心身健康科学
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6 巻, 2 号
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特別講演
第10回日本心身健康科学会学術集会 シンポジウム
原著論文
  • 上澤 悦子, 川口 毅
    2010 年 6 巻 2 号 p. 2_24-2_32
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    成熟期の女性は,不妊を自覚するとアイデンティティの揺らぎ・問い直しと再構築という危機に迫られる.それらの克服のため,わが子の出産を目指すこと,およびわが子の養育や世話に限らないGenerativity(生殖性:普遍的な世話)にも価値を持てる次世代養育プログラムでの関与が必要である.一般不妊治療中の女性22名を対象に,参加型教育と情報提供型教育による次世代養育プログラムに無作為に割り付け,介入前,介入後3カ月の次世代養育意識得点の変化を2元配置分散分析により検証した.参加型教育とはグループワークシップ中心の健康教育であり,情報提供型教育とは講義のみの健康教育であり,具体的な次世代養育プログラム内容は,不妊治療の意義と妊孕性低下予防のための生活習慣,次世代養育の意義がわかること,卵巣予備能力や妊娠率を知り,治療の自己決定ができることにある.参加型教育の介入により「生殖性の意識」「不妊治療の意義」「女性の生き方の考え」意識が有意に上昇し,情報提供型教育の介入では「性に関する教育」意識が有意に上昇した.それらの結果から,次世代養育プログラム介入手法は,講義とグループワークシップを組みわせることでプログラム目標に到達できることが明らかになった.
  • 笑顔つくりトレーニングの介入により仮面様顔貌の改善を図る
    内田 都, 新井 康允
    2010 年 6 巻 2 号 p. 2_33-2_41
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    笑いは心と身体の健康の原点であり,人には社会的な生き物として笑顔が重要である.
    パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)患者は大脳基底核を中心とする皮質下運動系で錐体外路系の障害のため,ユーモアなどに反応した自発的な陽気な笑いを失っており,障害されていない錐体路系によるポーズの笑いのみ可能といわれている.本研究の目的は,仮面様顔貌のPD患者に自然な笑顔の回復を図ることであった.対象者は大学病院脳神経内科外来患者で,表情筋トレーニングとプラス思考トレーニングから構成したトレーニングメニューで実施した.プラス思考の項目は笑顔を引き出す内容を考えて筆者が作成した.トレーニング効果の評価はコンピューターによる笑顔の全体の表情,行動指標による表情評価,顔画像の座標値解析と3つの観点から総合的に評価した.両プランによって体性入力と心的入力が統合する環境を作り出し,自然な笑顔の回復を図ることができた.
  • 高山 範理, 筒井 末春, 中野 博子
    2010 年 6 巻 2 号 p. 2_42-2_51
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,近年,新たなストレス解消方法として期待されている森林浴に着目し,利用者の個人特性が,オンサイトにおける森林浴から享受される心理的な癒し効果(森林浴効果)に,どのように反映されているのかについて明らかにすることを研究の目的とした.
    まず,二十代の男子学生を調査対象者とし,4種類の調査票を用いて個人特性(17指標)の調査をおこなった.次に,POMS(6尺度)を用いたオンサイトの森林浴実験をおこない,森林浴効果を調査した.その後,個人特性の17指標とPOMSの6尺度の間で,相関分析および2群(個人特性の各指標の得点によって「高群」あるいは「低群」に分類)による対照分析をおこなった.
    その結果,森林浴の前後で「活気」および「疲労」尺度などに気分の改善効果がみられた.また,相関分析および対照分析の結果から,“神経症傾向”および“失敗に対する不安”と「怒り─敵意」との間に,“外向性”および“行動の積極性”と「活気」との間に,それぞれ有意な負の相関が確認された.さらに,歩行活動によって個人特性の各指標と「怒り─敵意」尺度との間に,座観活動によって各指標と「活気」および「疲労」尺度との間に,相対的に高い相関関係があることが確認された.
    本研究の結論として,(1):調査地の森林には森林浴効果があった(2):森林浴は,特に神経症傾向や失敗に対する不安感が高い人,あるいは外向性や行動の積極性の低い人により効果的であった(3):(2)のような人々は,森林内をゆったりと散策することで,通常の人よりも,より「怒り─敵意」の感情が沈静化し,よりリラックスした心理状態になることなどが示唆された.
  • 佐藤 和彦, 鈴木 はる江, 藤田 紘一郎
    2010 年 6 巻 2 号 p. 2_52-2_60
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    完成された映像作品は多くの表現要素を含んでいる。それを視聴する個人の特性や状態は多種多様である。映像のもたらす効果は人間の心身の健康にポジティブ,ネガティブ,又は両面からの影響をもたらす。ネガティブな影響からの研究は進みつつあるが,ポジティブな影響に関する研究は緒についたところである。人間に影響を与えるポジティブ面からの要因が明らかになれば,映像のもつ力を生かした効果的な映像制作や,個人差を加味したストレスコーピングへの貢献が可能になることが予測できる。
    本研究では被験映像オブジェクトの速度(映像テンポ)と個人に固有なテンポとの関係に着目し,実験データを基に,心身健康科学的側面から考察した。その結果,個人が快適と感じるテンポと日常の動作テンポには乖離があり,映像テンポがポジティブに個人に及ぼす影響は,本研究で定義する「心身個人テンポ」に関連していることが示唆された。
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