日本老年療法学会誌
Online ISSN : 2436-908X
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原著
  • 福榮 竜也, 愛下 由香里, 田中 梨美子
    2026 年5 巻 論文ID: 2025_010_OA
    発行日: 2026/01/05
    公開日: 2026/01/12
    ジャーナル フリー

    【目的】地域在住高齢者における幼少期の戦争経験と高齢期の社会的フレイルとの関連を明らかにすることを目的とした。【方法】70歳以上の地域在住高齢者134名を横断的に調査した。社会的フレイルは外出頻度や社会的役割を含む5項目の質問票によって評価し,戦争経験の有無は質問票により分類した。従属変数を社会的フレイルの有無,独立変数を戦争経験の有無とし,性別,年齢を共変量としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】戦争経験者は非経験者に比べ,社会的フレイルの該当割合が高く,有意な関連が示された(調整オッズ比2.60,95%信頼区間1.02-6.61)。【結論】幼少期の戦争経験が老年期の社会的健康に影響を及ぼす可能性があり,社会的フレイルの予防にはライフコースアプローチを踏まえた継続的な支援が求められる。

  • 清水 和也, 松沢 良太, 中村 慎也, 安達 恵人, 後竹 康子, 大仲 玄明, 松森 正術, 玉木 彰
    2026 年5 巻 論文ID: 2025_011_OA
    発行日: 2026/01/08
    公開日: 2026/01/13
    ジャーナル フリー

    目的:心大血管手術後の機能回復の予測は,未だ課題である。本研究の目的は,術前CT画像から得られる筋質(Psoas Muscle Density [PMD])がもつ既存のモデルに対する補完的予測能を評価することである。方法:対象は待機的胸部心大血管手術患者で,研究デザインは後ろ向き観察研究である。PMDは,CT画像の大腰筋領域を抽出し,その領域内の平均CT値とした。主要アウトカムは,術後4日以内の自立歩行の獲得遅延,および術後14日目の 6 MWDの低下(術前値から 50 m以上の低下)とした。性別,EuroSCORE II,および身体機能(握力,SPPB)を含むベースラインモデルにPMDを加えた場合の予測能の変化を曲線下面積(AUC),cNRI,およびIDIで評価した。結果:解析対象者231例のうち,自立歩行の獲得遅延は46.8%,6 MWDの低下は38.5%に認められた。ベースラインモデルへのPMDの追加は,自立歩行の獲得遅延の予測において,曲線下面積を0.825(95%信頼区間:0.763–0.886)から0.865(95%信頼区間:0.813–0.918)へ有意に向上し(P<0.05),6 MWDの低下の予測ではNRIおよびIDIの有意な改善を認めた(それぞれ,P<0.05)。結論:術前PMDは,既存モデルに対する補完的予測能を有し,術前介入の適応を判断する上での有用な指標となりうる。

  • 山田 裕加, 三上 章允, 野末 波輝, 薬袋 淳子
    2026 年5 巻 論文ID: 2025_009_OA
    発行日: 2026/01/16
    公開日: 2026/01/23
    ジャーナル フリー

    【目的】地域で生活する独居高齢者における年齢別のうつ傾向のリスク要因を明らかにし,精神的フレイル予防を含めた支援の基礎資料を得ることを目的とした。【方法】東海地方のA県B市在住で,B市民生委員児童委員連絡協議会が要援護者として定期訪問している独居高齢者1,580名を対象者とし,無記名自記式質問紙を用いた調査を実施した。調査内容は,年齢,性別,独居年数等の対象者の基本属性, GDS5(うつリスク),イレブンチェック(フレイルのリスク),社会参加等について回答を得た。うつリスクを従属変数とし,うつリスクと関連を示した項目を独立変数として,属性として性別を投入した多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】1,184名(回収率:74.9%)より返送があった。除外基準に該当する回答と,GDS5に欠損のあった回答を除いた770名(有効回答率:65.0%)を分析対象とした。対象者の内訳は,男性174名(22.6%),女性596名(77.4%),平均年齢80.47±5.81歳であった。うつリスクと関連を認めた項目は,「現在の体調」,「フレイルのリスク」,「人との交流」であった。【結論】地域在住の独居高齢者のうつ傾向には,フレイルのリスクや人との積極的な交流が影響すると示唆された。独居高齢者のうつ予防への支援には,フレイル予防や人との交流の場の提供が重要であると示された。

  • 的場 孝盛, 戸田 かおり, 藤野 園子, 若井 明日香
    2026 年5 巻 論文ID: 2025_008_OA
    発行日: 2026/04/16
    公開日: 2026/04/21
    ジャーナル フリー

    【目的】慢性期医療機関における音楽療法(以下MT)中断後の高齢患者への影響を調査することを目的とする。【方法】2022年8月新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)院内感染拡大時の病棟閉鎖期間中にMTの中断を経験した高齢患者を対象に病棟閉鎖前後の反応性の変化,患者属性を後方視的に調査した。閉鎖期間の前後比較で療法中の患者の反応を高齢者音楽療法因子評価表SP-11)で点数化し,対象患者全体,COVID-19感染の有無,集団療法参加の有無について変化を認めたか,t検定を実施した。【結果】対象は84名,COVID-19感染者数は25人(29.8%),集団療法対象者は33人(39.3%)であった。病棟閉鎖前後でSP-1点数は全体平均で6.02から5.45点に低下し,その低下は統計学的に有意であった(P=0.019)。COVID-19感染の有無では各々4.84から4.52点,6.53から5.85点に低下し,COVID-19非感染群で有意な低下を認めた(各々P=0.35,P=0.032)。集団療法参加の有無では共に有意な変化は認めなった。【結語】MT中断は高齢患者のMT時の反応性に負の影響を与え,特に社会性において著明な反応性の低下を認めた。

  • 園山 真弓, 藤本 侑大, 兼田 敏克, 由利 禄巳
    2026 年5 巻 論文ID: 2025_013_OA
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/11
    ジャーナル フリー

    要支援・要介護1高齢者(以下軽度者)は,一部に非自立がみられるものの,概ね日常生活動作(以下ADL)が自立している。一方,手段的日常生活動作(以下IADL)は,軽度の段階から制約が生じ,生活の質の低下が指摘されている。近年,訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の利用は増加しているが,介入内容や評価指標に関する研究の蓄積は十分でない。本研究の目的は,軽度者を対象とした訪問リハの評価指標,介入内容,および介入効果を整理することである。研究デザインはスコーピングレビューとし,PubMed,医中誌Web,CiNiiを用い2000年~2024 年の文献を検索した。軽度者を対象とした訪問リハの効果を報告する原著論文を適格基準とし,3名で独立して一次スクリーニングおよび全文精読を行った。結果,528編中11編が採択され,10編は症例報告,1編は単群前後比較研究であった。評価指標は心身機能に関するものが中心であった一方,介入目標としてはIADLの獲得・改善が多く設定されていた。介入効果はIADLや活動範囲の改善が多く報告されていたが,IADLを定量評価した研究は限られていた。単群前後比較研究では,生活空間(Life-Space)の拡大を目的とした介入による活動/参加レベルの改善効果を定量的な評価を用いて示されていた。以上より,軽度者に対する訪問リハでは,IADLや活動/参加レベルを重視した目標設定と,それに対応した定量的評価指標を用いた介入効果検証が重要であることが示唆された。

  • 小泉 尚弘, 音部 雄平
    2026 年5 巻 論文ID: 2025_015_OA
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/11
    ジャーナル フリー

    【目的】要介護ハイリスク高齢者を対象とした多因子介入について,構成要素,実施形態,評価指標,およびその効果に関するエビデンスを整理することを目的とした。【方法】研究デザインにはスコーピングレビューの手法を採用し,論文選択にはPubMed,医中誌,CENTRAL,CINAHLの4つのデータベースを用いて文献検索を行った。2名の独立した著者が一次・二次スクリーニングを実施し,論文抽出の適格基準は,①対象者が65歳以上の高齢者,②フレイルや身体機能低下など要介護ハイリスク状態,③多因子介入を実施している,④研究デザインがランダム化比較試験,⑤日本語もしくは英語にて発表された原著論文であることの5点とした。【結果】1,430件の論文のうち22件を対象とした。対象者の多くは75歳以上の後期高齢者であり,多因子介入の構成要素は,「運動」に「栄養」「認知機能訓練」「健康教育」などを組み合わせた2–4種類の要素で構成されていた。主要なアウトカムはShort Physical Performance Battery(SPPB),握力,Timed Up and Go Test(TUG)などの身体機能指標であり,認知機能やQuality of life(QOL)指標も一部で用いられていた。多くの研究で身体機能の改善が報告されていたが,運動に栄養や認知機能訓練を追加しても,有意な相加効果を示さない研究も複数存在し,その効果にはばらつきが見られた。【結論】要介護ハイリスク高齢者に対する多因子介入は,身体機能改善に一定の効果を示すが,その相加効果は一様ではなかった。

  • ―量的・質的分析からの検討―
    吉田 司秀子, 川口 徹, 新岡 大和, 遠藤 陽季
    2026 年5 巻 論文ID: 2025_014_OA
    発行日: 2026/06/05
    公開日: 2026/06/14
    ジャーナル フリー

    【目的】退院後の在宅生活における患者の満足感は,QOL維持と地域包括ケア推進に重要である。本研究は,A病院から在宅復帰した患者を対象に退院3か月後の主観的満足感に基づき群分けし,関連要因を明らかにすることを目的とした。【方法】在宅復帰後に追跡調査に同意した13名を対象とした。主観的満足感により満足群(n=8)と非満足群(n=5)に分類し,退院時のQOLや日常生活活動能力を量的に比較するとともに,半構造化面接の逐語録を質的記述的研究の手法で分析した。【結果】満足群は日常生活活動の能力が有意に高く,質的分析では,満足群から【生活に困ることはなく,頼る先も決まっている】,【家族の補助や環境調整を得ながら自立した生活を営む】,【こだわりのある生活や趣味が実現できている】,【役割や地域交流を通じて地縁による支援を得ている】,【地域資源やサービスを理解・活用し,将来的な利用にも前向きである】の5カテゴリが得られた。非満足群からは【家族の支援を受け,家族の負担を気にしている】,【支援者が求める生活水準と本人が到達したい水準との乖離がある】,【主たる介護者との関係性に課題を抱えている】,【退院後に状況の悪化を自覚するが,対応できていない】の4カテゴリが抽出された。【結論】満足感にはADL自立に加え役割意識や資源活用が寄与し,非満足群は支援環境の不十分さが阻害因子であった。

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