本論文では, 指数型可能性分布を用いたデータ解析手法として, 可能性判別分析の方法を提案する.まず, 指数型可能性分布に基づく多次元可能性解析として, 可能性測度と必然性測度を解析的に求める方法を示す.指数型可能性分布に基づく多次元可能性解析は, 確率分布として正規分布を仮定した場合での多変量解析に対応している.次に, 与えられた数値データから可能性分布を同定する手法を示し, 可能性分布に基づく判別規則を導出する.さらに, 1次元特徴空間上で未知サンプルの判別を行うため, 多次元可能性分布を1次元上の可能性分布へ線形変換する方法を示す.このとき, 1次元特徴空間上での2つの可能性分布ができるだけ分離するような線形変換を求める問題が, 2つの可能性分布の間の可能性測度最小化問題あるいは必然性測度最小化問題として定式化される.これらの問題は, 通常の固有値問題に帰着されるので, 解析的に最適解を得ることができる.未知サンプルの判別は, そのサンプルの属性値を表す多次元属性ベクトルを線形変換することにより, 1次元特徴空間上で行われる.さらに提案手法の拡張として, 同一クラスに属する複数の未知サンプルがデータ群として与えられた場合での可能性判別分析の方法を示す.この場合では, 複数のサンプルが同じクラスに属するという情報を用いることにより, 個々の未知サンプルを独立に判別する場合よりも, より明確な判別が可能になる.最後に, 本論文で提案した可能性判別分析の方法を説明するため, 2次元データに対する数値計算例を示す.
抄録全体を表示