90年代以降の北米では,野生生物保護と持続可能な経営という新たな社会的要請の中で,森林施業に対する規制が公有林のみならず私有林に対しても強まっている。本研究では,この施業規制の内容と木材生産に与えた影響について,カナダBC州,米国ワシントン州,ジョージア州を対象に調査・分析した。その結果,前者2地域の規制には共通性が見られ,共に厳しい内容となっており,伐採等のコストが大きく上昇しているのに対して,ジョージア州の規制は緩く,コスト上昇も比較的少ないことを明らかにした。しかし,施業規制が木材生産量へ及ぼした影響をはっきりと把握することはできなかった。これについては,木材生産量がBC州では安定し,ジョージア州では微増,北西部では減少していることから,資源的制約の影響が強いことが考えられる。このようなコスト上昇と資源的制約の格差が生じたことによって,製材産地としての南部の優位性が高まっており,今後の規制強化等の不確実性もあることから,林産企業は原料基盤の一部を移動・分散している。
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