我が国素材生産の生産性を,生産技術別樹種別に生産関数を用いて分析し,費用最小化の視点から,車両系生産システムの優位性を検討した。生産関数の分析から,架線系生産システムによる生産は規模に関して収穫逓減,車両系生産システムによる生産は規模に関して収穫一定,林内作業車による生産は規模に関して収穫逓減であることが判明した。これらの結果は,IPS単位根検定とPedroni共和分検定により,見せかけの回帰ではないと判断された。また,勾配ダミーを用いた検定の結果,樹種により,生産要素の投入構造は異ならないことが明らかとなった。さらに,費用最小化の仮定の下,車両系生産システムの優位性を検討した結果,スギ生産の場合,1事業箇所あたりの生産量が86.8m^3以上であれば架線系生産システムよりも優位性があり,11.1m^3以上の場合,林内作業車よりも優位となると考えられた。ヒノキ生産の場合,架線系生産システムとの比較では64.4m^3以上,林内作業車との比較では2.27m^3以上で優位となると考えられた。このため,費用面から考えると,ごく小規模なスギ生産以外では車両系生産システムに優位性があると考えられた。
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