日本ヘルスケア歯科学会誌
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21 巻, 1 号
日本ヘルスケア歯科学会誌
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 関野 愉
    2020 年21 巻1 号 p. 6-11
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2022/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    若年性歯周炎Juvenile periodontitis(1977年,AAP;アメリカ歯周病学会)は,1999年の国際会議において,急速破壊性(侵襲型)歯周炎Aggressive periodontitisと改められた.さらに2017年のAAPとEFP(ヨーロッパ歯周病連盟)において,それまで「慢性歯周炎Chronic periodontitis」と区別されていた侵襲型歯周炎が,病態生理学的に異なる疾患であることが証明できないとされ,歯周炎Periodontitisのカテゴリーに統一された.そして,歯周炎は,その重症度,進行速度,広がりに基づいて分類されることとなった.この新分類は,①局所的病態ではなく患者単位での疾患定義,②疾患のコントロールと歯列の維持・管理のための複雑度を評価するステージ(重症度)および範囲と分布,③進行のリスクや治療に対する反応性を評価し治療・管理効果を高めるためのグレード(進行速度)を特徴とする.歯の喪失を重症度の指標に含み,抜歯によって重症度が下がるパラドックスはなくなった.グレードは,骨吸収の状態だけでなく,進行のリスクや治療への反応を評価するので,治療指標として有効なものになったと考えられるが,そのグレードの違いを分かつバイオマーカーは確立されていない.
  • 奥田 克爾
    2020 年21 巻1 号 p. 12-21
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2022/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    インフルエンザは,咽頭を含む口腔内細菌が増加することによって感染しやすくなることがわかっている.口腔内感染症に罹患している場合や口腔清掃がなされない高齢者は,口腔細菌が増加して不顕性に下気道に流入して呼吸器感染症が起こりやすい.新型コロナウイルスが口腔細菌と混合感染した場合には,免疫応答と関わりながら重篤化することが多くの臨床研究で示された.歯科医療と口腔ケアによる口腔機能の維持と清潔は,呼吸器ウイルス感染症のリスクを下げる意義がある.
原著
  • 大川 玲奈, 苅谷 里奈, 又吉 紗綾, 古々本 一馬, 仲野 和彦
    2020 年21 巻1 号 p. 22-29
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2022/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia;HPP)は遺伝性の骨系統疾患であり,主症状は「骨の石灰化障害」と「4歳未満の乳歯早期脱落」とされている.大阪大学歯学部附属病院小児歯科では2012年に骨系統疾患歯科専門外来を開設し,本学医学部附属病院小児科と連携してHPP患者の口腔管理を行ってきた.また,2015年からは歯科関係施設でのスクリーニングによって,医科領域に疑い症例を紹介することで早期診断につなげるというシステムの構築を目指してきた.今回,当科を受診しているHPP患者の実態調査を行うことで,これまでの活動を総括するとともに,これまでに知見の少ない歯限局型の症例に注目した解析を行うことにした.2015年4月から5年間に当科を受診したHPP患者を検索すると,24症例ほどが抽出され,そのうち約1/3を超える症例が,近隣の歯科医院から当科への紹介を経て診断に至っていた.このことから,本院周辺地域における早期スクリーニングシステムが構築されつつあることが示唆された.また,半数以上の症例において歯科症状が初発であることが明らかになった.さらに,すでに成長発育に問題を呈しているものの,診断に至っていなかった症例も存在していた.歯限局型の11症例は,それ以外のタイプの症例と比較して常染色体顕性(優性)遺伝形式をとるものが有意に多いことが明らかになった.また,診断時ALP値が有意に高く,正常値に近いことが示された.これまでに軽症型の知見は少ないことから,本研究で得られた知見を広く啓発することで,従来の早期診断システムの発展につなげていくことができると考えられる.
  • 岡 恒雄
    2020 年21 巻1 号 p. 30-35
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2022/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    当院で筆者が行った自家歯牙移植の現状を把握し,改善点を明らかにするために予後調査を行った.調査期間は,2005年4月から2018年3月までに自家歯牙移植をされたものとした.その期間に自家歯牙移植を受けた者は52人,52歯であった.平均年齢は44.6歳,観察期間は平均4.1年であった.自家歯牙移植が必要となったレシピエント部の抜歯理由の多くは,う蝕が原因であった.ドナー部は下顎の第三大臼歯が69.2 %と多く,レシピエント部も下顎大臼歯部が78.8 %と多かった.喪失歯は6本あり,カプラン・マイヤー法による5年生存率は,89.2 %であった.自家歯牙移植時の生着状態が,喪失歯も含め予後に一番影響していた.リスクファクターの解析では,ログランクテストの結果,喫煙で有意差(p<0.05)が認められた.一方,性別,年齢(50歳以上,50歳未満),歯根形態(単根,複根)では有意差は認められなかった.当院全体では,同期間77歯の自家歯牙移植がされており,1年間での取り組みとして換算すると歯科医師一人年平均1.5本であった.歯科治療に占める自家歯牙移植は,頻度の少ない処置といえる.
  • 千草 隆治
    2020 年21 巻1 号 p. 36-39
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2022/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    歯周病のリスクファクターとして最も強固なエビデンスが確立されている喫煙に関して,日本へルスケア歯科学会会員の診療所におけるそれらの関連性を調査するために,当学会に所属する歯科医師の施設における歯周組織検査と喫煙状況に関する臨床データを分析した.その結果,初診時歯周組織検査における喫煙状況が,再評価時の喫煙状況よりも,その後の残存歯数や喪失歯数に強く関連しており,調査期間中の禁煙は,喫煙中のものと,残存歯数等に有意な差はみられなかった.また,歯周病進行度を加味した場合,中等度,重度のものでは,残存歯数や喪失歯数と有意な相関がみられ,さらに歯周病進行度が中等度および重度のものでは,禁煙することにより喪失歯数が少なくなる可能性が示唆された.
  • 診療情報の共有に関する57歯科診療所間の比較研
    秋元 秀俊
    2020 年21 巻1 号 p. 40-53
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2022/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    日本ヘルスケア歯科学会では,「ヘルスケア診療」の要件(予防ケアを診療の基本に据え,患者と診療情報を共有し,チームで診療し,メインテナンスシステムを確立する等)を満たした診療所を「健康を守り育てる歯科診療所」として認証する制度を設けているが,その認証を受けるにあたって,診療について患者の評価を尋ねるアンケート調査を条件にしている.この無記名郵送式の質問紙調査の結果(57歯科診療所,回答数8,567)を二次的に利用し,①口腔内写真撮影,②デンタルX線撮影,③カリエスリスク検査,④歯周組織検査の四つの検査について,(a)検査の実施率,(b)検査結果の理解率を評価し,併せて(c)定期的メインテナンスの必要性理解率について調査した.さらに57歯科診療所を匿名化したうえで,各診療所の(a)検査実施率,(b)検査結果の理解率,および(c)定期的メインテナンスの必要性理解率を算出し,(a)と(b),(b)と(c)の座標に57歯科診療所をプロットし,診療所の分布状況(相関係数)をもって(a),(b),(c)の相関を調べた.その結果,(a)検査実施率と(b)検査結果の理解率の間には相関は認められず,(b)検査結果の理解率と(c)定期的メインテナンスの必要性理解率との間には相関が認められた.(a)検査の実施,(b)検査結果の理解,(c)定期的メインテナンスの必要性の理解は,いずれも歯科衛生士によって担われる診療業務で,その役割の重要性が確認された.
調査報告
  • 秋元 秀俊, 藤木 省三
    2020 年21 巻1 号 p. 54-63
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2022/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    この調査は,定期管理型歯科診療所の初診患者の経年的動向を知ることを目的に,日本ヘルスケア歯科学会の会員診療所(主に認証診療所)において日常的に記録されている資料を収集して,その初診患者の特徴を分析したものである.この第13次調査は,56診療所(25都道府県)の1年間(2018年1月1日から12月31日)の匿名化された初診患者(生年月日と性別の記載がある患者総数13,654人,男性5,889人,女性7,765人)の口腔内の記録を集計・分析したものである.会員診療所のうち原則として初診患者全員の口腔内記録がデジタル化されたデータとして提出可能で,6歳以上の小児について1人平均DMF歯数(以下,DMFT指数),成人についてはDMFT指数のほか,残存歯数,歯周病進行度,喫煙経験の記録のある会員に協力を要請し,その記録を集計した.その結果,前回調査に引き続き12歳以上の年齢(階層)別DMFT指数,男性の喫煙者率の顕著な低下が認められ,男女とも高齢者の年齢階層別の現在歯数の増加が認められた.
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