本研究では,中国東南沿海地域における製紙用原料林基地設立の現実の姿を明らかにするために,広西壮族自治区における4つの国内外企業を事例調査対象として,現地で聞き取り調査などを実施した。その結果,以下の諸点が明らかになった。(1)政策面での制限,植林に適する土地の分散,製紙業界内部および製紙業界と他業界の土地争奪などの諸要因が存在しているため,植林用地の取得は国内外企業ともに困難となっている。(2)国家は原料林の造成にある程度の利子補給・支援を与えている。しかし,原料林基地設立の高額な資金の必要性・ハイリスク,貸付金取得の困難性,かつ国内企業自らの資本蓄積不足のため,外資系企業と比べて,国内企業は資金調達に問題点が存在している。よって,林地使用権の譲渡に関する枠組みの整備,業界別原料林基地新設数の制限,植林に適する未利用地の製紙企業向け利用計画の策定,製紙企業に対する植林用地の優先許可をすべきである。更に非基本農地から植林用地への転換,及び分散された林地の集約化の奨励などが必要であろう。また,国内企業には自らの融資能力を強化して,外国資本と自国の民間資本との連携を活用する必要性が存在している。
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