本研究は,(1)再生産構造論,(2)農民層分解論,(3)再構成論について,先行研究を整理し,それにもとつく見解を提示した。再生産構造論は,日本資本主義のあり方をめぐる説明媒介として,重要な役割を果たした。農民層分解論は,農業や林業といった研究分野の特色,分解傾向の違いにより,多くの争点があり,見解も分岐している。当然,学説の数だけ再構成の方向や展望が示されてきた。しかし,その再構成や展望の案は,現状からみると明らかにかけ離れたものとなっている。それは,再生産構造と農民層分解とが関連づけされないまま論じられてきたこと,農民層分解論がそれぞれの専門分野や経済学上の立場ごとに純化されてきたことに起因する。そこで本研究は,それらを統合して再整理することを試みた。結果として,少なくとも,下記にもとづく再構成が必要になるとした。日本の農山村は,戦後,他律的再生産構造の影響によって,解体しつつある。これは,農山村の問題ではなく,外部から受けた影響の問題である。したがって再構成は,農山村だけでは不充分である。再構成は,再生産構造の戦後体系を構成し,それに癒着してきた支配階層の社会的責任であり,再生産構造的な矛盾を止揚しつつ,再生産可能な農山村のあり方を考える必要がある。
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