局所進行/遠隔転移陽性切除不能食道癌・食道胃接合部癌に対する化学療法,放射線療法,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬などのより有効な一次治療の開発が進み,初回治療後の根治を目指した手術,いわゆる「コンバージョン手術」に関する報告が近年散見される.複数の後ろ向き研究において,コンバージョン手術にてR0切除が得られた症例の予後が良好である可能性が示されているが,コンバージョン手術の有用性や安全性に関していまだ不明な点が多い.本総説では,切除不能食道癌および食道胃接合部癌に対する一次治療後の外科的治療に焦点を当て,コンバージョン手術の安全性と有効性に関する最近のエビデンスを概略する.外科的治療を含む集学的治療は,食道癌および食道胃接合部癌に対する新しい治療戦略となり,これまで治癒不能とされていた疾患に根治的治療の選択肢を提供できる可能性がある.
自己免疫性胃炎(AIG)を初期,早期,中期(活動期),進行期~終末期の4病期に分類し,それぞれの臨床検査所見,病理像,内視鏡所見を概説した.まず,自己抗体,ガストリン,ペプシノゲン(PG)I・PG I/II比の病期に応じた変化と特徴,診断契機となる留意点,2つの貧血とそれらに関連する症候について解説した.次に,病期別の病理組織像とそれに対応する内視鏡所見を提示し,病理像に基づく内視鏡診断の重要性を示した.さらに,AIGに合併する胃癌に関する論点を紹介し,またHelicobacter pylori(H. pylori)感染との関係とAIG合併H. pylori感染診断の課題について論じた.
早期胃癌に対するESDで治癒切除が得られ胃が温存された症例でも,その後外科的胃切除を要することがある.そのような症例の頻度や特徴は明らかでなく,2007年から2017年に当院で胃ESDを受け治癒切除となった症例について検討した.886例中23例(2.6%)で胃切除を要していた.17例がESD後発見の胃癌に対する胃切除で,理由として多発病変の見逃し,検査間隔の延長などがあった.6例はその他の理由による胃切除であった.胃切除と関連する因子は同定できなかった.5年胃温存生存率は95.0%であった.ESD後に質の高い内視鏡検査を継続するとともに,外科的胃切除を要する症例の存在を認識することも重要である.
22歳男性.血便,下痢を契機に潰瘍性大腸炎(UC)と診断.5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤に不応であったため,当科紹介となった.精査により活動期UC,Clostridioides difficile感染症の合併,5-ASA不耐と考え,5-ASAを中止し,ステロイド,バンコマイシンなどで加療し寛解した.退院後は約3年で再燃したものの,生物学的製剤の導入により寛解維持中である.
症例は78歳男性.各種所見から軽症急性膵炎と診断し,積極的輸液療法による治療を行った.受診18時間後に急変し,受診24時間後に死亡した.病理解剖では,膵臓の炎症所見や広範小腸壊死を認めたが,腸間膜動静脈の血栓を認めず,非閉塞性の機序が考えられた.診断時は軽症急性膵炎であったが非閉塞性腸管虚血を合併して死亡しており,急性膵炎の診療において腸管虚血の可能性を考慮する必要性を示唆するまれな症例であった.
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