日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
選択された号の論文の831件中201~250を表示しています
学術講演集原稿
  • 川北 憲利, 長島 啓子, 田中 和博
    セッションID: P1-037
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
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    人工林の適切な管理と林業の再生を推進するには、需要に応じた材を安定的に供給する必要があり、その方法として単木管理が有効と考えられる。この単木管理を実現する方法として、レーザー光を利用した測距器である地上レーザースキャナー(以下地上LS)を利用した森林内の計測が現在注目されている。本研究では、日吉町および府大大野演習林において、地上LSから得られたデータを解析するソフトウェアツールであるDigital Forestから得られたデータを毎木調査から得られた実測値と比較することで、地上LSの胸高直径および樹高の精度検証を行った。まず、地上LSからの距離、立木の大きさ、傾斜、斜面の上部・下部、地上型LSからの可視・不可視等の要因と、地上LSの計測値と実測値の誤差との関係を把握し、重回帰分析によって、誤差に最も影響を与えている要因を求めた。その結果、大野演習林では、立木の大きさ、可視・不可視、傾斜の順で胸高直径の誤差に影響を与えているという結果となった。また樹高誤差には立木の大きさ、距離、斜面上部・下部が影響していることがわかった。
  • 三谷 綾香, 山本 一清
    セッションID: P1-038
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
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    民生用3DカメラFinePix REAL 3D W3(富士フィルム社製)を用いた簡易的森林計測手法の開発を目的として、渡邊・山本(2013)ではテンプレートマッチング手法による立木個体抽出及び撮影点からの距離推定について検討を行った。さらに、三谷・山本(2015)では光学ズームを利用することにより、計測可能距離の拡大について検討した。しかし、これらの研究では、三脚に固定したカメラによる手動撮影が前提であり、広域での計測方法に関しては検討されていない。一方、近年自動回転雲台を併用した撮影システムが安価で利用できるようになっており、これを3Dカメラと組み合わせることにより、簡易な広域計測が可能になると考えられた。そこで本研究では、簡易的なキャリブレーション手法の再検討を行うとともに、自動回転雲台を用いた広域での立木位置図作成を行い、簡易森林計測システムとしての有用性を検討した。なお、本研究はJSPS科研費 15K07478の助成を受けたものである。
  • Zhao Jinlong, Yone Yasumichi
    セッションID: P1-039
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    Grain-for-Green Project in Ningxia of China refers to protect and improve the ecological environment by stopping farming in easily soil erosion on sloping farmlands and planting trees to recover forest vegetation.Vegetation index as an important parameter of the ground information has become a popular subject in vegetation remote sensing researches.This paper proposed a method of monitoring vegetation by using STARFM algorithm to blend Landsat and MODIS data,in order to create time series Landsat-MODIS fusion data NDVI.With the advantages of the high-frequency temporal information from MODIS and high-resolution spatial information from Landsat,it has become possible to improve the accuracy of assessing ecological effectiveness of the Grain-for-Green Project.
  • 藤木 庄五郎, 岡田 慶一, 西尾 尚悟, 長野 秀美, 北山 兼弘
    セッションID: P1-040
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
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    現在、熱帯林の大部分は二次林として成立している。中でも焼畑に由来する二次林は、小規模な森林消失と二次遷移が繰り返される結果、遷移段階の異なる植生がパッチ状に分散したモザイク状の森林として成立する。このような熱帯林モザイクの炭素量や生物多様性を広域に評価・管理していくには、リモートセンシングを用いて森林生態系を景観レベルで評価する必要がある。以上を可能にするため、本研究はマレーシア・ボルネオ島北部にある、キナバル国立公園とクロッカー山脈国立公園の2つの保護区の間にある焼畑二次林地域を対象とし、以下3つの目的に基づき行われた。1)時系列衛星を用いた熱帯林モザイクの齢(焼畑からの遷移年数)の推定アルゴリズムの開発。2)熱帯林モザイクの齢依存的な属性(バイオマスや植物群集組成)の空間分布予測。3)将来の植物群集組成の動態予測。本研究では、1)~3)の結果から、様々なシナリオ(焼畑の周期や強度、実施場所を変える)の森林動態を予測し、地域全体の炭素蓄積量・生物多様性を高めるのに最も効果的なシナリオについて考察を行う。それにより、現地住民の生活と生物多様性の最大化を両立する森林管理を検討する。
  • 小川 みゆき, 太田 徹志, 溝上 展也, 吉田 茂二郎
    セッションID: P1-041
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
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    森林の現況把握は、持続的な森林管理に重要である。近年では、安価で空中写真撮影が可能な無人航空機(UAV)の登場とデジタル写真測量技術の進展により、空中写真を用いた3次元モデル(DSM)の作成が容易となっている。そこで本研究では、UAVから撮影した空中写真と地上調査の結果を元に、林分構造および地上部バイオマス量の推定モデルを開発し、その推定精度を求めることを目的とした。まず、研究対象地である大分県長期育成循環施業モデル団地において、UAVによるデジタル空中写真の撮影と地上調査を実施した。撮影したデジタル空中写真をSfMソフトウェアであるPhotoScan (Agisoft社, Russia)で処理し、DSMを作成した。DSMと地表高モデル(DEM)の差分から林冠高モデル(DCHM)を求め、DCHMから各地点の最大樹高や平均林冠高などの林分構造の指標を求めた。同様に、地上調査の結果から各地点の胸高断面積合計や平均樹高、地上バイオマス量などの指標を求めた。求めた指標と林分構造因子との間で回帰分析を行い、林分構造推定モデルを作成した。また、作成したモデルから各林分構造因子の推定精度と推定する際に有効な指標を明らかにした。
  • Mochamad Candra Wirawan Arief, Akemi Itaya
    セッションID: P1-042
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    In order to detection of coastal vegetation changes in Banda Aceh after the 2004 tsunami, the high resolution images were analyzed using the Object-based image analysis. The 2004, 2009, 2011 and 2013 images were downloaded from Google Earth Pro (4800 x 3318 pixels), and they were mosaicked as one image for each year (RGB, 28800 x 33180 pixels). After they were divided 12 classes based on RGB brightness values and texture of R, using the feature analysis extension of ERDAS 9.3, we identified their categories. Although we wanted to detect tree area around waters, it was difficult to classify paddy fields and fish ponds.
  • 石井 宏一郎, 図師 光聖, 吉野 聡, 佐藤 孝吉
    セッションID: P1-044
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    製材所経営において、製品の原料となる素材の確保は供給先への定時、定量的な供給を行う上で重要である。その際に、製材所としては森林の位置や分布、蓄積といった森林資源そのものに関わる情報や、森林資源から丸太を生産する所有者や素材生産者、同業者の情報、伐採制限や補助金などの制度的な情報が必要になる。これらの情報の提供元としては、各地域の森林組合や国、地方自治体などの公共機関が挙げられる。これらの組織体は、森林資源情報を製材所に提供することで、製材所経営を補助的に支援していることになる。そこで、本論文の目的は、製材所の経営者が提供された情報を元に経営方針を決定する上で、どのように情報を活用するかを検討した。本論文では、北海道森町に位置するA製材所を事例として取り上げる。北海道の公共機関から提供された森町の森林資源情報と、聞き取り調査によって把握した製材所が必要としている情報を森林GISを活用して重ね合わせ、製材所における森林資源情報の有効的な活用を検討した。
  • 鈴木 洸明, 龍原 哲
    セッションID: P1-045
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、隣接する地域を管理する2つの森林組合の経営方針の違いが、スギ人工林の収益に与える影響について考察した。山形県鶴岡市旧温海町を管轄する温海町森林組合は、製材品・構造用集成材を製造する工場を主要な需要先としており、安価な丸太を大量に安定供給することが要求されていた。このため高密度の路網作設や車両系高性能林業機械の導入、採材する丸太の種別を絞るといった、低コスト伐出システムに力を入れていた。一方、県境を挟んだ新潟県村上市旧山北町を管轄する村上市森林組合は、前出の需要先に加えて、高価な造作用集成材を製造する工場も需要先に持つことから、単価の高い高齢級大径材をできるだけ多く生産するような採材を行っていた。このように隣り合う地域でありながら、両森林組合はそれぞれの地域の需要を反映した経営方針を採用しており、その方向性は全く異なっていた。この2つの経営方針の下、単位面積当たりの金員粗収穫を最大化する採材シミュレーションを行った。さらにそれぞれの伐出システムに即した費用計算を行い、単位面積当たりの森林純収益が様々な条件によってどのように変化するのか考察した。
  • 石橋 早苗, 長島 啓子, 田中 和博
    セッションID: P1-046
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
     近年,木質資源をバイオマスエネルギーとして利用することへの関心が高まっており,京都府京丹後市では森林整備促進・木質バイオマス利用促進事業を実施し,散在する人工林を整備する際にその周辺の広葉樹林を里山林として利用する取り組みを開始しているが,その採算性を把握できていないのが現状である。そこで本研究では,京丹後市内の人工林及び広葉樹林を対象に,GISのネットワークアナリストを用いたコストシミュレーションを行い,採算性の観点から搬出間伐作業の生産性向上の可能性を探る事を目的とした。 まず,京丹後市で行われた人工林及び広葉樹林の搬出間伐作業をビデオで記録し,各作業の処理時間と処理された材積から各作業の生産性を求めた。次に,GIS上に集材ラインや土場等のデータを構築し,ネットワークアナリストを用いて集材及び輸送のシミュレーションを行い,土場の貯木量,フォワーダ等の走行距離,走行時間を算出した。そして,得られたデータからコストシミュレーションを行い,採算性を求めた。その結果,人工林に関しては木寄作業の生産性の向上が,広葉樹林に関しては伐採及び玉切り作業の生産性の向上が採算性の向上に必要だと考えられた。
  • 吉永 生, 長島 啓子, 田中 和博
    セッションID: P1-047
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    森林の整備や木材生産の効率化を目的とした、森林・林業再生プランの中で、効率的な集材を行うために高密度路網が推奨されているが、高密度路網地での作業の生産性や施業コストについての研究がなされている事例は少ない。そこで本研究では、高密度路網が作設されている京都府綾部市志賀郷町有林を研究対象地として、人工林搬出間伐作業の生産性と施業コストについてGISのNetwork Analystを用いて把握することを目的とした。まず、志賀郷町有林で行われた人工林搬出間伐作業をビデオで記録し、各作業の作業時間と処理された材積から各作業の生産性を求めた。そして同町有林の路網データと森林簿から、GISを用いて搬出間伐可能な人工林の蓄積量を算出し、Network Analystを用いて集材・輸送シミュレーションを行い、各作業における作業時間を算出することで施業全体のコストを算出した。その結果、高密度路網地での施業コストは集材・造材の生産性と使用機械に大きく影響されること、また路網開設費を施業コストに加えると1年目は大幅にコストが増加することが分かった。今後は同じ路網を用いた同施業地における将来的な採算性の予測を行いたい。
  • 廣瀬 裕基, 川田 伸治, 松村 直人
    セッションID: P1-048
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
     三重県菰野町では、森林保全整備を目的に、町内の間伐未利用材を活用した地域内エネルギー循環システムの構築を目指している。町内全域の森林賦存量及び間伐施業範囲内での森林資源量の推定値を算出するために、平成26年度に森林簿データに基づいて推定を行った。同時に、典型的な森林タイプを抽出し、現地での林分調査を行う中で、森林簿データの欠損や未更新箇所が散見され、森林資源量の推定精度の向上が課題となっている。 一方、菰野町では、平成20年度から“特定間伐等促進計画”事業が進められており、森林施業が優先されるエリアを中心に間伐が行われてきた。当事業の実施に当たっては、間伐実績データとして、搬出材積量や間伐履歴位置図、標準地内の毎木調査データ等が記録されている。そこで本研究では、過去の間伐実績データを用いることで、菰野町における地域内エネルギー循環システムに利用可能な森林資源量の推定精度の向上を試みる。また、森林簿データと間伐実績データの比較検証を行う。
  • 池田 正, 太田 徹志, 岩永 史子, 福本 桂子, 吉田 茂二郎, 保坂 武宣, 作田 耕太郎, 井上 昭夫, 溝上 展也
    セッションID: P1-049
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    作業効率がよく、森林の公益的機能の発揮も期待できる帯状複層林施業が注目されている。しかしながら、いまだ造成事例が少なく、下層木の成長等に関して研究の蓄積は十分ではない。そこで、植栽後6~9年経過した皆伐区と帯状択伐区のヒノキ植栽木成長を比較し、帯状複層林の下層木に一斉林と同等の成長が見込めるか検討した。2011年から2012年にかけて、約15m幅の帯状択伐後にヒノキが植栽された林分16点、皆伐後にヒノキが植栽された林分5点に、固定試験地を設定し、樹高と根元直径を測定した。2015年に再度測定を行い、各調査地点の樹高と直径の定期平均成長量を求めた。求めた定期平均成長量を目的変数、期首樹高、期首直径、伐採方法、斜面方位を説明変数とする一般化線形回帰分析を行い、AICによるモデル選択を行った。結果、全ての説明変数を含むモデルが選択された。さらに、選択されたモデルによる成長量予測したところ、帯状複層林の下層木は一斉林と比べて、樹高の成長量が0.03(m/year)、直径成長量が0.19(cm/year)下回ることがわかった。以上の結果から、帯状複層林の下層木は一斉林と比べて成長で下回ると結論付けた。
  • 伊藤 一樹, 太田 徹志, 溝上 展也, 吉田 茂二郎
    セッションID: P1-050
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    近年、森林資源の成熟が進む一方で管理不十分な森林の増加が問題となっている。このことから、森林のもつ公益的機能と木材生産機能の両者を十分に発揮できるような資源の適切な利用が求められている。この資源の利用にあたって、わが国は森林計画制度等により複層林化を推進している。群状択伐施業は複層林施業のひとつであり、帯状択伐施業とともに作業効率等優れる択伐方式として注目されている。この群状択伐施業の有用性をさらに検討するためには、下木の成長や競争関係について長期的に評価し、将来的な収穫予測が可能なモデルの構築が必要であると考えられる。そこで本研究では宮崎県椎葉村住友林業社有林と大分県由布市湯布院町九州電力社有林の群状択伐地に植栽されたスギを用いて下木の樹高と直径それぞれの期間成長量についてモデリングした。その際に、上木との競争関係が下木の成長に影響を持つことが予想されるため、数種類の距離従属型競争指数を用いて成長モデリングを行った。これらのモデルの推定精度を比較することでモデル選択をすると共に下木の成長に影響を与える要因を検討した。
  • 谷口 寛昭, 太田 徹志, 保坂 武宣, 岩永 史子, 福本 桂子, 吉田 茂二郎, 作田 耕太郎, 井上 昭夫, 溝上 展也
    セッションID: P1-051
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    近年、針葉樹人工林を広葉樹林や針広混交林へ誘導する技術の確立が求められている。そこで本研究では、作業効率の高く、伐採直後の公益的機能発揮にも優れる帯状伐採に着目し、帯状伐採を利用した天然更新の可能性を検討した。大分県長期育成循環施業モデル団地内に存在する帯状伐採区を対象とした。帯状伐採区の中心付近に、0.0016haの固定プロットを設置し、樹高0.5m以上の個体の樹種、樹高、測定可能な場合は胸高直径を測定した。同時に、帯状伐採区の帯幅、保残木の樹種および、帯状伐採後の経過年数を記録した。加えて、GISを用いて、各帯状伐採区から近接広葉樹林までの最短距離、帯状伐採区の方位角を求めた。測定結果から、各プロットの高木性樹種の出現数を求め、これを天然更新の進捗状況とみなした。高木性樹種の出現数を従属変数、帯状伐採区の帯幅、経過年数、保残木の樹種、広葉樹林までの距離、方位角を独立変数とする一般化線形回帰分析を行い、年々更新の進捗状況に影響をあたえる要因を探った。その結果、天然更新の進捗状況は帯幅、保残木の樹種、経過年数に影響されることが分かった。
  • 永竹 翔太, 尾張 敏章, 福士 憲司, 笠原 久臣, 渡邉 良広, 井口 和信, 犬飼 浩
    セッションID: P1-052
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    ウイスキー樽用資材として国産ミズナラ材の需要が近年高まっている。樽材生産に適した径級や形質を持つミズナラ立木は、天然林内にごく少数が点在して生育する。熟練した森林技術者が樹幹の外観を観察し、長年の経験をもとに樽材適性を評価・判定した上で収穫木を選定している。これまで、天然生ミズナラ立木の樽材適性評価は技術者個人の暗黙知にとどまり、客観的な選木基準は明らかでなかった。そこで本研究では、熟練技術者によるミズナラ樽材候補木選定調査のデータを分析し、ウイスキー樽材適性評価に関する暗黙知の表出化を試みた。調査は東京大学北海道演習林の57林班で行った。胸高直径40 cm以上のミズナラ立木計744本のうち、95本が樽材適性有りと判定された。胸高直径と枝下高、樹幹外観の特徴(ねじれ、曲がり、傷、腐れ、コブ、枝・節)が樽材適性の有無に及ぼす影響を一般化線形モデルにより解析した。解析の結果、枝下高が高く、ねじれのないミズナラを樽材候補木として選定する傾向が認められた。一方、胸高直径および曲がり、コブ、傷、枝・節については、樽材適性の判定において有意な効果が検出されなかった。
  • 松永 宙樹, 斎藤 仁志, 大塚 大, 守口 海, 大矢 信次郎, 植木 達人
    セッションID: P1-053
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
     近年,長野県内ではカラマツ材の需要が増加しており素材生産量も右肩上がりの状態が続いている。また,林業のサイクルの中で造林や下刈りといった保育経費は全体の8割に上るといわれ,植栽費用の削減が期待される天然更新への注目が高まっている。本研究では,カラマツ天然更新林分の構造が間伐時の生産性および価格評価に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 今年度,長野県北佐久郡御代田町にある浅間山国有林カラマツ天然更新試験地において列状間伐が実施された。作業前に対照として設けた人工林も含めて標準地調査を実施し,林分情報を把握した。さらに作業時にビデオカメラによる功程調査を実施するとともに,山土場および木材センターで選木された材の用途割合と,それぞれの価格把握を行った。 K関数法を用いた立木配置評価の結果,林分構造はそれぞれでやや違いが見られたものの,直径階や歩留りのバラつきおよび平均値に有意差は認められなかった。時間解析の結果,作業時の生産性は人工林でやや高かったが,伐採率および選木,用途割合と取引価格反映の結果,販売総額に対する間伐時の主作業費は天然更新林分の方がやや低く抑えられる結果となった。
  • 嶌田 栄樹, 藤野 正也
    セッションID: P1-055
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    日本林業では近年、林業所得の低迷や林業従事者数の減少が生じている。これらの改善のためにはコスト削減や労働時間の短縮による生産性や効率性の向上が必要である。生産性は「1人の労働者が1日にどれだけの木材を生産できるか(㎥/(人・日))」を表す指標である。それに対し、効率性は「現在の生産が最適な生産状態をどの程度達成しているか」を表す指標であり、複数の産出要素と投入要素とで評価することができる。これら生産性・効率性向上の有効な手段の一つとしては、日吉町森林組合で誕生した提案型集約化施業が挙げられる。林業分野では生産性の議論は盛んにされるが、効率性に言及するものは少ない。そこで、本論文では日吉町森林組合を対象に提案型集約化施業の効率性分析を行う。分析の1段階目として47箇所の団地の効率性をDEAによって評価する。続く第2段階目では、DEA効率値を被説明変数とした重回帰分析を行う。重回帰分析のモデルは、最小二乗法を用いた通常の回帰モデルとトービットモデルとの2種類を用いる。
  • 中田 知沙, 板谷 明美
    セッションID: P1-056
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    三重県津市の人工林から,三重県に建設予定の3つの木質バイオマス発電所に森林資源を供給する際の課題を明らかにするために,両地点間のアクセシビリティを分析した。アクセシビリティは,木質バイオマス発電所の位置から,1kmメッシュで三重県津市を覆ってその中心点にスギ・ヒノキ人工林が存在する場所への距離および時間をGoogle Mapの経路検索機能を用いて測定した。Google Mapに路網のデータがなく,計測できなかった公道から林内までの距離は直線距離で計算した。その結果,津市内のスギ・ヒノキ人工林からの平均輸送距離は32.74~40.60kmで,平均輸送時間は0.90~1.14時間(公道部分のみ)であった。このうち公道から林内までの平均直線距離は0.35~0.36kmであった。これらの領域から森林資源を供給するためには,林道や架線集材などを整備する必要があると考えられた。また,3つの発電所は近距離に位置しており(6.30~19.42km),森林資源の供給が容易な人工林が重複する傾向がみられた。これらの領域では,過伐採が心配された。
  • 狩場 晴也, 近藤 稔
    セッションID: P1-057
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    平成24年に再生可能エネルギーの固定買取り制度が導入され、日本各地で大規模な木質バイオマス発電施設の計画が進められているが、未利用間伐材等の安定的な確保や熱利用の導入の観点から、小規模分散型の木質バイオマスのエネルギー利用が今後普及していくことが必要であると考えられる。そして、森林資源の持続的かつ無駄の無い利用を考えたとき、小規模林産による未利用材等の木質バイオマスの収集は、地域内の小規模分散型の施設への供給において重要な役割を担うことが予想される。近年では、「木の駅プロジェクト」と呼ばれる素人でも木材販売が容易であり、気軽に木材搬出が可能となる取組が全国で広がっている。毎年約400tを安定して搬出している地域も存在し、木質バイオマスの安定供給に大きく寄与することが期待される。しかしながら、木の駅プロジェクトで実際に行われている搬出方法等の作業実態は明らかにされていない。そこで本研究では、東海地方での木の駅プロジェクトで行われている木材搬出について、特に木寄せ・集材作業に注目し、作業方法に関する聞き取り調査と労働生産性に関する調査を行った。
  • 大塚 大, 斎藤 仁志, 守口 海, 植木 達人
    セッションID: P1-058
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    近年の森林経営において大きな課題である初期保育コストを軽減するにあたり、漸伐作業は有効な作業法の一つであると考えられる。しかしながら、更新を完了する作業である後伐時には、上木の伐出にともなう更新木の損傷が避けられず、面的なギャップが生成されてしまうなど、複層状態での伐出に関して解決すべき課題が未だに残っている。これら更新木の損傷は伐倒木との接触が原因であり、伐倒方向を集中させることで損傷の発生箇所を誘導できると考えた。そこで本研究では、最大到達距離が少なくとも伐倒木の樹高程度となるよう集材線を設置し、梢端がそこで接地するように伐倒方向を指定して終伐を行った。作業システムは、伐倒・枝払いをチェーンソー、集材をウインチ、造材をプロセッサ、運材はフォワーダである。その結果、更新木の損失を集材線に集中させることができた。一方で、集材線から最大14mの幅で損傷が発生した。これについては、損傷の要因として大きいと考えられる伐倒木の樹冠を集積させることで、より局所的に損傷の発生を誘導できる可能性が示唆された。
  • 亀山 翔平, 井上 公基, 吉岡 拓如
    セッションID: P1-059
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
     現在、我が国では長伐期施業に伴う高齢級の人工林の増加による立木の大径木化が進んでいる。大径材は、丸太生産過程においても伐倒作業時に使用する林業機械が制約されることや、木材として使用される範囲が狭まるなどの課題もある。そのため大径材の価格が小・中径材丸太より安くなるという報告もある。そこで本研究は、ある地域の木材市場の資料を基に径級別価格及び取扱量について大径材と小・中径材との比較検討を行った。その結果、スギ3m材および4m材の径級別価格は、平成18年度から同27年度までのすべての年度において、大径材が小・中径材よりも高値で取引されていた。また、取扱量については、3m材ではどの年度においても小・中径材が大径材よりも多く取引され、4m材の大径材は小・中径材よりも多く取引される年度も見られた。大径材は小・中径材より価格が安いとも言われているが、本調査結果では大径材は小・中径材よりも高価であると同時に、大径材の価格や取扱量は、年度や時期によって大きく変化することがみられた。今後も大径材の取扱量は増加傾向で推移し、さらに高価格で取扱われていくものと考えられる。
  • 細谷 椋子, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: P1-060
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    菌根の周囲は根と菌糸の両方からの浸出物に影響を受けており、菌根圏土壌と呼ばれている。菌根圏土壌には特異的なバクテリアが存在し、植物根に対する作用により、植物の生育に影響を及ぼすとされている。本研究では、人工林において根圏バクテリアの群集を把握する事を目的として調査を行った。対象樹種は、アーバスキュラー菌根を形成するヒノキと外生菌根を形成するカラマツとした。 東京農業大学奥多摩演習林に生育するヒノキとカラマツをそれぞれ3本ずつ選定し、2カ月に一度、根と非根圏土壌を採取した。採取した根端と非根圏土壌からバクテリアをYG培地で培養し、出現したコロニー数を調べた。その後、ランダムにコロニーを選択し同定した。 根端ではBurkholderia属がどちらの樹種でも最も多くみられた。根端と非根圏に出現した属数を比較すると根端のほうが有意に少なく、根端が特定のバクテリアの生育に適した環境であることが推察される。また、類似度で見た場合はヒノキの根端のバクテリア群集は類似しているといえる。菌根菌種とバクテリア群集は関連がある可能性がある。
  • 渡邉 啓太, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: P1-061
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    菌根菌には根外菌糸以外の感染方法として、土壌中に存在する埋土胞子がある。埋土胞子は共生関係にある樹種の根が発根することによって発芽し、菌根を形成すると考えられている。本研究では、ヒノキ林において、広葉樹を導入する際の足がかりになることを考え、外生菌根性樹木からの距離による埋土胞子の感染率の違いを調べた。 東京農業大学奥多摩演習林及び山梨県小菅村で各地点2方向ずつヒノキ林と広葉樹林の境界でライン上に、土壌を採取した。採取土壌は菌糸を死滅させるため風乾した後、アカマツ実生を用いた釣り上げ試験を行った。6ヶ月間生育した後,実生の菌根形成と成長測定を行った。 菌根形成率はヒノキ林内と比較を行ったところ広葉樹林内の方が有意に多く見られた。ヒノキ林内で確認されたのは、Cenococcum geophilumRhizopogonの2種であった。実生の成長では菌根の有無によって地下部の重量・根長に差が出ることが示唆された。境界から10m先まではCenococcum geophilumが菌核によって侵入できている可能性がある。
  • 白川 誠, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: P1-062
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
     土壌環境、特に植物根圏には多様な微生物が生息することが知られている。本研究では、落葉針葉樹であるカラマツLarix kaempferi、宿主植物と共生関係を結ぶ外生菌根菌、そして根圏バクテリアの三者により構成される根圏微生物相に焦点を当て、これら根圏に存在するバクテリア群集についてDNA解析を用いた調査を行った。 東京農業大学奥多摩演習林内のカラマツ人工林においてカラマツ成木20本を選出し、その根端及び根圏土壌から採取した培養可能なバクテリアについて16SrRNA領域のシークエンスを行った結果、394サンプル、16科27属のサンプルを得た。採取箇所ごとに得られたバクテリア群集を非計量多次元尺度法(NMDS)を用いて序列化したところ、根端と根圏土壌で群集構造が異なり、根端はBurkholderia属及びCollimonas属、根圏土壌はBacillus属及びStreptmyces属によって特徴づけられた。
  • 吉澤 潤也, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: P1-063
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    外生菌根菌の接種がアカマツ実生の成長並びに根圏バクテリアに及ぼす影響吉澤潤也・上原巌・田中恵(東京農大)外生菌根菌は,宿主植物と共生関係を結び光合成産物を受け取る代わりに土壌養分や水分を供給し,乾燥や土壌病原菌から根系を守り,成長を促進するなどの役割を担っている.菌種による成長促進効果の違いを調べるため,無菌播種2ヶ月のアカマツ実生に培養菌株を接種して半年間育成した.実生は生重量,乾燥重量,茎長,根長,菌根数,細根数,菌根形成率を測定した.また,菌根からYG培地を用いて根圏バクテリアを分離し種を推定した.菌株は,キツネタケ,ウラムラサキ,クロトヤマタケ,ケショウハツ,ヌメリイグチ,チチアワタケ,アミタケ2株,コツブタケ3株,Cenococcum geophilum.の12株を用いた.計171個体について調べた結果,Cenococcum geophilum,クロトマヤタケ,ウラムラサキがアカマツ実生の成長を有意に促進していた.また,地上部の生育を促進する傾向があるものや,地下部バイオマス量に関与するものなど,菌種によって成長促進部位が異なっていた,根圏バクテリアは,Burkholderia属,Rhizobium属が出現種数の大半を占め,菌根形成率が低いほどコロニー数が多くなる傾向がみられた.
  • 渡邊 裕太, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: P1-064
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    一般に樹木菌根は土壌中で菌が根に感染することで形成され、養分の受け渡しをするなどの役割が知られている。これらの働きは実生の生残や成長にも重要な役割を果たしていると考えられる。そこで、実生への菌根菌感染はいつ行われ、どのような菌根菌相を持つのか明らかにするために、有用広葉樹であるミズナラ実生を対象として調査を行った。東京農業大学奥多摩演習林と山梨県小菅村鶴峠付近のミズナラ林で2015年2月からミズナラ実生を採取した。採取した実生の根から菌根の特徴ごとに形態的分類を行いその後DNA解析による菌根菌の種推定を行った。実生1本あたりの菌根数は100~200個程度が多く見られた。一方感染していなかった個体は1本のみで他はすべて感染が確認された。これにより自然下ではほぼ確実に菌根菌に感染すると考えられる。未感染の個体も発芽後あまり時間がたっていなかったためであると思われる。今回確認された菌種は、TomentellaRussulaSebacinaCenococcum geophilmLaccariaLactariusInocybeAmanita 等に属していた。
  • 亀田 悠人, 大澤 晃, 仲畑 了
    セッションID: P1-065
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    細根は生産と枯死の周期が短いと考えられるため森林生産量への寄与が大きく、森林炭素循環を理解するうえで細根動態の把握は欠かせない。本研究では、細根動態推定を簡略化する方法の可能性を考え、地上部と細根の成長に相関があるか吟味した。滋賀県大津市のコナラが優占する二次林「龍谷の森」1林分で調査を行った。細根生産量の推定にはスキャナ法を用いた。防水加工したスキャナ5台を林内に埋め、およそ1週間に1度の頻度でスキャンを行って得た画像データについて、スキャンされた細根の投影面積の1期間内の増加量を積算して細根生産の指標とした。これを、毎木調査から推定した各年の地上部バイオマス増加量と比較した。2013年、2014年、2015年の地上部バイオマス増加量と、2013年(12/10~13/09)、2014年(13/10~14/09)、2015年(14/10~15/09)の積算細根生産面積との間に、有意な負の相関が見られた。林内の状況は年によって大きくは変わらないと考え、年間の光合成生産物量にも大差はないと仮定すると、一定の資源を各部位に分配することになる。今回の結果から、地下部と地上部との間にその年の光合成生産物量の利用に関してトレードオフの関係があると推測できる。
  • 米山 隼佑, 紙谷 智彦, 城向 勇男, 古市 ゆかり
    セッションID: P1-066
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    クロマツに代わる海岸砂丘の保安林樹種として高木性常緑広葉樹が植栽される機会が増えているが,植栽1年目の活着不良が問題になっている。新潟海岸では,マツ枯れが進行し落葉高木が侵入しつつある多様な林冠下に,クロマツ代替種としてタブノキが 2015年3月に試験植栽された。植栽方法は,【深鉢ポット・普通ポット】×【従来植栽・パーライト植栽・むしろ伏せ植栽】の計6通りである。本研究は,これら植栽木1023本を対象に,すべての植栽位置で測定した環境要因(光環境と土壌環境)と植栽方法の違いが活着に及ぼす影響を明らかにした。光環境は曇天日に光合成有効光量子束密度の相対値を,土壌環境は 8月上旬の真夏日における地表下10cm の地温と土壌水分を測定した。その結果,環境要因では,光量が少なく,地温が低く,土壌水分が高い植栽木で生残率が高かった。植栽方法では,普通ポットよりも深鉢ポットで生残率が高く,パーライト植栽>むしろ伏せ植栽>従来植栽の順に生残率が高かった。当年度の生育期終盤では,混交林の林冠下で,光量が少なく,地温が低く,土壌水分が高い条件で生残率は高かった。植栽方法では【深鉢ポット×パーライト植栽】で95%が生残していた。
  • 中山 美智子, 紙谷 智彦, 古市 ゆかり, 城向 勇男
    セッションID: P1-067
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    マツ枯れの進行とともに広葉樹が侵入した海岸林の再生手法のひとつとして、新潟県では常緑広葉樹による天然更新施業の方法を検討している。本研究は、クロマツの枯死が著しい林分を常緑広葉樹が優占する海岸林へ誘導するために、天然更新したシロダモの稚樹と成熟木の密度、シロダモ稚樹の成長特性を明らかにすることを目的とする。シロダモの天然更新が良好なマツ枯れ激害林分に設置した1haの調査プロットを5mメッシュで区分し、樹高30cm以上の稚樹と成熟木の分布、林冠条件が異なる林床に更新した稚樹の成長特性を調べた。出現した稚樹は6600本で、樹高頻度分布は典型的なL字型を示したが、密度分布に偏りがあった。成熟木は75本/haと現時点では少なかったが、稚樹の生育にともなって林冠占有率の上昇が予測された。成長解析の結果から、シロダモ稚樹は樹高30cmから50cmの下位集団と樹高50cm以上の上位集団それぞれについて、平均15cmと21cmの高さで成長が良好に転じたことから、草本層と低木層を除去すれば、稚樹の成長が促進され、林冠層への加入が促進できる可能性がある。
  • 横山 翔一, 戸田 浩人, 崔 東壽
    セッションID: P1-068
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    近年海岸林では震災による一斉倒壊やマツノザイセンチュウ病の蔓延を理由に広葉樹を導入する動きがある。しかしながら広葉樹がクロマツに代わって海岸林として十分な機能を発揮できるか、さらには海岸環境下で生育可能かについての知見が不足している。本研究はクロマツ、タブノキ、さらに広葉樹の中でも一般的に耐潮性が低いとされながらも造成樹とされている落葉樹(コナラ、クリ、ケヤキ、ヤマザクラ)の苗木を対象に塩水吹付による耐潮性試験を実施した。試験は2014 年6月から東京農工大学のキャンパス内で行い、塩ストレスによる影響を成長量、生理障害、可視被害の観点から昨年の1年目の発表に引き続き2年目を評価した。2年間を通じてクロマツ、タブノキ、落葉樹の順で耐潮性が強かった。これら3分類間では葉面に付着したNaの葉内への侵入率が異なり、Naの吸収状況から耐潮性の違いが示すことができた。また落葉樹4種間ではコナラが各項目で成長阻害の程度が比較的小さく、落葉樹の中では耐潮性が優れており、ケヤキとヤマザクラは葉縁の黄化および枯れる現象がみられ、可視被害の程度が大きく、耐潮性が低いと考えられた。
  • 熊井 沙緒理, 高橋 一秋
    セッションID: P1-069
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    東日本大震災後の盛土地に造成する海岸防災林の種多様性を高める植物材料として土壌埋土種子が有効となる可能性がある。この仮説の予備実験として、土壌埋土種子の種構成および光環境が発芽とその後の成長に与える影響を調査した。宮城県山元町の海岸防災林から約4km離れた町内の山林と約25km離れた白石市の山林で採取した土壌をプランター16個に蒔き出したのち、4つの光環境下(遮光率:0%、22%、50%、75%)に設置した。発芽した実生は個体識別し、2年間モニタリングした。草本は73種532個体、木本は34種383個体の実生が確認され、2つの土壌採取地に共通する種は草本・木本ともに7種類のみと少なかった。ある特定の光環境下でのみ発芽した種は草本で39種、木本では15種であり、全種の約半数を占めた。一元配置分散分析とTukeyHSDの多重比較を行った結果、発生実生の個体数と種類数は山元町産土壌では遮光率22%と50%でともに高い値を示す傾向が認められたが、白石市産土壌では光環境による違いは認められなかった。3つ以上の光環境下で発芽した木本を対象に、幹の長さと根元直径の光環境に対する反応を分析したところ、種類によってその反応は異なっていた。
  • 大熊 紗織, 高木 正博
    セッションID: P1-070
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    森林を構成する樹種は気候や地形、他の生物種などの様々な要因と関連があるため、分布や生態特性について多くの研究が行われている。成木の分布を規定する樹種特性の解明には、種子発芽や実生の定着およびその後の成長が大きく関係する。そのため実生の環境応答を調査した研究が多く行われている。しかし、日射量や雨量などは年変動を示すため実生成長が毎年同様の傾向を示すとは限らないと考えられる。そこで本研究では暖温帯林の主な構成樹種であるブナ科アカガシ亜属3種(アラカシ・イチイガシ・ウラジロガシ)について、2014および2015年の各当年生実生を対象に異なる光および土壌水分環境下での初期成長の違いを調査した。その結果、3種とも2014年と2015年で異なる成長傾向が確認された。光環境は、2015年7月の日射量が2014年の同月よりも3割以上低かった。また、土壌水分環境は、2015年の6月から10月にかけての乾燥処理における土壌含水率が2014年の同期間に比べて高い値で推移した。以上の結果をふまえて、実生の成長傾向と光環境及び土壌水分環境の年変動との関係性について考察した。
  • 小川 大知, 戸田 浩人, 崔 東寿
    セッションID: P1-071
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    シオジは関東以南太平洋側で主要な渓畔樹種の良質材が得られる落葉広葉樹である。天然生シオジは伐採により蓄積が減少し、後継樹となる稚樹の育成が課題である。シオジ母樹下では稚樹が矮小化し後継樹育成は困難だが、隣接するスギ林内で良好な成長をしている稚樹が見られると報告されている。そこで本研究ではスギ林内でのシオジ稚樹生育に適した立地条件、特に林内光環境と土壌水分量を調査した。群馬県みどり市東京農工大FM草木にて、沢筋にシオジ林かつ側方斜面にスギ林が存在し、両林内にシオジ稚樹が生育している林地4箇所とシオジ皆伐植栽地1箇所を調査地とした。沢岸から斜面上部に向かって帯状調査地を設置し、沢からの距離別プロットでシオジ稚樹の生育状況、相対照度およびTDR法による土壌体積含水率の調査を行った。また、各帯状調査地のシオジ林、スギ林斜面下部、スギ林斜面上部の3群から1~3本のシオジ稚樹の樹幹解析と採土円筒を用いた土壌三相組成・最大容水量の測定を実施した。結果、相対照度の高いスギ林内斜面下部でシオジ稚樹の生育が良好であった。発表では樹幹解析や土壌物理性の結果も含めシオジ稚樹生育に適したスギ林内の立地条件を考察する。
  • 日暮 悠樹, 谷口 真吾, 松本 一穂
    セッションID: P1-072
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】亜熱帯広葉樹林の天然下種更新地での微地形の違いが更新実生の動態に及ぼす影響を4成長期間、継続的に調査した。【方法】調査地は、沖縄島北部の70年生常緑広葉樹林(2011年10月に4.8haを皆伐)と伐採地に隣接する残存林である。調査は、残存林内の林床と伐採面の微地形(凹、凸)ごとの林床に実生調査プロット(凹斜面16㎡、凸斜面16㎡、林内12㎡)を設置し、2012年から2015年までの成長期ごとに林床に発生した実生をナンバーリングした。【結果と考察】更新実生の凹斜面での出現種数は成長期ごとに増加し、遷移後期種の定着が年々増加した。凹斜面の成長期ごとの出現本数は凸斜面に比べて1.3から1.9倍多かった。一方、更新実生の凸斜面での出現種数は4成長期とも凹斜面よりも多かった。凸斜面の出現本数は4成長期とも凹斜面、林内よりも少なかった。凹、凸斜面における更新実生の平均樹高は成長期ごとに常に凹斜面が凸斜面よりも高かった。また、凸斜面は凹斜面に比べて、更新実生の成長が遅い傾向であった。この結果、凹斜面は凸斜面に比べ、遷移後期種が新規に加入、定着後に成長しやすい環境であると推察された。
  • Yamazaki Haruka, Yoshida Toshiya
    セッションID: P1-073
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    Natural regeneration practices are significant for cost-effective management, but they are associated with difficulty in controlling species composition. Among various factors, soil properties (such as water content and nutrient) would be significant because they are drastically changed by the practice especially when heavy machinery is applied. We therefore evaluate influences of different machinery practices on vegetation development during the initial 3-years, with emphasis on changing soil properties. There were no significant relationships of soil properties with the number of seedlings germinated. However, at the later stage (3rd year), practices with leaving surface soil resulted in more herbaceous dominant vegetation. The possible mechanisms to produce the pattern, including difference in responses between herbaceous and tree species, are discussed.
  • 福本 桂子, 太田 徹志, 溝上 展也, 吉田 茂二郎, 寺岡 行雄, 加治佐 剛
    セッションID: P1-075
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    持続可能な林業経営を行う上で,初期育林コストの削減は重要な課題である。その中でも下刈り回数の削減に注目が集まっている。下刈り回数を削減した場合,雑草木が成長し1回当たりの下刈り作業量が増加する可能性があるため,結果として下刈り回数の削減が初期育林コストの削減につながらないことも考えられる。しかし,下刈り回数を省いた場合の作業量について研究された事例は少ない。そこで本発表では,下刈り実施回数およびスケジュールの異なるスギ幼齢林分を対象に,雑草木群落高,スギの樹高,植栽密度を説明変数とする下刈り作業量モデルの構築を試みた。また,構築したモデルを用いて下刈り実施スケジュール別の下刈り作業量を推定したので,その結果を報告する。
  • 新保 優美, 平田 令子, 伊藤 哲
    セッションID: P1-077
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    コンテナ苗は培地と一体化した根系を持つことから、植栽時にストレスを受けにくいとされている。このような特徴を持つコンテナ苗は植栽時期を選ばず、夏季の植栽も含めた伐採-植栽一貫作業への適用が期待されている。しかし、コンテナ苗が植栽後に裸苗より良好な活着・成長を示す可能性には、現在はまだ不確実性が残っており、結果は気象条件および土壌条件に左右されると考えられる。したがって、本研究では各苗種がどの程度まで土壌乾燥に耐え、どの程度の乾燥条件でコンテナ苗の生残率が優位になるのかを検証した。2015年8月に宮崎大学農学部附属木花フィールドの露地(耕耘あり、なし)と、土壌水分を調節するため温室内(毎日灌水、8日おき灌水、無灌水)に1年生および当年生コンテナ苗、当年生裸苗、当年生カルス苗を植栽した。植栽から約1ヶ月後の枯死率は、露地・温室ともにコンテナ苗が最も低く、無灌水の場合は1年生および当年生コンテナ苗8%、裸苗50%、カルス苗83%と苗種による差が顕著であった。また、半数以上の苗が枯死に至るまでの日数は、露地・温室ともにコンテナ苗が最も長く、コンテナ苗は厳しい土壌乾燥に耐えられることが示唆された。
  • 孝森 博樹, 城田 徹央, 岡野 哲郎, 齋藤 仁志
    セッションID: P1-078
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    森林内路網に対し,生物多様性管理の観点から評価を加えることを目的として,長野県下伊那郡根羽村のスギ人工林と面した穴田線,小栃線,高橋萸野線の3路線沿いで下層植生の調査を行った。各路網から林内へ幅10m,奥行20mのベルトプロットを設置し,路網から5m間隔に区切った小プロットで行った植生調査の結果から,反復測定分散分析によって,路網からの距離に対して,草本層植被率,草本層種数,低木層植被率,低木層種数に応答があるか検討を行った。その結果,比較的林道の開設年が古く,低木層が発達した壮齢林を主体とする穴田線と小栃線では,低木層には応答がなかったが,草本層の被度及び種数が路網側で増加した。一方で,比較的林道の開設年が新しく,低木層があまり発達していない若齢林を主体とする高橋萸野線では,草本層には応答がなかったが,低木層の被度及び種数が路網側で増加した。この結果から,路網からの距離に対する下層植生の応答は同質ではなく,林分あるいは林道によって異なる様相を示すことが明らかにされた。
  • 根岸 有紀, 清和 研二
    セッションID: P1-079
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】日本の森林の67%を占める針葉樹人工林は、間伐遅れで過密化し、生態系機能の低下が懸念されている。間伐により、多様な草本や広葉樹が侵入することで、生態系機能の回復が図られ、持続的な森林管理につながると期待できる。しかし、間伐が種多様性や木材生産にどの程度影響するのか長期的に調査した例が少ない。したがって現場での間伐の実践には結びつきにくいと考えられる。本研究は、間伐強度を変えたスギ人工林において、針広混交林化に及ぼす間伐の効果(種多様性、広葉樹の種数や個体数、スギと広葉樹の直径・材積成長量)を明らかにすることを目的とした。【方法】間伐強度は、0%(対照区)、33%(弱度区)、66%(強度区)の三段階に設定した。間伐は植林後20年、25年時の2回行い、本調査は初回間伐後12年目となる。【結果】強度区では弱度区に比べ、広葉樹の個体数が増加し直径成長量も高かった。種数は、弱度区と強度区のどちらも対照区に比べ極めて増加したが、両者に差はなかった。しかしDBH≧5㎝の個体で比べると、種数は強度区の方が多くなった。さらにスギの成長を解析し、間伐強度がスギ及び広葉樹の生産に与える影響についても考察する。
  • 藤原 崇, 齋藤 倫実, 林田 光祐
    セッションID: P1-080
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    イヌワシの採餌環境創出を目的とした、幅5~10mで伐採する列状間伐が東北を中心としたスギ林で行われている。しかし、採餌環境に対する効果は数年で低下するため、その後の植生管理が課題である。そこで、伐採後の天然更新の現状とその要因を検討した。鳥海山南麓のスギ林で2006~2009年に実施された列状間伐地において、伐採後5~8年経過した「5年地」、「7年地」、「8年地」の3か所に合計約0.3haの調査区を2014年に設置し、そこに出現した胸高以上の木本種を対象に、樹種・樹高・胸高直径の計測と萌芽由来か実生由来かを調べた。全調査区内の出現種数は合計43種で、共通する優占種はタラノキ・ホオノキ・オオバクロモジだった。各伐採地のBA/haは伐採後の経過年数の順に時系列化できず、5年・8年地はタラノキなどの小高木種が優占していたが、7年地はBA/haが最も大きく、高木種が優占していた。また、5年・8年地は実生由来、7年地は萌芽由来の更新木が多かった。5年地と7年地で高木種の更新状況を比べると、種構成に違いはなかったが、7年地の方が萌芽由来の更新木の本数密度が高かったことから、高木種の前生稚樹が多い林分では早期に広葉樹林が成立すると推察される。
  • 梶河 千紘
    セッションID: P1-081
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    大径木化した放棄落葉広葉樹二次林では、ナラ枯れ被害を防ぐために伐採によって萌芽更新を促進することが有効とされる。本研究では大径木化した放棄落葉広葉樹二次林の林冠木を伐採し、優占樹種であるコナラとクヌギを中心に萌芽動態と萌芽動態に切株の特性や環境要因が及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。萌芽枝の生残や成長を、伐採後1回目の成長期間終了後(2014年秋)、2回目の成長期間開始前(2015年春)、2回目の成長期間終了後(2015年秋)の3回測定するとともに、環境条件として、光条件、土壌条件、および未伐採の下層木の胸高断面積を測定した。2014年秋時点でコナラでは97切株のうち69切株から合計1750本の萌芽数が発生し、クヌギでは61切株のうち45切株から780本発生した。これらの萌芽枝は2015年春時点でコナラで1436本、クヌギで660本に減少し、2015年秋時点での生残数はコナラで899本、クヌギで443本であった。また、2015年中に新たに発生した萌芽数はコナラで124本、クヌギで24本であった。萌芽枝の動態に影響をおよぼす要因について解析を行う。
  • 友成 美咲, 中桐 恵利華, 音田 高志, 赤路 康朗, Uyanga Ariya, 廣部 宗, Baatarbileg Nachin, 坂 ...
    セッションID: P1-082
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    モンゴル国北方林では違法伐採を目的とした人為的火災が増加傾向にある。火災跡地では、火災耐性を持つシベリアカラマツが残存木からの種子供給で更新し森林再生に貢献するが、残存木を除去する違法伐採によって森林が劣化することが指摘されている。本研究では違法伐採を伴う火災から10年が経過した火災跡地でシベリアカラマツを対象とし、林縁から近いサイトと遠いサイトとで稚樹の密度比較から森林再生における違法伐採の影響を検証し、さらに侵入時期、成長様式、および成長と環境条件の関係などの更新特性を明らかにすることを目的とした。林縁から遠いサイトでは違法伐採の影響から稚樹密度が極めて低かった。林縁に近いサイトをみると3年生から8年生のみが出現し、過去3年間で草本・灌木群落の発達により更新が阻害されていたことから、林縁の遠くでは草本・灌木群落の発達により森林が再生しないリスクがあることが示唆された。また林縁に近いサイトでは伸長成長と環境条件の関係から、シベリアカラマツの成長には水分条件が影響し、草本・灌木との競争によって抑制され、リターや燃焼残渣木片がマルチとして働くことで促進されることが示唆された。
  • 川口 千尋, 伊藤 哲, 平田 令子, 高木 正博, 吉田 藍子, 山川 博美
    セッションID: P1-083
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    単純化した人工林の問題の解決策として、林分の高齢化により生物多様性の回復が期待される長伐期施業の導入が考えられている。しかし、100年を超える高齢スギ人工林の林分構造に関する知見は多くない。そこで、スギ人工林の高齢化による下層植生の発達の実態を明らかにすることを目的とした。宮崎県北郷町の老齢(137年生)スギ人工林(三ツ岩国有林)に0.36haのプロットを設置し、スギ林冠下の胸高直径5cm以上の個体の樹種、胸高直径、樹高を調査し、種多様性および種組成を壮齢(93年生)ヒノキ人工林、壮齢(90年生)照葉樹二次林(いずれも宮崎大学田野演習林)および照葉樹原生林(宮崎県東諸県郡綾町)と比較した。その結果、下層の多様度指数は壮齢ヒノキ人工林、壮齢照葉樹二次林、老齢スギ人工林、照葉樹原生林の順に高かった。原生林との種組成の類似度は、老齢スギ人工林よりも壮齢ヒノキ人工林の方が高く、これは老齢スギ人工林における重力散布型常緑高木の欠落に由来していた。以上のことから、伐期延長によって下層のサイズ構造は発達するものの、種組成は散布制限を強く受けるため伐期延長のみでは必ずしも天然林に近い種組成に回復しないことが示唆された。
  • 森 英樹, 上條 隆志, 正木 隆
    セッションID: P1-084
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    木本性ツル植物は樹木に取り付くことで、その生育を阻害し、結果的に森林の構造や動態に影響を及ぼすと考えられている。しかし、このような知見の多くは熱帯や亜熱帯地域に集中していて、温帯林ではごくわずかである。そこで本研究では、冷温帯林における木本性ツル植物の空間分布を明らかにし、ホスト樹木、地形および自然攪乱の影響の大きさを検証した。調査地は北茨城市に位置する小川試験地(6ha)である。樹木(DBH1cm以上・全18664本)に取り付くツル植物の種、DBH、位置を記録した。ツル植物は計1408本、計10種記録された。このうち個体数が最も多かった5種(フジ、ツルマサキ、イワガラミ、ツルアジサイ、ツタウルシ)を解析対象とした。本研究の結果からは、温帯林におけるツル植物はホスト樹木の選択性が強く、熱帯林とは対照的に、自然攪乱がツル植物の分布に及ぼす役割は小さいことが示唆された。また、種によって地形の選好性が異なり、種ごとの分布に反映されていると考えられた。
  • 赤路 康朗, 廣部 宗, 宮崎 祐子, 牧本 卓史, 坂本 圭児
    セッションID: P1-085
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
     ある時間断面における植物個体群の空間分布はそれ以前の個体の出現と死亡により形成される。そのため、個体群の空間分布を予測するためには個体の出現と死亡の発生場所について理解することが必要である。本研究ではブナ実生個体群を対象とし、出現と死亡の発生場所の変動性から空間分布の形成過程を理解することを目的とした。2011年に0.27haの調査区を若杉ブナ天然林(岡山県)に設置し、1年生以上の全てのブナ実生を対象に存在位置を記録し、樹齢を推定した。その後、2015年まで毎秋、1年生の実生の新規加入と既存実生の生死を記録した。本調査地では2009年、2011年、および2013年にブナの成り年があり、ブナ実生は隔年で多く出現していた。L12関数(帰無仮説:ランダムラベリング)による空間分布相関解析の結果、実生の新規出現場所は調査年の間で有意な同所性は検出されず、独立的または有意に排他的であった。また、実生個体群全体の死亡場所も調査年の間で独立的または有意に排他的であった。以上の結果から、小さな空間スケール(~15m)では、ブナ実生の出現や死亡が多く生じる場所は、毎年異なる傾向があることが示唆された。
  • 土井 絵里子, 赤田 辰治, 石田 清, 松下 通也, 鳥丸 猛
    セッションID: P1-086
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    山岳環境の発達した日本において、地形が森林群集・樹木個体群の成立・存続に果たす役割は大きい。そこで本研究は、青森県白神山地高倉森のブナ天然林に設置された固定調査区において、6年間の成木の動態、稚樹・実生の群集構造、リター量の空間分布、落葉の分解速度を調査し、急傾斜地に成立する成木の動態と稚樹・実生の構造の特徴を解明することを目的とした。6年を通した群集全体の死亡率(2.73%/年)は加入率(1.83%/年)を上回っており、平坦地のブナ林に関する既存の報告とは逆の傾向であった。6年間を通した各樹種の死亡率は加入率と正の相関関係を示したが、各樹種の動態パラメータには年変動が認められ、各年の積雪量との関連性が示唆された。リター量はリタートラップ周辺に生育する稚樹の出現本数に負の影響を及ぼしていた。リターバックに詰め合わせた落葉の樹種の組合せと設置した地形によって落葉の分解速度に差が認められた。さらに本発表では、リター量が実生の出現本数に影響を及ぼすかを検証するとともに、落葉分解速度が実生・稚樹の出現に及ぼす影響を検討する。
  • 安藤 真純, 板谷 明美
    セッションID: P1-088
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    個体の光合成にとっても重要であり,他の個体の光環境にも影響を与える林冠層の樹冠と林冠ギャップの特徴を明らかにするために,従前に発表された論文の樹冠投影図を用いてブナ林の林冠層の構造を比較した。収集した8文献から得られた秋田県から岐阜県の樹冠投影図をGISを用いてデジタル化し,樹冠面積と林冠ギャップ面積を測定した。すべての樹冠をデジタル化できなかった1箇所を除いた7つの樹冠投影図での樹冠面積の平均は,11.3~107.6m2であった。最も平均値の大きかったブナ林は,岐阜県白山大白川流域のミズナラなどが混交する原生林あった。標準偏差が最も大きかったのは同じく岐阜県白川村大白川流域の異なる調査プロットのブナ林(標準偏差68.1m2)であった。8つの樹冠投影図から得られた林冠ギャップの調査区に占める割合は,5.4~75.9%であった。最も大きな林冠ギャップ面積割合を示したのは山形県朝日村のブナ林で,広範囲の林床をササが覆っていた。この最大値を除くと従前の論文で示されているブナ林の林冠ギャップ面積割合(4.1~21.1%)と同程度であった。樹冠面積が大きい林分で,林冠ギャップの平均面積が大きくなる傾向がみられた。
  • 鈴木 志保, 井出 雄二, 齊藤 陽子
    セッションID: P1-089
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    多様な種から構成される広葉樹林は様々な森林機能、特に生物多様性保全のような公益的機能について単一種栽培の人工林に比べて高く発揮されることが期待され、近年、針葉樹人工林の広葉樹林化の動きも見られる。伊豆半島天城山湯ヶ島国有林では、これまで針葉樹人工林施業が広く行われ、広葉樹林は断片化された状態で存在している。本研究では、この地域における広葉樹林や広葉樹の侵入のある針葉樹人工林について樹木種の多様性を明らかにし、断片化した広葉樹林が保有する潜在的な生物多様性保全機能を評価することを目的とした。調査地を、湯ヶ島国有林内約600haに設定した。まず、空中写真(2011年)を判読し、樹冠のサイズと針葉樹・広葉樹の別、地表の可視の有無から、林分を7タイプに分類した。広葉樹が優占する林分を中心に、全てのタイプから調査候補林分を抽出し、現地踏査により37林分を選定した。林分の植生を代表する思われる場所を中心に50mのラインを設置し、ラインを中心に左右両側2.5m以内に生育する全木の樹種、階層、胸高直径を測定した。胸高断面積比に基づくクラスター分析を行い、クラスターごとの調査林分の種組成や種多様性について検討した。
  • 丸山 諒子, 小林 誠, 紙谷 智彦
    セッションID: P1-090
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    ブナの混芽は、開花年の春に大きく膨らみ、肉眼で識別することができる。開葉前の残雪期に混芽を林分単位で定量化できれば、種子生産量を推定できる可能性がある。そこで本研究では、新潟県十日町市松之山のブナ二次林7林分を対象に、高解像度のデジタルカメラを用いて1画像あたり25m2のブナ樹冠を地上から垂直に各林分21枚撮影した写真画像から混芽数を計数し、同じ位置に設置したシードトラップの落下種子数との関係を明らかにすることを目的とする。ブナ樹冠の撮影画像は1m2の小区画ごとに計数した。この平均混芽数とシードトラップの落下種子数の間には正の相関があり、回帰式が得られた。ブナ二次林の樹冠画像から混芽数を計数し、今回得られた回帰式を用いることで、種子生産量を推定することが可能である。一方、冠雪による落枝から採取した混芽を分解したところ、雌花を含む混芽の割合(雌花率)は66%であった。さらに、6月に採取した枝では、雌花のうち95%が殻斗を形成(結実率)していた。これら雌花率と結実率で補正したところ、混芽数の少なかった2林分で有意な差が見られた。並作年のシードトラップによるデータは過小評価の可能性がある。
  • 湯村 昂広, 光田 靖, 伊藤 哲, 平田 令子
    セッションID: P1-091
    発行日: 2016/07/08
    公開日: 2016/07/19
    会議録・要旨集 フリー
    宮崎県を代表する柑橘類である日向夏は強い自家不和合性を持つため、人工授粉など生産コストのかかる作業が必要である。生産コストを下げる方法の一つとして、生態系サービスの一つである送粉サービスを活用し人工授粉の省略化を行うことが考えられるが、送粉サービスと立地条件との関係は明らかになっていない。よって本研究では訪花昆虫の多様性および豊富さを送粉サービスの指標として、ランドスケープ構造との関係を明らかにすることを目的とした。 宮崎県綾町の日向夏農園15ヶ箇所を調査地として設定し、日向夏の開花期にハチ類の訪花数調査を行った。ランドスケープ構造については平成25年の航空写真を用いて各調査地から半径2kmの土地利用図を作成し、ランドスケープ構造の定量化を行った。また既往の研究においてハチ類の生息域として天然生林が重要であることが明らかとなっていることから、より詳細な検討を行うために、現地調査で行った毎木調査のデータをもとに航空写真DSMを用いて天然生林を若齢林と老齢林の2タイプに分類し、ランドスケープ構造を評価した。以上のデータを用いて訪花ハチ類の多様性および豊富さとランドスケープ構造の関係解析を行った。
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