各地の林業公社では,経営改善に向けて,契約期間の延長と分収割合の見直しを内容とする分収造林契約の変更が進められているが,共有名義の契約では,名義人の一部が所在不明となり,契約変更を実施できない事態が生じている。林業公社を有する全ての都県に対するアンケート調査を行った結果,全国28の林業公社に,共有名義の契約が約7,500契約あり,そのうち,1/4程度が集落の権利者全員を名義人とした「慣行共有名義」,3/4程度が複数の個人所有地をまとめた「複数個人名義」であることが明らかになった。1契約当たりの平均契約者数は慣行共有名義の方が多いものの,両者の契約変更手続きの進展状況の間に大きな違いはみられなかった。近年,慣行共有名義契約の相手方の集落では,権利関係の整理のため,「認可地縁団体」を設立する動きがあり,全国28公社のうち15公社542契約で,契約相手方の集落が同団体を設立していた。一方,林業公社側では,民法による「全員同意」の原則に関わらず,一定割合以上の名義人の同意による契約変更を進める動きがあり,全国28公社のうち12公社で,このような手法がとられていた。共有物の取扱ルールは,憲法の財産権にも関連することから,当面は,極力リスクを下げながら,現実的な解決手法を模索していくことはやむを得ないと考える。
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