日本海には、日本海固有水と呼ばれる低温で、栄養塩(リン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩)が多く、病原菌や環境ホルモンなどが検出されない清浄な海水がある。これは、日本海の水深200~300mから海底までの水塊で、全海水の約80%を占めている。日本海は浅く狭い5海峡を通して外洋と接している。主な流入口は対馬海峡で、対馬暖流として入り、大半が津軽海峡から太平洋側に流れ出る。ところが、最も深い津軽海峡でも平均水深が113mしかないため、対馬暖流は200mより上の表層を流れているに過ぎない。日本海固有水形成場所は、ウラジオストックの南東沖、北緯42度、東経135度を中心とした海域で、冬季の厳しい海面冷却によって形成されると考えられている。これは、ウラジオストック付近には山脈がないため、強烈な北西ジェット流が吹出し、海面が冷やされる。冷却されて比重を増した海水は沈降するため、この海域に鉛直対流が生じる。このようにして、日本海固有水は形成すると考えられている。
さて、富山県では、この日本海固有水を、海洋深層水、深層水或いは富山湾深層水と呼んでいる。海洋学では水深1,000m以上深い海域を「深層とか深海」と呼ぶので、「商業利用している深層水」とは意味を異にしている。これは、深層水という言葉は、響きが良く、語感が神秘的ということで、関係者や開発企業などにより好んで使われたことによる。
一方、この深層水の利用研究は、1881年フランスのダルソンバールが深層水の冷たさを利用した海洋温度差発電を提案したのが最初と考えられている。日本における利用研究は、1970年代の温度差発電が最初で、本格的な研究としては、1986年に科学技術庁が富山県と高知県で「海洋深層水資源の有効利用技術に関する研究」を立ち上げている。これらの成果を受けて、富山県は、1995年に滑川市の沖合2,600m、水深321mからの取水施設を整備し、次いで、入善町に沖合3,000m水深384mからの取水設備を完成した。我々は、2000年4月、大学内に「環日本海機能水バイオ研究会」を立ち上げ、「海洋深層水や電解機能水」に関わる正しい知識の普及と資源化研究を推進している。ここでは、主要な成果を報告する。
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