症例は68歳2妊2産の女性で、骨盤臓器脱POP-Q stageⅢおよび子宮筋腫の診断にてダブルメッシュ法で腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)を施行した(手術時間:8時間45分 出血量:170g)。術後7日目に腰痛と発熱、体動困難を認め、骨盤造影CTで仙骨前面と直腸左側に膿瘍の形成が疑われた。LSC後メッシュ感染疑いの診断で、抗菌薬CMZ 2g・MINO200mg/日を投与するも軽快を認めず、メッシュ除去や膿瘍ドレナージ術を提案したところ、メッシュ除去は拒否され、腹腔鏡下膿瘍ドレナージ術のみ施行した。岬角近傍、後腟円蓋近傍の膿瘍を吸引洗浄、ドレーンを留置した(手術時間:3時間14分 出血量: 20g)。ドレナージ術後、抗菌薬をMEPM 3g・VCM 3g/日に変更投与したところ、症状は軽快し、CRPは陰性化した。膿瘍の細菌培養結果は緑膿菌であった。LSC後のメッシュ感染、膿瘍は、比較的まれな合併症であり、発熱や腰痛で発症することが多く、メッシュ除去や膿瘍ドレナージ、抗菌薬の点滴静注投与が一般的な治療とされているが、今回、メッシュ除去は施行せず、腹腔鏡下膿瘍ドレナージ術、抗菌薬点滴静注投与のみ施行し治癒した症例を経験した。メッシュ感染の原因は特定できなかったが、糖尿病合併や長時間手術、高齢などが感染のリスク因子と考えられた。
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