腱の振動刺激によって生じる運動錯覚と筋放電活動の関連およびタッチングの影響を検討した.健常成人12 名を対象に,遮眼で右前腕伸筋群の腱遠位部に振動刺激を与え,左手関節角度で表現させた運動錯覚と右前腕屈筋群及び伸筋群の筋電図を記録した.振動刺激にタッチングを加えた際の,感情と内受容感覚に関する特性との関連を検討した.振動刺激により手関節の運動錯覚を認めた.筋放電活動は,前腕伸筋群と前腕屈筋群ともに増加したが,屈筋群のみ運動錯覚と正の相関関係を認めた.タッチングにより運動錯覚が消失したが,屈筋群の筋放電活動は増加し,内受容感覚の特性との関連が認められた.屈筋群の筋放電活動には,大脳皮質を介した知覚から運動への変換プロセスが関与する可能性が考えられる.振動刺激による運動錯覚の程度と筋放電活動の関連性,これに対する触刺激の影響から,大脳皮質レベルでの知覚-運動統合機能を介した心身相関を明らかにした.
[要約] 本研究は,バーチャルリアリティ(VR)による3次元森林浴動画視聴が心身に及ぼす効果を明らかにすることを目的に,気分,歩行動作および自律神経機能に及ぼす影響を検証した.対象者18 名に森林浴VR 動画を視聴させ,安静中と動画視聴中に心電図周波数解析を行い,安静後と視聴後にPOMS2 による気分評価と歩行動作解析を行った.その結果,動画視聴中に心電図HF 成分の上昇とLF/HF 成分の低下を認めた.動画視聴後は安静後に比べPOMS2 の怒り-敵意,混乱-当惑,緊張-不安,総合評価の得点は有意に低下し,歩行動作の速度が遅くなり,体重心上下変化,骨盤前後傾斜,下肢関節角度が減少し負担の少ない歩行になった.また動画視聴後には怒り-敵意の気分が低いほど歩行速度は遅いという傾向があった.森林浴VR 動画の視聴は副交感神経機能を優位にして気分を安定化し,歩行動作も安定化させる心身相関の効果を示すことが明らかとなった.
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