地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
ISSN-L : 1880-6341
14 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • 小竹 望, 山中 稔, 多田 有汰, 竹谷 貢太
    2019 年 14 巻 4 号 p. 295-305
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
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    本研究は,東北地方太平洋沖地震の大津波で発生した津波堆積物分別土について,土工材料としての適用性評価を目的とし,木くずの混入が津波堆積物分別土のせん断強度特性に及ぼす影響を評価した.現地採取土及び木くず含有率を変化させた試料を用いた締固め試験から,木くず含有率の増加によって最大乾燥密度が低下し,最適含水比が増加する傾向がみられた.また,締固めた試料に対する圧密定圧一面せん断試験から,木くず含有率が増加するとせん断強度が低下し,ダイレイタンシーが減少する傾向が一部の試料でみられた.木くずの混入が土のせん断強度に及ぼす影響について,全般に共通した傾向が現われなかったが,木くず含有率が3%程度以下であれば,著しいせん断強度の低下がないことが認められた.

  • 泉尾 英文, 半井 健一郎, 吉田 雅彦, 清田 正人
    2019 年 14 巻 4 号 p. 307-320
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
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    セメント安定処理土を含水比の異なる周辺土に接触させ,溶脱による表層強度の変化について検討を行った。安定処理土内部の強度は,最終材齢の2年まで伸び続けたが,周辺土に接触する表層では強度発現性が低下した。表層では,いずれの周辺土においても,溶脱によりCaO濃度が低下していることが確認された。低下範囲は,周辺土の含水比によって異なり,高含水比,自然含水比,低含水比の順に大きかった。一方,CaO濃度低下と強度低下との関係は,健全部を基準とした比で整理すると周辺土の含水比によらずほぼ同様の傾向を示した。低含水比の周辺土に接触させた安定処理土の高い溶脱抵抗性は,硬化前に不飽和の周辺土へ水分が移動し,安定処理土表層における固相割合が増加したことなどにより説明された。

  • 日下 寛彦, 中村 洋丈, 竹本 将, 高橋 章浩
    2019 年 14 巻 4 号 p. 321-330
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    道路盛土の盛土内水位が持続的に高い箇所を特定することは地震時などの大規模被害を防ぐ上で重要である。本研究ではそのような箇所を選定するために,浸透流解析を基にした盛土内水位の上昇速度及び上昇量の推定方法の提案を行った。また,推定方法と実際の水位観測データの比較を行い,推定法の妥当性を検証した。提案した推定方法より,透水係数が大きい場合は継続時間が短く降雨強度が強い場合に水位上昇量は大きくなるが,透水係数が十分に大きい場合には,国内で想定される降雨では盛土内の水位上昇は確認されないこと,盛土の透水係数が小さい場合には,降雨継続時間が長い時に水位上昇しやすいことを示した。前者については用いた水位観測データの範囲では検証できなかったが,後者の透水係数が小さい場合については,水位観測データにより検証することができた。

  • 景山 隆弘, 井上 雄貴, 赤木 寛一, 毛利 光男
    2019 年 14 巻 4 号 p. 331-342
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
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    中間処理プラントで行われている建設発生汚泥の凝集沈殿工程において,自然由来砒素の溶出と多くの中間処理施設で用いられている高分子凝集剤に毒性を持つ未反応のモノマ-が含まれていることが懸念されている。そのため,中間処理後の建設発生汚泥の再利用が困難となることがある。本研究では,セメント由来の高いpHの建設発生汚泥における砒素の溶出抑制と高分子凝集剤添加量を削減する事を目的に,凝集沈殿工程において高分子凝集剤と無機凝集剤を併用し凝集効果を補助する材料として二水石膏粉末を使用した。その結果,二水石膏粉末を添加することにより自然由来の砒素の溶出抑制と凝集性能の向上が確認された。

  • 金 秉洙, 加藤 正司, Seong-Wan Park, 竹下 祐二
    2019 年 14 巻 4 号 p. 343-352
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
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    本研究では,土材料の疎水化方法の違いが遮水機能に与える影響について検討を行った。疎水化方法としてシラン処理及びコンクリート被覆養生材を利用した疎水化処理を用いた。処理した試料を用いて,接触角測定試験,水滴浸入時間試験,及び新たに考案した水浸入水頭試験の3種類の試験を行い,試料の疎水性の程度を評価した。そして,2種類の処理方法における処理溶液の混合率や希釈率を変化させて,それぞれの方法の特徴や作製に要する費用を検討し,より効率的な方法について調べた。得られた結果として,シラン試薬による処理は高い遮水機能が発揮されるが,作製費用も高くなることが示された。一方で,コンクリート被覆養生材による疎水化方法の場合,作製費用は抑えられるが遮水機能も低下することが判明した。以上の結果を総合的に評価すると,今回使用した薬剤を用いた場合,シラン試薬による処理の方がより効率的な作製方法であると判断される。

報告
  • -2003年十勝沖地震で被災した火山灰造成農地との比較-
    山下 聡, 小川 かける, 川尻 峻三, 川口 貴之, 渡邊 達也
    2019 年 14 巻 4 号 p. 353-361
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
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    平成30年北海道胆振東部地震では,札幌市清田区里塚地区の火山灰造成宅地において液状化による大規模な地盤災害が発生した。液状化した火山灰質土は,緩勾配の地盤中を流動し,造成地末端部から噴出し,地表では最大4 m程度沈下した。同様な現象は,2003年十勝沖地震で北見市近郊の端野町協和地区においても発生している。本報告では,液状化土が傾斜地末端部から流出するという特異な液状化被害が発生したメカニズムを探るために,両地点の地形や流出・盛土材料の物理的性質,液状化特性等の比較を行った。その結果,両地点の旧地形や被災状況は非常に類似していることがわかった。また,里塚地区で盛土された火山灰質土の液状化抵抗は,北海道内の他の火山灰質土に比較しても非常に低く,液状化しやすい材料であることがわかった。

  • 笹原 克夫, 平岡 伸隆, 吉川 直孝, 伊藤 和也
    2019 年 14 巻 4 号 p. 363-375
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
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    斜面上の変位計測に基づき,掘削されている斜面の不安定度を評価する方法を確立するために,実大規模の模型斜面を作製し,斜面下部の多段階の掘削を行って,実験中の斜面方向の変位と,それに垂直な方向の変位の計測を,斜面上部および下部の6点で行った。地表面方向の変位はすべての点で斜面の崩壊直前に急増する。それに垂直な方向の変位は,多くの点で一定値に近づくが,単調増加する点もあった。地表面方向の変位とそれに垂直な方向の変位をベクトルと見なし,両者を合成した合成変位を求めると,掘削後にクリープ変形を経て崩壊に至る計測点では,地表面方向の変位が増加すると,合成変位の方向がほぼ一定となることがわかった。以上より地表面方向の変位に対する合成変位の方向の変化量は,掘削に伴う斜面の不安定度を示す指標になることが考えられる。

研究展望
  • 竹村 貴人, 磯部 有作, 奥澤 康一, 佐ノ木 哲, 下茂 道人, 鈴木 健一郎, 清木 隆文, 西本 壮志, 濱本 昌一郎, 藤井 幸泰
    2019 年 14 巻 4 号 p. 377-383
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    近年,3Dデータ計測や3Dプリンターによるモデル作製に関する技術が急速に普及している。これらの技術の利用は地盤工学においても例外ではなく,亀裂性媒体や多孔質媒体などの地盤材料の力学・水理学的挙動を理解することを目的とした研究が行われている。今後,地盤工学に関わる研究者および技術者もより3Dプリンターに接する機会が増えるであろうことを踏まえ,本論では,3Dプリンターの地盤工学への適用に関する最新の研究のレビューを行う。

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