日本森林学会大会発表データベース
第128回日本森林学会大会
選択された号の論文の839件中51~100を表示しています
学術講演集原稿
  • 田中 和博, 塩田 廣美, 長島 啓子, 美濃羽 靖, 吉田 聡, 岡田 広行, 鈴木 秀明
    セッションID: C13
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    京都府京丹波町では、ALSデータを利用した森林資源量解析システムを導入し、森林資源量管理に着手している。町では、住友林業の支援を受けて、京都府の森林簿を元に樹種や林齢などを入力した林分図および高精度の航空写真を元に林相区分図を作成したとともに、路網データも取り込んで、日々の森林施業に役立てている。また、これらのデータを活用して、森林組合が中心となって森林所有者に対し森林の見える化を行い、今後の伐採計画や、将来の森林の姿などを共有するなど、森林計画を共同で作り上げている。 本研究では、スギ・ヒノキの人工林を対象に、ALSデータから推定した林相区画別の平均樹高と立木本数密度のデータを用いて京丹波町全域の相対幹距区分図を作成した。「森の健康診断」で使われている判定指標を参考にして、超過密、過密、適正、粗、過疎の5つに分類した。それらの結果と、林齢、林分面積、平均樹高との関係を樹種別に解析し、京丹波町における森林管理の現状について考察した。

  • トウ 送求, 加藤 正人
    セッションID: C14
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    This study attempted to classify tree species of the broadleaved forest in Afan Woodland using airborne laser scanning (ALS) data. A total of 235 trees were investigated in September and December, 2016. The tree locations were recorded using a Trimble Geo7x device. Over 90% of the trees have a horizontal accuracy of less than 1 meter after post-processing. Then, the individual trees were manually detected using the above location data, 3D point clouds, canopy height model (CHM) derived from ALS data and photos collected in the field survey. Finally, the detected tree crowns were classified using a tree crown-based classification approach with different combinations of several features derived from ALS data and true-color (red-green-blue—RGB) orthoimages. The field data were used for accuracy assessment.

  • 溝口 知広, 石井 彰, 中村 裕幸, 高松 久, 井上 剛
    セッションID: C15
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    地上型レーザスキャナの普及に伴い,森林資源調査の分野でもこのスキャナが広く使われるようになった.また近年の点群処理技術の向上により,樹木の樹高,胸高直径,材積等が高精度に計測可能となった.しかしながら調査項目の1つである樹種については,未だ人手に頼らざるを得ないのが現状である.樹種自動判別に関する過去の研究例として,衛星画像を用いた例は多数報告されているが,地上にて取得したセンサデータを対象とした例はほとんどない.そのため,地上における資源調査の更なる効率化のため,点群からの樹種自動判別技術の開発が期待されている.本研究では,畳込みニューラルネットワークを用いた点群からの樹種自動判別手法を提案する.提案手法では,樹木ごとにセグメンテーションされた点群を入力とし,RANSAC法を用いて枝葉を除去した樹幹部点群を抽出し,これを3次曲面の当てはめにより樹皮形状を明確に表す距離画像へと変換し,畳込みニューラルネットワークにて自動判別を行う.スギとヒノキおよそ35,000本の点群を対象とした様々な実験より,提案手法ではおよそ90%の精度で判別可能であることを確認した.

  • 大野 勝正
    セッションID: C16
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    単木抽出にはDCHMを用いることが一般的で、DCHMの作成にはレーザが地表物から最初に反射したファーストパルスやオンリーエコーが用いられている。これらのパルスは樹冠表面だけでなく、樹冠内部や林内から反射したパルスも含まれているため、樹冠表層面を正確に表現するDCHMとはならない。この問題を解決するため、最大値フィルタが用いられているが、多くの場合樹冠内部からの反射パルスが残り、樹冠形状の再現性を低めている。さらに、このDCHMを用いて単木抽出を行い、単木の抽出精度が低下している。そこで、樹冠内部からの反射パルスを削除する簡易手法を提案し、従来のDCHMによる単木抽出と比較して、DCHMが解析に及ぼす影響を評価した。研究対象地は佐賀県とし、スギ129点、ヒノキ126点の現地調査箇所と単木抽出結果を比較した。単木抽出には局所最大値フィルタ法を用いて、3×3の局所領域とした。2種類のDCHMによる単木抽出結果を比較した結果、誤差率やRMSEに大きな改善は認められなかったものの、現地調査のとの比較による回帰式のR2がスギ・ヒノキとも0.5程度上昇した。以上から本研究のDCHM作成手法により単木抽出結果が改善することが明らかとなった。

  • 塩田 廣美, 田中 和博, 長島 啓子, 美濃羽 靖, 吉田 聡, 岡田 広行, 鈴木 秀明
    セッションID: C17
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    京都府京丹波町では、ALSデータを利用した森林資源量解析システムを導入し、森林資源量管理に着手している。町では、住友林業の支援を受けて、京都府の森林簿を元に樹種や林齢などを入力した林分図および高精度の航空写真を元に林相区分図を作成したとともに、路網データも取り込んで、日々の森林施業に役立てている。また、これらのデータを活用して、森林組合が中心となって森林所有者に対し森林の見える化を行い、今後の伐採計画や、将来の森林の姿などを共有するなど、森林計画を共同で作り上げている。本研究では、まず、これらのデータとともに、京都府が提供している地質図と、ALSデータのDTM(Digital Terrain Model: 数値地表モデル)から作成した傾斜角・傾斜方向・斜面形状・累積流量のデータをGIS上で結合してエコトープ解析を行った。つぎに、ALSデータから25m x 25mのタイルを基本管理単位として平均樹高を算出して各々のエコトープとの関連性を解析し、それらの結果が地位指数(林齢40年での樹高)の推定に利用可能かを検討した。

  • 吉田 茂二郎, 加治佐 剛
    セッションID: C18
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     近年、空中や地上からのLiDAR計測から森林情報、とりわけ林分構造を把握する試みが数多くなされている。しかし、欧米の限られた数種が優占しかつ疎な林分と比較して、日本の森林は人工林でも林分構造の把握は難しく、最近求められている高精度森林情報の収集に向けて色々な研究が行われている。一方で、LiDARデータのうち林冠部を通過したデータによって精密な地形図が生成されることが知られている。 発表者の吉田は、過去に地形と林分構造との関係解析に関する研究を行い、詳細な地形図を作成し、その斜面構造と林分構造が密接に関係していることを見出している。この研究成果を利用し、対象林分を地形区分(尾根部、斜面部、谷部等)し、それぞれで簡易の地上調査を行い、それらを集計することで正確な林分構造を推定することに成功している。 そこで今回の発表では、LiDARから生成された地形図と既存の詳細地形図とを比較し、その精度を確認するとともに、LiDAR地形図上の地形区分が、地上の林分構造とどの程度一致しているかについて検討した。

  • 張 桂安, 加藤 正人
    セッションID: C19
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    近年航空レーザーが森林分野に利用されるようになった。本研究の調査地である北信州森林組合も航空レーザー技術を使って林業の効率化を図っている。一方、本研究は地上レーザーとUAVを組み合わせて森林資源の把握を試みた。この組み合わせ法は立木の位置と本数とDBHを地上レーザー解析データを使用し、樹高に関しては、地上レーザーのDEMとUAVのDSMから作成されたDCHMを使用した。航空レーザーと組み合わせ法を比較するために、ArcGIS上で立木のマッチングを行った。マッチングは、立木位置の距離と周辺の立木の位置パターンとDBHの3つの基準を総合判断して実行した。精度検証については、本研究は現地で平坦地プロット、緩傾斜プロット、急傾斜プロットの三つのプロットを作成し、それぞれのプロットで本数とDBHの毎木調査を行った。樹高に関しては、航空レーザーデータを真値とし、組み合わせ法の精度を検証した。最後に、検証結果を基に、間伐計画の作成をシミュレーションした上で、航空レーザー計測と組み合わせ法のそれぞれの応用性を検証した。

  • 加藤 顕, 陶山 健一郎, 南藤 和也, 田原 美穂, 八島 大三
    セッションID: C20
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    森林域における炭素蓄積量を把握するには、森林簿情報が必要である。しかし、遠隔地では、現状を反映した森林データを新たに整備する必要があり、そのためのリモートセンシング技術が必要とされている。従来、遠隔地では衛星によるモニタリング技術が確立されてきたが、本研究では無人航空機(UAV)を用いて広域の3次元データを取得し、解析する技術を確立し、低コストでデータ整備が行えるようにした。無人航空機で空撮された画像から3次元データを作成するSfM技術を用い、広域で取得された3次元データから解像度10cmのDSMを作成し、詳細な樹冠形状を自動で把握する手法を確立した。国内外の遠隔地で実用性を検証するために、熱帯の遠隔地にあるブラジル アマパ州にある植林地を対象とし、森林管理のために低コストでデータ取得や解析を行えるようにした。国内では、離島である佐賀県加唐島で全島(2.84 km2)をドローンによって3次元データを取得し、全島の樹木管理データを整備した。UAVによって取得できる3次元データの正確性を検証するために、現地調査で地上レーザーによって樹木計測を行い、その計測値と比較し、5~10%の相対誤差で樹木計測ができることがわかった。

  • 近藤 大将, 大野 勝正
    セッションID: C21
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    近年、森林簿や森林基本図の更新のため、リモートセンシング技術を利用した面的な森林情報整備が活発に行われている。昨今の研究により、航空機レーザデータを解析することで高精度な森林情報(本数・樹高・胸高直径)が取得可能であると分かっている。しかし、航空レーザデータの取得には高額の費用が掛かるため、費用対効果を高める方法を模索していく必要がある。中でも取得した森林情報の更新は、データを長く運用していく上で重大な要素となることから、本研究では2種類の方法で森林情報を更新する手法を検討した。①既存の森林解析結果に対し、従来の成長曲線式を適用することで森林情報を更新する手法。②試験地の一部でレーザデータの再取得を行い、解析する。既存の森林解析結果と再解析した結果の差分から新規の成長曲線式を作成する。作成した成長曲線を既存の森林解析結果に適用することで、森林情報を更新する手法。併せて、数年後に再計測したレーザデータを解析することで検証用データを作成し、上記二種類の更新結果と比較することで、各手法の有用性を検討した。

  • 加藤 正人, Juha Hyyppa
    セッションID: C22
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    日本の森林は戦後植栽された人工林が収穫期を迎える中で、現在のアバウトな森林情報ではなく、バイオマス発電や素材生産の事業計画を立てる上での正確な森林情報が求められている。長野県では森林県から林業県へ森林資源の活用による地域産業の活性化を目指しているが、正確な森林資源情報がないため素材流通のアウトプットができていない。また素材生産のための現地調査は、調査コストが過大なわりに得られる情報の精度が低く、適切な事業計画がたてられない現状にある。 そこで、航空機・ドローン・バックパックのレーザセンシング(LS)情報の要素技術をかけ合わせた統合技術により、森林情報の高度化、作業の省力化と持続的な木材生産性を向上させたスマート精密林業を開発する。航空LSから広域森林の地形や既存路網の分布を詳細に把握する。毎年発生する小面積で分散する間伐や森林被害ではドローンLSを活用する。地上での収穫調査では、バックパックLS情報を活用する。現状の森林調査のサンプル調査からLS情報を活用した全数調査の精密情報に置換え、現場で使える仕組みや体制確立を目指す。農水省・農研機構の革新的技術開発の地域プロジェクトである。

  • 星川 健史, 渡井 純, 平山 賢次, 池田 潔彦
    セッションID: C23
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    国産材流通において、原木の生産可能量を十分に把握できていないことや、供給情報を集約して大口需要に対応できる組織・体制が構築できていないことが全国的な課題である。また、市場を介さない原木の直送において、効率的な検品体制も構築されていない。そこで、1) 3Dレーザースキャナを利用した原木の生産可能量の把握技術の開発、2) クラウドGISを利用した原木生産情報の共有システムの開発、3) 小型3Dカメラを利用した原木検尺システムの開発を行った。地上型レーザースキャナを用いた森林計測によって、幹材積を高精度に計測できるほか、曲がりも計測できることがわかった。その幹材積や曲がりから、森林から生産できる原木の品質別材積を予測できることがわかった。Esri社のクラウドGISサービスArcGIS Onlineを使用して、生産現場の情報をリアルタイムに共有するシステムを構築した。生産現場の情報は、森林経営計画管理、原木生産管理、供給計画管理の3機能として連携させた。小型3Dカメラを利用してはい積みされた原木の直径・材積を計算・集計する原木検尺システムを開発した。本システムにより現場作業は大幅に省略されるため総コストにおいて有利だった。

  • 塚原 正之, 大田 望洋, 矢部 三雄
    セッションID: C24
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    航空レーザ計測による広域の森林資源情報の把握は、森林計画や林業経営など様々な森林・林業分野への適用が可能である。 金山杉の産地である山形県最上郡金山町では、周辺で大規模な集成材工場やバイオマス発電所が立地し、旺盛な木材需要が見込まれる一方、技術者の不足や森林所有者の高齢化による森林資源情報の取得が困難な状況にあり、求められる需要と当地の供給可能量に大きなギャップがある事が懸念される。 当地で持続可能な森林経営を図るためには、正確な森林資源情報を把握し、長期の森林の経営計画と施業プランを立案する事が必須であり、このため金山町および金山町森林組合が主体となり約6,000haの航空レーザ計測を実施し、森林資源解析および微地形を表現する赤色立体地図を整備した。 本報告はこの計測および解析の概要と共にデータを基盤とした地域全体のゾーニングや作業現場での活用、路網計画、予想収穫量の計算、コスト計算など林業経営にかかる様々な展開を含めた実務事例とその効果を報告する。 なお、本業務の一部は平成26・27年度「公益信託 農林中金森林再生基金」により助成を受けたものである。

  • 中村 裕幸
    セッションID: C25
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    豊富な森林資源量に対し、地形、立木位置、立木形態などの森林情報が未整備のため循環型林業経営実現の障害となっている。2017年に6.04haのスギ林を対象に、目標林型としてカエデの混交林を想定し、そのための恒久的作業道の開設を目的として間伐を行った。1,920:本(1,325㎥)を伐採861㎥を集材した。生産された丸太の中からビルダーの指定仕様に合った丸太を山土場渡し15,500円/㎥で直販し、他を通常の流通に出材し1,716万円を売上げた。本施業において開設した作業道は226m/haであった。本年度では、隣接する出材域の中からに2.32haに対し地上型3Dレーザ計測を行い、さらにその中からサワラの小班を除いた1.8haに対し間伐木の設定(残存木樹間距離2.5m以上で本数間伐率約35%)と、設定間伐木から生産される丸太採財の需要仕様とのマッチングによる高収益化の検討を行った。計測結果から推定される出材丸太本数は1,516本、299.961㎥、予想売上(総てビルダー、森林組合、合板工場に山土場渡しでの直販)は約380万円である。計画及び実施内容について述べる。

  • 山本 博一
    セッションID: C26
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    持続可能な森林経営のためには以下の6点が重要である。1.収穫量を成長量の範囲内に抑える。2.生物多様性の維持。3.樹木個体数と後継樹の維持。4.森林の経済的便益の持続。5.地域社会の雇用安定と労働安全性の確保。6.土地所有権など法的枠組みの維持。1.には、森林資源の現存量と成長量を把握することが必要である。このために測樹法や成長モデルが研究されている。現存量を把握するためにはRemote sensingが開発されている。従来の保続の概念ではここに焦点をあててきた。近年、森林を管理するために持続の条件が付加され、多様性を維持するため森林を構成する生物種の生存と繁殖に関する情報が必要である。また、様々な種の発生や生存条件に関する情報が求められている。森林を管理するには、そこに暮らす人々の持続的な生活の確保が必要である。森林の労働安全性の確保という観点から林業機械が積極的に導入されつつあるが、生態的環境の維持とのバランスを如何に保つかが問われている。森林減少の著しい多くの地域においては社会的安定性が損なわれたことにより長期的な視点から森林を持続的に経営することが困難な状況に陥るという国際的な問題が生じている。

  • 廣瀬 裕基, Septaris B. Parhusip, 川田 伸治, 沼本 晋也, 松村 直人
    セッションID: C27
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    三重県の北西部に位置する三重郡菰野町は,町内の西側大部分が鈴鹿国定公園に属しており,環境保全の重要性が高い地域であるといえる。しかし,近年は間伐等の森林保全施業が停滞しており,森林の有する公益的機能の低下が懸念されている。そのような状況の中で,菰野町は現在,地域産業の活性化を目的とした地域内エネルギー循環システムの構築を目指している。基盤となる地域エネルギーとして,町内の豊富な木質バイオマス資源(間伐未利用材)の活用が計画されており,平成26年度には森林簿を用いた「森林資源有効活用調査」から森林賦存量が推定されている。しかし,後の検証実験の結果,森林簿データの整合性や賦存量の推定精度に関する問題が明らかとなった。 以上を踏まえ,本研究では,菰野町における環境保全と木質バイオマス等の森林資源の活用の両立を目指した森林管理の方向性について検討を行う。また,現在求められている高精度な森林資源情報の把握に向けた森林モニタリング手法として,無人航空機(UAV)並びにSfM(Structure from Motion)を用いた,一連の空撮実験から実際の森林管理への適用を検討する。

  • 曾 江澤卉, 白石 則彦
    セッションID: C28
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    中国は2001年から国際森林認証制度を導入し、2006年から独自の森林認証制度CFCCの創設に取り組んできた。本研究では、湖北省の国家重点林業企業を対象として、地域レベルの視点から、中国森林認証体系の普及における課題を明らかにすることが目的となる。調査対象はFSC森林認証を取得した宝源木業株式会社(A社)と森林認証を取得していない九森林業株式会社(B社)である。生産・販売を担当する方への聞き取り調査、生産・認証に関わる部門の社員へアンケート調査を行った。調査の主な質問項目は①企業にとっての各森林認証制度の認識度と重要度、②森林認証による便益、森林認証への期待点、③森林認証取得における阻害要因である。結果として、両社とも森林認証を重視する姿勢を示している。B社はFSC認証、PEFC認証、CFCC認証の認識度が高いことに対してA社がFSC認証に関して詳しい。A社は、製品販売量の増加、企業知名度の上昇、環境保護意識の向上といった便益に高い評価を与えた。B社は、企業知名度の上昇と政府などからの支援を期待している。認証市場の信用問題による認証マークの信憑性が低いこと、政府や第三者などからの支援が少ないことが主な阻害要因となる。

  • 宮本 麻子, 佐野 真琴, 大貫 靖浩, 寺園 隆一, 山田 茂樹
    セッションID: C29
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     沖縄県北部地域の森林は亜熱帯島嶼地域に位置し、多種多様な固有動植物および希少動植物が生育・生息する生態系を有している。2016年9月には国内33カ所目の国立公園として新たにやんばる国立公園が指定されるなど豊かな自然環境に対する期待が高まっている。しかし一方で、当該地域は沖縄県の民有林の60%以上が集中する林業の中心地であり、木材拠点産地として位置づけられており、自然環境に配慮した持続的な林業活動が求められている。本研究では、環境保全に配慮した森林管理手法の確立に資するため、沖縄県北部地域を対象として、資源状況、施業・制度規制、環境的な制約等を考慮した伐採適地マップ作成および成長量の算出を行った。その結果、禁伐、特別保護区、主伐を見合わせるべき立木の樹種別林齢、土壌の物理特性等を考慮すると伐採適地は、対象地全体の6割程度になると推察された。また対象地全体での成長量は約5,300m3/年と推定されたが、各種制約を考慮するとその7割程度になることが明らかになった。

  • 石橋 聰
    セッションID: C30
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     近年の林業再生の主体は針葉樹であるが、一方で家具用、合板用など広葉樹材への需要が高まりつつある。北海道ではこれまで針広混交林だけではなく広葉樹林においても択伐施業が行われてきたが、林分内容の低下によって一部を除き継続的な広葉樹生産が行われていない現状にある。また、「広葉樹は一斉林を形成しやすく択伐施業は不可能に近い(長内 1977)」という指摘もあり、広葉樹林において択伐施業による循環的木材生産が可能か否かを検証する必要があると考えられる。 そこで本研究では、北海道中部の空知森林管理署管内にある夕張広葉樹施業実験林(60ha)において行われてきた択伐施業の結果により、主に林分推移の観点から広葉樹林における択伐施業の可能性を検討した。実験林は1985年に設定され、8施業区に分けられており、2施業区ごとに8年の回帰年で択伐が行われてきた。 その結果、立木本数や大径木が減少し、進界樹種は亜高木性樹種が多いなどの傾向がみられた。実験林の林床にはクマイザサが密生しており、天然更新不良が林分推移に影響を及ぼしていると考えられた。

  • 溝上 展也, 太田 徹志, 伊藤 一樹, 池田 正, 谷口 寛昭, 吉田 茂二郎
    セッションID: C31
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    主伐期を向える針葉樹人工林が増大するなかで、収穫規整や主伐方式の再評価が求められつつある。主伐については多くの行政・民間対応がなされてきており、森林計画制度に定める施業方法の指針や地域で独自に作成された伐採・更新ガイドラインが示されている。本報告では、森林経営計画の施業の実施に関する基準に着目し、なかでも、複層林施業を推進すべき森林における施業の実施基準の再検討を行った。まず、「択伐による複層林施業を推進すべき森林」において、群状伐採では伐採面積0.05ha以下、帯状伐採では伐採帯幅10m未満という実施基準が定められているが、報告者らのこれまでの帯状・群状伐採地での調査解析結果に照らし合わせると、更新木の良好な成長を維持するためには、これらの伐区サイズの上限は小さすぎると判断した。一方、「複層林施業を推進すべき森林」において、群状伐採では伐採面積1.0ha以下と定められているが、この上限1.0haの伐区サイズでもって“複層林”と定義するには大きすぎると思われた。その他、「保残伐Retension」や「保残付皆伐 Clearcut with Reserves」等も含めて、より包括的にいくつかの主伐方式を整理する予定である。

  • 河瀬 麻里
    セッションID: C32
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    スギ花粉症は、1964年に栃木県日光市における症例が報告され、以来、わが国において長らく問題となっている。本発表は、人口集中地域を抱える大阪府および近隣の府県(京都府、奈良県、兵庫県、福井県、岡山県)(以下、大阪圏域)、比較のために、東京都を対象として、都府県レベルのスギ花粉症対策が今日の形に至るまでに、スギ花粉症に関するどのような議論がなされてきたのかについて、都府県林務関係部局への聞き取り調査および政策研究の手法の一つとして用いられる都府県議会会議録の分析を通じて明らかにした。スギ花粉症に対するこれらの都府県の対応は、当初は保健的なものや、排気ガス等による大気汚染防止の観点からの議論が主流であった。しかし、近年、都府県によって時期や程度は異なるものの、林業的な対応を行おうとする姿勢が見られる。林業的な対応の一つとして、既存のスギ人工林を伐採し、花粉の少ないスギ等へ植え替えていくことで、スギ人工林における花粉生産量そのものを減少させようとする取り組みがある。この取り組みについては都府県により対応が分かれており、本発表ではこの点についても考察する。

  • 伊高 静, 吉本 敦
    セッションID: C33
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    太陽パネル設置による発電は、二酸化炭素の排出量が非常に少ない自然エネルギーとして注目を集めている。一方、山林を伐採して太陽パネルを設置する地上型メガソーラーの急増については、景観の損失や、森林喪失による生態系への悪影響・土砂流出等が懸念されている。本研究は、山間地における太陽パネル設置の総合的な評価を可能にする判断材料を提供するため、それぞれの炭素量収支を明らかにする事を目的とした。具体的には、太陽パネル生産・運搬・設置・メンテナンス・パネル解体・廃棄にまつわる炭素収支を先行研究とメーカーからの聞き取り調査から明らかにした。さらに、太陽光発電に相当する電力を、化石燃料による発電に置き換え、その炭素量を明らかにした。また、仮想林分における施業による炭素収支を、数理最適化の手法を用いて算出した。収穫量・収穫頻度を制約条件に、樹齢に応じた炭素収支が、最小~最大になる解を、様々な施業パターンを想定して算出した。現実には、山間地利用における森林経営とソーラーパネル設置を総合的に判断することの難しさは、比較のための「物差し」が1つではないことにある。発表では、「炭素収支」という見地から議論したい。

  • 来田 和人, 角田 真一, 今 博計, 石塚 航, 原 真司, 喜綿 真一, 黒丸 亮
    セッションID: D1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    北海道で開発されたグイマツとカラマツの雑種F1であるクリーンラーチは、現在、種子を供給する母樹が少ないため、挿し木増殖により苗木生産が行われている。しかし、若齢でも発根率の低下や枝性が現れるため挿し木台木には播種後2年目の幼苗が使用されている。さらに台木の育成は野外で行われていることから、台木1本当たりの挿し穂数が12本程度に留まっていた。そこで、挿し木台木1本当たりの挿し穂数を増加させることを目的に、挿し木台木の育成を温室で行った。その結果、台木1本当たり70本以上の挿し穂の採取が可能となった。挿し付け時期により得苗率に違いがあるため、挿し付け後の発根、成長を促進させる技術の課題が求められ、そのことについては(II)で報告する。

  • 角田 真一, 来田 和人, 今 博計, 石塚 航, 原 真司, 喜綿 真一, 黒丸 亮
    セッションID: D2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    北海道で開発されたカラマツとグイマツの雑種F1であるクリーンラーチは、種子を供給する母樹が少ないため、現在、挿し木増殖により苗木生産が行われているが、得苗率が低く需要に対して供給不足となっている。要因として台木からの採穂数が少ないこと、休眠特性により増殖期間が短いこと、育苗施設内の環境調節の難しさ等がある。本試験では閉鎖系育苗施設の利用を想定し、クリーンラーチ挿し木苗の大量増殖の可能性を検証することとした。実験は、完全人工光による環境制御可能な恒温室内で行った。クリーンラーチの台木は培地を充填した育苗用ポットで育成し、給液管理は底面潅水により行った。採穂量は個体により差はあるものの、多いものでは40本以上に達した。挿し木育苗試験では、発根・幼苗段階を恒温室で育成し、その後太陽光利用型の温室で育成したところ、挿し木後、約7.5ヶ月で植栽可能な2号規格(苗長:40cm以上、根元径:4mm以上)に達した。

  • 江口 則和, 石田 朗, 栗田 悟
    セッションID: D3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    【はじめに】苗木を植栽地に搬入したとき、時間的制限からすぐに植栽されず、林内に数日放置される場合がある。本研究では、乾燥に強いとされているコンテナ苗が、植栽前の放置による乾燥にどの程度耐えられるのか、生理的な面から評価することを目的とした。【材料と方法】150ccマルチキャビティコンテナで生育した2年生と3年生のヒノキ苗木を対象とした。2016年10月に、供試木の半数の土壌を取り除き(以下、裸個体)、土壌を取り除かなかったもう半数(以下、コンテナ個体)とともに十分に水を与え、直射日光の当たらない室内に放置した。数日毎に光飽和時の光合成速度(Pmax)、蒸散速度、水ポテンシャルを調べた。【結果と考察】裸個体では放置1日目でPmaxが負の値となり、蒸散速度の低下や、水ポテンシャルの急激な低下といった、生理機能の失われた個体が認められた。放置3日目には裸個体のほとんどすべてで生理機能が失われた。一方、コンテナ個体では、放置5日目でも半数以上で生理機能は維持された。生理活性の低下は2年生よりも3年生のもので早かった。以上から、特に若いコンテナ苗木は、植栽直前の放置に伴う乾燥に対して、耐性の高いことが考えられた。

  • 宇都木 玄, 黒田 美穂, 髙橋 功
    セッションID: D4
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    エネルギー資源作物として、早成樹であるヤナギが北欧を中心に栽培されている。日本でも下川町において生産量と栽培方法が研究され、目標収穫量は10トン/ha/年以上とされている。福井県坂井市三国町では、木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくりが推進されており、森林からのC材の安定供給の他に、平地でのエネルギー資源作物としてヤナギの栽培を試みている。本研究では当地域におけるヤナギ生産性のポテンシャルを評価することにした。ヤナギは当地域の河川敷より成長の良いカワヤナギ・タチヤナギ11個体を選別し、枝を20cmに裁断後、2015年2月に清水植物園が管理する0.1haの畑に直挿しした。土壌は地下1m程度まで発酵したスギ樹皮(バーク)を土と混合し(バーク区)、また0.01ha(10m×10m)には牛糞を主体としてバーク及び土を混合(牛糞区)した。2015-2016年のバーク区のヤナギは伐採調査可能なサイズにまで到達せず、解析を行うことができなかった。一方牛糞区では11クローン中10クローンで目標の10ton/ha/年を越えるサイズとなり、最大で20ton/ha/年以上の生産性を示した。

  • 宮沢 良行, Thomas Giambelluca
    セッションID: D5
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    樹木の成長速度は環境変化や齢の推移を反映して変化する。そのため樹木の成長を調べる研究者は、一時点での観測のみで満足ことなく、継続的に観測を実施し、また変化を生み出す原因を探求することで、幅広い条件下での樹木成長を予測しようと努めてきた。多くの研究が1年以上の長期間隔で成長速度の計測を行いその年々変動の実態と原因を調べているものの、変動を生み出す現象は数週間から数ヶ月の短期であることが多い。こうした短期的に、長期の成長に影響を及ぼす現象を理解するには、その時間スケールに見合った技術と観測が必要とされる。本発表では毎木調査よりも時間分解能の高い観測技術のうち、比較的安価かつ観測条件を問わない樹液流計測について、光合成およびその重要な制限過程である気孔開閉を長期観測するツールとしての有効性を検証する。冷温帯から熱帯、高山にまたがる幅広い環境で得られたデータと解析結果を基に、樹木の成長抑制の現象を捕捉し切れているのか、また他手段と整合性を持つのかを検証する。また機器の故障や誤作動、設置ミスの回避やデータ解析環境の整備の可否など、幅広い分野の研究者にとっての長期観測での扱いやすさの実証例を示す。

  • 林田 好広, 林田 好広
    セッションID: D6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
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    ツシママツの人工林デ−タを用いた20年生アカマツ天然林の呼吸消費量の推定について田無試験地で植栽された福島県産のツシママツの種から仕立てた人工林の幹と枝の呼吸データをもとに他林分への推定を定量的に行うため幹と枝のデータを数式化した。また、同試験地で生育する15年生人工林の枝の調査をし、植栽密度3600本/ha、平均樹高6.6m(地位指数約13相当)で得た枝の直径分布を利用した。 対象林分は、埼玉県鳩山町の宮山台国有林にある20年生のアカマツ天然生林分で、平均気温、年降水量などはほぼ田無と変わりがなく、天然生林分の地位指数はP2で8、P3で7とされている。田無の茨城県産アカマツ林の平均DBHは7.6センチ、P2,P3林分の平均DBHは4.14センチであった。天然林の枝の直径階分布は、ダビンチ・ルールを適用しα=2と仮定、枝の最大直径は依田らとは異なり0.3×DBHを仮定、枝の最小直径は田無アカマツ林の結果から、0.2センチと仮定、枝の成長量は10センチ間隔の枝を想定し平均年輪幅を計算し使った。幹では20個体でほぼ過不足なく推定できたが、枝では2割弱過小となった。

  • 千葉 幸弘, 塩沢 恵子, 加賀谷 廣代
    セッションID: D7
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     可搬型レーザースキャナー「OWL」による森林調査を通じて、計測精度とデータ解析の利便性について検討するとともに、資源調査以外での応用を含め、地上レーザー計測の展望について報告する。森林調査と一口に言ってもその目的は様々であり、調査項目や調査方法も目的によって異なる。毎木調査はその基本だが、その手法はほとんど進歩しておらず、手間暇かけて人海戦術で対応しているのが現実である。そのため森林調査は、『労多くして得られる情報が乏しいのが現実』である。 レーザー計測装置「OWL」は、3次元の立木位置の測量を含め、通常の毎木調査データの取得に加え、森林の内部を巡回して見る「ウオークスルー」を可能とするなど、調査林分のすべての3次元構造がデータとして記録される。これまでに調査してきたスギやヒノキなどの針葉樹林のほか、広葉樹林での計測事例を紹介しながら、調査手法およびデータ管理手法として今後どのように活用できるか、そして様々な生物の生息環境としての植物群落の調査分析等への応用について見通す。

  • 酒井 敦, Edi Mirmanto, Sugiarto , 高橋 正義, 上田 朗良
    セッションID: D8
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    熱帯地域の経済成長や人口増加に伴い、熱帯雨林の劣化と断片化が進行している。熱帯雨林の生物多様性を広域で評価する手法を開発するため、ボルネオ島東カリマンタンのスンガイワイン保護林で調査を行った。森林火災や伐採で様々な度合いで劣化した保護林で、周辺部から内部にかけてライントランセクトを3本設置し、毎木調査を行った。トランセクトの長さはT1が850m、T2が1600m、T3が3300mで、トランセクトの長さに応じて50m~300mおきに面積0.04haの円形プロット(N=46)を設置し、立木の胸高直径(DBH >= 5cm)を計測した。構成樹種はT1が114種、T2が124種、T3が108種であり、低頻度出現種が多かった。大径木はShorea leprosula、S. laevis、Dipterocarpus cornatusなどがあった。T1は森林火災を受けてMacaranga属やVernonia属が多く出現し、谷地形に比較的大径の木が残っていた。T2はT1より保存状態がよく、丘陵地の上にフタバガキ科の大径木が残っていた。T3はさらに保存状態がよく、内部に行くと胸高直径1m、樹高50m級のフタバガキ科の大径木が多く分布していた。衛星画像(ランドサット)の正規化植生指数(NDVI)と種数、幹数、胸高面積合計などとの相関を検討した。

  • 水永 博己, Jurij Diaci
    セッションID: D9
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    林分材積成長量と林床の明るさは、光資源利用の観点で考えればトレードオフ関係にある。森林施業は林冠の葉分布構造を改変することにより、このトレードオフ関係を制御できると考える。林冠の葉クラスター構造は葉面積指数と同様に森林内の光利用に密接に関わっており、森林施業によって実現できる林冠のクラスター構造は水平的にはギャップ構造、垂直的には個体のサイズ分布によって制御できそうだ。本発表は個体サイズ分布に注目して個体材積成長量と林床の光強度の関係を次の2つのトピックに注目して解析する。1: 異齢林の場合:単木択伐林におけるサイズ構造のバラツキはトレードオフ関係にどのように寄与するだろうか?スロベニアのSilver firとNorway Spruceの択伐林および皆伐一斉林の5か所で得られた地上レーザースキャナーデータをもとに、50cmボクセル単位の光量子束密度の時間頻度分布を推測し、サイズ構造―クラスター構造-光資源配分の関係を解析する。2: 同齢林の場合:中層間伐は明るい林床に貢献するだろうか?70年生ヒノキ人工林を対象に中層間伐を含む3種類の間伐後のギャップ率と林床の光強度および上層木の受光分布を予測する。

  • 杉田 久志, 梶本 卓也, 福島 成樹, 高橋 利彦
    セッションID: D10
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     林齢90年生時に本数64%、材積53%の強度間伐が実施された岩手県のスギ高齢人工林において、114年生までの林分および個体の成長を解析し、個体による成長のばらつきをもたらす要因について検討した。間伐前の立木密度は458本/ha、収量比数0.55で比較的疎であり、樹冠長率は45.0%であった。間伐により立木密度167本/ha、収量比数0.27へと低下した。間伐後に枯損した個体はなく、平均樹高成長速度は0.15m/年で、間伐前後で変わらなかった。平均胸高直径成長速度は間伐前の0.18cm/年から0.43cm/年に増加した。林分材積成長速度は8.20m3/ha/年で、間伐直前の8.55 m3/ha/年からあまり低下しなかった。期首直径と直径成長速度との関係では、間伐前にみられた正の相関が間伐後にみられなくなったが、間伐20年後には再びみられるようになった。個体間競争が直径成長速度に及ぼす影響は、間伐後に一方向的競争関係がみられ、間伐16年後以降は双方向的な競争関係もみられた。比較的低い密度で管理されてきたスギ高齢人工林において強度間伐を行うことは、成長を持続させてより大径の材を生産するための施業として、一つの選択肢になり得ると考えられる。

  • 宮本 和樹, 正木 隆, 太田 敬之, 安藤 博之, 鈴木 和次郎, 須崎 智応, 池田 伸
    セッションID: D11
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    人工林の高齢級化が進むなか、齢級構成のピークである50年生前後の人工林の一部を長伐期林へ安全・確実に誘導するためには、過去の施業が現在の林分の状態におよぼす影響を明らかにすることが重要である。本研究は、茨城県内の100年生以上の高齢スギ・ヒノキ人工林を対象に、過去の密度管理が植栽木の成長やサイズにおよぼす長期的影響を明らかにすることを目的とした。スギ林ではヒノキ林と比較して伐根の腐朽が進み、古い伐根では年輪を判読できないものが多かった。各林分の50年生時の立木密度を大まかに推定したところ、多くの林分は1000本/ha以下であったが、直近で92年生時に間伐がおこなわれた106年生のスギ林では、50年生頃に1000本/haに近い過密な状態であったことが推察された。隣接する無間伐林分と直径成長を比較したところ、2011年までは間伐林分の年平均直径成長量が無間伐林分よりも有意に高かったが、その後、無間伐林分と同定度にまで低下していた。今回の事例では、壮齢時に過密であってもその後の間伐により成長の回復がみられたが、成長を維持するためには高齢林においても間伐が重要であると考えられる。

  • 大矢 信次郎, 清水 香代
    セッションID: D12
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    人工林の資源量が充実してきた近年,皆伐の気運が高まりつつある。しかし,皆伐後の再造林コストが大きいため,森林所有者からは天然更新を望む声もある。一方,長野県の主要造林樹種であるカラマツ(Larix kaempferi)は,スキー場跡地や崩壊地,林道法面など,鉱質土壌の裸出地に天然下種更新した個体が頻繁に認められ,更新コストを抑えられる可能性があるが,それを人為的かつ確実に誘導する技術は確立されていない。本研究では,カラマツ人工林において新たなカラマツ球果の着果を確認したうえで皆伐と地表かき起こしを行うことにより,カラマツの天然下種更新を確実に誘導できるか検討した。2014年に新たな球果を確認した,南佐久郡南牧村及び北相木村のカラマツ人工林において帯状伐採及び小面積皆伐を実施し,種子が落下する前の9月までに地表かき起こしを行った。翌年の2015年には多数のカラマツ実生の発生が確認できたため,以後経時的に実生数とサイズを調査し,母樹からの距離,地表の状態,競合植生との関係を評価した。その結果,地表の状態によって競合植生の植被率と最大高は異なり,カラマツ実生の生存率に影響を及ぼすことが確認された。

  • 谷口 真吾, 日暮 悠樹, 松本 一穂
    セッションID: D13
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    【研究目的】亜熱帯常緑広葉樹林を皆伐した直後の天然下種更新地において4成長期にわたり更新稚樹の樹種別の発生、消長と本数、成長に及ぼす微地形の影響を検証した。【方法】調査地は沖縄島北部にある70年生常緑広葉樹林の皆伐地(2011年に4.8haを皆伐)と隣接する残存林である。皆伐地の微地形(凹斜面、凸斜面)と残存林内の林床にそれぞれ実生調査区(凹斜面16㎡、凸斜面16㎡、林内12㎡)を設置した。調査は2012年から2015年までの各成長期にナンバーリングした更新稚樹の樹高、直径を計測した。【結果と考察】凹斜面では加入種が多く、消失種が少ない傾向であり、年々、遷移後期種の定着本数が増加した。凸斜面では加入種と消失種が同数程度であり、樹種の入れ替わりが顕著であった。本数は凹、凸斜面ともリュウキュウイチゴやアカメガシワなどの遷移初期種が2成長期までは増加したが、それ以降は減少した。樹高は常に凹斜面が凸斜面よりも高かった。スダジイなどの遷移後期種の樹高は、遷移初期種の本数が減少した2成長期以降に増加した。この結果、凹斜面は凸斜面に比べると遷移後期種が新規に加入定着しやすく、さらに伸長成長しやすい環境であると推察された。

  • 藤澤 義武, 口脇 信人, 牛島 竜希, 大塚 次郎, 近藤 禎二
    セッションID: E1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    中国南部原産のコウヨウザン( Cunninghamia lanceolata)は成長が早く、さらにシロアリ等の病害虫にも強いことが報告されている。また、針葉樹でありながら萌芽力が強いこともこの樹種の特徴の一つである。このようなことから、エネルギー、工業用原材料への利用を念頭においた本樹種によるバイオマス造林に注目が集まっている。一方、我が国には江戸時代末期に導入され、各地に林分が散在するものの、それらの成長、特に材質に関する情報は少ない。そこで、スギとの対比による材質特性の評価を行った。供試材料は比較的まとまった個体数があり、隣接して同齢のスギ林分のある4年生林分(宮崎県えびの市)、21年生林分(茨城県日立市)、56年生林分(熊本県菊池市)、99年生林分(鹿児島県垂水市)において樹高、胸高直径を測定するとともに、構造材利用における材質の指標であるヤング率と関係の深い応力波伝搬速度を測定した。その結果、コウヨウザンの成長の優位性は林齢の経過とともに低下する傾向にあるが、応力波伝搬速度はいずれの林齢においても常に大きく上回っていた。

  • 栗田 学, 福山 友博, 竹田 宣明, 佐藤 譲治, 倉本 哲嗣, 倉原 雄二, 武津 英太郎, 松永 孝治, 渡辺 敦史
    セッションID: E2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     多くのスギ人工林が主伐期を迎え、再造林用の苗木の安定的な供給が課題となっている。近年、気候変動や季節に影響されることなく農作物等の安定供給を可能とする植物工場を利用した生産技術が実用化されている。本発表では、植物工場の技術を取り入れた、新しいスギさし木苗生産手法の開発を目的に、スギさし木苗生産に適した基質について検討を行ったので報告する。 農作物を生産するための植物工場では養液栽培が行われている。養液栽培とは土壌を使わない栽培法のことで基質に水を用いた水耕、ロックウールなどの培地を用いた固形培地耕、そして霧状の培養液を根に噴霧する噴霧耕などが行われている。用土を用いず、溶液栽培を行うメリットは、重い用土の準備・交換作業、除草等の管理作業、また、植物体の掘り取りなどの収穫作業等の大幅な労力の軽減が期待されることやそれに伴う労賃等のコストカット等が期待される。今回我々は、スギさし木苗生産において、用土を用いない苗木の生産手法の検討を行い、それらの検討結果に基づき、植物工場によるスギの苗木生産の新たな方法の可能性について議論を行う。

  • 斎藤 真己, 後藤 晋
    セッションID: E3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     スギ花粉症対策の一環として、富山県では優良無花粉スギ「立山 森の輝き」の実生苗を生産しているが、実生集団では50%の頻度で有花粉の苗が混ざることから、出荷前にジベレリン処理をして強制的に着花させ、無花粉の苗を選抜している。その際に、シベレリンの影響で苗が徒長し大苗になる傾向があるため、本研究では徒長した苗の穂先(5cm程度)を切ることによって成長を抑制し、さらに切った穂先を「さし木」することによって無花粉のさし木苗も同時に生産できるのか調査した。 実生苗100個体から穂先を採取し、バーミキュライトに挿しつけしたところ、その発根率は100%だった。翌年、それらをMスターコンテナに移植し育苗したところ、2年目で出荷可能な大きさになった。穂先を切りとった実生苗は、その後、切り口から数本の穂先が出てきたが、主軸となる穂先のみを残すことで、その後は順調に生育した。これらのことから、本手法は無花粉の実生名苗とさし木苗を同時に生産できるため、有望であると考えられた。

  • 宮下 久哉, 加藤 一隆, 平岡 裕一郎, 井城 泰一
    セッションID: E4
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    森林総合研究所林木育種センターでは,1985年から開始した「地域虫害抵抗性育種事業」によりスギカミキリ抵抗性品種の開発を進めている。関東育種基本区においては,これまでにスギカミキリ抵抗性品種を7品種開発している。スギカミキリ抵抗性品種を実生苗によって普及するためには,スギカミキリ抵抗性の遺伝性を明らかにする必要がある。発表者らは抵抗性系統および感受性系統を母材料とした人工交配家系を用いてスギカミキリ人工接種試験を行った。接種試験は、平成25年に8親25家系92個体及び平成27年に9親40家系121個体について実施した。両年ともに共通して供試した家系は24家系であった。接種試験結果に基づき遺伝解析を行い、一般及び特定組合せ能力を推定した。これらの結果に基づき、スギカミキリ抵抗性品種の採種園方式による普及の可能性について検討した。

  • 池田 虎三, 戸丸 信弘
    セッションID: E5
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     ヒノキアスナロ(Thujopsis dolabrata var. hondae)は、石川県の主要な林業樹種の1つである。県内の人工林は、挿し木、伏状更新、空中取り木によって生産されたクローン苗木による造林が一般的である。そのため、県内の人工林は20程度のクローンで構成されていると推定されているが、外見上の差異が軽微なため、正確なクローン数は明らかにされていない。本研究では、ヒノキアスナロ人工林のクローン数とその分布を明らかにすることを目標として、12座の核SSRマーカーを用いて35箇所の人工林から採取した個体に対してクローン解析を行った。 12座の核SSRマーカーの累積識別能(CPD)は1-0.288×10-6であり、高い識別能を有していた。クローン解析の結果、県内35箇所180個体は14クローンで構成されており、サンプル数が多い上位6クローンで総サンプル数の93.3%(168個体)を占めていた。これらのクローン分布は、在来品種であるエソアテは県内全域、マアテ、クサアテは県内北部に分布していた。今後は、これらのクローンと県外のヒノキアスナロとの遺伝的な関係性を調査し、県内のヒノキアスナロの起源について明らかにしていく予定である。

  • Utomo Singgih, Ueno Saneyoshi, Uchiyama Kentaro, Matsumoto Asako, Tsum ...
    セッションID: E6
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    Shorea macrophylla is one of the most important lowland Dipterocarpaceae species. Ten new microsatellite markers developed aimed to evaluate its genetic diversity and structure. A total of 430 samples were collected from East, West, and Central Borneo and plantation population. East Borneo population indicated the highest genetic diversity (HE) and allelic richness (Ar) that are ranged from 0.63 to 0.72 and 7.4 to 9.6, respectively. The genetic variation within population (94%) was higher than among population (6%). The genetic structure of Shorea macrophylla showed two clusters corresponding to the historical refugia: East Borneo and Central and West Borneo. The former was the rainforest refugia, whereas the latter was covered by savannah during the last glacial maximum. This study provides an important information for development of conserving the genetic resource of Shorea macrophylla.

  • 中西 敦史, 北村 系子, 上野 真義, 倉本 惠生, 関 剛, 津山 幾太郎, 飯田 滋生
    セッションID: E7
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     北海道では、トドマツ主伐後の低コスト造林手法として、先駆樹種で林業的価値が高いシラカンバの天然更新による造林技術が検証されている。その中で、種子散布による伐開地への侵入パターンは、残存種子親の適切な配置を検証する上で不可欠な情報であり、また、侵入パターンは更新集団の遺伝的多様性に大きく影響することから、更新集団の健全性を検証する上でも重要である。本研究では集団遺伝学的手法を用いてシラカンバの種子散布による侵入パターンを推定する。北海道空知郡南富良野町のトドマツ人工林伐採後に地がきを実施した試験地において、実生および試験地周囲の成木のマイクロサテライト遺伝子型を調べた。成木ではいずれの遺伝子座においても近交係数の偏りは検出されず、また、空間遺伝構造は検出されなかったことから、成木集団では任意交配が維持され、また種子散布および花粉散布が長距離である可能性が示唆された。本発表では、さらに実生と成木の遺伝子型から、種子散布による更新地への侵入パターンを推定し、シラカンバの天然更新施業技術を検証する。

  • 長谷川 陽一, 浅野 亮樹, 小林 弥生, 福島 淳, 高田 克彦
    セッションID: E8
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    SSRマーカーは極めて有用性の高い遺伝マーカーであり様々な研究に使われている。一般に、SSRマーカーはキャピラリー式のDNAシーケンサーを用いたフラグメント解析によってDNA断片の長さを検出して多型を明らかにする。しかしながら、DNA断片の長さはリピート配列以外の挿入・欠失の影響を受けて変化するため、フラグメント解析によってリピート回数を正確に数えられているかどうかは明らかではない。そこで本研究では、次世代シーケンサーを用いてリピート配列を含むDNA塩基配列を直接決定し、フラグメント解析の結果と比較した。MiSeqシーケンサーの1回のランによって、ヒバおよびアスナロの81個体についてSSRマーカー22座における塩基配列を欠損値なしで決定することができた。決定した3564配列(81個体x22座x2n)の長さとフラグメント解析の結果を比較したところ、3478配列(97.6%)において矛盾のない結果が得られた。一方で、632(17.7%)の塩基配列でリピート以外の部分に挿入・欠失が観察された。これらのことから、塩基配列の長さではなくリピートの回数を直接数える本研究の方法は、SSRマーカーの遺伝子型をより正確に決定するために有効であると考えられる。

  • 後藤 晋, 石塚 航, 種子田 春彦, 河野 優, 鐘ケ江 弘美, 岩田 洋佳, 上野 真義, 内山 憲太郎, 久本 洋子, 津山 幾太郎, ...
    セッションID: E9
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
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    私たちは、北方針葉樹トドマツにおける標高適応の遺伝的基盤を明らかにするため、高標高×低標高(以下、高×低)のF1個体同士を交配した分離集団(239個体)を作成し、1200以上のSNPマーカーを用いて連鎖地図を作成している。昨年度は、フェノロジー形質の連鎖解析を行い、いくつかの形質に関与するQTLが検出されたと報告した。本研究では、同じ分離集団と連鎖地図を用いて、光合成に関わる生理形質の測定を行った。PAMクロロフィル蛍光装置(JUNIOR-PAM)を用いて、光合成電子伝達系の光化学系IIの光条件下での活性を個体ごとに測定して連鎖解析した結果、1つの有意なQTLが検出された。このQTLに最も近いSNP付近の塩基配列をトドマツの遺伝子データベースで検索した結果、アノテーションのついた遺伝子と高い相同性があることが示唆された。連鎖地図やデータベースのさらなる充実が必要だが、このようなアプローチを行うことで、標高適応に関与する遺伝子についての情報を得ることができると考えられる。

  • 荒木 眞岳, 玉泉 幸一郎, 梶本 卓也
    セッションID: F1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    気候変動にともなう気温上昇が森林の炭素固定機能に与える影響評価は喫緊の課題である。植物の呼吸は温度に強く依存し、温度が10度上昇すると呼吸速度は約2倍に増加する(Q10=2)ことが知られている。これまで多くの炭素収支予測モデルでは、Q10は年間で一定であると仮定されている。しかし、葉の呼吸におけるQ10は生育環境の温度と負の相関を示すことが近年明らかにされつつあり、呼吸の温度順化と呼ばれている。ヒノキの葉を材料に呼吸速度の温度依存性の垂直変化と季節変化を調べた結果、Q10は垂直変化しないこと、Q10は平均気温と強い負の相関を示すこと、順化の程度は樹冠内の位置によって異ならないことが明らかとなった。そこで、Q10の季節変化を考慮した場合としない場合で、現在の気温環境下における年間林冠呼吸量を推定した。Q10が季節変化する場合に対してQ10が一定の場合は1.44倍過大評価となった。さらに、現在の気温から一律4度上昇した場合、Q10の季節変化を考慮すると1.15倍増加したのに対し、Q10が一定の場合は1.34倍増加すると計算された(値は暫定値)。したがって、炭素収支予測モデルに呼吸のQ10の季節変化を組み込むことは大変重要である。

  • 韓 慶民, 香川 聡, 壁谷 大介, 稲垣 善之
    セッションID: F2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    樹木の結実量は、様々な要因で大きく年変動する。この結実の豊凶現象(マスティング)については、そのメカニズムの解明に踏み込んだ研究は限られていた。本研究では、炭素資源を従来の年貯蔵量の変化(資源収支モデル)から動的な需給バランスとして捉えて、種子や枝・幹など各器官の成長パターンを詳細に解明するとともに、資源を巡る各器官の競争関係および資源の需給関係を明らかにすることを目的とした。新潟県苗場山90年生ブナ林において結実と非結実個体を対象に、定期的に葉や枝、種子などを採取し、それらの安定炭素同位体比を比較し、いつどのような炭水化物が各器官の成長に配分されているのか調べた。その結果、新しい枝の成長には、結実の有無とは関係なく、その年に光合成で作られた新しい炭水化物が主に利用されていた。しかし、結実した個体では、種子の成熟にも多くの新しい炭水化物が必要になるため、枝のサイズが小さくなり、また樹体内に貯蔵されていた古い炭水化物も種子の成長へ配分するなど、利用する炭水化物の種類を変化させることで、種子生産に伴う炭素資源の制約に対して巧妙にやりくりしていることがわかった。

  • 檀浦 正子, 辻 祥子, DESALME Dorine, PRIAULT Pierrick, PLAIN Caroline, EPRON D ...
    セッションID: F3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    Carbon transport failure under drought may lead to tree die, which is an important issue to predict the future of forest under climate change. Our objective was to understand how differences in phloem anatomy affect its function under drought stress. The study was conducted in a nursery in France on 9 year-old beech saplings where two levels of drought stress were continuously applied for 2 years. Three trees of each treatment including control, were selected and 13C pulse labeling was conducted to see the carbon transfer through phloem. The cross-section area of sieve tubes, the thickness of inner bark and the sieve tube density were estimated using microphotographs. The average size of sieve tube’s section was smaller in trees under drought than in control. A 13C labeling experiment showed slower carbon transfer rates in the drought stress trees. We conclude that the differences in phloem anatomy accounted for higher resistance to the phloem transfer under drought.

  • 作田 耕太郎, 村上 周
    セッションID: F4
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     近年,管理放棄された竹林の拡大によって,隣接林分での生物多様性や水源涵養機能の低下などが懸念されており,タケ類の生物学的特性についてより詳細に解明する必要性が高まっている。 タケ類はいわゆるケイ酸植物であり,土壌より吸収され,道管を通じて輸送されたケイ酸が地上部の各部位に沈積することで,病虫害に対する耐性などに機能する。しかし,タケ類は二次肥大成長を行わず,地上部は複数年を同一の道管のみを使用して生存している。そのため,齢を重ねるごとに水分通導経路へのケイ酸集積量は増大し,地上部の水分生理状態あるいは機能に負の影響をもたらす可能性がある。 本研究ではマダケ (Phyllostachys bambusoides)を対象として,野外での地上部の水分生理状態および機能の加齢にともなう変化について調査した。さらに葉,枝および稈ごとの解剖学的観察などから,加齢による水分生理的な変化の要因について推測を行った。その結果,地上部の加齢にともなって,葉の日中蒸散速度や枝および稈の通水性が低下すること,そして,枝や葉での道管閉塞率の上昇やケイ酸集積量の増加が確認された。

  • 平川 雅文, 長田 晃佳, 寺田 康彦, 福田 健二
    セッションID: F5
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     樹木において木部組織の樹液流速の測定は、樹木の健全性の評価や、地球上の炭素循環や熱収支を知るという観点において重要な課題である。従来の樹液流速測定法では、樹幹内に挿入した熱センサーの点の近傍での樹液流速の平均値や、特定の高さの樹幹横断面における樹液流速の平均値を測定してきた。しかし、樹木の樹幹横断面には様々な組織が含まれ、樹液流速分布は均一ではないため、従来法により測定された値は、実際の道管の通水状態を直接表したものではなく、樹幹横断面での樹液流速の子細な分布の測定も不可能であった。しかし、非破壊観察手法であるMRI (nuclear Magnetic Resonance Imaging)を用いることで、樹幹横断面における各ピクセルの樹液流速分布を画像化することが可能である。本研究では、MRIを用いた2種の水分子の移動速度の定量化手法(ADCマッピングと位相シフト法)を用いて、ゲッケイジュ(Laurus nobilis)とケヤキ(Zelkova serrata)の苗木の樹幹横断面における水分子の移動速度を可視化した。また、ケヤキにおいて、樹液流速の日変化の測定を行い、従来法では観察することが難しかった大径道管と小径道管における通水特性の比較検討を行った。

  • 吉村 謙一, 才木 真太朗, 木村 芙久, 甲野 裕理, 矢崎 健一, 丸山 温, 石田 厚
    セッションID: F6
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    小笠原にある乾性矮低木林は国内では珍しく強い乾燥ストレスがかかる森林である。この森林において乾燥下での樹木生理応答を調べることは、乾燥が森林に及ぼすインパクトを表現する上で重要である。樹木は強い乾燥ストレスがかかると、道管内の水がキャビテーションにより水切れを起こ、これが継続すると枯死する危険性が高まる。一方で降雨などで水分が供給されると通水機能が回復するのではということが指摘されている。樹木枯死は自然条件下では偶発的にしか生じないため、このような生理プロセスと野外での樹木の衰退は直接的に結び付けてこられなかった。そこで、夏の小笠原において乾燥過程とその後の降雨による枝の通水機能の変化の個体差を評価するためにシャリンバイ31個体の枝通水性の時系列変化を調べた。乾燥初期には通水欠損に個体差はあまりみられなかったが、最も乾燥する時期には個体によって大きく異なっていた。降雨後は早々と通水回復する個体とむしろ通水欠損が進行する個体の二極化が起こっていた。このように回復と衰退にはなんらかの分岐点が存在することが示唆された。

  • 斎藤 秀之, 小林 壱德久, 和田 尚之, 神村 章子, 小倉 淳, 瀬々 潤
    セッションID: F7
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    遺伝子発現に基づく樹木のストレス診断技術の開発に向けて、これまでブナ葉を対象に乾燥・高温・酸化の環境刺激に対して特異的に発現する遺伝子や、衰退木の葉で特異的に発現する遺伝子の選抜を行い、各々の指標化を行ってきた。次の課題として、環境指標と衰退指標の関係性を診断するために、遺伝子のシグナル伝達に基づいた因果関係の評価法が求められる。本研究では、主要な遺伝子に絞った遺伝子発現データからシグナルネットワークを推定することで、環境変動と樹木の衰退の因果推論が行えないかについて検討した。ブナ天然林(6林分)で採取した葉のRNA-seq解析データを用い、ベイジアンネットワーク推定を行った。現実的に計算可能な条件は解析ノード数が約300遺伝子で親ノード数の上限が3の範囲だった(CPU:Intel Xeon E5-2670,メモリ最大消費11.0 G,CPU時間3.4日間)。さらに現地の環境データとシュート成長量のデータを条件に加えたところ、遺伝子ネットワークは環境要因から成長量までを有向ネットワークで結び、既知の代謝経路(KEGG)と遺伝子発現データを加えることでシグナル伝達の生理学的解釈が可能になった。これらに基づいた因果推論について紹介する。

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