本研究では,成人の臨床データを収集・分析し,多様なカリエスリスク要因と定期的メインテナンスが歯冠部う蝕病変発生に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.さらにその結果を踏まえ,データマイニング手法であるClassification and Regression Trees(CART)を応用することで,日常臨床における個々の患者の将来のう蝕病変発生を,簡易に予測するためのモデル構築を目指した.
方法:9医院において,データベースに臨床データが登録されている患者のうち,検査時年齢が20歳以上64歳以下の者を分析対象とし,各医院より200名ずつ単純無作為法で抽出,732名(男性224名,女性508名)を分析対象とした.観察期間はカリエスリスク検査日より3年間とし,後ろ向きコホート研究を行った.目的変数は修復を要する歯冠部初発および二次う蝕病変発生の有無,さらに観察期間内に発生したう蝕病変の総数とし,それぞれCART分析およびPoisson分析を行った.その際,説明変数としてカリエスリスク検査時DMFT,唾液中mutans streptococc(i SM),唾液中lactobacill(i LB),唾液分泌量,唾液緩衝能,メインテナンス受診状況を用いた.
結果:分析対象者はでリスク検査時年齢は42.2 ±12.5歳であった.観察期間中にう蝕病変が発生した者は,初発う蝕病変が72名(9.8%),89名(12.2%)であった.CARTの結果より,3年以内に初発う蝕病変発生リスクは,SMが1x10
6CFU/ml以上メインテナンス受診状況が不良な患者群はそれ以外の患者群に対して3.08倍(p=0.0018)高く,二次う蝕病変においてはLBが1x10
4CFU/ml以上でSMが1x10
6CFU/ml以上の患者群がそれ以外の患者群に対して3.69倍(p <0.001)高いことが示された.
結論:成人の歯冠部う蝕では,初発う蝕病変発生の有無および発生総数の両方に対してSMが1x10
6CFU/ml以上とメインテナンス受診状況が不良であることが影響を及ぼし,また二次う蝕病変ではリスク検査時DMFT,SMが1x10
6CFU/ml以上,LBが1x10
4CFU/ml以上であることが有意に影響を与える因子であることが明らかとなった.
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