機能水研究
Online ISSN : 2759-551X
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4 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 小宮山 寛機
    2009 年 4 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2024/08/14
    ジャーナル フリー
    水に食塩を加えて陽極より生成される強酸性電解水は、1990年代初めに登場し、当時深刻な院内感染問題を引き起こしていたMRSAをはじめ各種の病原菌や食中毒菌に優れた殺菌作用を示すことから、医療や食品の分野での利用が期待された。電解水の殺菌要因は当初、酸化還元電位(ORP)の高いことにあると喧伝されていたが、やがて次亜塩素酸であることが明らかにされた。化学的にみて同族である次亜塩素酸ナトリウムは、消毒薬として医療分野での使用が認可されており、また、食品添加物としても指定されている。しかしながら、強酸性電解水の殺菌要因は酸化還元電位と信じられていたために次亜塩素酸に基づく使用の動きは行われなかった。一方、食品分野では、次亜塩素酸は1993年まで食品添加物(殺菌料)リストに収載されていたが、90年代初めに食品添加物の見直しが行われた際に使用実態が無いとの理由でリストから除かれたが、その際も電解水装置メーカーは見過ごしていた。この様なことから、新たな技術によって生成された強酸性電解水を医療目的に使用するにはその生成機器を医療用具として、また食材の殺菌に用いるには食品添加物としての認可を受ける必要があるとの見解が厚生省(当時)から示された。認可申請のためには、物性、有効性と安全性に関する科学的データを揃えることが必要で、新たに安全性試験を行うことが必須であった。  筆者は、術前の手洗いを用途とした強酸性電解水生成装置の医療機器認可申請に際しての有効性試験および安全試験を実施し、最近もラットを用いて腹腔洗浄の安全性に関する試験を実施・経験した。本稿では、認可に至るまでに求められる事柄、特に安全性の確認に求められる法的な決まりとともに強酸性電解水に関して実際に確認された安全性に関して概説する。
  • 古米 保, 葭田 隆治
    2009 年 4 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2024/08/14
    ジャーナル フリー
    日本海には、日本海固有水と呼ばれる低温で、栄養塩(リン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩)が多く、病原菌や環境ホルモンなどが検出されない清浄な海水がある。これは、日本海の水深200~300mから海底までの水塊で、全海水の約80%を占めている。日本海は浅く狭い5海峡を通して外洋と接している。主な流入口は対馬海峡で、対馬暖流として入り、大半が津軽海峡から太平洋側に流れ出る。ところが、最も深い津軽海峡でも平均水深が113mしかないため、対馬暖流は200mより上の表層を流れているに過ぎない。日本海固有水形成場所は、ウラジオストックの南東沖、北緯42度、東経135度を中心とした海域で、冬季の厳しい海面冷却によって形成されると考えられている。これは、ウラジオストック付近には山脈がないため、強烈な北西ジェット流が吹出し、海面が冷やされる。冷却されて比重を増した海水は沈降するため、この海域に鉛直対流が生じる。このようにして、日本海固有水は形成すると考えられている。 さて、富山県では、この日本海固有水を、海洋深層水、深層水或いは富山湾深層水と呼んでいる。海洋学では水深1,000m以上深い海域を「深層とか深海」と呼ぶので、「商業利用している深層水」とは意味を異にしている。これは、深層水という言葉は、響きが良く、語感が神秘的ということで、関係者や開発企業などにより好んで使われたことによる。 一方、この深層水の利用研究は、1881年フランスのダルソンバールが深層水の冷たさを利用した海洋温度差発電を提案したのが最初と考えられている。日本における利用研究は、1970年代の温度差発電が最初で、本格的な研究としては、1986年に科学技術庁が富山県と高知県で「海洋深層水資源の有効利用技術に関する研究」を立ち上げている。これらの成果を受けて、富山県は、1995年に滑川市の沖合2,600m、水深321mからの取水施設を整備し、次いで、入善町に沖合3,000m水深384mからの取水設備を完成した。我々は、2000年4月、大学内に「環日本海機能水バイオ研究会」を立ち上げ、「海洋深層水や電解機能水」に関わる正しい知識の普及と資源化研究を推進している。ここでは、主要な成果を報告する。
  • 安井 昌之
    2009 年 4 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2024/08/14
    ジャーナル フリー
    水道水を嫌って、ミネラルウォーターと称してペットボトルの飲料水の需要が年々増加している。徹底した汚染物質の除去や、味覚的に美味しい水を求める風潮がある。しかし、ミネラルが関与する中枢神経変性疾患で、発症後3年で死亡する筋萎縮性側索硬化症(ALS:アミトロ)や、パーキンソン痴呆症候群の世界の3大多発地(グアムや紀伊半島南部、西ニューギニア、図1)の環境分析から、飲料水がこれらの病因に起因すると考えられている。つまり河川水や土壌中の低カルシウム(Ca)・低マグネシウム(Mg)、高アルミニウム(Al)含有量が、それら疾患の病因に関与していると推定されている。  これら疾患の中枢神経組織でCa代謝異常が存在し、他のミネラル代謝にも影響を及ぼすことが判明したほか、紀伊半島ALS多発地を中心に多く発生している脊椎靭帯石灰化症の脊椎骨と脊椎靭帯のCa、Mg量の分析の結果、ALSの中枢神経組織での類似性が判明した。そのため今後、カルシウム、マグネシウムなど、ミネラルの摂取異常が病因に関連する疾患の存在する可能性が示唆され、味覚よりミネラルバランスのとれた水について注目する必要がある。
  • 竹原 淳彦, 浦野 博水, 福崎 智司
    2009 年 4 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2009/03/21
    公開日: 2024/08/14
    ジャーナル フリー
    電解次亜水(pH 9.2~9.5、有効塩素(AC): 80~100ppm)および強アルカリ性電解次亜水(pH 12.0、 AC: 200ppm)を用いて、腐敗食品やタバコ煙に由来する悪臭および有毒ガス等の洗浄除去実験を行った。これらの電解水をスクラバーの洗浄液として用いることにより、水道水と比較して、硫化水素、メタンチオール(別名メチルメルカプタン)、一酸化炭素、一酸化窒素に対する除去効果が顕著に認められた。また、ホルムアルデヒドガスに対しても、電解次亜水の有効な除去効果が得られた。一方、水溶性であるアンモニアやエタノールガスに対しては、電解次亜水は水道水と同等の除去効果であった。無隔膜電解法は、安全で簡便に電解次亜水および強アルカリ性電解次亜水を調製できる有用な方法であり、調製された電解水はスクラバー洗浄液への適用が期待できる。
  • 中藤 誉子, 木村 一志
    2009 年 4 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2024/08/14
    ジャーナル フリー
    強酸性電解水(pH2.5、有効塩素濃度40ppm)および強アルカリ性電解水(pH 11.2)の除臭効果について試験した。特定悪臭物質(アンモニア、トリメチルアミン、ピリジン、硫化水素、メタンチオール(別名メチルメルカプタン)、酢酸、プロピオン酸、酪酸、n-吉草酸、アセトアルデヒド、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン)のガスをチャンバー内で噴霧電解水と気液接触させた後の残留ガス濃度を比較した。その結果、強酸性電解水は、アンモニア、トリメチルアミン、ピリジン、プロピオン酸、酪酸、n-吉草酸に対して優れた除臭効果を示した。酢酸に対しても高除臭能を示したが、純水噴霧と同レベルであった。強アルカリ性電解水は硫化水素に対して特異的に高い除臭効果を示した。アンモニアに対しても除臭効果を示したが、純水噴霧と同レベルであった。メタンチオール、アセトアルデヒド、酢酸エチル、メチルイソブチルケトンに対しては、両電解水とも除臭効果を示さなかった。
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