日本の中・古生層はきわめて厚い地層であつて,同斜構造を作ると漠然と長く考えられてきた。しかし最近の研究により,実際にはゆるい褶曲波面をもつ構造を主体とすることがわかつてきた。そして日本の中・古生界の構造に対する概念は大きく変えられることになつた。
一方かつて古生界と考えられた地層のあるものから, 上部三畳系を示す多数のコノドントが発見されるに至つた。特に西南日本内帯南部,秩父帯北部などからの発見は,一部の人々の構造発達史の説が誤りであることを明かにした。すなわち三畳紀中期までに領家・三波川帯などでの変成作用が完了したとする説が誤りであることを明かにした。上に述べた構造解析の結果得られた層序は, このコノドントが示す層位とよく合致する。そしてこれらの事実から, 目本の褶曲,褶曲運動を再検討する必要がおこつて来た。
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