日本ヘルスケア歯科学会誌
Online ISSN : 2436-7311
Print ISSN : 2187-1760
ISSN-L : 2187-1760
19 巻, 1 号
日本ヘルスケア歯科学会誌
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • う蝕管理のターゲットは歯冠部から歯根部へ
    福島 正義
    2018 年19 巻1 号 p. 6-16
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    成人期に歯周疾患の進行,歯周治療あるいは不適切なブラッシングによる歯肉退縮により露出した歯根面あるいは修復物辺縁に近接した歯根面にしばしば根面う蝕が発生する.若年者のう蝕罹患率が低下し,高齢者の歯の喪失が減っているため,「現代型う蝕の歯冠う蝕が減って,古代型う蝕の根面う蝕が増える」という回帰現象が起こる.このため,う蝕管理のターゲットは,歯冠から歯根へと移る.根面う蝕の治療は非外科的な予防・慢性化療法の戦略を優先的に考えるべきである.そこで,根面う蝕の一次予防,二次予防,フッ化ジアンミン銀(SDF)を利用した根面う蝕マネジメントについて述べた.
原著
  • 上條 英之, 野々峠 美枝, 鈴木 誠太郎, 石塚 洋一, 高柳 篤史, 吉野 浩一, 岡本 昌樹, 田中 正大, 杉山 精一, 杉原 直樹
    2018 年19 巻1 号 p. 17-23
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    長期に歯のメインテナンス治療を受けている者と受けていない者での歯の喪失状況を把握する目的で,日本ヘルスケア歯科学会の会員のうち,本調査に協力の得られた31医療機関で,2015年7月から12月にかけて,1764名の患者を対象に初診時から調査時点までの口腔内状況の評価を行った.なお,2003年から2015年の間に,9年以上来院している場合をメインテナンス「有」とし,それ以外をメインテナンス「無」とした.調査を行った期間は,メインテナンスありの場合,10.9年,メインテナンスなしの場合10.6年である. 初診時に歯槽骨吸収が2分の1以上の者の場合,対象者全体,50〜59歳,60〜69歳および70歳以上の者で,メインテナンス治療を開始する時期から本調査までの間に,3歯以上の歯を喪失した者が,メインテナンス治療を受けていない者に比べて,有意に少なく歯のメインテナンス治療による歯の喪失防止効果があることが示された.また,糖尿病の治療を受けている者のうち,メインテナンス治療を受けている者は,メインテナンス治療を受けていない者に比較して3歯以上の歯を喪失した者が有意に低くなる傾向を示した.本調査により歯の喪失リスクが高まる歯槽骨吸収が強い者の場合,長期の歯のメインテナンス治療を受けた者に,歯の喪失防止効果が認められた.また,糖尿病治療を受けている者の場合も,メインテナンス治療による歯の喪失防止効果が認められた.
症例報告
  • 中本 知之, 村上 瞳
    2018 年19 巻1 号 p. 24-33
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    患者は初診来院時65歳の女性で,これまで歯科医院とはほぼ無縁な人生を歩んできた.無症状で経過した広汎型重度慢性歯周炎が引き金となり根面う蝕が発症した.初めて疼痛を感じ,当院を受診し,結果としてそのことが歯周病を治療することに繋がった.自分が歯周病に罹患しているという現実と向き合っていくなかで,行動変容がなされ,現在サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)継続4年が経過している.ただ現状もプラークコントロールのアップダウンが激しく,それには患者の生活背景も影響していると考えられる.新たな根面う蝕発症のリスクを抱えながら,SPTのたびに口腔内環境維持の難しさを痛感させられている症例を報告する.
  • 長岡 守
    2018 年19 巻1 号 p. 34-39
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    小児のう蝕の減少が報告されて久しいが,現在でも歯科医院に来院する患者の多くは多数歯のう蝕を有している.とくに小児のう蝕患者では本人の問題もさることながら,その環境や保護者の知識,疾患の理解度などに大きく影響される.さまざまな情報が溢れるなかで,いかに正しくかつ有益な情報を適切なタイミングで提供するかが,う蝕治療を行っていくうえでは重要である.本症例では,カリエスリスクマネジメントを試行錯誤しながら進めた治療者とそれを理解し協力を惜しまない保護者の努力で,ハイリスクの患児の永久歯列の健全な育成を目指した,3歳7カ月で来院したハイリスク患児の9年間の経過を述べる.
  • 井上 まどか, 寺田 昌平
    2018 年19 巻1 号 p. 40-49
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    This paper is to present a case of a diabetes patient with severe generalized chronic periodontitis. Communication with a hygienist (who explained the disease condition of periodontitis and the need of treatment with clinical data i.e. the results of history taking, X-ray images, intraoral photographs, and periodontal examinations) helped the patient develop an interest in his oral health, and as a result patient became cooperative in learning and improving self-care and continuation of treatment. With this background, initial periodontal treatment led to drastic improvement in this periodontal condition. Currently, the patient’s diabetes has stabilized to a degree where daily life is almost unaffected by the disease, and he has recovered a sense of joy in eating. From this case, I reassured the importance of team approach in dental care as well as initial periodontal therapy and continuation of maintenance care.
  • 杉山 精一
    2018 年19 巻1 号 p. 50-63
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    隣接面う蝕は日々臨床で直面するが,直視ができない,プラークコントロールが困難,効果的な非切削治療がないことなどから,カリエスマネジメントが困難な部位である.そこで,混合歯列期から永久歯列の完成まで,臼歯部のう蝕病変検出装置(ダイアグノカム;DIAGNOcam®,カボデンタルシステムズジャパン社)を病変の検出と観察に用い,隣接面の初期う蝕に対して浸透性の高いレジンをエナメル質脱灰部に浸透させるレジン・インフィルトレーション・キット(アイコン;Icon®,ヨシダ社)を応用した症例について治療と観察の経過を報告する. DIAGNOcam®(KaVo Dental Exellence社,ドイツ)およびIcon®(DMG Chemish-Pharmazeutishe Febrik社,ドイツ)については欧米では,その有用性について報告したものがあるが,わが国では臨床応用の成果を報告した例をみないので,この二つを活用した例について観察結果を報告する.
臨床ノート
  • 杉山 精一
    2018 年19 巻1 号 p. 64-72
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    保険外の費用負担を強いていた唾液検査を基本としたカリエスリスクアセスメントに対する反省から,小児から高齢者まで適用できる,具体的に口腔衛生習慣を確認するチェックリスト方式の新しいカリエスリスクアセスメント(New CRA)を開発し,臨床応用した.その詳細を報告する.歯磨き習慣や食習慣に関する問診結果は,術者がチェアサイドで入力用パッドを使ってコンピュータに入力した.細菌学的な検査としてはう蝕活動性試験(シーエーティー21テスト,モリタ社)を利用した.2017年1月から12月末までに,当院においてメインテナンスに来院した者と治療を終えてメインテナンスに移行した者の合計1,640名のうち,1,106名に実施し,実施率は67.4 %であった.年代別の解析では,歯磨き後の洗口回数とフッ化物の使用量について年代が上がるにつれて適切でない者の割合が高かった.New CRAは従来の方法に比べ,時間短縮され,費用も安価であることからより高い実施率が達成され,同一患者での複数回の診査が可能であることから,リスクの変化を知りうることが期待される.
調査報告
  • 地域経済格差と健康格差に着目した解析
    秋元 秀俊, 藤木 省三
    2018 年19 巻1 号 p. 73-86
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    の調査は,定期管理型歯科診療所の初診患者の経年的動向を知ることを目的に,日本ヘルスケア歯科学会の会員診療所(主に認証診療所)において日常的に記録されている資料を収集して,その初診患者の特徴を分析したものである.第11 次調査は,47 診療所(22 都道府県)の1 年間(2016 年1 月1 日から12 月31 日)の初診患者(生年月日と性別の記載がある患者総数12,261 人,男性5,173 人,女性7,088人)を対象にしたものである.会員診療所のうち原則として初診患者全員の口腔内記録がデジタル化されたデータとして提出可能で,6 歳以上の小児について1 人平均DMF 歯数(以下,DMFT 指数),成人についてはDMFT 指数のほか,残存歯数,歯周病進行度,喫煙経験の記録(いずれかを満たさない場合を含む)のある会員に協力を要請し,その記録を集計した.その結果,12 歳以上の年齢(階層)別DMFT 指数,男性の喫煙者率の顕著な低下が認められ,男女とも高齢者の年齢階層別の現在歯数の増加が,前年調査(2015 年)に引き続き認められた.調査協力歯科診療所の所在自治体の成人1 人当たり市町村税額により診療所を4 群に分けて,初診患者の特性を比較したところ,①10 歳以上の年齢階層別DMFT は1 人当たり地方税の低い群で高く,②成人では低所得群で加齢に伴ってDMFT が増加する傾向がより顕著であり,③50 歳以上のすべての年齢階層で,1 人当たり地方税の低い群から高い群まで,その順に現在歯数の平均値が大きくなっていることが明らかになった.
feedback
Top