心身健康科学
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8 巻 , 2 号
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会長講演
特別講演
第14回日本心身健康科学会学術集会 シンポジウム
原著論文
  • 宮城 眞理, 豊里 竹彦, 小林 修平, 川口 毅
    2012 年 8 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究は禁煙外来に来訪した受診者を1年以上にわたって追跡調査し,禁煙継続に関わる諸因子を疫学的に明らかにすることを目的とした.特に近年,喫煙が薬物依存症であることが明らかにされ,それに基づいて開発されたニコチン製剤であるニコチンパッチ (二コチネル) および,ニコチン受容体部分作動薬バレニクリン (チャンピックス) を用いた禁煙治療の長期的効果の比較とその他の心身健康に関わる心理的因子の検討を行った.
    都内の禁煙外来においてバレニクリンもしくはニコチンパッチを用いて治療した102名を対象に治療開始後3ヶ月,1年後に追跡調査した結果,3ヶ月,1年後それぞれの禁煙率は79.3%,62.6%であり,禁煙補助剤別でみるとバレニクリンでは80.0%,68.4%,ニコチンパッチでは77.8%,56.7%であった.禁煙補助剤による副作用は53%にみられ,禁煙補助剤別でみるとバレニクリンでは57%,ニコチンパッチ42%であった.
    禁煙の持続率に関連すると思われる因子では,禁煙持続群と禁煙しようとしたが,禁煙できなかった喫煙群との間には禁煙外来への受診回数 (3ヶ月p < 0.05,1年p < 0.01) および心理的要因であるSTAI (特定不安) ならびにカウンセリング必要度に有意差がみられ (p < 0.05),さらにカウンセリング必要度の中では,理屈ではよくないとわかっているのにその行動を改められないなどの行動症状,わけのわからないことで,イライラしたり,不安になる,あるいは無気力になるなどの精神症状に有意差が認められた (p < 0.05).
    以上の結果から,長期的な禁煙効果を高めるためには,受診継続への工夫,禁煙補助剤の開発,ならびに心理的なサポートをするカウンセラーの育成が急務であることが示唆された.
  • 小曽根 秀実, 久住 武, 近藤 昊
    2012 年 8 巻 2 号 p. 100-112
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    直接授乳プロセスにおける母親が自覚するポジティブな心身状態の変化を心身健康科学の視点より検討するため,唾液中クロモグラニンA (以下,唾液中CgA) と母親が自覚するポジティブな心身状態尺度 (10件法) を用いて調査した.調査は,2009年8月~ 2010年10月の期間,13時~16時の家庭訪問中に行なった.対象者は産後2ヶ月~6ヶ月以内の母乳育児中の20から30歳代の母親25人である.はじめに母親から唾液を(1)授乳前30から45分(2)授乳直前(3)授乳開始5分後 (授乳最中) (4)授乳後30から45分 (授乳後) の合計4回採取し,CgA (pmol/ml) を測定した.同時に母親の自覚するポジティブな心身状態として「満たされている」「 (自分自身や授乳対象である児に対する) 信頼している」「手足が温かく眠い」を測定した.その他,質問紙調査票を用いて母親の属性を調べた.
    25人中14人と13人の母親からそれぞれ有効な唾液中CgAと10点評価尺度の結果を得た.その結果,14人の母乳育児をしている母親の唾液中CgAの平均値は「授乳直前」より「授乳最中」に僅か増加することがわかった.しかし,母親の唾液中CgAの個人差が大きいので個々人を見ると,「授乳直前」より「授乳最中」に高くなる母親 (増加群:8人) と低くなる母親 (減少群:6人) の2群のパターンを発見した.また,母親の唾液中CgAの変化に影響を与える背景として「妊娠中期の不安の有無」や「授乳回数が20回以上あるかどうか」が予測されたが,両群の唾液中CgAとこれらの背景との間に有意な関連性は認められなかった.母親のポジティブな心身状態の3項目の得点は,1人を除いて「授乳直前」より「授乳最中」が高く,平均得点は「満たされている」 (p < 0.01),「信頼している」 (p <0.05),「手足が温かく眠い」 (p < 0.01) が高かった.しかし,唾液中CgAの上昇群と下降群の間で母親が自覚するポジティブな心身状態の尺度の平均得点を比較したところ,有意な差は認められなかった.以上のことから,精神的ストレス指標である唾液中CgAが高い母親でも,直接授乳プロセスにおいて,多くの母親はポジティブな心身状態を自覚していたことがわかった.
  • 金城 博子, 島崎 弘幸
    2012 年 8 巻 2 号 p. 113-123
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    肥満は運動不足や,過食などの不適切な食習慣に起因しており,生活習慣病の原因となっている.また,運動は肥満の解消だけでなく心身面での健康管理にも有用であり,運動不足や食習慣を見直すことで減量効果や健康管理あるいはQOLの向上が期待出来る.しかし,長年の生活習慣を個人の意欲だけで変えることは容易ではない.そこで,今回,自宅で出来る平易な運動と食習慣の見直しを基本として,セルフモニタリングによる減量プログラムを作成した.参加者一人ひとりの孤独な取り組みではなく,グループ活動として,同プログラムに取り組むことで,どのような減量効果と生活行動記録が得られるかを検証した.
    調査は専業主婦9名を対象者に,11週間おこなった.減量効果は,体重,BMI (body mass index),体脂肪率,骨格筋率において有意差 (p < 0.01) を認めたが,生活行動記録と減量効果には有意差がなかった.これらの結果から,自宅での運動不足の解消や食習慣の見直しは,グループ活動として行うことで被験者の意識や行動の変化が期待でき,個人では継続することの困難な運動や食生活の改善が,当該研究で提案する方法により比較的,容易に実現でき,被験者の期待する減量にも有効であることが分かった.また,有意差は見られなかったものの簡易的な生活行動記録も,健康管理を目的とする生活習慣の見直しに役立つことが示唆された.
  • 楢原 理恵, 島田 凉子
    2012 年 8 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,3交代制看護師のバーンアウトの重症度別の心身の症状の違いを明らかにし,看護師のバーンアウトの早期発見および対策についての示唆を得ることである.
    総合病院の3交代制看護師133名に質問紙調査を実施した.調査項目は,精神健康調査票 (The General Health Questionnaoire以下GHQ30とする),Maslack Burnout Inventoryの日本語版 (以下MBIとする),職務意識の低下度とした.有効回答98名 (73.7%) を分析対象とした.バーンアウトの重症度として,バーンアウトが重症化するに従って職務意識も低下する1)との前提に基づいた先行研究での結果を本研究においても検証した上で,職務意識の段階を「バーンアウトの軽度・中等度・重度」と仮定した.バーンアウトの重症度と看護師の心身の症状の関連については,GHQ30下位尺度と情緒的消耗感の得点をピアソンの積率相関係数を算出した.その結果,「バーンアウトの軽度」には「身体症状」と有意な正の相関,「バーンアウトの中等度」にはGHQ30下位尺度全ての心身の症状との有意な正の相関,「バーンアウトの重度」には,「精神・神経症状」のみが有意な正の相関を認めた.よって,バーンアウトの早期発見や離職防止においては,看護師の身体症状に着目することが有効であることが示唆された.
  • 本多 ふく代, 近藤 昊, 青木 清
    2012 年 8 巻 2 号 p. 130-142
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究は,種々の負荷刺激が心身に与える影響を明らかにすることを目的として,精神的負荷課題 (画像視課題・符号課題) と身体的負荷課題 (冷水暴露課題・立ち上がり課題) を与えたときの生体反応を検討した.反応の指標として,心拍のRR間隔 (R-R Interval ; RRI) を用い,同一の対象者 (6名) に各課題 (2課題4種類) を3回繰り返した.さらに各負荷課題の前後に心身の自覚的状況を自覚症しらべと気分プロフィール検査短縮版 (Profi le of Mood States ; POMS) を用いて測定した.その結果,安静時に比べと課題時にRRIは短縮したが,精神的負荷刺激では短縮幅が小さく維持時間も短かった.一方,身体的負荷刺激では,短縮幅が大きく刺激時間内は短縮が維持されていた.一個体に対して安静と負荷刺激を3回繰り返したときの各々のRRIにみられる変化は,課題ごとに変化幅や維持時間は異なるが,安静時に延長し課題時に短縮する反応が再現されていた.次に各課題間の関係では,画像視課題と冷水暴露課題の各RRI変化は高い正の相関を示した.画像視課題以外の3つの課題については,刺激の繰り返しによって生じる反応に再現性が認められた.さらに,各課題前後で心身の自覚的状況を調べたところ,冷水暴露課題の前後のPOMSの総合的感情指標のTMD (Total Mood Disturbance ; TMD) スコアの変化,画像視課題と冷水暴露課題による刺激前後の自覚症しらべの「不快感」スコアの変化と2刺激にみられたRRI変化との間に有意な正の相関が認められた.
    以上の結果から,立ち上がり課題,冷水暴露課題のような身体的負荷刺激や,符号課題のような能動的負荷刺激は,繰り返し刺激の再現性が高く,その中でも冷水暴露課題のような強い受動的な負荷刺激が与えられると,刺激は短い時間であっても自覚的に不快を感じて不安定な心身の状況を惹起することが分かった.
  • 北島 正人, 平部 正樹, 藤城 有美子, 山極 和佳, 桑田 有
    2012 年 8 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    青年期における牛乳摂取状況とパーソナリティ特性との関連について検討した.大学生840人に対して無記名自記式質問紙を配布し,760人から回収 (回収率91.1%),うち,基準に該当する755人分を分析対象とした.牛乳が身近にある環境であるか否かと,摂取頻度3水準の組み合わせから,対象者の牛乳摂取状況を6群に分けた.本論では,牛乳が身近にある環境要因は共通しているにも関わらず,摂取頻度が大きく異なる「環境あり× 高頻度摂取」群と「環境あり× 低頻度摂取」群の2群で比較を行った.高頻度摂取群の健康行動では,食生活と歯の健康に気をつけている人が多かった.パーソナリティについては,主要5因子検査を用いて両群の比較を行ったところ,低頻度摂取群において協調性と勤勉性がより低いという傾向が見られた.望ましい健康習慣のひとつである牛乳摂取の維持・促進にあたっては,対象者のパーソナリティの違いを考慮に入れたアプローチの検討が有用であることが示唆された.
  • 門田 美惠子, 吉田 浩子, 大東 俊一, 青木 清
    2012 年 8 巻 2 号 p. 150-159
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    我が国において,小中学生の不登校は近年の大きな社会的課題のひとつである.本研究は,不登校傾向のある児童に対するより良い支援方法を構築するための実証的な手がかりを得ることを目的とした研究の一環である.本稿では,心身相関の視点から,児童の登校意欲と生活実態の関連について知ることを目的に,2010年9月および2011年6月に公立小学校第6学年児童計418名 (男子217人.女子201人) を対象に「睡眠,食事,家族関係,運動,娯楽,学校生活」について問う自記式質問紙を用いた集合調査を実施した (有効回答率91.6%).結果の分析から,回答者全体の10%の児童の登校意欲が低いことがわかった.彼らの登校意欲の程度と生活実態を示す7項目 (就寝時刻,睡眠時間,朝食摂取の有無,偏食の有無,家族関係,友人関係,学校生活) の関連を解析した結果,登校意欲が高い児童は良好な生活実態を示し,登校意欲が低い児童は生活習慣に改善の余地があることがわかった.さらに,「楽しい学校」「よく分かる授業」「良好な友人関係」と登校意欲との関連を実証的に示すことができた.
    このような児童の客観的な実態を十分に吟味し,学校における指導・支援の体制を構築,不登校傾向のある児童の生活に積極的に介入することで,登校意欲のさらなる低減を防止することができると思われる.
 
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