集団力学
Online ISSN : 2187-2872
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②日本語論文(英文抄録付)
  • 八ッ塚 一郎
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 41 巻 p. 3-14
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

     いじめを典型的な集団力学的現象とみなす直感的な理解を批判的に検討した。いじめと呼ばれる現象では、当事者間の力学も、集団内の布置もあまりに多様で互いに矛盾を来すほどであり、時間的プロセスまで加味すると事態はおよそ複雑を極める。さらに唯一共通するはずの、被害者の苦痛という要素についても、それを訴え出ることができず、被害としての認識すら持てないケースまで存在するため、いじめの把握は原理的に極めて困難である。それに対し、被害者の苦痛をもたらす集団力学的な構造を検討して、そこに通底する一意的かつ一方向的な関係の存在を見出した。その関係がさらに周囲から一意的かつ一方向的な同型の扱いを受ける、入れ子のような二重構造こそ、いじめ現象の本質であることを指摘した。いじめはその中に集団力学のありとあらゆるパターンを網羅しており、およそ単純な現象とは言い難い。にもかかわらず、それを子ども世界だけの出来事とみなし、構造もシンプルと錯覚すること自体、いじめと似た無視や決めつけの構図に陥っている。私たち自身がすでに一意的かつ一方向的な集団力学の構造にとらわれており、そのためにいじめ問題の把握と対応にも重大な混乱の生じている可能性を指摘した。あわせて、いじめの言説と時間的プロセスに着目してこの集団力学的な構造を対象化し、理論的な考察を通して対応の実践に貢献する可能性を示した。

  • 日本の町内会と比較しながら
    馬場 健彦
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 41 巻 p. 16-37
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

     日本の町内会は、長く市町村より小さい小地域の自治の当事者として働いてきた。しかし近年、町内会の加入率は低下し、また運営の不合理についての批判などが高まっている。本研究は、台湾において日本の町内会と同様に小地域の自治管理を担っている「里」という単位、そこに働くリーダーやフォロアーの活動参加の動機や協働のメカニズムを明らかにし、日本の町内会と比較することで、合理的な地域自治管理の在り方を模索したものである。本研究のもととなるデータは、2011 年に台湾で1カ月半にわたって行った現地調査に基づく。 台湾の里には、批判されにくい正当性・合理性がある。またスタッフの動機は活動の活性を高めるだけでなく、リーダーの指導方針の批判的検証にも向けられる。活動は、全員に課せられる義務ではなく、有志に委ねられている。活動に様々な度合いで参加すること、また、参加しないことを選択できる。こうしたメカニズムはボランティア従事者に対する深い理解・高い評価と、政治的姿勢の表明をタブー視しない文化に裏打ちされている。

  • 増田 達志
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 41 巻 p. 39-41
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー
  • 叶 好秋
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 41 巻 p. 43-64
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     本論は、筆者が2016 年から中国の廈門市農村部で実施してきたコミュニティ活性化のアクションリサーチについて報告するものである。中国では改革開放後、都市部と農村部の地域コミュニティは異なる変遷を辿ってきた。都市部では単位の解体と都市化の急速な進展により、隣人との関係が希薄化する「隣は何をする人ぞ」の無縁社会が形成されたが、農村部では一時的に消滅したと思われた宗族コミュニティが再び復活し、自然村(集落)を基盤として強固に存在している。 華僑発祥の地である東南沿岸部では特にその傾向が顕著で、廈門市もその代表例である。多くの地域で伝統的な宗族共同体が存続しており、筆者のフィールドである同安区田洋村(テンヤン)もその一つである。コミュニティが既に構築されているという点では、都市部よりも活性化の可能性が高いと言えるが、宗族共同体の閉鎖性は重要な課題である。筆者は田洋村で研究者としてのみならず、サポーターとしても関わり、宗族共同体の活動を同族だけでなく他者にも開放することで、コミュニティの変容を促した。本論では、その過程で生じた宗族アイデンティティーの再構築と共感を喚起する仕掛けという二つの観点から分析する。

①編集・論文審査方針
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