ファジィ理論の研究が進むにつれ, ファジィ理論を直接扱える様なコンピュータや各種のファジィ論理回路の開発が求められている.しかしこれらについては古典二値論理の様に回路設計法やその性質については十分に明らかになっていないのが現状である.そこで本論文ではファジィコンピュータへの研究の基礎として, 順序回路の基本であるフリップフロップに注目し, フリップフロップのファジィ論理への拡張について考察する.入力として0,1のみでなく, その中間の任意の値を許したようなフリップフロップをファジィフリップフロップという.ファジィフリップフロップはファジィ順序回路の典型的な例であり, ファジィコンピュータの基本回路の一つとして, これまでにもいくつかの研究が行われている^<[1], [5], [6], [7], [10], [11]>.K.Hirota, K.Ozawa, W.Pedrycz, L.T.Koczyらによって, いくつかのファジィフリップフロップに対する提案が行われており, 主にJK-フリップフロップを基に研究が展開させられている.それらにおいてファジィJK-フリップフロップとして用いられるファジィ論理関数は, セット用の式とリセット用の式の2つを用意し, それを場合によって使い分けるという手法^<[1], [5], [6], [7]>や, 1つの式で処理を行なうもの^<[10], [11]>など, いくつか提案されている.本論文では, 論理式で表現可能なファジィフリップフロップについて, 代表的なJKフリップフロップを例として考察を行なっている.これはファジィ論理関数の性質に注目し, 2値論理関数としては等しいようなファジィ論理式^<[8]>を導くことにより行われる.この研究方法は, 今後一般的な順序回路のファジィ化への基礎となるはずである.
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