地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
ISSN-L : 1880-6341
15 巻 , 1 号
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特集号
  • 國生 剛治
    2020 年 15 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    現行の液状化予測には応力法が広く使われているが,いっぽう液状化挙動は地震応力波形の違いに依らず土中で損失するエネルギーと直結していることが実験的に示されており,エネルギー法の適用性が高いことが知られている。このような背景の下,地盤工学会では2015〜2018年度にわたり世界的にも前例の少ない「エネルギーに基づく液状化予測法に関する研究委員会」が活動した。本文は地盤工学ジャーナル/エネルギー委員会特集号の巻頭言として,委員会報告書をベースに筆者の個人的視点も加え研究展望としてまとめたものである。まず過去40年におよぶエネルギーによる液状化の研究の流れを整理し課題を確認した。次に地盤の液状化エネルギー容量(R側)については,損失エネルギーが水圧上昇や発生ひずみと一意的関係にあり,応力法の液状化強度比とも土質に依らず密接に関連付けられることを原地盤採取試料の試験結果を含めたデータで示すことができた。一方,地震波動エネルギー(L側)についてはその定義法を確認し実地盤での計算例を示した。さらに,R側とL側のエネルギーを対比して液状化挙動を予測するために提案された3種類のエネルギー法を取り上げて仮想均質地盤や実地盤に適用し,従来の応力法や有効応力解析による予測も含め結果の相互比較を行った。その結果エネルギー法相互間にも差異はあるものの,波形特性に関わらず損失エネルギーのみで予測できるエネルギー法の特長が確認でき,地震動の特性によっては応力法と異なる予測が得られた。エネルギー法相互間の差異についてはさらに吟味を重ねる必要はあるが,液状化挙動は本来損失エネルギーにより一意的に決定され,液状化による地盤剛性の変化や地盤沈下なども損失エネルギーにより連続的に評価できる可能性を考えれば,現行の応力法のみに依存するのではなくエネルギーによる液状化予測法も今後の設計指針に取り入れていくべきである。

  • 清原 雄康
    2020 年 15 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    繰返し三軸試験により,砂や火山灰質土であるしらす土,不飽和化を施した砂やしらす土,突固めやセメント改良,薬液改良などのしらす改良土の繰返しせん断挙動の把握を行ってきた。そのサイクリックモビリティーをもとに計算した基準化累積損失エネルギーの普通砂としらす土との比較,応力履歴,繰返し後の排水条件,飽和度の違いによる比較,対策工間の繰返しエネルギーに対しての耐液状化性能比較を定量的に行った。しらす土は軸差応力を大きくすると比較的小さいエネルギーで液状化に至る傾向が顕著だった。不飽和土,改良土は粘り強さが増し,所定の片振幅ひずみや液状化に至るまでに要するエネルギーは増大した。液状化しない土に対して,所定の片振幅ひずみ発生までに要するエネルギーにより,概ね性能評価出来ることが分かった。また,試料土の液状化強度とエネルギーとの対応関係を把握した。

  • 谷本 俊輔, 國生 剛治
    2020 年 15 巻 1 号 p. 25-38
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    近年,エネルギーに基づく新しい液状化判定法の開発・実用化に向けた研究が活発に進められている。この手法について検討する上では,液状化進行過程における土の各種状態量と累積損失エネルギーの間の一意性を見い出せるか否かがポイントとなるが,再構成試料に比べて多様性を有する原位置採取試料を対象とした系統的な研究事例が少ない。本報では,多種多様な原位置採取試料の繰返し三軸液状化試験データを対象として,累積損失エネルギーとFL法で用いられる液状化強度比,さらにN1値との関係について分析を行った。その結果,繰返し三軸試験では伸張側にひずみが蓄積する特性により一見して一意性がないように見える累積損失エネルギーではあるが,それに補正を加えることにより応力振幅や繰返し回数に関わらず液状化強度比とほぼ一意的関係があることを見出した。一連の検討から得られた関係式は,土の密度・粒度・コンシステンシー・年代効果などに依らず,エネルギーによる液状化判定に適用できる。

  • 井澤 淳, 山本 昌徳, 神澤 拓, 小島 謙一
    2020 年 15 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,エネルギーに基づく液状化判定結果を用いた鉄道橋脚の液状化を考慮した設計の試計算について報告する。今回試行した手法では,液状化層に入力される累積損失エネルギーと剛性低下の関係を基に地盤の支持性能の低下を考慮した橋脚の応答値算定モデルを作成し,液状化の影響を考慮した3ケースの異なる慣性力を与えることで構造物の応答値を算出した。その結果,慣性力の設定を適切に行えば,過去の液状化被害をある程度説明可能な従来の液状化設計と概ね同等の応答値を算定可能であり,エネルギー法を用いた液状化判定の耐震設計への導入が比較的に容易に可能であることを確認した。

  • -仮想地盤モデルを対象とした地震動タイプの影響-
    酒句 教明, 下村 修一, 安達 俊夫
    2020 年 15 巻 1 号 p. 53-66
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,仮想地盤を対象に同一の条件下で従来の応力法と筆者らの構築したエネルギー平衡式を基にした方法によるケーススタディを実施し沈下量を求め,それぞれの特性について考察し比較・検討した。応力法では補正係数の適切な評価が必要であり,沈下量の評価はFL値の精度に大きく依存する。エネルギー法は補正係数を必要としないため工学的判断を必要とせず,地震動強さを液状化により発生する沈下量の大きさで定義すれば,エネルギースペクトルは良い指標になり得る。最大沈下量については25〜40%程度の違い,液状化程度で比較すると同様であるか一つのグレード違いであり,応力法とエネルギー法の評価に大きな隔たりがないことが分かった。

  • 石川 敬祐, 安田 進, 和田 昌大
    2020 年 15 巻 1 号 p. 67-79
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    東日本大震災では東京湾岸の埋立地で液状化による被害が生じた。筆者らは,震災後に深刻な被害を受けた浦安市入船4丁目にて,液状化による戸建て住宅の被害メカニズムを解明する目的で詳細な地盤調査を実施した。調査内容は,標準貫入試験,PS検層,地下水位測定,連続的に採取した乱れの少ない試料に対する室内土質試験(物理特性,液状化試験)である。本報では,連続的に採取した乱れの少ない試料から得られた液状化強度比の深度分布やそれらの各深度・各供試体のエネルギー特性の特徴を述べ,当該地における種々な液状化判定(有効応力,応力法(FL法),エネルギー法)の特徴を現地調査やアンケート調査などから得られた被害の実態と比較することで評価した。

  • 石澤 友浩, 國生 剛治, ハザリカ・ へマンタ
    2020 年 15 巻 1 号 p. 81-89
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    エネルギー法による液状化判定は,液状化対象地盤に供給される波動エネルギーを推定することが必要である。そこで,本稿では2016年熊本地震におけるKiK-netの地震観測記録を用いて地盤内の波動エネルギーを算出した。その結果,波動エネルギーは地表に近づくほど減少し,等価震源距離が短くなるほど増加する傾向を明らかにした。また,断層の破壊伝播に着目し観測点を分類した結果,破壊伝播方向の観測点と断層面に直交した方向の観測点では波動エネルギーに明瞭な違いがあることを示した。さらに,熊本地震の本震による液状化発生地域と非発生地域の深部に到達した波動エネルギーに差異があることを示した。

論文
  • 神山 惇, 福林 良典, 末次 大輔, 鈴木 素之
    2020 年 15 巻 1 号 p. 91-102
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    土構造物の健全性を評価する上で,その締固め度を把握することは極めて重要である。本研究は,締固め試験の効率化を目的とし,従来の締固め試験で用いられる内径10cmおよび15cmのモールドよりも小さい内径5cmの小型モールドと,小型ランマーを用いた締固め試験方法の確立を目指すものである。本論文では,5cmモールドにおける許容最大粒径および,最大粒径とその次に大きい粒径の間に入る土粒子の含有率が締固め特性に及ぼす影響を検討した。その結果,5cmモールドの許容最大粒径は9.5mmであることがわかった。また,既往の礫補正式(W&H式)を用いて,粒径9.5mm以上の礫粒子を含む土試料の最大乾燥密度の算出を検討した結果,礫粒子の含有率が30%以内であれば,最大乾燥密度の実測値と補正値の相違率は2%以内であった。

  • 有木 高明
    2020 年 15 巻 1 号 p. 103-118
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    孔を有する先端金物付きの回転貫入小口径鋼管杭に限定した衝撃載荷試験と動的支持力式の適用性を押込み試験結果の支持力,変形量等と比較・分析して詳細に検討した。本衝撃載荷試験では,鋼管に局部座屈を生じない錘重量及び落下高に設定したが,押込み試験での地盤の降伏及び弾性戻り等の特性が概ね再現され,推定可能な極限支持力の上限値は小口径鋼管杭で対象とする範囲を概ね満足することが確認された。衝撃載荷試験結果の貫入量とリバウンド量は杭先端及び周面地盤の地盤強度の特性を概ね反映し,打撃エネルギーと貫入量またはリバウンド量との積は静的極限支持力にそれぞれ反比例,比例する関係を示したため,Hiley式の誘導時の仮定に最も合致した。また,Hiley式による動的極限支持力と静的極限支持力には強い相関が得られ,その適用性が高く,高止まりや先行削孔事例での有効性も確認された。

  • 伊藤 浩子, 勝見 武
    2020 年 15 巻 1 号 p. 119-130
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    西大阪地域における自然由来特例区域を対象に,自然由来の基準不適合土壌(海成粘土層)の土壌溶出量と全含有量の試験結果を整理した。鉛は概ね土壌溶出量基準値の4倍以内,ふっ素・ほう素は3倍以内であるのに対し,砒素では過半数のデータが基準値の3倍以上の濃度を示した。全含有量については,鉛で10〜20 mg/kg,砒素で5〜15 mg/kg,ふっ素で400 mg/kg未満,ほう素で50 mg/kg未満のデータが卓越するが,ふっ素とほう素では局所的に「自然由来の汚染と判断する際の上限値の目安」を超える区域が認められた。2017年5月の土壌汚染対策法の改正により,自然由来の基準不適合土壌が一定の管理のもとで盛土等に活用できる制度が設けられたが,その制度を適正に推進するためには,本報で示したような客観的かつ定量的な指標となり得るデータの蓄積と利活用を進めていく必要がある。

  • 竹崎 聡, 遠藤 和人, 勝見 武
    2020 年 15 巻 1 号 p. 131-144
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    覆蓋型廃棄物処分場では,遮水性能を有する最終カバーシステムが要求されている。その遮水性能を維持するために,難透水層とともに水平排水材の設置が考えられる。覆土等の土構造物内では降雨等の浸透により内部浸食が生じ,埋設された排水材には流亡した土粒子が流入し,目詰まりを生じさせ,通水性能が低下する。この性能低下を予め構造物設計に反映するためには,土層からの土粒子流亡量の予測が不可欠である。本研究ではカラムを用いた一次元浸透実験を行い,幾つかの土粒子流亡特性を明らかにした。具体的には,単位水量あたりの土粒子流亡量は,降雨強度にかかわらず1~2水準の値に概ね固定され,その発生原因は降雨浸透時の浸潤前線の有無,及び層内飽和度の均一性に依存していることを明らかにした。さらに,流亡量の少ないケースでは,土のサクション特性等より土粒子流亡量を予測する方法を提案した。

  • 小林 真貴子, 宇野 浩樹, 忠野 祐介, 立石 章
    2020 年 15 巻 1 号 p. 145-158
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震で発生した液状化による建物被害は,住宅等の直接基礎構造物の被災予測と対策工評価の重要性が再認識される契機になった。これらの検討では,本来,地盤条件に加えて基礎形状や配置,偏荷重等,3次元的な条件を考慮することが不可欠な場合が多いが,実務に容易に適用可能な解析法が確立されるには至っていない。こうした中,著者らは2次元静的解析プログラムALIDをベースに3次元静的残留変形解析法を構築し,直接基礎構造物の簡便な沈下・傾斜評価法としての実用を目指している。本論文では,まず,直接基礎構造物を配した遠心力載荷模型実験の検証解析と実験結果との比較,および千葉県浦安市街区を対象としたモデル解析と宅地被害調査との比較を通じて,上記3次元解析法の適用性と有用性を検討する。その上で,2次元解析では再現し得ない奥行き方向に住宅を配したモデルで数値実験を行い,住宅間距離と地下水位が3次元的な沈下や傾斜の傾向に及ぼす影響をパラメトリックに検討する。

  • 土田 章仁, 下條 洋介, 西村 強, 河野 勝宣
    2020 年 15 巻 1 号 p. 159-169
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    斜面崩壊のハザード評価では崩壊土砂の到達域の予測が必要となる。この予測には,原地形の情報とともに,崩壊・流下した土砂の斜面法尻部での堆積(静止)を含む運動状態の変化が到達域に及ぼす影響の評価が重要である。このような認識の下,斜面勾配急変点における土砂の速度変化について土塊同士の衝突・乗り越え運動を表現するモデル化を実施した。水平部への入射では,減速する粒子群が発生することが想定されるが,衝突運動は減速した土塊に後続の土塊が水平面上で衝突することを2質点の運動で表現した。乗り越え運動は,減速し静止した堆積部分の上部を土塊が滑動する1質点の運動として表現した。乾燥砂を用いた室内模型実験で得られた斜面傾度と到達域の関係に対して,このモデル化による説明を実施している。その結果,実験時の斜面傾斜角度(40〜60°)の範囲において,最大到達距離が斜面傾斜角度の増大とともに大きくなる傾向を表現できることを記述している。斜面崩壊土の到達域の推定に際しては,崩壊土の運動とその結果として生じる地形変化にも留意する必要があるとまとめている。

  • 伊藤 悟郎, 岡田 哲実, 澤田 喬彰, 大井 翔平
    2020 年 15 巻 1 号 p. 171-179
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    通常,硬質岩盤の強度・変形特性は,岩盤の潜在亀裂や礫の混入による不均質性を適切に考慮できるよう,原位置において比較的大きな供試体に対して行う岩盤試験(平板載荷試験及び岩盤せん断試験)によって評価されるが,応力-ひずみ関係が直接求められない等の課題が指摘されている。本研究では,室内三軸試験と同様に応力-ひずみ関係を評価できる原位置三軸圧縮試験を用いて,青森県下北郡東通村に分布する凝灰岩及び火山礫凝灰岩の2岩種を対象に試験を行い,強度・変形特性を再評価し,過去に実施した岩盤試験の結果との比較を行った。その結果,原位置三軸圧縮試験により原位置岩盤の応力-ひずみ関係を直接得ることができ,既往の岩盤試験結果の妥当性とその課題を検証することができた。

  • ‐実現場における透水試験および数値解析に基づいたデータ分析‐
    岩本 容昭, 太田 博光, 倉品 悠, 長 千佳, 清水 祐也, 森田 修二, 大河原 正文
    2020 年 15 巻 1 号 p. 181-197
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    重金属類含有ずりの埋立処分場の適正な遮水方法の提案においては,埋立後の短期・長期溶出現象を高精度に把握することが重要であり,実規模の重金属類の物理・化学的挙動を数値解析でモデル化した移流・拡散シミュレーションが有効である。また,従来は盛土前の一部試料の分析結果から最大溶出可能量を設定・評価しており,実現場の盛土内部全体の溶出挙動把握を試みた事例は極めて少ない。本報では,実現場で実施した埋立後のボーリング調査から,重金属類の溶出特性や透水特性など,モデル化に必要な基礎性状を検証した。溶出特性では,盛土内部の平均溶出量は地山に対して2割高い値を示し標準偏差は半分程度であった。原位置不飽和透水試験では,測定地点や試験条件により浸透性に差が見られたが,浸潤面の先端ではサクションの僅かな変化で透水性が急激な変化を表すような特徴で一致した。

ノート
  • 小松 満, 二川 雅登, 藤原 優, 田久 勉
    2020 年 15 巻 1 号 p. 199-211
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    現在市販されている土中水分計はいずれもセンサのごく近傍の範囲を計測しており,いわゆる「点」としての情報に限られる.本研究では,「点」の情報は維持しながら,さらに広い「面」の情報に展開できるトモグラフィー方式による土中水分量のモニタリングシステムの確立を目的とし,小型半導体チップ型センサの適用性を検討した.具体的には,高速道路盛土に対する砕石竪排水工の設置効果を検証するための模型地盤を用いて市販の静電容量センサとの比較実験を実施し,模型地盤内への注排水時におけるセンサの出力挙動について確認した.その結果,単体およびセンサ間での測定値とも,静電容量センサの測定値やそれらの平均値と一部では一致したものの,大幅な乖離も認められたことから,模型地盤の不均一性に対する評価を実施した上で,センサの測定特性による違いについてさらに精査する必要性が示唆された.

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