日本女性骨盤底医学会誌
Online ISSN : 2434-8996
Print ISSN : 2187-5669
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  • 遠藤 拓, 野村 由紀子, 黒川 一平, 中川 智絵, 岡田 義之, 重田 美和, 鈴木 直, 嘉村 康邦
    2024 年 20 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2024/04/08
    公開日: 2024/04/08
    ジャーナル 認証あり

    高齢化が急速に進行する本邦において、高齢者の骨盤臓器脱(以下POP)患者も増加している。当院における 85 歳以上の超高齢POP 患者の背景と治療成績について後方視的に調査した。2019 年4 月から2022 年3 月の3 年間に当院を受診したPOP 患者は927 例で、85 歳以上の超高齢者は78 例(8.4%)であった。POP-Q stage3 は34 例(44%)、stage4 は29 例(37%)であった。22 例(28%)では腟内装具による保存的治療の継続が困難であったために手術療法が施行されていた(腟閉鎖術17 例、経腟メッシュ手術5 例)。手術症例の併存症は、高血圧、糖尿病、心疾患、腎機能障害、深部静脈血栓症、精神疾患であった。術後入院期間の中央値は4 日(1 〜8 日)で、重篤な術中術後合併症は認めなかった。術後再発例はなく、P-QOL スコア値は術前後で有意差を認めた。当院における超高齢POP 患者はstage3 以上の重症例が多く、保存的管理が困難な場合には手術療法が選択され良好な治療成績であった。全身状態および併存症に対する適切な評価と周術期管理を行える体制のもとであれば超高齢POP 患者に対しても手術療法は検討可能であり、QOL 改善に寄与する可能性があると考える。

  • 山口 昌美, 奥口 聡美, 曽山 浩明, 吉田 剛祥, 谷口 文章, 北川 育秀
    2024 年 20 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2024/04/08
    公開日: 2024/08/23
    ジャーナル 認証あり

    症例は68歳2妊2産の女性で、骨盤臓器脱POP-Q stageⅢおよび子宮筋腫の診断にてダブルメッシュ法で腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)を施行した(手術時間:8時間45分 出血量:170g)。術後7日目に腰痛と発熱、体動困難を認め、骨盤造影CTで仙骨前面と直腸左側に膿瘍の形成が疑われた。LSC後メッシュ感染疑いの診断で、抗菌薬CMZ 2g・MINO200mg/日を投与するも軽快を認めず、メッシュ除去や膿瘍ドレナージ術を提案したところ、メッシュ除去は拒否され、腹腔鏡下膿瘍ドレナージ術のみ施行した。岬角近傍、後腟円蓋近傍の膿瘍を吸引洗浄、ドレーンを留置した(手術時間:3時間14分 出血量: 20g)。ドレナージ術後、抗菌薬をMEPM 3g・VCM 3g/日に変更投与したところ、症状は軽快し、CRPは陰性化した。膿瘍の細菌培養結果は緑膿菌であった。LSC後のメッシュ感染、膿瘍は、比較的まれな合併症であり、発熱や腰痛で発症することが多く、メッシュ除去や膿瘍ドレナージ、抗菌薬の点滴静注投与が一般的な治療とされているが、今回、メッシュ除去は施行せず、腹腔鏡下膿瘍ドレナージ術、抗菌薬点滴静注投与のみ施行し治癒した症例を経験した。メッシュ感染の原因は特定できなかったが、糖尿病合併や長時間手術、高齢などが感染のリスク因子と考えられた。

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