達也
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 71-76
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    林業労働力組織の最も基礎的単位たる作業班における要は班長である。とりわけ本稿で考察対象とする大和森林株式会社の班長の場合,一般的にイメージされる林業労働力組織の統括者・管理者としての機能に加えて,林業労働未経験者の教育指導という重責をも担っている。本稿においては作業班班長として彼らが如何に状況の変化に対応しながら日々の職務を遂行しているのか,そして彼らの職務遂行を支えているであろうところの使命観・価値観とは一体何であるのか等々を把握することを通じて彼らの実像を描写することに努めた。なお本稿を取り纏めるにあたって行ったアンケート調査では,大和森林株式会社全社の33の作業班のなかの21の作業班の班長(班長代行の1人を含む)から協力を得,補足的に聞き取り調査を行った。調査結果からは彼ら自身が班長としての職務に忙殺されつつも,その多くは自らの職務に生きがいを感じ,主体的に取り組んでいるということ,つまり大和森林株式会社という会社組織の1構成員として職務に打ち込める職場環境と職務に比例した処遇が前提として存在して初めて大和森林株式会社の班長として機能を発揮しているということが明らかとなった。
  • 馬場 裕典
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 77-82
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    1994年4月29日から5月1日及び同年7月31日から8月4日の計8日間に屋久島自然休養林荒川地区,通称屋久杉ランドにおいて同施設での行動や整備状態,運営方法に関するアンケート調査を行い,904人の協力を得た。集計の結果以下のことが明らかになった。1)路線バスの必要性は「必要ない」が41.5%,「必要である」が37.4%と若干「必要ない」が上回っていた。車両制限に対して,利用者の42.5%が現状維持と考えている。2)歩道利用では30分コースが65.1%と最も利用されており,時間がよりかかるコースになるにしたがってその数値は減少している。また歩道の選択には年齢が大きく影響を与えており,天候は影響を与えていなかった。3)協力金及び自然休養林制度について,利用者は十分に理解していなかった。特に若年層でその傾向が大きかった。4)施設の整備については「不要」が25.0%と最も多く,「説明板の設置」,「休憩施設の設置」,「トイレの設置」の順となっている。5)今回のアンケートでは時期的違いは利用者の年齢構成以外ほとんどみられなかった。
  • 大浦 由美
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 83-88
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    国有林野の使用料とは民間の地代に相当するものである。現行の「改善計画」においては,国有林野内で民間活力を利用した大規模な森林レクリエーション事業を推進し,その使用料収入の増大に資することが明言され,単にこうした用途の使用許可件数の増大を図るのみならず,使用料の算定方式を変更し,引き上げを図っている。国有林野は国有財産法に規定される行政財産としての性格を有し,管理者である林野庁長官に広い裁量権がある。よって,国有林野の使用料の算定方式の決定は林野庁長官の自由裁量に任せられている。本稿では,索道業と旅館業の事例から,算定方式の変更による使用料の引き上げの傾向を示した。いずれも民間の一般的な事例と比べ,非常に大幅な地代の引き上げである。このような使用料算定方式の変更が林野庁内部の通達,訓令のみで行われており,しかも国有林野事業の財政悪化を最大の理由としている現状は問題である。
  • 村瀬 房之助
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 89-94
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    市町村を中心とした公有林は,従来から市町村財政を支えるために運営されてきた。しかし,最近の森林の公益的機能に対する要求の高まりから注目すべき存在となった。本論文は,とくに九州地域における公有林の動向を1980年と1990年の世界農林業センサスから分析し,つぎに福岡県の主要都市(福岡市,北九州市等)と県下須恵町の市町村有林の動向,つまり運営の方針と公有林拡大整備の方法を考察した。その結果,各市町村の所有する公有林は,環境保全のために,水源かん養,保健休養機能を高めることを志向していることがわかった。その実現のために,須恵町では,県行造林の町有化,町予算と自然教育林基金(町民等からの寄付)によって私有林の購入に努めて最近10年間で約96.85haの森林を購入した。このほか,さらに50haの森林の買い入れを企図している。さらに,自治省による平成5年度からの森林の公有化推進施策,すなわち地域環境保全林・公益保全林特別対策事業も分析した。九州地域では15市町村の304haが平成5年度の事業の対象となっている。
  • 山田 茂樹
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 95-100
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    高知県嶺北地域は,スギ材主体の民有林が優越する林業地帯で,1994年現在で約15万m^3内外の素材生産量がある。国有林は地域の素材生産の30%を占め,本山署は地域の森林組合への事業供給者として重要な位置を占めている。また,その森林組合は国有林事業の他,比較的規模の大きい所有者に依存する割合が高い。そのほかの素材生産主体は,大規模林業事業体からの請け負いを主とするもの,第3セクター等の新興の大規模素材生産会社,従来から存在する素材生産業者で規模の大きく専業的なもの,そして小・零細規模業者および自伐林家等に大別されるが,小・零細業者および自伐林家を除き,高性能林業機械の導入という展開方向を示している。しかし,もっとも先進的な素材生産事業体として位置づけられる第3セクター等の新興の大規模素材生産会社も,民有林を中心にみられる計画性の欠如,林地自体の小規模分散性にその展開を強く規定されている。今後,これらの点をどのように解決していくかが,それら事業体の展開のみならず,地域の林業の展開という点からも課題である。
  • 嶋瀬 拓也
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 101-106
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    我が国の林業をめぐる情勢は一層厳しさを増しており,森林施業の合理化,担い手の確保が喫緊の課題となっている。こうした状況の下,北海道においては全国に先駆けて高性能林業機械の導入がはかられてきた。しかし現段階においては様々な要因のため,これらの高性能林業機械化が必ずしも期待された効果をあげているとはいえない。その一つとして高性能機械化に即した施業方法の確立が遅れていることから,機械導入がコスト低減に結びついていないことがあげられる。高性能機械化に即した施業方法の確立には森林所有者の理解と積極的対応が必要となる。公的森林所有者としての国・道有林では,一部に動きがみられるものの,高性能機械化施策に対して概して消極的である。一方私有林においては条件が整えば高性能機械化に即した施業が実現される可能性があるといえる。高性能機械化を軸として林業生産の合理化をすすめるためには,まず高性能機械を作業仕組みのなかに取り入れてゆくための条件を明確にし,素材生産業者と森林所有者とが歩み寄ることが求められている。
  • 荻 大陸
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 107-111
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    外材の大量輸入が定着した昭和41(1966)年以降,ヒノキが独歩高になるという現象が生じたが,その要因は以下の如く考察される。まず外材の流入後,(1)木材需要の主力を占める住宅用建築材の需要分野において国産材嗜好(信仰)が起こり,国産材役物に対する需要が増大した。さらに(2)住宅の洋風化(大壁造りの部屋の登場)が見え掛かり材の役物化を促したこと,そしてフリッチ需要が新たに発生するなど役物それ自体の需要も増大した。(1)(2)から,国産材にはとりわけ役物が欲求され,そのような国産材を取り巻く条件変化のなかで,最も役物としての適格性を備えていたのがヒノキであった。すなわち国産材で供給される部分はせいぜい40〜50年生の,「若齢木」が圧倒的に多く,そのような若齢木で投物を採ろうとした場合,スギより成長のおそいヒノキのほうが役物が採り易いからである。かくして「若齢木から役物を採る」という条件に規定されて,ヒノキの高価値化が生じたと考えられるのである。
  • デュンカ ノエル
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 113-118
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    社会林業は今日の開発政策の中でもきわめて重要なものの一つであり,より実効のあるシステム化の追求は不可欠であると考えられる。そして,住民参加をそのシステムに組み込むことによって,内発力を引き出すことが,とりわけ必要な段階に至っている。また,これまでの社会林業プログラムの実施結果の分析が,今後のプロジェクトの成果につながるものと言える。本研究は,このような視点に立ち,フィリピンの事例を通じて,(1)これまでの社会林業政策が住民(農民)参加に与えている影響,(2)住民参加の機会や強制の程度ならびにその特性や自発性に関して社会林業を評価するものである。調査事例は異なる4つのプロジェクトを対象とし,主に聞き取りとアンケート調査によって行った。その結果,農民が社会林業プログラム自体を理解し,同意を示しているが,農民参加は全体的には低位な段階にある。しかし,地域によっては計画から実施段階に至るまで積極的な参加がみられるところもあるなど,その差異はかなり大きい。技術援助の効果を高め,社会林業プロジェクトを成功に導くためにも農民の内発的な参加率を高めるべく,その差異の要因分析が次の課題である。
  • 佐藤 孝吉
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 119-124
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    熱帯林の減少に対する民間援助団体の植林活動をソーシャルフォレストリーに活用することによって,地域の特徴を生かした森林づくりや林業活動に展開する事を考えた。本論文では,(財)オイスカ産業開発協力団による(1)友好親善を目的としたフォーラム形式の植林活動,(2)技術の普及や生産を目的としたプロジェクト形式の植林活動を踏まえて,(3)学校を単位とし,次世代の若者の森林に対する意識向上と教育を目的とした子供の森計画を取り上げた。子供の森計画の位置づけとして,国際協力や森林保全のための植林活動は,一般的に地域外部組織の中で合意されており,地域外部組織の考え方と地域住民の考え方のギャップにソーシャルフォレストリーの困難さがあると考察した。その点子供の森計画は,計画と実践において地域住民の考え方を尊重したものであり,より地域に根付いた森林活動に近いものであると期待できる。今後の方向性として森林再生の場所と種類など土地利用の将来性を考慮すること,技術援助や資金援助の終了点について検討することを示唆した。
  • ナラヤン サハ, 川田 勲, 古川 泰
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 125-130
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    バングラデシュの木材関連産業の中で企業体として最大であり,近年の紙需要の増大により重要性を増している紙・パルプ産業は,歴史的に国営企業を軸として展開してきた。近年開放政策の中で私営企業が増加しているがその原料基盤は輸入パルプであり,国内原料基盤の充実が求められている。また,国営企業の原料調達は地域的特性を持っており,原料の種類も木材,竹材,マングローブ,バガス,ジュートと多様である。中でも竹材の重要性は高い。竹材や木材の調達において,国有林ではコントラクターと呼ばれる素材生産業者が,民有林ではサプライヤーとよばれる流通業者が重要な役割を果たしている。資源が絶対的に枯渇化していくなかで,竹材生産などでの伐採,輸送上の損失があり,原料基盤を逼迫させる要因となっている。紙の消費量は国内生産量を超過しており,輸出産業の台頭により産業用紙を中心に輸入が行われている。一方,新工業化政策により紙生産能力は増加しているが,原料不足のため生産量は能力を下回っている。また,生産コストに占める原料費の割合は高い。以上により,本論文では原料問題の解決が急務であることを示し,解決策について総括的に明らかにした。
  • 永田 信
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 131-136
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    1969年と1988年に行われたフィリピンの森林資源調査から計算した全国12地域の森林減少データを用い,関連する基本的な経済社会要因との関連について分析を行った。熱帯林の減少には,1)焼畑移動耕作,2)農地の拡大,3)過度な放牧,4)木材の盗伐,5)多大な燃材採取,6)用材伐採,7)火災などの直接的な要因と1)人口増加,2)経済成長,そして3)制度(農地の所有制度や森林の国有制そして森林利用の慣習の変化)などの間接的な要因が絡みあっている。ここでは森林減少が人的要因によって起きることに注目し,得られたデータを一人当たりの数値に変換してこれらの分析を行った。まず,土地面積,農場面積,森林面積それに丸太生産が,森林減少面積と高い相関を持った。これは前報で見たように一人当たりでみて,森林面積と森林減少面積の間に高い相関があり,他の変数も森林面積と高い相関を持つためと判断される。多重回帰分析によれば,森林面積が多い地域,また非農林地の少ない地域で森林減少が大きいことが明らかとなった。その他に丸太生産の少ない地域ほど,またマニラからの距離の遠い地域ほど森林減少が多い傾向が認められた。
  • 大田 伊久雄
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 137-142
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    米国連邦有林は森林資源の保護および国民のニーズに応じた利用という精神のもとに,農務省森林局によって管理されてきた。そこからの木材販売においては地元企業を優先し伐採収入の25%を地元の郡へ供与するなど地域経済の発展に大きく貢献してきたし,また第二次世界大戦後の急激な木材需要の増大に対応した増産をするなど国家的見地からも重要な役割を果たしてきた。しかし,1960年頃からの自然保護運動の高まりとともに大面積皆伐などへの批判が強まり,いくつもの法整備を経て連邦有林の森林管理規定は修正変更を繰り返してきている。本論文は,こうした認識を踏まえて米国連邦有林における木材生産活動の制度的変遷をたどるとともに,現行の木材販売の基礎である立木評価システムの分析を通してその問題点と妥当性について考察を行ったものである。また,1980年代に全米各地で大きな問題となったBelow-cost timber salesについてもその発生要因および議論の焦点を示し,森林局が連邦有林管理上の一つの大きな目的である木材生産にどのような姿勢で取り組んでいるかを分析した。
  • 柳幸 広登
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 143-148
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    ECでは,1979年の規則269/79号(フランス・イタリア地中海の条件不利地域の林業振興)から本格化し,1985年の規則797/85号によって農地への造林が全ての地域で助成対象となった。本稿では,(1)EC諸国の土地利用のなかで林業的土地利用が1970年代後半以降どのように変動してきたかを統計的に観察し,次に(2)ECの助成策がどの程度,林業的土地利用の変化に影響を与えてきているか,の2点について考察を行った。その結果,(1)EC諸国では80年代に加盟国のほとんどで森林面積が拡大した結果,全体では約100万haほど森林面積が増加したこと,(2)森林面積の増加に対して,条件不利地域ではECの助成策が相当関与しているが,農地造林に対する助成はイギリスなどを除いて,現在までのところそれほど大きな影響を与えているとはいいがたい,ことが明らかになった。
  • 武田 八郎
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 149-154
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    1985年以降の異常円高,市場開放を進めた「経済構造調整」下において,わが国木材関連企業の海外展開は新たな段階に入った。それは円高定着によりコストの安くなった海外生産を利用し,日本への逆輸入や開発輸入を図ろうとする企業内国際分業に他ならず,個別資本の利潤獲得を目的としており,必ずしも木材資源確保型の海外進出ではなくなっている。その特徴は,第一に進出資本の多様化である。独自の技術基盤をもつ合板,製材,建材,住宅メーカーといった産業資本がリードしており,総合商社はメーカーの海外進出をサポートする役割へと後退している。第二には90年代になり,大手住宅メーカーの自社向け部材の海外生産工場の建設が相次いでいることが注目される。第三には,進出先も北米,東南アジア,オセアニア,南米に加え,ロシア,中国,北欧へと拡大しており,プレハブ住宅部材,フィンガージョイント材,集成材,パーティクルボード,MDFなどの高度加工木材製品の現地生産が多くなっている。
  • 鄭 夏顕, 永田 信
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 155-160
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    韓国での林野所有区分は1908年の森林法第19条に基づいて始まった。1911年までに地籍の届け出された面積は全林野面積の23%と推察され,多くの私有林が国有林に編入されたと判断される。また,1910年の林籍調査の結果,森林法第19条は社会実情に適合せず且つ無理な規定であることが分かり,森林法は廃止され1911年に森林令が公布された。更に国有林経営上,存置するものと存置しないものとの区分を決定することを目的に国有林区分調査(1911-24)が行われ,不要存林野は植林の推進を目的に貸付等がなされて私有化の契機になった。一方,1910年には土地調査局が設置され,土地の地籍,面積,境界の調査(1910-18)が行われて個人の所有権が確定していった。しかし林野に対しては調査が遅れ,林野調査事業(1917-24)で林野の所有権が確立された。これに加えて,森林令第7条の造林貸付や11条の移民団体に対する国有林野の処分等と,朝鮮特別縁故森林令(1926)によって慣行を尊重しつつ縁故森林譲与処分(1927-34)が行われ,私有林の増加と地方公共団体への譲与が実現した。こうして近代的林野制度が確立してきたと言える。
  • 姜 学模
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 161-166
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    1984年から本格的に組織されている韓国の山林経営協業体は,今後の私有林経営の重要な担い手として期待されている。しかし,山林経営協業体に加入している山林所有者は林業収入がほとんどないため経営意欲が低く,また山林所有者の高齢化と労働力不足が進行し,山林所有者の共同労働による協業経営は期待できない状況である。そのため国は山林経営協業体に作業団を組織し,山林事業を遂行するようにしているが,組織された作業団の中にはほとんど機能していない作業団も多く存在している。そこで本研究では,兼業化が進展している地域(蔚山郡)と,兼業化が遅れている地域(鎮安郡)の山林経営協業体とその作業団の現状を具体的に把握するため事例調査を行った。その結果,地域の労働力市場と再生産構造には質的差異があり,山林経営協業体とその作集団のあり方,振興策も地域によって異ならざるを得ないということが明かになった。
  • 金 相潤
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 167-172
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,次第に増大しつつある森林の保健・休養機能に対する利用者の関心と需要を明らかにし,より合理的な森林レク利用の管理改善策策定に資することである。調査地としては,韓国の国立公園の中で年間利用者数が最も多く,唯一ソウル市域に重なる「北漢山(ブカンサン)国立公園」を選び,現在の一律的な管理・運営の妥当性を検討するため,同公園の中から「牛耳洞(ウイドン)地域」と「貞陵(ジョンヌン)地域」に分けてアンケート調査を実施した。そして,関連資料及びアンケートに基づいて利用者分析を行ったところ,両地域間における利用特性にはかなりの違いがあることが明らかになった。また,両地域での経年的な入込数の変化も顕著であり,レク利用される森林の管理施策において一律的な適用方式は,妥当でないと判断された。つまり,様々な地域特性や利用特性に適した,より個別的かつ具体的な森林レク政策の策定が必要である。ここで行ったアンケート調査と同様なものを他の森林レク地域も含めて継続的に行い,設備環境の実態や利用特性の変化,利用者の選好などを着実にデータベース化することが効率的な利用者管理のためにも重要であると考えられる。
  • 李 天送
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 173-178
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    現下の中国林業では,衰退している国有林地域及び南方森林地域と林業の進展している平原地域とに大別できる。森林資源の枯渇に直面している国有林地域・南方森林地域と比べて,「農用林業」の形で順調に進展してきた華北平原林業は,いわばその対極に位置する活発な地域といってよい。華北地域の農用林業は,社会主義中国の成立の初期に,農地耕作環境の改善・食料生産の安定という目的から出発して,国の行政主導のもとで大規模な造林運動が行われたのを発端としたものである。それに加え,長期間にわたる自由木材市場の存在,高木材価格と特恵的な税制の推移,人口の増加による土地に対する有効な利用,及び農村経済改革に入ってからの農家の土地経営権と林木所有権の獲得等を要因として,農用林業は大きな進展を見せ,耕作環境改善効果を発揮するとともに,農家にも多大な経済利益をもたらした。しかし,土地制度,農村経済構造が転換期に当たり,さらに激動している中国近代化政策の下で,1980年代末期以降,土地経営の零細化と土地使用権の変動,地域内の木材価格の下落,助成の不足と行政的干渉等によって,農用林業の進展をもたらした諸条件は失われつつある。
  • 楊 文秀, 井口 隆史
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 179-184
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    周知の通り,中国は世界有数の古代文明国であり,中国の農業も数千年の歴史を有している。その長い開発史の中で,森林破壊によって広範囲に及ぶ裸地を生じ,特に国境に接する北西部から東北部にいたる所謂「三北」地区では,地力の衰退が進行し,砂漠化が進み,深刻な生態系荒廃の危機に直面するに至っている。この傾向を逆転させるために,森林を回復する必要があることが明かである。本論文では,かつて無立木地帯の一つであったが,その後植生が回復しつつある中国東北郡における造林緑化の事例を通じて,この地域での森林造成の現状を報告し,一層の発展が期待される森林回復の今後の課題について検討した。
  • 戴 玉才
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 185-190
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    中国の国有林地域は,従来から社会的・経済的諸条件によって人口が希薄であった。国有林は主に「組織移民」,「官民協力移民」,「復員対策移民」という政策によって人口の多い黄河,長江下流域からの未婚中壮年農民や解放軍の除隊兵士を主体に移民させることによって森林開発に必要な労働者を求めた。国有林企業を中心とする地域の社会基盤の整備と移民労働者とその家族の定住によって辺鄙な奥地に地域社会が形成された。国有林地域への大規模な移民は,10年間ほど続けられたが,1960年代にはほぼ停止された。しかし少数の移民は1970年代後半まで続けられた。1980年代に入り,国有林労働者は,ようやく地域内の高校,中学卒業生やUターンして戻った大学,専門学校卒業生および復員兵士で地域内供給できるようになり,移民政策は完全に終止符を打った。国有林経営が単なる森林開発から林産物生産以外に係わる多角経営に取り組むにつれて,移民労働者の就業は森林開発の一極集中から離脱し,森林経営,木材加工,一般的産業及び社会部門へと分流し,多元的就業構造が形成されている。
  • 恩田 英子
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 191-196
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    明治維新以降,急激な貨幣経済の進行の中で,高知県山村においてこの転換を支えたものの1つが三椏・楮であった。また和紙市場も拡大し,製紙原料である三椏・楮の需要も急速に高まっていった。本論文では資本主義の展開との関連において三椏・楮の生産・流通構造の歴史的変化を明らかにし,現代の「自由化」時代の市場構造を分析することを目的とする。高度成長期以前,三椏・楮は山村経済を支えていた重要な換金作物であった。そのため,高知県中央山間部では広範に栽培されていた。ところが高度成長期以降の産業構造の激変期において和紙産業の衰退,代替財の増加,労働力不足等により,三椏・楮の需要は激減し,生産構造も弱体化していった。そのため山村解体と共に三椏・楮生産は衰退過程をたどることとなった。その後の「低成長」及び「構造調整」下においては,新たな展開として,少数の商人資本である原料問屋と商社により開発輸入が行われ,今日では輸人材が主流を占めるようになり,「寡占的」流通構造を呈するようになった。その結果,生産構造が弱体化している国内生産農家は国際化の波までも受け,その生産構造は壊滅的な時期を迎えている。
  • 吉良 今朝芳, 矢内 勝彦
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 197-201
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    まいたけは地域特産品として,1980年代に人工栽培が始まると天然物と同様に高値取引が期待されたが,生産量の増加につれて,価格差が大きくなり個別経営への影響が懸念されている。そこで今回はこのまいたけ経営を取り上げ群馬県下で事例調査を実施したので,その結果を報告した。まいたけはきのこ類の中では,生産者,生産量とも年々増加傾向にあり,消費面でも他のきのこに比較して堅調な価格を形成している。生産組織は会社が比較的多く,規模も大きい。しかし雇用は女子のパート労働が中心となっている。技術面では経営間の収量格差が大きく,そのため経営成果に大きく影響し,収益率にも大きな差が生じている。その要因は労働投下量の多少,資本装備と減価償却費の差,1菌床当たりの収穫量の差などが大きい。販売面では青果市場依存型の経営に比較して地元産直依存型の経営が有利な販売を展開していること等を明らかにした。
  • 岡 裕秦
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 203-208
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    割引率をゼロとした森林純収益最大のケースは,正の割引率を用いた土地純収益最大のケースよりも,造林投資が実行される可能性が大きくなり,最適輪伐期が長くなる。森林所有者の林業所得を長期的に最大化するのは森林純収益を最大にする経営方針であるが,経営者にとって林外所得の可能性を考えた総所得を長期的に最大化するのは純現在価値最大化あるいは土地純収益最大化の経営方針である。後者の場合,経営主体が直面している割引率を用いて造林等の投資評価をする必要がある。特に伐採後に再造林をすることが強制されている場合,造林から伐採までを1つのプロジェクトとして評価した場合には一般的な正の割引率を用いると不採算とされるケースでも,再造林をともなう伐採がされることがありうるが,このような林家の行動は必ずしも森林純収益説に基づくものだとは言えない。木材生産量および生産額については,一定の限度内で,割引率が高いケースの方が低いケースよりも永続的に大きくなる可能性がある。社会的割引率は経済成長率と関係しており,ゼロまたは低い割引率を支持する考え方の根底には経済成長に対する悲観的あるいは否定的な見方がある。
  • 栗山 浩一
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 209-214
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,北海道の一般民有林を対象に,造林補助金が与えた影響を数量的に分析するものである。本研究で考察するのは,(1)立木価格,賃金,森林資源の状態などの経済要因が森林所有者に与える影響,(2)森林資源の造成に対して造林補助金が与える影響,(3)森林所有者の所得形成に対して造林補助金が与える影響,の3点である。計測結果は,以下のとおりである。(1)森林所有者の造林活動を規定している最大の要因は,拡大造林では賃金,再造林では立木価格と造林補助金である。(2)造林補助金が森林資源に与えた影響については,拡大造林では,1974年度で造林面積の32%であり,1992年度では41%とほとんど変化してない。これに対して,再造林では,1974年度の36%から1992年度では77%にまで上昇している。(3)造林補助金が森林所有者の所得形成に与えた影響については,拡大造林では1970年代後半から徐々に低下したのに対して,再造林では1987年以後,急激に増大している。このように,造林補助金は,拡大造林と再造林では,かなりことなる形態で影響を及ぼしていることが判明した。
  • 北尾 邦伸
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 215-220
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    今後の林政の中核に据えられた森林・林業の流域管理システムを活力をもって作動させ,また,行政管理システムに陥らないよう手を打つためには,「共」的管理をともなった新たな森林利用の進展に注目する必要がある。本稿では都市住民が参加し,「協約」に基づいて森つくりに取り組んでいる4つの事例をとりあげて分析し,その意義づけをおこなった。森林クラブによるものは,参加費を払ってでも山仕事をやりたい仲間が集まって分収造林事業として進められている。神奈川県では,都市住民が参加して自分たちの森つくりができるように,種々の支援策を施して実績をあげている。阿蘇グリーンストックは,グランドワーク型トラスト方式による次代に贈る環境の形成運動であり,特定都市民を組み入れた「拡大入会権」での田園リゾートが追求されている。株式会社たもかくでも,株主は共同利用地での「入会権」を有する会員であり,その利用に供する森づくりがおこなわれている。自ら身体的にかかわって自然の恵みを直接享受する「業」は,「環境の社会化」としての生業の系譜上にあり,「森業」と呼びたい。これからの流域社会再生にとって重要である。
  • 篠田 朗夫
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 221-226
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    近年,多くの山村地域では農林業の衰退とともに,30年余にわたる過疎化によって「第2の過疎化」という厳しい状況下にある。いわゆるリゾートブーム時には,この山村地域にとってリゾート開発は地域振興の強力な手段として期待されていた。その開発の対象となる農林地は,激しい過疎化によって管理の粗放化や耕作放棄,不在地主化が進行し,地域資源の維持管理やその有効な利活用が問題となっている。新潟県安塚町は県内でも激しく過疎化が進んだ東頚城郡にあり,近年は地域振興策として観光産業に力を入れており,1990年にリゾート法を活用してスキー場を開設させるなどリゾート開発が推進されている。新潟県のリゾート法特定地域にある既存のスキー場では,地元住民が,地元への利益還元や地権者としての発言権も残すために借地契約をとるところが多いが,安塚町では過疎化の影響によって農林地の小規模分散型の不在地主化が進行し,開発に対する地主の意見をまとめることが困難であったため,地元住民との借地契約とはならなかった。今後地元住民が開発資本との関係をどのように築いていくかが重要な課題となると思われる。
  • 岩野 美穂
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 227-232
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    資本主義の再生産システムがグローバルに展開する一方で,小さな市場圈が地域内で完結している姿を検討することは,多くの論点を含む。本稿では,鹿児島県南薩地域の事例から,地域資源の地域的フローの形成を,閉鎖的な真空管としてではなく,巨大市場をメインシステムとする重層構造の中に積極的に位置づけた。まず,「地域主義」学派の理念と制度論的アプローチとの双方の概念を整理した上で,「地域内循環系」という重層構造の概念を図示した。ここで,経済学分析の光の届かない「コモンズ(共)」の部分の存在を指摘した。すなわち事例では,地域資源をフロー化する生産活動が,伝統的な地場産業と結び付くことで,「コモンズ(共)」的部分を残し,且つ域内の経済的・物資的循環を保ちながら外部市場と有機的に結合している。地域的フローの形成を,内発的発展の一方向として位置づけるためには,さらに踏み込んだ議論が必要とされる。
  • 石井 佳子
    原稿種別: 論文
    1995 年 1995 巻 127 号 p. 233-238
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
    現在北海道の森林組合事業は停滞期にあり,組合は国際化する木材市場への対応と合併による広域化という二つの課題に直面している。しかし現実は機能強化の進展がみられる一方で組合間には大きな格差が存在している。そこで格差の地域的要因の性質を明らかにするために類型分けを行って分析した。地域的要因としては森林の所有構造,都市化などの産業構造の変化,資源の成熟段階等がある。所有構造・産業構造によって規定される場合は資源が成熟化しても事業展開が難しい。資源が未成熟で加入面積が大きい場合は現在でも森林造成事業を大規模に行っている。この類型は資源の成熟化とともに間伐材の販売・林産事業に事業の重点が移行し格差が克服されていく。他方,加工事業の展開は資源の成熟化によるものではなく,素材生産型から段階的に移行するものとはいえない。今後の発展方向としては,画一的な広域合併ではなく,資源の脆弱さの克服や林業生産部門だけでなく多様な事業の実行,資本的機能の充実が課題となる。特に加工型の場合は停滞期からの脱出のために道内・地域市場との結びつきを強める方向に事業を転換していくことが求められる。
  • 原稿種別: 目次
    1995 年 1995 巻 127 号 p. Toc2-
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    1995 年 1995 巻 127 号 p. Cover3-
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    1995 年 1995 巻 127 号 p. Cover4-
    発行日: 1995年
    公開日: 2017/08/28
    ジャーナル フリー
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