日本ヘルスケア歯科学会誌
Online ISSN : 2436-7311
Print ISSN : 2187-1760
ISSN-L : 2187-1760
24 巻, 1 号
日本ヘルスケア歯科学会誌
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総説
  • 高齢者のメインテナンスケアは何のため?
    足立 融
    2023 年24 巻1 号 p. 6-14
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    診療のベースを予防とメインテナンスケアに置く歯科診療所は,高齢者のメインテナンスケアにおいてどのような役割を果たすべきだろうか.加齢に伴う自立度の低下には大きな個人差があるが,大きな病気や事故を経験しない場合でも,高齢者は加齢に伴って身体機能や認知機能の低下などにより,自立した生活が困難となる.そこで高齢者のメインテナンスケアでは,まず日常生活動作の低下に注目したい.フレイルからサルコペニア嚥下障害となり,短期間に死亡に至った事例などから,サルコペニア嚥下障害となって誤嚥性肺炎を繰り返すようになると回復が困難であることに注意を促したい.歯科診療所では,オーラルフレイルの徴候に注意するだけでなく,オーラルフレイルの背景には「身体的なフレイル」「精神心理的フレイル」「社会的フレイル」があることを理解し,地域のフレイルチェック事業への参加を促し,地域の多職種と連携し,地域完結型のケアに参加することが重要である. 後期高齢者の医療は,病院完結型から地域完結型に移行しつつあるが,歯科のメインテナンスケアにおいてもフレイル予防に積極的にかかわり,地域に「つなぐ」ことが重要である.
  • 相田 潤
    2023 年24 巻1 号 p. 15-21
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,歯科疾患の重要性の認識が高まり,WHO で口腔保健の決議が承認されるなど注目が集まっている.しかし,日本においては必ずしも広く認識されているわけではなく,報道も少ない.近年認識された重要性は,減ったことが強調される歯科疾患は,実は他の疾患と比較すると有病率が高いことや,口腔の健康が全身の健康に影響することである.データに基づき,他職種への歯科疾患の重要性の正しい理解の普及が求められる.
  • 泉 英之
    2023 年24 巻1 号 p. 22-34
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    ホームデンティストは自家歯牙移植と外傷歯治療を理想的に行える機会が多い.最も理想的な自家歯牙移植のドナーは歯根未完成歯であり,成功のキーポイントは,適切な歯根完成度で移植を行うことである.ホームデンティストであれば,患者が乳幼児期から通院することが多く,メインテナンスを通じて永久歯先天性欠如の有無や適切なドナーの有無を把握し,移植のための適切な時期を待つことができる.また,メインテナンス中の患者の歯の喪失リスクに応じて,ドナー歯の保存の可否を判断することができる.外傷歯に関しては,とくに脱離歯の治療,受傷直後の患者の対応が重要である.ホームデンティストであれば,メインテナンスに通う患者に受傷時の対応方法を記載した資料を渡すことで,脱離歯の治療成績を高められるだろう.
  • 歯科矯正専門医として伝えたいこと
    有松 稔晃
    2023 年24 巻1 号 p. 35-45
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    矯正治療は元に戻す復元の医療ではなく,新しい状態に変化させる創造の医療である.そのために治療前に必ず治療目標を明確にしておく必要がある.私自身は, 1)歯列と咬合,2)機能,3)口もと,4)治療後の安定 の4点に留意し,これらすべてが相補的にひとつの状態を形づくり,結果として治療後の状態が生体的にも精神的にも無理のない心地よい状態を目指すべきだと考えている.また,当然のことながら,ここに患者の主訴改善の要素が必ず含まれている必要がある. この目標の中で,とくに閉唇時に上下口唇に緊張が生じ,安静時に開口を示す患者には,抜歯治療による口もとの改善を勧めることが多い.加えて,経年的に歯は動き続けるために,矯正治療の結果を一生維持することは困難ではあるものの,叢生症例などにおいて,可及的な治療後の安定のために,不要の歯列拡大を避け,とくに下顎犬歯間幅径の維持を心がけることから,やはり抜歯治療を選択することが多い. また,昨今インプラントアンカーの台頭により,あたかも補綴の設計のように,歯の移動が自由に行えるという視座から矯正治療が語られることが多く,アライナー矯正の台頭と併せて,歯科矯正の専門性は大きく損なわれている.そもそも歯科矯正治療は,矯正力に対する生体の反応を軸に構築された医療であることから,補綴的な機械論と同質で語られることはそぐわない.今回,矯正専門医として,自身の管見を述べさせていただく機会をいただいたが,これを契機にヘルスケア会員の方々に,歯科矯正治療についての見方を再認識していただければと願う次第である.
  • 井内 拓磨, 中塚 隆介, 吉田 博昭, 野﨑 中成, 井関 富雄
    2023 年24 巻1 号 p. 46-55
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    歯科診療において,薬疹を主訴とした受診例は稀であるが,口内炎などの口腔粘膜病変から薬疹を疑う症例が見受けられる.薬疹は抗菌薬や解熱鎮痛薬,抗炎症薬など,歯科で高頻度に処方される薬剤が原因となるため,歯科医療においても遭遇し得る疾患である.頻度の多い薬疹としては,同一部位に皮疹を発症する固定薬疹や皮膚に浮腫性紅斑を伴う多形紅斑がある.とくに注意を要したい重症薬疹として,致死となる可能性のある皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)や中毒性表皮壊死症(Lyell 症候群)は,口腔粘膜症状から診断されることもあり,歯科医療従事者による注意深い観察および薬歴の聴取が重要となる.これらの重症薬疹は迅速な治療が求められるが,それには歯科だけでなく皮膚科などの他科との連携が重要である.そこで,薬疹についての基本的な情報や,医療面接による初期対応ならびに歯科で対応可能な処置についての理解を深めることが必要である.また,他科連携においては診療情報の共有が早期発見・早期治療に繋がるため,歯科診療で薬疹を疑った際の診療情報提供についての知識を得ておくことが望まれる.
症例報告
  • 安田 直美
    2023 年24 巻1 号 p. 56-64
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    初診時2歳11カ月の小児男性の18歳までの約15年間のカリエスマネジメントの記録を報告する.この男児の初診時のプラークコントロールは不良で,乳歯のう歯(d)・修復歯(f)の合計は8,ICDASコード3~4のう窩を複数認めた.常時手の届くところに菓子類があり,欲しいときに食べるという生活で,食事中にコーラを常飲していた.母親への刷掃指導から1カ月後,口腔衛生状態の顕著な改善をみた.母親は,再石灰化療法を希望した.おしゃぶりの弊害について説明したところ,3カ月後に,おしゃぶりを止められたと報告があり,7カ月後にはプラークコントロールレコード(PCR)が10%にまで低下し,初診時に認められた開咬も改善した.そこで,定期的にPMTCを行うメインテナンスに移行した.思春期に入ると母親との会話はなくなったが,歯科衛生士の話は聞いてくれる状態がつづいたが,右下6番の近心隣接面に象牙質に及ぶ透過像(XR3)を認めた.それをきっかけに,切削介入を控えて生活習慣の改善を軸に,4カ月に1度のPMTC通院,フッ素洗口,フロッシングの励行を勧めた.この生活習慣は持続し,中学2年の一時不登校の時期にも就寝前のフッ素洗口,フロッシングを欠かさない生活習慣が続いたが,中学3年夏の受験期には厚いプラークが付着,高校に進んでもPCR高値が続くことになった.そこで観察部位の切削介入をせざるを得ないと伝えたところ高校1年末のPCR値は低下した.幼児期のプラークコントロール不良から始まり,切削介入を控えて経過観察を提案したところ,思春期を通じてPMTCのための通院を継続した.精神的な成長過程において幾度かのカリエスリスクの起伏を経験したカリエスマネジメントの報告である.
  • 山本 瑛子, 高橋 啓
    2023 年24 巻1 号 p. 65-73
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    患者は,53歳(初診時),女性.「多くの歯がボロボロになっている」と訴えて来院された.治療にあたり本人の意向も確認しながら,治療計画を立案した.まず歯周基本治療を行い歯周組織の改善を図るとともに,保存不可能な歯の抜歯や実質欠損のある歯の修復治療を行った.下顎両側臼歯部の欠損については,固定性の補綴治療を希望されたので,インプラント治療をしている.患者は治療中から熱心にセルフケアに取り組み,定期的なメインテナンスも欠かさず来院しており,上部構造装着後15年間,安定した経過を得ることができている.インプラント治療後のメインテナンスについても,本症例を通して,当院での対応の変遷を報告する.
調査報告
  • 岡 恒雄
    2023 年24 巻1 号 p. 74-81
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    当院に来院している高齢者(75歳以上85歳以下)のフレイル(オーラルフレイル含む)の現状を知るため,質問紙法による調査を行った. 調査内容は,交通手段,残存歯数・歯周病の進行状況の理解,口腔の認知度,体重・歩く速さ,缶の開けにくさ,食事,会話,口腔の機能,社会活動,口腔機能検査や口腔機能トレーニングの希望の有無,今後の心配事,について個別面接または配票調査法にて調査した.結果について調査対象者のうち現在歯数20歯以上の者(20歯以上群)と20歯未満の者(20歯未満群)を比較した. 残存歯数,歯周病進行度を理解している者は,それぞれ16%,21%であった.体力面では,歩く速度で,60%の者が遅さを感じていた.口腔では,口渇55%,唇・舌・頰を嚙む38%,むせ・誤嚥35%の者に症状があり,フレイルの存在をうかがわせる結果であった. 20歯以上群は,自分で運転してくる,口腔の認知度,体重の変化なし,なんでも食べられる,口渇なし,むせ・誤嚥なし,社会活動を何かしている,の項目で20歯未満群よりも比率が高かった.逆に舌・頰・口唇を嚙む,口腔機能検査希望ならびにそのトレーニングへの興味,では20歯未満群のほうが高かった.歩く速度,蓋の開けにくさ,食事にかかる時間,思いどおりに喋れる,食べこぼし,ではあまり違いがみられなかった.通院が困難になって一番心配なことは,交通手段をどう確保するかであった.
  • 千草 隆治, 足立 融, 高橋 啓
    2023 年24 巻1 号 p. 82-89
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    日本ヘルスケア歯科学会会員で,ヘルスケア歯科診療を積極的に行っている診療所の院長歯科医師を対象に高齢者診療に関するアンケート調査を行った.その結果,日常的にヘルスケア診療を行っていることが患者の加齢による変化を把握し記録することにつながっていたものの,患者の変化に対して的確に対応できているとは言い難かった.さらに,訪問診療を行っているかいないかの2 群に分けて比較してみたところ,日常的に訪問診療を行っている歯科医師ほど患者の加齢に伴う変化を日常生活のレベルで捉えている傾向が強く,また,高齢者の生活にサポートが必要となった場合も容易に対応していると考えられた.アンケート結果を通じ,来院患者にサポートが必要と感じたときにスムーズに対応できるよう地域との連携がとれる診療室の体制作りが必要であると考えられた.
  • 秋元 秀俊, 藤木 省三
    2023 年24 巻1 号 p. 90-99
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/06/07
    ジャーナル オープンアクセス
    この調査は,定期管理型歯科診療所の初診患者の経年的動向を知ることを目的に,日本ヘルスケア歯科学会の会員診療所(主に「健康を守り育てる診療所」の認証を受けた診療所)において日常的に記録されている診療記録を匿名化したうえで収集し,その初診患者の特徴を分析したものである.この第17次調査(第16報)は,63診療所(24都道府県)の1年間(2021年1月1日から12月31日)の初診患者(生年月日と性別の記載がある患者総数13,908人,男性6,061人,女性7,847人)の口腔内の記録を集計・分析したものである.会員診療所のうち原則として初診患者全員の口腔内記録がデジタル化されたデータとして提出可能で,6歳以上の小児について1人平均DMF歯数(以下,DMFT指数),成人についてはDMFT指数のほか,残存歯数,歯周病進行度,喫煙経験の記録のある会員に協力を要請し,その記録を集計した(必ずしもすべての項目の記録が揃っているわけではない).調査集計の結果,前回調査に引き続き12歳以上の年齢(階層)別DMFT指数の低下,若年層男性の非喫煙者率の増加が認められた.また男女とも高齢者の現在歯数の増加が認められた.
feedback
Top