地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
ISSN-L : 1880-6341
16 巻, 4 号
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論文
  • 土田 孝, 山下 恵梨華, 橋本 涼太, Arlyn Aristo Cikmit
    2021 年 16 巻 4 号 p. 275-293
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    液性限界,初期含水比,砂含有率の異なる海成粘土を原料とするセメント固化処理土の強度推定式を提案した。3種類の粘土を用いて様々な条件(初期含水比,砂混合率,セメント添加率)で行った強度試験結果と,実際に現場で用いられた配合試験結果を用いて,提案式の適用性の評価を行った。提案式のパラメータと粘土の液性限界の関係に着目し,液性限界と初期含水比,セメント添加率をパラメータとする強度概算式を作成した。

  • ラ アウン , 久保 幹男, 高橋 章浩
    2021 年 16 巻 4 号 p. 295-305
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    筆者らは,液状化地盤上の盛土の変形抑制対策を目的に,ジオシンセティックスを砕石で挟み込む構造体を浅層に設置する工法(以下,SECURE-G工法)について,変形抑制効果の確認及び補強メカニズムを明らかにするための実験的研究を行っている。本研究では,無対策,砕石単独対策,SECURE-G工法の3ケースの50G動的遠心模型実験とその対策構造の曲げ試験を実施した。実験の結果,SECURE-G工法ではジオシンセティックスの引張抵抗により砕石層の曲げ剛性が増加し,盤的な挙動を示すことにより側方変位を抑え,盛土全体の変形を抑制できることが明らかとなった。また,砕石層の排水効果により過剰間隙水圧の発生抑制と消散促進効果を発揮することで,砕石層直下の地盤の液状化発生を抑制することが変形抑制効果に寄与していることも確認された。

  • 桑野 玲子, 大原 勇
    2021 年 16 巻 4 号 p. 307-317
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    都市部で頻発する道路陥没は,その元となる路面下空洞を見つけ陥没に至る前に対処することが効果的である。近年道路維持管理の実務で空洞探査の実施により多数の路面下空洞が見つかる中,補修や対策の優先度を判断する材料として,陥没危険度の評価指標の確立が望まれる。本研究では,底面に土砂流出孔を有する土槽を用いて砂質土の空洞形成シミュレーション模型実験を実施し,空洞生成・拡大のメカニズムを解明した。また,空洞が進展して地表の崩落に至る際の条件を整理すると共に模型地盤の空洞上の載荷試験を実施し,空洞の陥没危険度の定量評価を試みた。国道の空洞・陥没データと比較し検証したところ,得られた評価指標(空洞天井深さ/空洞幅)による陥没の閾値は国道における空洞の陥没傾向に概ね整合した。

  • 深井 公, 大島 昭彦, 安田 賢吾, 中野 将吾, 萩原 侑大, 松谷 裕治
    2021 年 16 巻 4 号 p. 319-331
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    スクリューウエイト貫入(SWS)試験は,荷重制御,回転および試験結果の記録の全てを機械的に行う全自動式が主流となり,手動式では難しかった自沈時の荷重制御や深度20m程度までの調査も可能となっている。2010年より全国各地でSWS全自動試験装置を用いて,SWS試験と標準貫入試験(SPT)及び室内力学試験(一軸圧縮試験,圧密定体積一面せん断試験)との比較を行ってきた。その結果,SWS試験のWswNswN値の関係は砂質土ではばらつくが,粘性土では比較的相関性が高いこと,粘性土のWswNswと非排水せん断強さsu値との関係では,実務で使われることが多い稲田式は下限値となることがわかってきた。本論文では,これまで実施した全33地点のデータを用いて,SWS試験のWswNswN値および粘性土のsu値との新たな相関式を提案した。

  • 秋本 哲平, 仙頭 紀明, 林 健太郎
    2021 年 16 巻 4 号 p. 333-342
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    我が国の液状化強度は,RL20,5%での評価が一般的であり,発生するひずみ量で液状化を判断している。しかし,この判断方法を薬液改良土に適用した場合,薬液改良土の特徴である繰返しせん断に対する靭性や残留変形の抑制といった改良効果を十分に考慮できていないといった課題があった。本研究では,強震時を想定して高い応力比での繰返し中空ねじりせん断試験を実施することで,繰返しせん断に対する抵抗性を確認し,薬液改良土の特徴を適切に評価するためには,ひずみ量と過剰間隙水圧比を併せた総合的な液状化の判断が必要であることがわかった。また,過剰間隙水圧比の定義で液状化しないと判断された場合でも繰返し載荷に伴い過剰間隙水圧が上昇することから,水圧が残留した状態における薬液改良土の非排水状態の強度変形特性を確認し,繰返し載荷前と同等の非排水せん断強度を有していることを確認した。

  • 中廣 俊幸, 三村 衛
    2021 年 16 巻 4 号 p. 343-354
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    近年,軟弱な粘性土層を対象に敷設されたシールドトンネルの支保部材にひび割れ等の劣化現象が多く見られる。劣化の要因は種々考えられるが,トンネル敷設後の荷重条件の変化による構造的劣化について,敷設地盤の圧密現象に着目した多くの研究がなされている。これらの研究は外的要因(地下水位低下等)による圧密現象を前提としたものであり,明確な外的要因がない状況で構造的劣化が進行している事例もある。筆者らは後者ついて,大阪の沖積粘性土(Ma13)を対象として,トンネル掘削時のインパクトが粘性土の長期挙動に与える影響と要因について三軸試験と解析によりアプローチした。その結果,対象粘性土は掘削時に受けるPc以下のせん断力により長期に渡る圧縮変形を引き起こす可能性があり,その要因は,ⅰ)伸張せん断力による影響,ⅱ)擬似過圧密粘土であることの2点であるとの結論を得た。

  • 冨田 佑一, 古関 潤一, 龍岡 文夫
    2021 年 16 巻 4 号 p. 355-369
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    盛土構造物の設計で三軸圧縮試験を活用する場合,供試体を室内で作製する時は通常側方変形を拘束したモールド内で一様に突き固める。一方,現場施工では締固め機械を走行させて締め固めるため,各締固め層内で乾燥密度ρdは深さ方向に明確に減少し,盛土表層は局所的せん断破壊に伴う乱れが生じる可能性がある。本研究では,大型鋼製土槽内で小型締固め機械で実大締固め実験を行い,試験盛土から乱れの少ない試料を採取し,また室内で同一試料を締め固めて供試体を作製して,不飽和排気・排水三軸試験を行った。その結果,強度・剛性はρdの増加関数と飽和度Srの減少関数の積である経験式で表すことができること,現場締固め土と室内作製供試体の強度と剛性は現場締固め層内での深さ方向のρdSrの減少と現場締固め土の表層での締固め時のせん断破壊の影響を考慮すれば対応することを確認した。

報告
  • 中村 壮志, 畑中 佑太, 鈴木 琢也
    2021 年 16 巻 4 号 p. 371-381
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    二次元有効応力解析コードFLIPにおいて,室内試験等から得られた液状化強度曲線を再現する入力パラメータは要素解析を繰り返し行うことで決定しており,多くの時間を費やしている。そこで,ソフト利用者である技術者や設計者が構造物の設計や安全性の追求など,より本質的な部分に時間と労力をかけられることを目的として,本研究では与えられた液状化強度曲線を再現できる液状化パラメータを自動的に推定する手法を提案する。室内試験から得られた液状化強度曲線を対象とした検証の結果,本提案手法により,与えられた液状化強度曲線を再現できるパラメータの推定が可能であることを確認した。また,逆解析で使用する初期パラメータについて,既往のデータを参考に汎用的に使用可能なパラメータを提案し,その汎用性についても確認した。

  • 山名 宗之, 富澤 康雄, 藤原 照幸, 水野 克己, 稲垣 学武, 水田 和真, 勝見 武, 嘉門 雅史
    2021 年 16 巻 4 号 p. 383-396
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    阪神高速大和川線の泥土圧式シールドトンネル工事からの大量の発生土の処分方法が課題であったため,個別指定制度を活用して,シールド発生土(建設汚泥)を海面埋立用資材として再生利用する「シールド建設汚泥再生活用事業」を実施した。本事業では,要求性能を満たす埋立用資材(コーン指数400 kN/m2以上,pH = 6.0 ~ 9.0)を,トンネル掘削工事の進捗を妨げることなく安定的に製造するための,再資源化処理に関する品質管理技術の確立が要求された。本論文では,土質試験及び化学試験の項目や頻度等を策定した品質マニュアルにより,適正な埋立用資材を製造する品質管理技術を提案,運用し,約95万m3のシールド発生土から,土壌汚染対策法指定基準に適合する埋立用資材の安定供給の実現したことについて報告した。このリサイクルプロジェクトの実施により,建設汚泥の有効かつ適切な再生活用を達成できただけでなく,既存最終処分場の延命化や,周辺環境への影響の低減,リサイクルコストの削減など,多くの成果と知見が得られた。

  • 澤 孝平, 中山 義久, 日置 和昭, 城野 克広, 平 伸明, 服部 健太, 保坂 守男
    2021 年 16 巻 4 号 p. 397-413
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    地盤工学会が実施している地盤材料試験の技能試験の評価の妥当性に影響する次の2項目について,過去10年間の技能試験結果に基づき解説した。その一つは「配付試料の均質性」であり,地盤材料試験に適応するJIS基準の緩和基準を提案し,それに基づく配付試料の準備方法を検討した。もう一つは「試験結果の評価方法(スコア)の妥当性」であり,そのためには付与値が試験結果の代表値であるとともに技能試験結果が正規分布をしている必要がある。そして,これらの実態を紹介し,その対応策として土の粒度試験方法に繰り返し試験の導入を提案した。

  • 中島 康介, 日下 寛彦, 大賀 政秀, 太田 雅之
    2021 年 16 巻 4 号 p. 415-424
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    高速道路盛土において盛土内浸透水排除対策が実施されていく一方で,対策効果を検証する統一的な方法がない。そこで降雨により変動する盛土内水位について,降雨量と盛土内水位の関係性を表現する既存の手法(実効雨量,先行雨量指数,移動平均降水量)を用いた分析を行い,浸透水排除対策の効果判定に適する手法として比較検証した。また季節により変動する盛土内水位について,河川流量の評価で用いられる流況の考え方を基にした「水位位況」という手法を新たに用いた。その結果,降雨との相関性が一番高かった実効雨量を用いた方法と,水位位況による方法とを併用することにより浸透水排除対策の効果を検証する手法について提案した。

ノート
  • - 導電率による凍上速度補正法 -
    川端 伸一郎, 松田 圭大
    2021 年 16 巻 4 号 p. 425-432
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    凍上の被害調査や解析には,原地盤の粒度や密度を再現した凍上試験結果が必要である。しかし,礫分が多くなると供試体作製が困難となり,原地盤とは異なる条件で試験を実施せざるを得ない。凍上は細粒分が原因であるため,礫分を除くと細粒分含有率が本来よりも多くなり,凍上性を過大に評価してしまう。本研究は,凍上現象とメカニズムが類似する導電現象に着目し,両者の相関性から凍上試験結果の粒度補正法を検討した。凍上速度と導電率には高い相関関係が確認され,導電率による凍上性推定の可能性が示された。また,凍上試験結果の粒度補正法としては,礫分体積含有率を用いることが有効であった。

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