日本ヘルスケア歯科学会誌
Online ISSN : 2436-7311
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ISSN-L : 2187-1760
16 巻, 1 号
日本ヘルスケア歯科学会誌
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
症例報告
  • 松谷 弥恵, 羽山 勇
    2015 年16 巻1 号 p. 6-14
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本症例は初診時63歳の女性で,当時から心臓疾患を患っており,後に脳梗塞から右半身麻痺となった.転倒による骨折など数回にわたる入院で来院が途絶えがちになりながらも,ご主人や介護の方に付き添われ,現在もメインテナンスで通院されている.本症例の初診の2004年当時,当院は“予防診療”をしたいという漠然とした思いを抱いてはいたものの,歯科衛生士は担当制ではなく歯周組織検査も正確とはいえず,とにかく「口腔内の健康を維持し,歯を残すことができる医院に変えていきたい」という院長の思いだけで走り始めていた.その後スタッフとともにヘルスケア型診療を学び深めていったことで,次第に全員の協力が得られ成長していくことができた.当医院のヘルスケア型診療黎明期から現在までをともに歩んでこられた患者から学んだ,高齢者との関わり方と医院のシステム改善の歴史について報告する.
  • 沼澤 秀之, 椎津 ゆみ
    2015 年16 巻1 号 p. 15-23
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    口腔内の安定的な予後は,歯周病学的なアプローチとう蝕学的なアプローチから検討するだけでなく,咬合力学的な観点からのアプローチが必要となる.今回重度歯周病による咀嚼障害を主訴に来院した初診時59歳の女性患者に対し,インプラントを7本埋入し,咬合関係をアイヒナー分類のB3型をA型にするべく咬合支持を回復した.歯周病,う蝕に対しても配慮しながら初診から4年経過した症例を元に,インプラントを含んだ歯列のメインテナンスについて,検査項目,上部構造の設計や材料,メインテナンスの方法や手順などについて検討した.天然歯のメインテナンスとは異なる課題が明らかになった.
  • 阿部 敬典, 栗本 美和
    2015 年16 巻1 号 p. 24-30
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1999年,30歳の女性がのインレー脱離を主訴に来院した.上顎前歯部に多数のう蝕と下顎前歯部に軽度の歯石沈着を認めたため,う蝕治療と歯周基本治療を行った.患者は重度の身体障碍者で,ゆっくりとした自立歩行は可能であったが手足が少し不自由であったため,通院は困難,ブラッシングも十分にはできないと推察し,メインテナンスは勧めなかった.その後何回か主訴があれば来院し,1~2回のう蝕,歯周治療で終了していた.初診から約8年後,左下8番,右下8番の智歯周囲炎を頻発するようになった際,担当歯科衛生士の「腫れにくいお口の中を一緒につくっていきませんか」との言葉かけがきっかけとなり,3カ月ごとのメインテナンスがスタートした.16年経過した現在,メインテナンス中のう蝕発生もほとんどなく,BOPは0~2%と安定している.tooth contacting habit(歯列接触癖)による知覚過敏と酸蝕症の疑いも出てきたが,ほぼ良好な口腔内を維持できている.
  • 斉藤 仁
    2015 年16 巻1 号 p. 31-37
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本報では,永久歯の臼歯部隣接面う蝕を有する患者に対し,定期的メインテナンスのなかで,約1年ごとにエックス線写真撮影を行い,日本ヘルスケア歯科学会が提唱するエックス線診査表を用いて診査し,切削介入を回避している一症例について報告する.患者は初診時7歳,女性で「右上の歯が痛い」という主訴で来院,初診時乳歯のう蝕経験歯の数は7,永久歯のう蝕経験歯の数は0,主訴部位の右上Dはう窩が歯髄まで達していたため抜髄処置を施し,その後数回にわたり乳臼歯のう窩に対してレジン充塡を行った.修復処置終了後は1年に数回定期的に来院し,PTC,PMTC,フッ化物歯面塗布,口腔刷掃指導,食生活指導を行い,15年間にわたりメインテナンスを続けている.初診から8年後に永久歯に対してバイトウィング法によるエックス線写真撮影を行ったところ臼歯部隣接面に透過像が認められたが,定期的に透過像の拡大の有無を診査しつつ,6年間切削介入を避けることができている.
  • 千草 隆治, 畑中 奈々
    2015 年16 巻1 号 p. 38-45
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    患者は初診時年齢41歳,女性.主訴への対応後のメインテナンスにおいて,歯周病とう蝕はある程度コントロールされ,特に問題なく経過したが,14年目に歯根破折のためを抜歯した.専門的なメインテナンスを行って,う蝕や歯周病がコントロールされた場合は,ますます歯根破折の比率が高くなると考えられる.そこで当医院での抜歯の原因を調査したところ,初診時ではう蝕,歯周病の比率が大きく,メインテナンス時では歯根破折の比率が大きかった.歯根破折に関わる要因は多岐にわたり,特に失活歯の歯根破折の予防は容易ではない.しかしメインテナンスにより患者の健康を守り,患者の豊かな生活をサポートするためには,歯根破折が起こる要因を理解し,予防することが大切であり,さらに,失活歯を増やさないようにする努力が必要である.
調査報告
  • 髙木 景子, 藤田 琴美
    2015 年16 巻1 号 p. 46-53
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    公立の障害者歯科センターにおいて,う蝕診査にInternational Caries Detection and Assessment System(以下ICDAS)を導入し,その利点と問題点を考察した.公立の障害者歯科センターでは,心身の障害により一般の歯科診療所では治療が困難な患者を対象として常勤,非常勤の歯科医師,歯科衛生士が輪番で歯科治療を行っている.2010年4月から,初期う蝕の診査コードとしてICDASを導入し,おもに6~12歳児の初期う蝕の経過観察の指標としている.記録にICDASコードを利用するかどうかは担当医と担当歯科衛生士にまかせられているが,2012年4月から10月に受診した患者1,078名のうち,ICDASコードを記録したのは92名(8.5%)で,6~12歳の患者数206名のうち42名(20.4%)であった.ICDASコードを利用している理由は,客観的,経過観察の指標として適切,歯面清掃・観察の精度が上がる,切削介入や全身麻酔や鎮静法の機会を減らせる,などで,その有用性が理解されていたが,障害によってエアー乾燥ができない,開口を保持できないなど,障害者治療に特有の理由によりその利用が困難との意見があった.
  • 秋元 秀俊, 藤木 省三
    2015 年16 巻1 号 p. 54-72
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この初診患者調査は,歯科診療所受診者の経年的動向を知ることを目的に,日本ヘルスケア歯科学会の会員診療所(主に認証診療所)が日常的に記録している資料を収集して分析したものである.会員診療所のうち原則として初診患者全員の口腔内記録がデジタル化されたデータとして提出可能で,6歳以上の小児について一人平均DMF歯数(以下,DMFT指数),成人についてはDMFT指数のほか,残存歯数,歯周病進行度,喫煙経験の記録(いずれかを満たさない場合を含む)のある会員に協力を要請し,その記録を集計分析した.今回の第9次調査は,41診療所(21都道府県)の1年間(2013年1月1日から12月31日)の初診患者を対象にしたものである(生年月日と性別の記載がある患者総数11,765人,男性5,048人,女性6,717人).初診患者の年齢構成と診療所のある自治体の年齢構成を対比したところ,受診患者ピラミッドはほぼ5種類の異なるパターンに分類できた.年齢別のDMFT歯数は,12歳児(該当者30人)では男子1.23(2005年第1次調査は2.30),女子1.93(同2.32)となり,全般に引き続き改善しているが,とくに中高生以上の未成年,および成人では60歳以上の男性で改善が顕著である.成人の現在歯数(残存歯数)はわずかに増加傾向を示した.調査協力診療所のある自治体の一人あたり地方税額を指標として住民の富裕度による疾患の状況を比較すると,DMFTの格差,残存歯数の格差が顕著だった.
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