地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
ISSN-L : 1880-6341
4 巻, 4 号
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論文
  • 佐藤 正義, 田端 憲太郎
    2009 年 4 巻 4 号 p. 259-271
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    実大三次元震動破壊実験施設を用いて,これまでにない規模の大型の矢板護岸とその背後地盤に杭基礎構造物を有する地盤模型を作製し,矢板護岸の大変位と杭基礎の破壊に関するメカニズムを解明することを目的として、液状化に伴う側方流動実験を行った。結果として,(1)液状化に伴う側方流動による矢板護岸の傾斜・水平の変形を再現でき,背後地盤の杭基礎を破壊させることができた,(2)護岸矢板の側方流動被害を軽減するためには,矢板の水側前面地盤の液状化を防止して受働抵抗力を保持することが効果的であることを実験結果は示唆している,(3)側方流動に伴う杭基礎の破壊のメカニズムとして,杭の破壊が構造物の変位となって現れるのは,矢板側と背後地盤側の両方の杭が破壊した時である,ことがわかった。
  • 玉井 俊行, 伊藤 大輔, 溝口 栄二郎
    2009 年 4 巻 4 号 p. 273-287
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    ソイルセメント羽根付き鋼管杭は,機械式深層混合処理工法により築造された地盤改良体と軸部に断続的にらせん状羽根を有する羽根付き鋼管からなる複合基礎杭である。本杭は大きな鉛直および水平支持力を有し,かつ発生残土が少ない環境に配慮された杭工法である。本杭の支持力特性の明確化および設計法の確立を目指した支持力評価を目的として,単杭を対象とした原位置載荷試験を数例実施した。その結果,本杭の支持力性能は改良体と羽根付き鋼管の複合効果により,鋼管単体に比べて大幅に向上することが分かった。鉛直支持力は羽根付き鋼管のみに比べて約4倍の極限荷重を発揮した。また,水平支持力は地表面変位10mm時の実測値より,水平地盤反力係数khを逆算した実測khと設計kh0の比率(kh/kh0)を複合効果による割増率とすると,変位量に関する割増率が4以上,曲げモーメントに関する割増率が18以上であることが分かった。また,これらの支持力性能は改良体の径を大きくするほど向上することが分かった。さらに,13現場20例の鉛直載荷試験をもとに,支持力評価のための検証を行い,支持力算定式を提案した。
  • 為重 誠, 川村 國夫, 駒田 秀一, 宮村 雅之, 埴原 強, 室井 辰盛
    2009 年 4 巻 4 号 p. 289-305
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    2007年3月25日に発生した最大震度6強の能登半島地震により,能登有料道路は柳田IC~穴水IC間48.2kmにおいて,大規模な高盛土の崩壊が11箇所,路面の段差・クラックが37箇所,橋梁損傷が6箇所と甚大な被害が発生し,地震直後から車輌通行止めの事態に至った。関係者の尽力により1ヶ月間の応急復旧工事の後に暫定的に通行が可能となり,その後の本復旧工事を経て,2007年11月30日に全面復旧を成した。本文では,盛土構造物を対象に能登有料道路の特徴,地震による被害の状況,対策工のために行った土質調査や試験結果,そして,復旧工法の設計,施工に至る一連の流れを述べるとともに,被災原因についても検討した。被災のメカニズムとして,地下水で飽和された盛土法尻部が地震力により脆弱化し,これによって盛土内のすべりが発生した可能性が高いことを示した。
  • 伏屋 行雄
    2009 年 4 巻 4 号 p. 307-315
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    本論文では, 先端に切断機構をもつ新型除去式アンカー工法の開発について, 開発内容および施工実績をもとにした工法検証結果について述べ, 開発した新工法により, 従来行われていた除去式アンカーの持つ問題点を克服することが出来たことを明らかにしている.すなわち, PC鋼より線の切断能力は高く,低荷重にて鋼線切断が可能であること, アンカー引抜き張力が従来工法の20% 程度であること, 25mを越える長尺アンカーの除去能率は従来工法の4倍以上であること, 引抜き鋼線の跳ね上がり現象が発生しないこと, 除去作業時の安全性が著しく向上すること, および引抜き鋼線のスクラップとしての再利用が容易となったこと, である.
  • 足立 有史, 三浦 均也, 三原 正哉, 浦野 和彦, 森政 信吾
    2009 年 4 巻 4 号 p. 317-329
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    1964年の新潟地震以来,液状化時の地盤の流動に起因する橋梁や建物の杭基礎の破壊事例が多数報告され,被害メカニズムや対策工についての様々な調査研究が行われてきた。実際に被害が発生した地盤の多くは,植生や舗装,路盤処理または年代効果や不飽和サクションによってある程度固結した非液状化層で覆われている。このような透水性が小さく液状化流動時にも剛性を失わない地表面非液状化層は液状化の継続時間を拡大するのみならず,杭基礎に作用する外力を増大させる直接的な効果があると考えられる。しかしながら,液状化時の地盤流動による杭基礎に作用する地盤外力,特に地表面非液状化層の影響はこれまで十分に検討されていないのが現状である。
    本研究では,杭基礎,液状化地盤および地表面非液状化層との相互作用に着目し,液状化傾斜地盤における地盤流動によって生じた杭基礎に作用する地盤外力挙動を明らかにすることを目的とし3タイプの模型地盤に対して1g場振動台実験を実施した。その結果,液状化流動中の杭基礎に作用する地盤外力は,地表面非液状化層の存在により液状化流動地盤のサイクリックモビリティーが助長され,増大する傾向にあることがわかった。
  • 片山 辰雄, 小里 隆孝, 加藤 裕将, 楠見 晴重, 松岡 俊文
    2009 年 4 巻 4 号 p. 331-340
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    河川堤防の安全性を検討する場合、対象区間においてボーリング調査をポイント的に行いボーリング間の地層については補完的に設定していることが一般的と思われる。しかし、ボーリング地点の間隔が長い場合、その区間内がボーリング結果から補完した地層区分どおりの状態であるとは限らず、脆弱層の見落とし等が懸念される。本研究において周波数領域電磁探査法(Frequency Domain Electromagnetic Method:以下、略してFDEM探査法と呼ぶ)は、従来のFDEM探査機を改良開発したもので、探査機を地表面に置くだけで非破壊的に直下の比抵抗分布を迅速に探査することが可能である。したがって、河川堤防のような長い区間の地層状態を比抵抗分布から推定する手法に適していると思われ、比抵抗は含水比や粘土や礫の含有量等に相関があることからボーリング結果とキャリブレーションしながら解析すればさらに精度の高い地層区分や脆弱層の位置を推定できるものと考えられる。本研究においては、新しく開発されたFDEM探査機と測定原理に関する理論的な考察を述べるとともに、数ヶ所の河川堤防で行った現位置における探査結果から、本手法の適用性について検討した。
  • 高橋 英紀, 市川 栄徳, 森川 嘉之
    2009 年 4 巻 4 号 p. 341-356
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    軟弱粘土層の安定性向上を目的として,SCP工法は多くの地盤改良工事に用いられているが,経済性の追求や施工上の問題から改良率の低減や改良範囲の縮小が求められている。しかしながら,特に改良範囲を縮小したSCP改良地盤の破壊挙動に関しては,研究が進んでいないのが現状である。本研究では,遠心模型実験および数値解析手法を用いて,鉛直荷重を受ける杭式SCP改良地盤の破壊挙動の検討および改良範囲の縮小化の破壊挙動への影響評価を行った。その結果,改良地盤の破壊時に基礎直下にいわゆる主働くさびが形成され,周辺部の砂杭は湾曲する現象が観察された。数値解析によって,この破壊メカニズムを解明するとともに,改良範囲縮小化において適切な範囲が存在することを明らかにした。
  • 萩原 育夫, 大西 有三, 佐々木 猛, 西山 哲
    2009 年 4 巻 4 号 p. 357-367
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    不連続変形法を用いた落石シミュレーションにおける形状パラメータ設定方法の体系化を目的として,落石の形状特性に関する定量的指標の導入について検討した。落石の形状特性を表す指標としてアスペクト比,円形度,形状エントロピーに着目し,跳躍過程を主体とする解析ケースを対象とした感度解析並びに落石崩落事例解析を行って各形状指標の適用性を検討した。検討結果から,着目した形状指標のうち曲率に関する形状エントロピーと円形度は落石ブロックの形状特性に関連した跳躍時の射出方向変化や崩落時のエネルギー減衰等のシミュレーション結果に対応することを明らかにし,実際の落石崩落を対象とした事例解析において各指標の有効性を把握することができた。これらの形状指標を解析パラメータの設定に導入することは,落石の形状特性把握における主観的誤差の低減や,合理的な落石シミュレーションの実施に有効と考えられた。
  • 石丸 真, 河井 正
    2009 年 4 巻 4 号 p. 369-380
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    2007年新潟県中越沖地震の際,東京電力柏崎刈羽原子力発電所では,原子力発電所建屋近傍で局所的に大きな埋戻し土の沈下が生じた。本研究では,底面が固定された剛な構造物近傍地盤の地震時沈下メカニズムを推定し,その検証として行った振動台実験から,地盤と構造物の相対水平変位に起因した主働すべりにより構造物近傍で局所的な沈下が生じることを確認した。また,種々の地盤条件を変えた実験より,地盤と構造物の相対水平変位が大きいほど,また地盤のすべり抵抗が小さいほど,構造物近傍地盤の沈下量は大きくなることを示した。
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