森林資源の持続的な利用のためには,用材や木質燃料などの木材需要を把握して安定的な供給体制を築くことが重要である。しかしながら,薪ストーブやペレットストーブ等の燃焼機器向けの木質燃料については,家庭における全国規模の燃料消費量が明らかにされていない。本研究では,家庭向け木質燃焼機器の普及状況と木質燃料の需要について,販売と消費の両面から利用量を明らかにするため,消費者である家庭と,販売者である事業者に対しアンケート調査を行った。全国の家庭における木質燃焼機器の利用率や,世帯当たりの木質燃料の平均消費量から,薪は材積で2,755千m3,ペレットは87千tの家庭での年間木材消費が行われていると推定した。この木材利用による二酸化炭素削減量は,政府の2030年度目標値に対して必要な家庭部門の年間排出削減量の1.6%に相当した。また木質燃料の販売量と消費量の比較から,薪の自家採取量や小規模事業者の販売量が多いことが推定された。本調査で推定した家庭の燃料消費量と,生産量の統計値との比較からは,薪の生産の多くが把握されていない可能性が示された。家庭での木質燃料の需要は,発電など他の木材需要と比べても無視できない量であった。
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