まず,林業基本法の改正作業過程を概説し,次に,新たに生みだされた森林・林業基本法の解読を試みた。新基本法は,あいまいな「多面的機能」の発揮を基本的理念に掲げ,森林施業,森林管理,森林経営,林業といった鍵になる用語を不明確かつ不適切に用いているために,条文およびその意図するところが大変理解しにくいものとなっていること,また,林業と公益的な多面的機能の発揮との関係が示されていないに等しいこと,について論述した。そのうえで,森林の諸機能が持続的に発揮できるようにする森林管理(世界の潮流となっている「持続可能な森林管理」)の環境政策に踏みだしながら,手法や担い手に関する構想が貧しく,旧来の林業政策とのはざまに追い込まれた状態で存在している,と分析した。さらに,筆者自らの見解を示して林業や循環型社会をとらえ直し,林政の基調は新たな概念の林業の政策に回帰して行くはずであり,そうすべきであると主張した。
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