日本森林学会大会発表データベース
第132回日本森林学会大会
選択された号の論文の645件中251~300を表示しています
学術講演集原稿
  • 森田 えみ, 角谷 寛, 山田 尚登, 久保 陽子, 竹内 研時, 篠壁 多恵, 川合 紗世, 内藤 真理子, 若井 建志
    セッションID: P-012
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】森林浴を一回した場合の急性効果では、森林浴当日の夜は睡眠時間(計測値)が延伸し、主観的な睡眠の深さが良くなることが報告されている。このため、習慣的に森林浴を行えば睡眠障害の予防につながる可能性がある。よって、本研究では一般人の大規模集団にて森林散策頻度と不眠症との関連を検証した。

    【方法】日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)大幸研究の二次調査に参加した2,202人(男性570名、女性1,632名、平均年齢58.7±9.9歳)を解析対象とした。森林散策頻度は4群に分け(月1回以上、年数回、年1回、行かない)、不眠重症度質問票(ISI: Insomnia Severity Index)が10点以上を不眠症の疑いと定義した。従属変数を不眠症の疑いとし、独立変数を性別、年齢、喫煙、飲酒、運動習慣、BMI、森林散策頻度としてロジスティック回帰分析を行った。

    【結果】不眠症の疑いの割合は、森林散策頻度が月1回以上の群で22.9%、年数回29.5%、年1回29.2%、行かない34.0%であった(Trend p=0.001)。月1回以上の群に対して、行かない群の調整オッズ比は1.77(95%信頼区間1.25-2.52)であり、習慣としての森林浴は睡眠障害の予防に有益な可能性が示唆された。

  • 柴田 嶺, 小黒 芳生
    セッションID: P-014
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    国立公園の来訪者がどのような生態系や景観に魅力を感じており、どのようなアクティビティを楽しんでいるのかを把握することは、国立公園を管理する上で重要である。本研究では国内で利用者数が多いソーシャルメディアであるTwitterに投稿された位置情報付きの写真を分析することで、来訪者が各国立公園の何に魅力を感じているのかを評価することを目的とした。

    国内の34箇所の国立公園を対象とし、エリア内に位置情報が付与されたTwitterの写真画像データを取得した。2018–2020年の3年間に投稿された計45万枚を分析に用いた。写真の内容を定量的に把握するために、Googleが提供する画像認識AIであるVision APIを用いて、写真に写されている生態系や景観の要素(森林、湖、草原など)とアクティビティ(キャンプ、登山など)を抽出した。各国立公園を特徴づける写真をクラスター分析等により評価した。

    国立公園により来訪者が魅力を感じる景観等が異なることを示すことができた。例えば、十和田八幡平国立公園の写真投稿数のピークは2月と10月に見られ、それぞれ雪景色と紅葉に特徴づけられた。一方、阿寒摩周国立公園は8月にピークが見られ、湖や山の景観に特徴づけられた。

  • 秋山 リカ, 愛甲 哲也
    セッションID: P-015
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     第10回生物多様性条約締約国会議に向けて行われた国立・国定公園総点検業務(2010)では、国立・国定公園が重要生態系地域をどのくらいカバーしているかに関する点検が実施された。これにより平成31年までを目途として、国立・国定公園の新規指定・拡張を実施する18候補地が選定され、現状では候補地のうち一部完了を含め12地域が新規指定・拡張を実施している。本研究は新規指定・拡張を実施したことによって、重要生態系地域のカバー面積がどのように変化したのかを明らかにすることが目的である。研究には総点検業務で使用された重要生態系地域に関する地理情報を利用し、地理情報システムArcGISを用いてGAP解析を行った。

     その結果、新規指定・拡張後にほとんどの重要生態系地域でカバー面積が増加し、海域公園地区や普通地域からの振替によって特別地域の面積が増加している地域も見られた。一方で新規指定・拡張後も、重要生態系地域でありながら、国立・国定公園に含まれていない地域が存在していた。このことから、未だカバーされていない重要生態系地域を今後どのように保全していくのか考えていく必要がある。

  • 福島 雅之
    セッションID: P-016
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    研究背景・目的

     近年、自然保護地域保全において、入域料の徴収が注目されている。日本では、富士山で入山料が任意で1人1000円、沖縄県竹富島では、入島税が1人300円徴収されている。しかし、先行研究によれば入域料徴収の効果や使途に関するデーターが欠如しており、入域料徴収による負の側面の検討を行う必要性が示唆されている。

     本研究では、日本を含めた各国の自然保護地域での入域料徴収事例を調査して、今後の日本における入域料導入に向けた考察を行うことを目的とする。

    調査結果・考察

     第一に、入域料を徴収している地域は世界中に存在しているが日本よりも金額は高いことが明らかとなった。徴収した金額は環境保全等に充当しており、アメリカのイエローストーン国立公園では入園料を8割が環境保全、快適な観光の実現に使用されている。

     第二に、入域料を徴収に関する地元住民との情報共有が不十分であることが明らかとなった。アメリカでは、入域料導入に賛成者が多いが低所得層を中心により安価な入域料を望む声が多い。日本でも、入域料導入に当たって地域住民への割引や低所得者への配慮は少なく議論を開始していく必要があるのと考えられる。

  • 伊藤 瑠海, 愛甲 哲也, 庄子 康, 松島 肇, 金 慧隣, 八尋 聡
    セッションID: P-017
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     国立公園などのレクリエーション地では、過剰利用による利用体験への影響を把握する指標として混雑感が用いられている。混雑感は現地での調査に加え、webアンケートでの把握も行われているが、両者の評価の違いは明らかになっていない。また、現地の利用状況や管理形態が変化した場合に、混雑感の評価にどのような影響があるかを把握することが適正収容力を検討する際に重要である。本研究では、2014年と2020年に知床国立公園カムイワッカ湯の滝において、現地アンケート調査と市民を対象としたwebアンケート調査の回答より混雑感を把握し、現地とweb調査、実施年による比較を行った。混雑感評価はモンタージュ写真を用い、混雑度が段階的に異なる複数の写真について、これ以上混み具合を許容できないと判断した写真を1枚選択してもらった。その結果、現地とweb、実施年で許容限界には違いがあり、webでの回答は現地の回答よりも許容限界が低く、 2020年の回答も2014年より許容限界が低くなった。現地およびweb調査、両者の評価を加味した混雑感の把握の重要性が示唆され、また、現地の実際の利用状況などの要因と混雑感の関連性について検討する必要があると考えられる。

  • 中野 研人
    セッションID: P-018
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    健康志向の高まりによるランニングブームや多様なアウトドア体験のニーズの高まりを背景に、全国の山岳地でトレイルランニング(トレラン)大会の開催が増加傾向にある。トレラン大会は一時的な交流人口の増加を果たし地域振興に寄与している一方、大会参加規模によっては大会コースとなる登山道への環境負荷が懸念されている。本研究では日本山岳耐久レース長谷川恒男CUPを対象に、大会コース上の脆弱区間(環境負荷を大きく受ける区間)の抽出を試みた。脆弱区間の把握には、多くのランナーが登山道上を走る(歩く)ことで踏圧を受ける観点から、現地調査よりコース上の土壌硬度の把握を行った。脆弱区間の抽出には既存の各種GISデータを用いて標高、斜面方位、傾斜角、TWI(湿潤度)、TPI(地形指数)のレイヤを作成し、現地調査で得られた土壌硬度の値を重ね200mの区間ごとに作成し、オーバーレイ解析により脆弱区間の抽出を行った。解析結果より脆弱区間として抽出された地点は23カ所、区間距離の総計は4.6kmで、大会コースのうち約7.4%に該当することが明らかとなった。

  • 八尋 聡, 愛甲 哲也, 庄子 康, 松島 肇, 金 慧隣, 伊藤 瑠海
    セッションID: P-019
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     国立公園の一部では自動車利用増大に起因する問題への対策として、マイカー規制とシャトルバスの運行が行われている。利用者の行動を制限する手段であり、規制に対する利用者の理解および、それに伴う行動の変化を把握することが求められる。知床国立公園では、交通渋滞と道路上でのヒグマと利用者との軋轢に対処するため、これまでの車両規制区間の見直しが検討されている。本研究では知床における車両規制区間拡大案に対する利用者の態度、並びに規制実施に伴う園地や施設の利用者数の変動を明らかにした。これらより、規制への理解を広げる上での課題を考察することを目的とした。

     2020年8月から10月に、従来の車両規制期間、規制のない期間、実験的に区間拡大案が実施された期間の利用者に対して、現地での意識調査を実施した。その結果、拡大案に対する支持はシャトルバス乗車経験との関連がみられ、実際に拡大案の規制下で乗車した利用者が最も高いことが示された。利用者数の変動については、拡大案の実施による大きな減少は見られなかった。これらより、規制の導入やその施策変更を、実験や周知とともに段階的に推し進めていくことの重要性を考察した。

  • 小山 泰弘, 松原 秀幸
    セッションID: P-020
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    林業の現場技術者を育成する緑の雇用研修では、新人研修として3年間をかけて基本姿勢や基礎力を習得し、一人前の現場技能者として育てており、林業従事者の増加や若年齢化に寄与しているが、林業は死亡災害の多い業種として厚生労働省でも大きな問題となっている。実際、緑の雇用修了生が活躍する現場を訪れてみると、安全への意識が高まらない印象があり、対策が必要と考えていた。これに対して、地域の林業をけん引するリーダーの育成を目指すために知識や技術の習得を目指す当所主催の森林林業セミナーでは、研修生の安全に対する意識が高く、修了者の作業を比較して、安全な作業への配慮が強く感じられた。この原因を探るため、両者の研修に対する取り組み姿勢の違いを探ったところ、座学における学びの姿勢に違いが認められた。直接安全作業とはかかわりのなさそうな樹木学の講義は、緑の雇用研修生の習熟度が上がらなかったうえ、労働安全に対する規程等も認識していないケースが目立った。森林林業に携わる上では、座学での基礎知識が身についているかどうかを判断することが、安全教育を推進する上で極めて重要と言えた。

  • 井上 真理子, 大石 康彦
    セッションID: P-021
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    高校の森林・林業科目は,教科「農業」に含まれ,農業高校などで教えられている。林業の専門学科は,学科改編などで34校(2019年)に減り,他は,農業の他分野と統合した学科になり,科目は,農業土木や造園と共に農業の環境分野に括られた。平成30年改訂の『学習指導要領』では,各科目で何をどのように学ぶかを明らかにしすることが求められており,森林・林業の教育内容の再検討が必要となっていえる。そこで,科目「森林経営」を対象に,21世紀における農業教育の変化をふまえて科目のあり方を検討した。農業教育では,専門分野への就職を想定した職業教育が,進学を含む専門教育の基礎・基本になり,農業の社会的な役割として国土・環境の保全機能が重視されてきた。環境分野が創設され,環境の基礎科目が設置されたが,教育内容に木材生産を含まない。「林業経営」から名称変更した「森林経営」では,教育内容に森林の多面的機能や空間利用が増えたが,森林計画にもとづく林業が中心で,林業技術者の養成を図った時期の内容を継承していた。「森林経営」を農業の環境分野と捉え直すと,緑地や自然公園などの自然環境の持続的な管理・利用を含むことが必要と考えられた。

  • 小川 結衣, 深澤 圭太, 吉岡 明良, 熊田 那央, 竹中 明夫
    セッションID: P-022
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    近年、生物のデジタル情報に基づくCitizen Scienceが注目されており、野鳥のデータ収集においても、録音された鳴き声から種組成を把握する試みが行われている。しかし、録音された音声から種判別を行う技能を持った参加者の育成が課題であった。そこで、発表者は個々人の習熟度に応じて学習プログラムが適応的に変化するAdaptive Learningに基づいた、音声種判別スキル向上のためのクイズ形式のトレーニングツール「とりトレ」を新たに開発した。そして、ランダム化比較試験により「とりトレ」の適応的なクイズ出題がトレーニング効果や利用者の意識に与える効果を評価した。

    試験では、参加に同意した大学生80名程度を無作為に2群に分け、一方が適応的なクイズを、他方がランダムに問題が出題されるクイズトレーニングを実施し、両者のトレーニング前後における野鳥の鳴き声の習熟度を比較した。また、両者にアンケート調査を行い、意識(満足度・鳥類への興味関心等)の差を把握した。本発表では、開発したとりトレの紹介と2021年1~2月に実施した調査結果について報告する。

  • 小川 高広
    セッションID: P-023
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    本発表では、林業大学校のカリキュラム編成および履修科目の特徴を把握するために実施した文献調査の結果を報告する。調査対象校は全国に所在する全ての林業大学校(林業専攻を有する農林大学校を含む)19校とし、各校が発行する令和2年度のカリキュラム・教育課程表を分析に用いた。特に一般教養科目や専門科目および就業体験(インターンシップ)などの有無、その割合を確認した。この結果、修業年限が2年の林業大学校では林業専門科目に加え、一般教養科目やそれに類似した科目が取り入れられたカリキュラム編成になっていたことがわかった。他方、1年制の林業大学校では一般教養などの科目が、全く設けられていない傾向にあり、専門科目の履修に特化したカリキュラム編成になっていた。就業体験やインターンシップなどの科目については、全ての林業大学校で履修科目として定められていた。修業年限によるカリキュラム編成の特徴が明らかとなった。

  • 水井 英茉, 杉浦 克明, 井上 真理子
    セッションID: P-024
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    森林科学を学べる大学でも改組が進められ,森林科学(旧林学)の学問体系は以前とは異なってきている。大学教育は,全国で画一的に行われるものではないが,森林科学としての体系的なまとまりや最低限の共通性は学問分野として重要である。そこで,本研究の目的は,大学教育で専門教育の内容を検討するために,森林系の資格試験の中でも高度な資格である技術士(森林部門)を対象に,試験内容の分析を行い,高等教育の森林科学に求められる内容を明らかにすることとした。方法は,技術士(森林部門)の2004年度から2020年度の過去問題を対象とし,森林・林業実務必携を参考に,試験内容の分類と整理を行った。その結果,1次試験では「山地防災と流域保全」,「基盤整備」に関する問題が多く,2次試験では「山地防災と流域保全」,「育林」の順に多く出題の傾向が見られたが,1次と2次試験ともに実務必携掲載の26項目のほぼ全ての分野の知識を必要としていた。よって,技術士試験では,森林科学(林産分野を含む)の知識が広範囲に求められており,大学の専門教育にも網羅的な構成が必要と考えられた。

  • 田中 千賀子, 井上 真理子, 大石 康彦
    セッションID: P-025
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     大学における森林・林業に関わる専門教育の内容が広がり、当分野を担う人材育成の拡充が求められているが、高等教育の現状は把握されていない。森林科学の専門学科と、森林科学単独の専門学科の事例における専門科目を分析した井上ら(2020)の先行研究では、多様な名称の専門科目があり、大学間で必ずしも共通の科目が開講されていないことが報告されている。 

     本報告では、各大学の教育内容を概観するために、森林・林業に関わる学科・コースなど(合計41)を設置する31校(林野庁、2020)について、研究室の設置状況をホームページから分析した。研究室が確認できたのは19校(研究室総数214)で、他に研究分野等の紹介10校(総数147)、不明2校2専修などであった。森林科学の単独学科(7校)では、各校8~17の研究室・分野(総数76)があり、「森林生態学」や「森林計画学」などがあった。その他では、「森林資源管理学」や「森林社会共生学」など森林や林産学の関連に加え、農学や土木学などを含む場合があり、森林・林業の専門教育としての整理が必要であった。各大学の学科等における教育課程の体系の把握を前提に、専門教育を分析する必要があることが確認できた。

  • 倉本 宣, Wu ximei, 野川 健人, 藤掛 素子
    セッションID: P-026
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    生物多様性についての教育プログラムは客観的な情報を伝えるというアプローチに加えて、参加者の主観的な認識を引き出して分かち合うことによって、参加者の多様な認識から学ぶというアプローチを取ることが有効である。そこで、学生が明治大学生田キャンパス内の興味地点について、写真と解説文とタイトルからなる解説サインを制作して、その地点で他の学生にわかちあいを行うプログラムを開発した。最初に学生がそれぞれキャンパスを一周し、そのあと興味地点を決めて、スマートフォンで写真を撮影し、TAが写真を印刷したのち、学生がケント紙に写真を張りタイトルと解説文を手書きで記入した。テーマは多様で、重複は少なかった。現地でのわかちあいは一人で多数の学生に対して説明したので、説明した学生にとっての心理的負担が大きかった。負担を軽減するには、一人ではなくグループで説明することが望ましいと考えられる。現在は、このプログラムを雑木林が主体の大規模公園である生田緑地のプログラムとして来年度から実施するため、指定管理者の職員が解説サインの作成を試験的に行っているところである。

  • 中村 和彦, 藤原 章雄, 小林 博樹, 斎藤 馨
    セッションID: P-027
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    森と人との関係が複雑化しながらも、その重要性が高まる昨今、望ましい関係のあり方を科学的根拠のみに立脚して提示することは困難になっている。この状況においては、森と人とを“繋ぐ”というには単純すぎるきらいがあり、一歩一歩確かめるように“紡ぎ直す”ような取り組みが必要と考えられる。教育的観点からは、科学的知見のみでは解決できない事項の学習に際して、感性的アプローチの可能性がよりひろく検討されるべきと考えられる。ここでの感性とは、人間の五感に着目した直接的体験によるものに限らず、物事を心に深く感じ取るという精神的な認識をも含むものである。これはしばしばWonderという表現によって議論されるが、例えばSchinkel(2017)は“Deep Wonder”の教育的重要性について「知ることができないことを認識する」といった観点から論じており、このことは特に気候変動緩和や生物多様性保全といった事項の学習において考慮すべき観点と考えられる。本発表では、これまで発表者らが取り組んできた森林映像アーカイブの活用を軸とする一連の森林環境教育実践について、感性的アプローチの視座から再整理を試みる。

  • 田中 樹己, 村上 拓彦
    セッションID: P-028
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    環境省発行の1/2.5万現存植生図(以下植生図)は、様々な用途において植生情報を得るために用いられているが、作成団体や作成年代のばらつきがあるためその精度は必ずしも十分ではない。本研究の目的は、林野庁が実施している森林生態系多様性基礎調査(以下日本版NFI)のデータを真値と仮定し、両者を比較することで植生図の精度評価を行うことである。使用したデータは環境省発行の1/2.5万現存植生図(第6、7回調査分)、林野庁提供の日本版NFIデータ(第3期)である。日本版NFIにおいて得られた土地利用、優占樹種等の情報を解析プログラムで出力し、GIS上でポイントデータに変換後、重なった地点において植生図の属性情報と比較を行った。植生図の整備済メッシュ(2019年11月時点)の範囲において両者を森林と非森林の2属性に分類して比較した結果、一致度は92.6%、針葉樹人工林・その他森林の2属性に分類して比較した結果、一致度は80.7%であった。一致点比率に地域差があるかについて、平面直角座標系毎に検定を行った結果、森林と非森林の比較では7割の座標系において差がみられたが、針葉樹人工林とその他森林の比較で差がみられたのは3割であった。

  • 西岡 昌泰, 太田 徹志, 溝上 展也
    セッションID: P-029
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    森林は斜面を安定させ表層崩壊や土壌侵食を軽減する一方で、自然災害の発生源となる場合がある。平成29年7月九州北部豪雨では、福岡県朝倉市や大分県日田市などで24時間雨量が観測史上1位の値を記録し、斜面崩壊や崩壊に伴った流木、土石流が森林から発生し、大きな被害をもたらした。この災害を受けて、土地被覆や森林管理の状態と斜面崩壊の関連が問題視されている。しかし、土地被覆と斜面崩壊に関する既往の研究では、土地被覆が位置する地形や岩質などの分布の偏りを考慮した研究や森林を複数のタイプに区分した研究が少ないため、土地被覆と斜面崩壊の因果関係が明らかではない。そこで、本研究では人工林や天然林、果樹などの土地被覆間での分布の偏りを加味するため、地形、地質、雨量などを共変量として傾向スコアマッチングを行い、平成29年7月九州北部豪雨における土地被覆と斜面崩壊の関連を評価した。その結果、天然林と20年生以上の針葉樹人工林はいずれも20年生未満の針葉樹人工林より崩壊確率が有意に低かった。当日の報告では、その他の土地被覆と斜面崩壊の関係についても報告する。

  • 山下 淳也, 長島 啓子
    セッションID: P-030
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    人工林の針広混交林化や広葉樹林化が注目を浴びる中、森林計画において広葉樹の再生や管理のあり方が問われると考えられる。本研究ではその管理に必要な広葉樹の様々な樹種の分布や優占の特性を把握ため、林分の優占種となりうるコナラ等の樹種を対象に立地環境に基づいてそれらの分布特性の把握を行った。対象地は、京都盆地の三方を取り囲む山々である。対象地内に10m×10mの方形区を130ヶ所設置し、毎木調査を行ったデータをもとに解析対象樹種を選定した。そして、傾斜・凹凸・堆積様式・表層地質・表層土粒径の5つの立地環境因子の主題図を数値標高モデル等のデータを用いて作成し、それらの図をオーバーレイすることによって立地環境図を得た。また、毎木調査のデータから胸高断面積合計及び胸高断面積割合を算出し分布度及び優占度の指標としたほか、この値を用いてクラスタ-分析を行った。その結果得られた分類群間の立地環境の差異をみることで、立地環境と分布度及び優占度の関係を把握した。最後に、解析結果を立地環境図にエクスポートし、ポテンシャルマップを作成した。

  • 向井 花乃, 長島 啓子
    セッションID: P-031
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は、現場で判断することができる立地環境因子を用いたヒノキ・スギの成長ポテンシャルの評価を行うことを目的に、ポテンシャルマップの作成を行った。研究対象地は、京都府立大学大枝演習林である。解析にあたって、傾斜角区分図、凹凸地形区分図、堆積様式区分図をオーバーレイして作成した立地環境区分図と林相区分図をオーバーレイすることで、ヒノキ林とスギ林の立地環境を把握した。ヒノキ林・スギ林の立地環境の組み合わせのうち45%、68%を網羅する立地環境から、試料木28本、26本を伐採し、樹幹解析によって樹高成長を把握した。樹高成長の傾向が同じ立地環境をグループ分けするため各立地環境の平均樹高データをもとにクラスター分析を行い、得られた立地環境群の樹高成長曲線を作成し、40年生時の樹高が高い立地環境群からヒノキは成長A~C、スギは成長A~Dとランク付けした。そして、各ランクの立地環境をもとにポテンシャルマップの作成を行った。また、成長ポテンシャルに影響する立地環境因子を判別するために決定木分析を行ったところ、ヒノキでは匍行土の谷や凹型の場所で成長がよく、スギでは谷や凹型の場所で成長がよい傾向がみられた。

  • Simone VONGKHAMHO, Kazukiyo Yamamoto, Chisato Takenaka, Akihiro Imaya
    セッションID: P-032
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    Teak (Tectona grandis Linn. F) is a globally valuable hardwood tree species, and the growth performance is important for timber productivity. The purpose of this study is to establish an effective management system of teak plantations in the Lao PDR. Since the site index is a significant indicator of the growth performance, we investigated the relationship between the site index of teak and site characteristics in the Luang Prabang province of the Lao PDR. The stem analysis data were collected from 81 dominant trees (three trees per plot) in 27 teak plantations of various stand age and site condition, were used to estimate site index by growth curve of Richards function. The results of partial correlation, and multiple regression analysis, using the stepwise method indicated that the site index was affected by slope position, elevation, and slope gradients.

  • 舘田 一歩, 松英 恵吾
    セッションID: P-033
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     近年、木材価格の低迷、技術者の不足などの問題から間伐手遅れ林が増加しており、間伐の低コスト化が強く求められている。高性能林業機械の普及によりこれらの問題に対応できる列状間伐が近年多く採用されているが、列状間伐後の樹木の成長解析に関して研究された例は少なく、また、伐採隣接列と伐採非隣接列に分けて検討することが望ましいとされているがそのような研究例もほとんどない。

     そこで本研究では、宇都宮大学農学部附属船生演習林に所在するヒノキ列状間伐林(林齢59年)について過去11年間の樹高および胸高直径の毎木調査資料に加え、UAV、航空機LiDARによる点群データから列状間伐区(1伐3残区、2伐3残区、2伐4残区)それぞれと無間伐区での樹冠及び胸高断面積の成長比較を行った。その結果、列状間伐によって特に胸高直径中央値付近の樹木での肥大成長が促進されていることが確認された。また、伐採隣接列と非隣接列での成長差は2伐3残区のみで確認され、林分の地位による影響が考えられた。そして、点群データを用いて樹冠成長量の解析を行い、列状間伐後の胸高断面積成長量と樹冠成長量との関係について検討を行った。

  • 徐 喬逸, 石橋 整司, 安村 直樹, 當山 啓介
    セッションID: P-034
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    名古屋という大都市を中心にした中京地域は、その周辺に多数の有名林業地が存在する地域である。この中京地域において木材市場に出入りする木材の動きが時代とともにどのように変わってきていたか、文献資料や統計資料を基に分析した。古く江戸時代以前から木曽地方との関係が強かった中京地域の木材市場は1900年代に名古屋港が開設され、木曽川による流送と海からの船舶輸送により原木が集められた。また1920年代から北洋材(樺太材を含む)が大量に入荷されるようになり取り扱う木材の量が急激に増加した。戦時中は長距離の船舶輸送が困難となり名古屋周辺の林業地から木材を集めるのみとなったが戦後は外材輸入が盛んになり南洋材を多く取り扱うようになった。昭和30年代の資料によると名古屋市場は東京や大阪に比べて素材入荷量の割合が高く生産的な性格が強かったとされている。現在に至っても東京や大阪を中心とする地域に比べて愛知を中心とする地域では製材工場の数が多く中京地域の木材市場の特徴が生産市場的性格にあると考えられるが、1987年には製品輸入が丸太輸入を上回っており、現在では丸太輸入量は10%程度になっている。

  • 陳 田, 石橋 整司, 安村 直樹, 齋藤 暖生
    セッションID: P-035
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    日本では、里山を中心に管理放棄された竹林が拡大し、周囲の雑木林や人工林に侵入する現象が多く見られている。竹林拡大により発生する災害も顕著になっており、竹林拡大現象は徐々に問題視されてきている。竹林拡大問題はいくつかの社会的要因および生態学的要因によって生じるといわれており、地域ごとの歴史的あるいは文化的背景が竹林や竹林拡大現象に対する住民の対応に反映され、竹林拡大への取り組みは地域の特性に応じて異なることが推察される。そこで、竹林拡大対策の地域性に着目し、竹林拡大現象のメカニズムや竹林拡大対策について地域の特性を分析・比較すると同時に有効な対策について検討する。本研究では、長年にわたり竹文化を伝えてきた地域である京都府と日本一の竹林面積をもつ鹿児島県を対象に、竹林拡大問題の現状と対策についての情報を収集・調査・分析し、特徴や相違点について比較検討することでそのメカニズムを明らかにすることを試みた。検討の結果、竹林拡大に対し積極的に竹を利用する取組みの活性化を狙う姿勢は共通していたが、民間主導の活動を展開する京都府に対して鹿児島県では行政主導の活動が展開されるなどの特徴が見られた。

  • 野嶋 健太郎, 園原 和夏, 藤沢 直樹
    セッションID: P-036
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は,間伐による林地残材がニホンジカの行動にどのように影響するのか調査を行った。神奈川県秦野市上地区のスギ人工林内に間伐区と無間伐区の対照区(30m×30m)の2つのプロットを設定した。間伐区においては,2017年にNPO団体により間伐が実施され,林内に残された間伐材の配置を記録した。下層植生被覆率は間伐区で約80%,対照区で約50%であった。プロット内には自動撮影カメラ(LtlAcom6210MC)を12台設置し,2018年から3年間の撮影結果を基に林内のニホンジカの行動を分析した。その結果,出現頻度はどの年においても対照区の方が多かった。また,対照区では調査区内で下層植生を採食する個体が確認されたが,間伐区では調査区の境界線付近には出現するものの,調査区内に侵入する個体や採食をする個体はほとんど見られなかった。対照区が間伐区よりニホンジカの出現頻度が多い要因として,間伐区に放置された林地残材を避けて行動している可能性が考えられた。以上から,林内に間伐区を残すことでニホンジカによる下層植生の食害対策としての効果が期待できるのではないかと考える。

  • 加藤 鞠乃, 佐藤 孝吉, 吉野 聡
    セッションID: P-037
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    森林保険は、被災跡地の早期復旧や林業経営の安定に大きな役割を果たしている。しかし近年保険への加入率は低迷し、それに伴う問題も指摘されている。このことから、加入を増やす必要性は高まっていると考えられる。先行研究では、加入率の低迷要因については検討されてきたが、変動要因を検討した論文は少ない。加入を増やすためには、低迷要因だけでなく、変動に影響を与える要因も把握する必要があると考える。そのため、変動要因を明らかにすることを目的とし、重回帰分析を行った。対象は、平成元年~30年の間で加入率の変動が見られた9都県(青森県、秋田県、東京都、岐阜県、三重県、和歌山県、島根県、岡山県、大分県)と、全国のデータを用いた。また、目的変数は森林保険加入率とし、説明変数には造林面積、素材生産量、林業費、災害復旧費、林業産出額、被害額の合計、年間降水量、年間平均気温を選択した。分析の結果、「素材生産量」、「林業費」、「被害額」が変動に影響していることが示唆された。この結果について原因を考察し、加入率の上昇には、被災リスクに応じた加入の強化や保険料の設定が有効だと考えた。

  • 劉 立航, 石橋 整司, 安村 直樹, 當山 啓介
    セッションID: P-038
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     中国の湖北省西部に位置する神農架林区の発展の歴史を整理し、神農架林区政府の行政システムと森林管理について分析・評価した。神農架林区政府は「神農架林区林業管理局(国有企業)」、「神農架国家自然保護区管理局」、「大九湖湿地公園管理局」という3つの管理局を政府の下に設立し、各管理局には直接省政府に報告する特別な権限を与えている。このシステムは森林保護には効率のいいシステムであり、神農架林区の森林が守られたのはこうしたシステムが有効に働いたためと考えられた。また神農架林区政府が生態観光の建設と開発を担当し、神農架旅行集団が神農架林区林業管理局によって管理されている森林を利用して観光産業を進めるというシステムとなっており、この分担システムが観光産業の発展という成果に結びついていると考えられた。一方、郷鎮に対する管理システムには大きな特徴はなく、住民の管理に特別なところはない。観光産業の発展による観光客の増加に伴い、森林保護のコストは増加し、管理作業も難しさが高くなると考えられるので、今後はあらためて政府機関としての神農架林区林業局を設立し森林を管理するべきだと考えられる。

  • 陸 黎駿, 石橋 整司, 齋藤 暖生, 當山 啓介
    セッションID: P-039
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    森林レクリエーション活動に伴う山菜やキノコの喫食による食中毒事故の発生を減らすための知見について考察した。厚生労働省が公開している食中毒発生事例についての統計資料と3つの全国紙(朝日、読売、毎日)に掲載された食中毒事例の記事データを用いて食中毒事故の発生時期、発生地域、原因食品などの特徴を分析した。既往の研究によると、山菜による食中毒は4月から5月、キノコは9月から10月に多く発生すること、発生地域に偏りがありキノコについては特にその傾向が強いこと、発生原因となる植物・キノコには偏りがあること、などが明らかになっている。今回行った分析でも同様の傾向が確認された。森林面積、森林率、人口密度などのデータと発生事例数の間に相関は見られず、単純に「森林があるから」事故が発生しやすいというのものではない。森林レクリエーションの参加者は必ずしも植物やキノコの知識を豊富にもっているわけではない。そうした参加者の食中毒事故を防止するためには、すでに行われている「有毒種についての注意喚起」、「正しい知識の啓蒙」を地域毎に特定の種に絞って強化するなど、情報量を限定した取組が効果的であると考えられた。

  • 歴 園園, 石橋 整司, 齋藤 暖生, 藤原 章雄
    セッションID: P-040
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    森林散策においてリラックス効果を発揮する森林の育成、管理方法について知見を得ることを目的とし、先行研究の整理、森林セラピー基地の分析、散策利用者の行動調査の3つ側面から検討した。なお、行動調査の資料は東京農工大学FM唐沢山で1998年から1999年にかけて実施された調査資料を利用した。森林のリラックス効果についての先行研究では具体的な効果が確認されていたが、被験者がたくさんの条件に拘束されていた状態であることや被験者が男性や若年層に偏るなど現実の利用者を反映していないなどの問題点がみられた。また、「森林セラピー基地」は、都市部から離れた過疎地域の山村に多く設置され非日常性の高い静かな環境を提供していることが特徴であることがわかった。FM唐沢山での調査では日帰り利用者が多く存在しており、日常生活空間に近い場所にリラックス効果を提供できる森林を整備することも重要であるといえる。利用者からは季節感、行動対象の多様さ、見晴らしのいい眺望などが求められていることから、林相の多様性、林内の明るさ、季節による林相や眺望の変化を確保することが施業管理において重要と考えられる。

  • 劉 馨遥, 石橋 整司, 齋藤 暖生, 藤原 章雄
    セッションID: P-041
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    江戸時代に制作された視覚的な情報である浮世絵に江戸の緑地環境がどのようにあつかわれているか分析した。今回用いた資料は歌川広重の晩年の作品である「名所江戸百景」である。江戸を中心とする地域の風景を描いた119点の絵の構図について「遠景」、「中景」、「近景」に分け、それぞれに描かれている樹木について特徴をまとめた。119点のうちまったく樹木が描かれていないものは9点のみであり110点には樹木が描かれていた。構図としては遠景、中景、近景のすべてに樹木が描かれたものが44点と最も多く遠景と中景に描かれたものが26点、遠景と近景に描かれたものが14点、遠景のみに描かれたものが12点で基本的には遠景に樹木を配する構図が中心であった。描かれた樹木の種類が推定できた作品を見るとマツが遠景、中景、近景のいずれでも最も多くみられ、特に遠景では87点にマツが描かれていた。次いで、サクラ、スギ、モミジ、ヤナギと推定される樹木が多かったが、サクラやヤナギが中景、近景に描かれることが多い一方で、スギやモミジは遠景から近景まで満遍なく見られるなど樹種による特徴が見られた。

  • Trevor Chacha, Akemi Itaya
    セッションID: P-042
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    In the Solomon Islands, the main driver of deforestation is unsustainable commercial logging. Another increasingly important cause of deforestation is expansion of industrial plantations, mainly for oil palm. Mining and infrastructure developments are also causing deforestation. The purpose of this study was to assess the forest cover changes in Guadalcanal Island using satellite images. Landsat images in 1989, 2001 and 2019 were used to detect the past land cover and use, and Sentinel-2 images in 2020 were used to detect the present land cover and use. The land cover and use were detected using object-based image analysis with the maximum likelihood classifier method. As a result, in 2020, forest area was 317,614.1 ha. Oil palm and coconut plantations have spread in moderate slope near the north coast since early times, and its area was 83,784.7 ha. Deforestation caused by illegal logging, mining, and others, resulted in the increasing of bare land area to 5,882.1 ha.

  • 西田 圭佑, 太田 徹志, 志水 克人, 溝上 展也
    セッションID: P-043
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    現在、熱帯地域を中心に森林減少・劣化が問題となっている。森林減少・劣化を引き起こす要因は木材生産、農地開発、自然撹乱のように多様であり、これらの要因を時間的・空間的に特定することが重要である。しかし、地上調査によって森林減少・劣化の要因を広域かつ長期間把握するのは現実的に困難である。そこで本研究ではLandsat時系列衛星画像による広域かつ長期間の森林変化の要因推定を目的とした。対象地はミャンマーのバゴ地域周辺地域とし、2001年から2019年の期間で年単位の森林変化の要因推定をおこなった。森林変化要因については7つとした。時系列衛星画像から求めた指数に対してLandTrendrを用いることで指数の時間的変化を求めた後,ランダムフォレストにより森林変化要因を分類した.当日の発表では,森林変化量の時空間的な変化を定量化し報告する予定である。

  • 寺田 愛理, 太田 徹志, 志水 克人, 溝上 展也
    セッションID: P-044
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    近年、局地的な集中豪雨が頻発し、豪雨に伴った山地災害も増加している。本研究では時系列Landsat画像を用いた崩壊地の検出精度を検証した。同時に、崩壊面積と検出精度の関係を明らかにした。分析の対象地及び対象期間は1984年から2020年の九州本島である。対象地内の対象期間に取得された時系列Landsat画像に対し、機械学習モデルを適用することで崩壊地を年単位で検出した。精度検証は2017年の九州北部豪雨による朝倉市及び朝倉郡を対象に実施した。その結果、全体精度は91.65%、崩壊のPAは18.46%、UAは100.0%であった。崩壊面積が1ha以上の場合のみを崩壊とみなして精度評価を行うと、全体精度は99.61%、崩壊のPAは82.75%、UAは100.0%であり、全体精度とPAが向上した。同様に0.5ha以上、0.4ha以上、0.3ha以上、 0.25ha以上、0.2ha以上のそれぞれの崩壊面積において精度評価を行ったが、1ha以上の崩壊のみを崩壊とみなした場合が最も高精度であった。少面積の崩壊ほど検出精度が低下する傾向を示した。時系列Landsat画像を用いた崩壊推定は、少面積の崩壊を含めた場合は見逃しが多く発生するが、崩壊面積が1ha以上であれば比較的高精度に検出できることが明らかになった。

  • 中村 達樹, 吉田 直輝, 日下 迢, 矢田 豊, 木村 一也, 山路 佳奈, 長田 茂美, 松井 康浩, 石原 正彦
    セッションID: P-045
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     私たちは高解像度衛星画像を用いた人工林の材積推定AIエンジンの開発に取り組んでいるが、この際、材積の正解データとしてUAVの3D点群データより算出した立木データを用いる。しかし、本データには対象地域の全ての立木データを含み、人工林のみのデータにクリーニングする必要がある。本クリーニング作業は現在目視で確認し行っているが、時間とコストがかかり効率的でない。そこで本研究では、高解像度衛星画像由来のマルチスペクトルデータを用いて立木データを人工林のみにクリーニングする技術の開発に取り組んだ。具体的には、高解像度衛星画像から得られたマルチスペクトルデータを人工林及び非人工林との間で判別分析を実施し、双方を区別する判別関数を得ることができた。この関数を用いて立木データを精査した結果、混交林から人工林を効率的かつ高精度にクリーニングする手法を開発できた。本手法によりクリーニングしたデータを用いて材積推定すると、目視によりクリーニングしたデータと同程度の結果を得ることができ、本手法の有効性を確認できた。

     本研究は、農研機構生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」の支援を受けて行った。

  • 吉井 達樹, 唐澤 丈, 沼本 晋也, 松村 直人
    セッションID: P-046
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    木材価格の低下や森林の多面的機能への期待などから人工林の長伐期経営への移行が進んでいる。しかし、長伐期に対応した施業の知見は不足しており、高齢人工林管理の指針となる基礎的な情報が必要である。また、近年はリモートセンシング技術の発達により森林のモニタリング手法も変化している。航空レーザーやUAVなど森林上空からのセンシングが可能になり、計測される立木情報の質も変化している。本研究では、スギ高齢林について立木の成長量とリモートセンシングから得られる情報の関係を明らかにすることを目的とする。対象地は三重大学附属平倉演習林で定期調査が行われているスギ高齢林210年生、105年生、80年生の林分である。毎木調査で得られた単木毎の成長量と航空レーザー及びUAVから得られる単木情報の関係分析を行った。定期調査では5~10年毎に樹高と胸高直径の毎木測定が行われており、成長量を算出した。リモートセンシンで得られる情報は、樹冠サイズ、樹冠形状、立木の立地環境に関する指標を算出して使用した。

  • 稲月 理央, 村上 拓彦
    セッションID: P-047
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    現在日本では広葉樹の林業的利用が関心を集めており、国産広葉樹資源の利用を進めていくためには資源情報の収集方法を検討する必要がある。広葉樹の資源把握の手段の一つとして、リモートセンシング技術が期待されており、本論ではそのプラットフォームとしてUAVの活用に着目している。UAV空撮画像とStructure from Motion技術を組み合わせたUAV-SfM技術により、対象の三次元モデルを容易に取得することができるが、我々はその三次元モデルを通した広葉樹の樹幹抽出に取り組んできている。本研究の目的は、UAV空撮画像を用いたブナ林の樹幹抽出である。落葉広葉樹が秋から春先にかけて落葉し、樹幹が捉えやすくなる状況に注目し、落葉期の空撮データを使用して現像処理、SfM解析を施した。解析後、生成された樹幹の点群データを用い、ブナの樹幹がどの程度抽出できているのか確かめた。特に本論では,斜め視空撮画像の有効性の是非を確認することを主たる検討課題としている。加えて、撮影カメラ角度の異なる画像を組み合わせて得られた点群データの可能性について検証する。

  • 吉田 大智, 村上 拓彦
    セッションID: P-048
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     福島県只見町沼ノ平地区は、ブナを主体とした広葉樹天然林である。沼ノ平における今後の自然環境の保護・保全・持続的な利用の在り方の検討を行うためには、森林の現状を把握する必要がある。広大な森林地帯の現状を把握するためにリモートセンシング技術が有効とされるが、本論ではプラットフォームとしてUAVに着目した。本研究の目的は、UAV空撮画像を用いた落葉広葉樹林の樹種分類である。十分な現地踏査が容易ではない沼ノ平地区において、全域を対象としたUAV空撮を2020年9月と10月に実施した。10月調査時には、GNSS受信機を用いた立木位置の測位も行い、トレーニングデータ取得の参考とした。得られた空撮画像データをSfMソフトウェアで処理し、林冠ならびに地表面の三次元形状を復元し、オルソモザイク画像の作成を行った。その後、オルソモザイク画像に対しオブジェクトベース画像分類を適用し落葉広葉樹林の樹種分類を行った。オルソモザイク画像において領域分割処理(セグメンテーション)を施し、単木単位のオブジェクトを生成して分類を行った。最終的に判定効率表を作成し、Kappa係数を求め、その精度を評価した。

  • Pei Huiqing, Owari Toshiaki, Tsuyuki Satoshi
    セッションID: P-049
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    Conventionally, stand-level information of forests have been visually interpreted based on aerial photos, while it is labor intensive and often subjective. Moreover, it brings an uncertainty to the accurate estimation of forest stand areas and forest biomass. We conducted a case study in the University of Chiba Forest to classify the forest into three forest types (mixed conifer-broadleaf natural forest, broadleaf natural forest and plantation) using deep learning method. We applied full convolutional neural network Deep Lab V3 and Mask R-CNN to 1,200dpi RGB color aerial photos. The result indicated that it was possible to identify each forest type automatically. Our study serves a technical basis and reference for future studies and provides a feasible way for the regional scale forest resource inventory in Japan.

  • 江澤 一熙, 溝口 知広
    セッションID: P-050
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    レーザースキャナとカメラが搭載された小型で軽量なモバイルマッピングシステム(以下,MMS)の普及に伴い,森林や公園等の樹木管理にも利用されるようになった.本研究では,MMSにより取得した高解像度画像から熟練技術者の判別ノウハウを深層学習に組み込むことで広葉樹の高精度な樹種判別手法の開発を目的とする.そのためまず,技術者が樹種を判別する際,一般に葉や樹皮の詳細形状を手掛かりとすることから本手法でも葉と樹皮を評価した.またMMSでは,1本の樹木を異なる位置と姿勢から撮影した複数枚の画像が取得できるため,これらの画像中の葉や樹皮を含む小領域画像を複数抽出し,それぞれを深層学習にて樹種判別し,その結果の投票により最終的な判別を行う手法とした.7種の樹木を対象とした様々な実験より,95%程度の高い判別率が得られることを確認したので報告する.これに加え,各小領域画像に対し,専門技術者の目線で樹種の判別しやすさを表すスコアを付けた.投票による判別の中で,スコアの高い画像を優先的に判別することで,より高精度な判別率が期待できる.そのため本研究では,このスコアをAIにより自動算出できるか検討したので,併せて報告する.

  • 篠原 朋恵, 村上 拓彦
    セッションID: P-051
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    福島県南会津郡只見町に位置する沼ノ平地域は, 福島県の西南端に位置する東西方向に1kmほどの凹地を指す. 沼ノ平地域には緑色凝灰岩が広く分布し,地すべりが発生しやすい地質とされている.地すべりによって形成されたと考えられる窪地に大小様々な沼が存在し, その特異的な環境は動植物の貴重な生育場所となっている. しかしながら沼ノ平地域は近年まで詳細な調査が実施されておらず,地形変動が実際に発生しているのか,十分な把握がなされていない. 本研究では1947年から2014年の時系列空中写真を用いて過去の地形変動の有無を明らかにすることを目的とする. SfMソフトウェアにより作成したオルソ画像やDSM (Digital Surface Model: 数値表層モデル) を用いて解析を行ったところ, 沼の形状や位置において顕著な変化を捉えた. ブナの樹冠を指標として地表面の変位を読み取ったところ, 1976年から2014年の38年間において0.17~0.49m/年の移動が確認された. また,二時期の堆積増減を点群データにて比較したところ,オルソ画像にて植被に覆われている状態から裸地に変化している箇所で減少を示すなど,整合性のある結果を得た.

  • 今枝 大, 山本 一清
    セッションID: P-052
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    森林は日本の国土の約7割を占めており、そしてその約4割は活用の主となる人工林である。このように多くの森林を抱える日本であるがそれを十分に利用できているとは言えず、適切な管理がされていないことも多い。人工林を適切に管理・利用するには現況を把握する必要があるが、林分内の個々の樹木を人力で計測するのは、時間と手間がかかる。そのため、地上レーザー(TLS)などの新たな技術が利用されつつある。しかし、TLSはまだ高価であるため、広く普及しているとは言い難く、より安価で簡易な計測手法の開発が求められている。そこで我々はケーブルカメラによる林内撮影画像を利用した森林計測手法について検討を行っている。ケーブルカメラは、市販のカメラと動力滑車を組み合わせたもので、安価でかつ高度な技術を必要としない林内撮影が可能である。本研究では、近年普及が進むSfM技術を利用し、ケーブルカメラによる林内撮影画像から生成した三次元情報による立木検出について、異なる林相間で比較・検討した。

  • 佐藤 有晟, 松英 恵吾
    セッションID: P-053
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    人工林管理における林分構造や成長動態の把握はその後の成長予測や施業の検討において重要であるが、樹冠閉鎖期の若齢針葉樹人工林(以下、若齢林)は林業生産や経営の面においては資源量把握の必要性が低いと考えられてきたことなどから、若齢林を対象とした調査は不足している。一方、若齢林は樹冠が非連続的で単木が明確であることから、林分上空からデータを取得する航空機LiDARやUAV測量の特徴を活かした、点群データによる効率的な計測が期待される。そこで、本研究では宇都宮大学農学部附属船生演習林に所在するスギおよびヒノキ若齢林に設定した10m方形区において局所最大値フィルタ法による梢端抽出を行い、点群データの点密度やラスタデータの解像度、樹冠サイズ、局所最大値フィルタ法におけるパラメータといった各種パラメータと単木抽出率の関係を明らかにし、パラメータの最適化を試みた。その結果一部方形区では抽出率100%となったが、同一林分における樹冠サイズや樹冠形の違いなどにより林分全体では誤抽出が生じることが確認された。

  • 龍原 哲
    セッションID: P-054
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    今後,高齢の広葉樹二次林が増加することが予想されるが,このような広葉樹二次林がどのように成長するかは明らかではない。本研究の目的は東京大学秩父演習林内に設置された落葉広葉樹が優占する二次林固定試験地の資料を分析することにより,広葉樹二次林の直径成長モデルを作成し,長期間の予測を行うことである。まず,試験地ごと測定時ごとに平均胸高直径を求め,全平均胸高直径の値から基準平均胸高直径成長曲線を求めた。次に,試験地ごとに二測定時点の胸高直径に一次式を当てはめ,一次式の二つのパラメータおよび残差分散を求めた。平均胸高直径を基準平均胸高直径成長曲線から予測し,成長式を一次式,そのまわりの変動を正規分布と仮定して,期首直径から期末直径を予測するモデルを作成した。その際,もし成長量が負の値になる場合,その立木は枯損すると仮定した。それによって,各胸高直径における直径遷移確率と枯損確率を表現した。分析に使用しなかった固定試験地データに上記のモデルを適用し,直径階別の直径成長量と枯損量を求め,直径分布を予測した。平均胸高直径と立木本数密度の予測結果は良好であった。

  • 石橋 整司, 藤原 章雄, 齋藤 暖生, 西山 教雄, 辻 良子
    セッションID: P-055
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     東京大学富士癒しの森研究所では、寒冷地に適した造林樹種を検討する目的で1960年代にいくつかの成長試験地を設置した。こうした試験地の情報は1970年代以降の林業の低迷と富士演習林の主要な研究対象が保健休養機能にシフトしたことから十分にまとめられないままになっている。本研究の対象であるカラマツ系統別試験地もその一つで、ニホンカラマツ、千島系グイマツ、樺太系グイマツ、チョウセンカラマツ、ニホンカラマツとチョウセンカラマツ、グイマツの雑種の苗木を東京大学北海道演習林から導入して1964年に設置された。植栽後1971年までは毎木調査が、その後は標準木調査が行われたが、1987年を最後に測定は行われなくなった。本研究では2009年と2019年に行われた森林現況調査の結果を含めた調査データと新たに採取した成長錐コアによる年輪データをもとに本試験地の成長過程を分析した。同試験地は14区画からできているが、植栽直後から区画間で成長の優劣が出ており、植栽直後についた差は現在まで続いている。全般的にニホンカラマツの成長がよくグイマツの成長が悪い。一部の区画ではほぼ全滅状態であるが、系統間の差なのか管理上の問題かは不明である。

  • 福本 桂子, 西園 朋広, 北原 文章
    セッションID: P-056
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    持続的な森林経営のためには、森林の長期動態を把握することが重要である。植栽木の枯死は林分構造や収穫量に影響を及ぼす。そのため、植栽木の枯死がどのような条件下で生じるか把握する必要がある。植栽木の枯死は、個体間競争、個体サイズ、地位に影響を受けることが知られている。しかし、これらは短期的な観測データに基づいた知見であり、長期的な観測データに基づいて植栽木の枯死に与える要因について議論した事例は限られる。そこで本研究では、個体間競争、個体サイズ、地位が植栽木の枯死に与える影響を検証するために、スギ単木枯死予測モデルを構築した。このとき、約50年間測定された四国地方の4試験地のスギの成長データ(n=5,130)を用いた。個体間競争を表現するために、距離独立競争指数として相対幹距を用いた。構築したモデルを用い、相対幹距、個体サイズ、地位別の枯死率を推定し、これらの要因が長期的なスギ植栽木の枯死に与える影響を検証したので、その結果を報告する。

  • 尾張 敏章, 大石 諭, 軽込 勉, 鈴木 祐紀, 鶴見 康幸, 米道 学, 塚越 剛史, 阿達 康眞, 村川 功雄, 藤平 晃司, 三次 ...
    セッションID: P-057
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    千葉県には2019年度時点で73.6千haの天然林があり、森林面積全体の47%を占める。天然林資源の概況は森林生態系多様性基礎調査データから把握できるが、4 km間隔で調査地点が配置されており、102~103 ha規模の森林管理区レベルで資源状況を詳しく把握するには十分でない。そこで本研究では、1,294 haの天然林を持つ東京大学千葉演習林において調査を行い、立木本数密度や林分材積、サイズ、種組成の現状を明らかにした。調査では、針広混交(CB)および広葉樹優占(B)の天然林に0.03~0.1 haの円形プロットを39か所設置し、胸高直径(針広とも)と樹高(針のみ)を測定した。また、斜面方位と傾斜角、斜面上の位置、斜面形、下層植生をプロットごとに記録した。調査の結果、CBとBの平均立木本数密度はそれぞれ1,842本/haと3,123本/ha、平均林分材積はそれぞれ624.2 m3/haと483.3 m3/haであった。また、樹種別材積比ではCBでモミ(45%)、アカガシ(10%)、スダジイ(9%)が、Bでアカガシ(31%)、スダジイ(29%)、ウラジロガシ(9%)が、それぞれ優占していた。

  • 溝上 展也, Tual Cin Khai, Thein Saung, 太田 徹志, 加治佐 剛
    セッションID: P-058
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

     熱帯林の保全は炭素保全や生物多様性保全などの観点から地球規模課題として以前より重要視されており、長期的な林分動態の把握や予測は最も基本的な事項の一つである。 これまでにも熱帯林の林分動態に関する研究は数多くみられるが、違法伐採などの人為攪乱の影響や下層植生を含めたより総合的な理解は十分でないように思われる。本研究ではミャンマーの択伐林を対象として合法伐採後の5年間の林分動態を明らかにすることを目的とした。

     択伐前に違法伐採が生じていない林分Aに2プロット(1ha×2)、違法伐採が生じている林分Bに4プロット(0.64ha×4)を設定し、樹木(DBH10cm以上)、竹、更新木(DHB10cm以下で樹高が1.3m以上の樹木)の5年間の変化を計測した。その結果、いずれのプロットでも違法伐採が生じていたが、その伐採性向(樹種やサイズ)は林分Aと林分Bで異なり、林分Bでは5年間で竹の蓄積の顕著な増加がみられた。構造方程式モデリングの結果、違法伐採などによる立木本数の減少は、竹の蓄積を増大させることによって更新木の減少に影響していることがわかった。

  • 大久保 敏宏, 三木 友貴, 平塚 基志
    セッションID: P-059
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    九州中央部の「大船山のミヤマキリシマ群落(天然記念物)」(以下、本群落)の大規模な開花は多くの登山者を惹きつけるなど、様々な生態系サービスをもたらしていた。2020年4月11日に火災が発生し、本群落の約0.8ha、推定1600~2000本が熱による炭化、熱傷等の被害を受けた。また、地元関係者から、近年、放牧と放牧のための火入れ等の活動が低減し、ミヤマキリシマの優占する矮性低木林からノリウツギの優占する低木林へ変化しているとの情報を得た。

    そこで、ドローンによる画像撮影を実施し、群落全体の火災被害の状況を把握するとともに、現地調査により萌芽状況を確認した。また、1976年撮影の空中写真と現在の空中写真を比較し、ノリウツギ林への変化状況を確認した。

    以上により、火災被害を受けた9割以上の株では萌芽が確認された。また、火災以前よりノリウツギ林への変化が拡大していることも明らかとなった。本群落の復元に向けて、モニタリングによる順応的管理の導入が望ましい。また、保全対策として、伝統的な放牧や火入れの復活も想定されるが、そのためにはミヤマキリシマとノリウツギの火への抵抗力を明らかにした上で、頻度や手法を検討する必要がある。

  • 佐藤 孝吉, 菊池 大樹, 吉野 聡
    セッションID: P-060
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    木曽ひのきを木地とする箸生産は、節、あて、腐れなどの癖のない部分のみを活用し、端材は別の業者が活用する。箸木地の最終段階で発生するかんな屑は廃棄物として燃料などに使用されるのみである。このかんな屑は、幅5mm長さ22cmで細長く丸まっていてその利用方法について検討した。水分を含むとヒノキの香りがすることから入浴時の芳香剤として活用することを考えて、排水ネットにかんな屑をいれて輪ゴムで綴じた直径20cmの球形のものを作成した。商品の作成やPRが人的にも量的にも困難なことから、インターネットによる販売が適当と判断した。そこで、東京農業大学の学生に製品購入とネット購入・販売についてのアンケート調査を実施した。調査の結果、65%の回答者から商品化の可能性ありの回答で、購入予定価格は290円であった。インターネットの利用状況は、95%の回答者が1週間に1度程度ネット購入を行っており、平均購入金額は5,000円であった。安価な商品の需給にはインターネットの活用が有効ではないかと考察した。

  • 吉野 聡, 並木 空也
    セッションID: P-061
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    放置竹林が各県において非常に大きな問題となっており、各県では放置竹林対応マニュアルや、新たな竹材の利用を推し進めている。その多くがタケノコ生産で、竹材商品を目的とした放置竹林材の活用にはなっていない。その理由として、放置竹林の多くが過去のタケノコ生産をしていたマダケ林が基になっていることが挙げられる。林業では生産する森林にあわせた管理が必要とされており、竹林でも同様のことがあると考えた。また、放置竹林ではモウソウチク林の場所もあり放置竹林の持続的な利用を考える上では産業化を視野に入れたモウソウチク林の利用も必要であると考えた。しかし、放置竹林対応マニュアルをみるとその多くがタケノコ生産を目的としており、竹材利用のための適切とされる竹林の林況についての文献はほとんどない現状があった。そこで、本研究では竹材に利用される竹の種類について文献をもとに再確認し、各竹林を管理しているところで、実際の竹林の現況調査と文献調査から竹の種類ごとの林況を把握し、その管理方法について考察を試みた。

  • 北原 健太郎, 寺岡 行雄, 加治佐 剛
    セッションID: P-062
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    我が国の人工林の50%は伐期に達し利用期を迎えている。また、高性能林業機械の導入よる機械化が進む一方で、情報化によるスマート林業の必要性が高まっている。このため森林資源量を正確に把握し、素材生産を円滑に進めることは急務である。しかし、森林内では携帯電波圏外になることが多く、周囲の作業者同士での連絡手段はトランシーバーか直接対面であり、非効率な状況が発生している。そこで本研究では、昨今センサーネットワークで用いられるようになってきたLPWA(Low Power Wide Area)通信技術を用いた通信を森林内で行い、枝葉や樹幹による電波減衰の影響をあきらかにすることを目的とし実験を行った。地形の条件を無視するため、北海道苫小牧市の直線かつ平坦な林道を試験地とした。上空が閉鎖している林相(アカエゾマツ34年生)と、上空が疎開している林相(ダケカンバ125年生)の2箇所を使用した。LPWAの2.4GHzと920MHz帯の2種類の周波数での通信機を使用し森林内通信での電波強度を測定し、電波強度と森林構造、通信距離の関係について検討した。更に、数珠つなぎでデータを送信するマルチホップでの森林内における中継機の適切な配置についての検討も報告する。

feedback
Top