日本ヘルスケア歯科学会誌
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17 巻, 1 号
日本ヘルスケア歯科学会誌
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • わが国における多施設データの解析
    有野 真澄, 伊藤 中, 藤木 省三, 杉山 精一, 林 美加子
    2016 年17 巻1 号 p. 6-12
    発行日: 2016/12/24
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,成人の臨床データを収集・分析し,多様なカリエスリスク要因と定期的メインテナンスが歯冠部う蝕病変発生に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.さらにその結果を踏まえ,データマイニング手法であるClassification and Regression Trees(CART)を応用することで,日常臨床における個々の患者の将来のう蝕病変発生を,簡易に予測するためのモデル構築を目指した. 方法:9医院において,データベースに臨床データが登録されている患者のうち,検査時年齢が20歳以上64歳以下の者を分析対象とし,各医院より200名ずつ単純無作為法で抽出,732名(男性224名,女性508名)を分析対象とした.観察期間はカリエスリスク検査日より3年間とし,後ろ向きコホート研究を行った.目的変数は修復を要する歯冠部初発および二次う蝕病変発生の有無,さらに観察期間内に発生したう蝕病変の総数とし,それぞれCART分析およびPoisson分析を行った.その際,説明変数としてカリエスリスク検査時DMFT,唾液中mutans streptococc(i SM),唾液中lactobacill(i LB),唾液分泌量,唾液緩衝能,メインテナンス受診状況を用いた. 結果:分析対象者はでリスク検査時年齢は42.2 ±12.5歳であった.観察期間中にう蝕病変が発生した者は,初発う蝕病変が72名(9.8%),89名(12.2%)であった.CARTの結果より,3年以内に初発う蝕病変発生リスクは,SMが1x106CFU/ml以上メインテナンス受診状況が不良な患者群はそれ以外の患者群に対して3.08倍(p=0.0018)高く,二次う蝕病変においてはLBが1x104CFU/ml以上でSMが1x106CFU/ml以上の患者群がそれ以外の患者群に対して3.69倍(p <0.001)高いことが示された. 結論:成人の歯冠部う蝕では,初発う蝕病変発生の有無および発生総数の両方に対してSMが1x106CFU/ml以上とメインテナンス受診状況が不良であることが影響を及ぼし,また二次う蝕病変ではリスク検査時DMFT,SMが1x106CFU/ml以上,LBが1x104CFU/ml以上であることが有意に影響を与える因子であることが明らかとなった.
原著
  • 杉山 精一
    2016 年17 巻1 号 p. 13-17
    発行日: 2016/12/24
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    この調査の目的は,若年成人期(20~39歳)における初診時う蝕経験歯数とその後の10年間のメインテナンス期間中の治療発生回数の関係に明らかにすることである.調査方法は,杉山歯科医院の2013年9月現在の診療記録データベースから,次の条件で対象者を選択し,その後10年間のメインテナンス期間中の治療発生回数について調査を行った.検索条件は初診時において次の四つに該当するものとした.①年齢が20~39歳,②残存歯数が28本以上,③歯周組織が健康または初期歯周炎,④当院でのメインテナンス期間が10年以上ある.28件が該当したが,メインテナンス期間中に審美目的治療を行った2名を除外した26名について調査対象とした.初診時DMF歯数により,グループA(DMF歯数=0-5),グループB(6-10),グループC(11以上)の三つに区分して解析した.グループA(5名)治療発生回数(3.8±3.90),グループB(8名)(5.0±5.01),グループC(13名)(9.0±3.89)であり,治療発生回数には有意に差があった(p=0.04).治療内容については,グループAは,充塡など比較的単純な治療であったが,B,Cでは,より複雑な根管治療や補綴・欠損処置が増加した.保険点数相当の治療単価をもとにして,各グループの治療費用平均を算出した結果は,グループCは,グループAの4倍以上であった.今回の結果から若年成人期におけるう蝕経験歯数がその後のメインテナンス期間中の治療回数と相関があることが推測された.
症例報告
  • 志摩 裕美, 大井 孝友
    2016 年17 巻1 号 p. 18-26
    発行日: 2016/12/24
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    患者は55歳の男性で,妻が当院でメインテナンスを受けていた.主訴は多数歯にわたるう窩,前歯部歯肉の痛みであり,口腔内には一部中等度を含む初期の歯周炎と過蓋咬合が認められた.リスク把握の一助として唾液検査と食事調査を行ったところ,SM,LBともにハイリスクで多飲習慣があることが確認された.歯周治療と生活習慣の改善指導を行い,う蝕治療を行った.過蓋咬合に対しては,矯正治療を提案したが希望しなかったため,咬合を挙上して被蓋を改善することにした.2年にわたるう蝕,補綴治療の中で,咬合を挙上すると「顎が疲れて嚙めない」とのことで,咬合の挙上は断念,もとの咬合高径のまま,補綴処置を終了し,メインテナンスに移行した.う蝕治療,飲料の制限,メインテナンスの継続でSM,LBともに安定している.初診から9年,メインテナンス移行後7年経過,前歯部歯肉の痛みは疲れたときに出現するが,う蝕,歯周病に関しては新たな発症もない状態を維持している.
  • 堀 祐子
    2016 年17 巻1 号 p. 27-31
    発行日: 2016/12/24
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    小児患者のメインテナンスにおいて,母親がエックス線写真撮影を拒んだために,正確な診断ができず苦慮したが,可能な範囲で情報を提供し,行動変容を促す努力を続けた.本例では,メインテナンス中に,母親自らエックス線写真撮影を希望することになった.本症例を通して,診断のための視覚資料の重要性を再認識すると同時に,患者が不安をもつ背景を知り,患者の価値観を優先して,たとえば局所的な口腔内写真を頻繁に撮影するなど,与えられた条件下で可能なメインテナンスケアを行うことの重要性を認識した.
  • 樽味 寿
    2016 年17 巻1 号 p. 32-47
    発行日: 2016/12/24
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本症例報告では,歯根破折やう蝕によって保存不可能と診断した小臼歯を抜去後,同部に智歯を自家歯牙移植した3症例をまず提示する.症例1では上顎小臼歯部に下顎智歯を,症例2では上顎小臼歯部に上顎智歯を,症例3では下顎小臼歯部に上顎智歯を移植した.術後3~7年の3症例すべてで歯根吸収をはじめとする異常は認められず,良好に経過している.小臼歯部に適合する智歯の存在はまれではあるが,小臼歯欠損に対する治療法として自家歯牙移植の有用性が示された.さらに参考症例(症例4)で示すように,当院では,自家歯牙移植に適した形態の智歯が患者の口腔内に存在する場合,これを将来ドナー歯として用いる可能性があることを患者と共有しながら,定期メインテナンスを通じて口腔全体のう蝕と歯周病の予防に努めている.この診療方針は、患者の口腔内に将来起こり得る事象を術者の想定範囲内に収めるヘルスケア型診療の考え方と合致している.
  • 林 浩司, 白川 さおり
    2016 年17 巻1 号 p. 48-56
    発行日: 2016/12/24
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    5歳と1歳のう蝕が多い姉と弟が2005年に初診で来院した.必要な修復治療を終了し,その後,定期的なメインテナンスに来院しているが,う蝕が次々に進行してしまった症例である. リスク評価では,毎回保護者とともにブラッシング指導を行うがプラークコントロールは不良であり,食生活ではシュガーコントロールが不良で,就寝時間が遅いことから就寝前の間食が多い状況であった.その結果,う蝕のアクティビティーは高く,初期う蝕がいつ進行するか分からない状況であった. 反省点としては,医療側の定期管理によってカリエスコントロールは可能と考えていたが,食生活を含めた生活習慣,日々のプラークコントロールなどのホームケアの重要性を気づかされた. 今後は,患者のホームケアの状況を定期的に把握し,情報を共有することにより,時々刻々と変化するカリエスリスクを発見し,早い段階で対策を立てていく必要があることを実感した.
  • 2歳から14歳までの記録
    有松 稔晃, 千草 隆治
    2016 年17 巻1 号 p. 57-73
    発行日: 2016/12/24
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    2004年3月にdf歯数は0の2歳児が検診を主訴として,日本ヘルスケア歯科学会会員診療所である千草歯科医院を受診.乳歯列において,過蓋咬合,前歯部叢生が認められたが観察とし,6カ月ごとのメインテナンスを開始.永久歯列完成直前に,ありまつ矯正歯科医院へ紹介.永久歯列において,上下前歯部叢生,臼歯II級咬合であったことから,左右下4番,左右上5番の抜歯を行い,初診時に治療目標として同意を得た,歯列,咬合,口唇の状態への改善を行った.治療期間は21カ月.以降保定装置を装着して,二つの歯科診療所において定期管理を行っている.また,矯正治療前に2歯にホワイトスポットが存在したことから,増加が懸念されたが,14歳の時点まで1歯のみの増加に留まっている.以上,歯科診療所間の連携により,健康な歯列と咬合が育成された一例として報告する.
調査報告
  • 地域経済格差に焦点をあてた分析
    秋元 秀俊, 藤木 省三
    2016 年17 巻1 号 p. 74-87
    発行日: 2016/12/24
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    この調査は,定期管理型歯科診療所の初診患者の経年的動向を知ることを目的に,日本ヘルスケア歯科学会の会員診療所(主に認証診療所)において日常的に記録されている資料を収集して,その初診患者の特徴を分析したものである.会員診療所のうち原則として初診患者全員の口腔内記録がデジタル化されたデータとして提出可能で,6 歳以上の小児について永久歯のう蝕経験,成人についてはう蝕経験のほか,残存歯数,歯周病進行度,喫煙経験の記録(いずれかを満たさない場合を含む)のある会員に協力を要請し,その記録を集計分析した.今回の第10次調査は,44診療所(21都道府県)の1年間(2014年1月1日から12月31日)の初診患者(生年月日と性別の記載がある患者総数13,344人,男性5,582人,女性7,762人)を対象にしたものである.調査協力歯科診療所の所在自治体の成人一人あたり市町村税額により診療所を3群にわけて,初診患者の特性を比較したところ,年齢別DMFTは中学生以上で群間の差が比較的顕著だった.成人では低所得群で加齢に伴うDMFTの増加傾向がより顕著だった.50代以上で現在歯数は徐々に減少するが,それに伴って群間の差が拡大する.60~65歳の残存歯数は低所得群で値のばらつきが比較的大きく,小児(11~13歳)のDMFTでは,低所得群で値のばらつきが比較的小さいなどの事実が明らかになった.
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