医療看護研究
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特別寄稿
総説
  • 種市 ひろみ, 中村 睦美, 菱田 一恵
    原稿種別: 総  説
    2024 年 21 巻 1 号 p. 19-33
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

     目的:介護予防に向けた「通いの場」の実践活動の評価に言及する国内文献から、活動の効果の評価方法と評価の結果を明らかにする。

     方法:「通いの場」をキーワードとして、医中誌Web、CiNiiにて検索し、活動の効果の評価に言及している論文を選択した。対象者、評価対象の場、活動内容、評価方法・効果の評価などを抽出した。評価指標は「運動機能」「栄養状態」「精神機能」「家庭・社会参加」「総合的評価」に分け、評価方法及び評価の結果をまとめ、課題を検討した。

     結果・考察:対象文献27件が抽出され、量的研究26件、質的研究1件であった。対象と対象の場が身体活動中心であった文献は12件と最も多く、評価指標を複数使用している文献が多かった。「運動機能」の指標12種類のうち、握力を指標とした文献が9件と最多であったが、高感度に筋持久力を評価できる指標が適切と考えられた。「栄養状態」の指標は3種類で、活動により明らかな効果が認められ、今後の研究・活動の広がりが期待される。「精神機能」7種類、「家庭・社会参加」8種類の指標が使用されていた。「総合的評価」10種類の指標は評価に有用であった。今後、質的評価の推進と、多様な生活背景をもつ高齢者に共通して使用できる評価指標の活用が課題であると考える。

  • Varinlada JANTAWEEMUANG, Shinobu SAKURAI
    2024 年 21 巻 1 号 p. 34-47
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー
     Objective:Chronic kidney disease significantly impacts patient mortality and quality of life. Advance care planning allows patients to receive their preferred treatment when entering the end stage of the disease and reduces anxiety in family members and healthcare professionals. However, it remains less practiced among this patient group, and effective intervention is needed. Thus, this literature review aims to identify advance care planning interventions for chronic kidney disease patients.
     Methods:A literature search was conducted using keywords that included chronic kidney disease, advance care planning intervention, advance care directive, and living will in ProQuest, PubMed, Scopus, Cochrane, and Google Scholar. Inclusion criteria: research articles published in peer-reviewed journals or research papers within the last ten years, only articles written in English, original research, and full-text. Articles that were excluded were studies not related to advance care planning intervention, focused on only the health professionals’ training program, and studied only pediatric participants. Data was illustrated using a descriptive and narrative approach.
     Results:Of 7,117 citations, 24 articles were included. The successful implementations comprise establishing trust between patient and healthcare staff, adjusting individualized advance care planning, discussing based on the individual’s situation, responses, and perspective, developing culturally appropriate intervention, training healthcare staff regarding advance care planning intervention, inviting family members to discuss, adapting documentation simply to use, initiating discussion by the proper time, place, and introduction, training patients as expert patients, and conducting communication simulation. In contrast, difficulties include inappropriate intervention methods and disagreements between patients and their proxies. There is a diverse evaluation among previous studies, and few studies have evaluated the concordance of patients’ wishes and their received end-of-life care.
     Conclusion:Further studies should apply successful strategies, be aware of difficulties, and evaluate whether patients receive end-of-life care following their preference, which is determined by the advance care planning intervention process.
原著
  • 石元 有美, 髙山 京子
    原稿種別: 原  著
    2024 年 21 巻 1 号 p. 48-58
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的はAYA世代の乳がん患者のパートナーが乳がん診断後に初期治療を受ける患者を支える体験を明らかにすることである。初期治療で手術と化学療法を経験し、診断から5年程度のAYA世代乳がん患者のパートナー3名に半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。

     分析の結果、患者を支える体験は6つの大カテゴリーに集約された。パートナーは【妻を失う恐怖と対峙し続ける】中で【初期治療完遂のためにできる限りを尽くして妻の負担を軽減する】と【妻の乳がん罹患によって変化した家族を柱となって守る】を同時に担い、多重役割を抱えて【一人ではすべてを背負いきれない】状況となるが【自分自身が周囲の人から力を得る】ことで乗り越え、【新たな家族の形を構築して再発の覚悟と共に生きる】体験をしていた。また体験には、多重役割を担いながら懸命に患者を守る、AYA世代の女性としての気持ちを大切にする、他者からの支えがなければ患者を支えきれないという3つの特徴があり、看護の示唆として本研究で得られた体験のプロセスを予測しながら、パートナーの多重役割を軽減するリソースの情報を提供すること、同世代パートナーの体験を伝えること、弱音を吐けるように支援することが重要だと考えられた。

研究報告
  • 佐野 知世, 湯浅 美千代, 杉山 智子
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 21 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

     目的:せん妄様症状を示す認知症高齢者に対する訪問看護師のアプローチ過程を明らかにすることである。

     方法:訪問看護師を対象に、せん妄様症状を示す在宅で生活する認知症高齢者へのアプローチ過程、その際に用いた情報、情報収集の方法、症状に対する対応およびその結果等について半構造化面接を実施し、10事例のナラティブ分析を行った。

     結果:訪問前からせん妄を推論し対応するパターン①(4事例)、情報や症状からせん妄とそれ以外の疾患の可能性を考え対応するパターン②(3事例)、認知機能の低下と広くとらえ対応するパターン③(3事例)の3パターンを見出した。

     考察:事前に家族介護者や医療施設からせん妄様症状や発症要因についての情報がある場合は、早期にせん妄の発症要因を確認しアプローチできる可能性がある。訪問前の情報や症状からせん妄だけでなく他の疾患の可能性もある場合は、せん妄とそれ以外の疾患の可能性を視野に入れて要因を探る必要がある。訪問前の情報が乏しい場合や、認知症の行動・心理症状が疑われる場合は、認知機能の低下と広くとらえ、それに関連する要因を一つ一つ探る必要がある。

  • 菱田 一恵
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 21 巻 1 号 p. 67-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

     目的:「訪問看護師が一人前から中堅になるための教育支援プログラム試案」を試行し、プログラム洗練に向けて課題を明らかにする。

     方法:先行研究で明らかになった、一人前訪問看護師以降に経験すると考えられる中堅訪問看護師への成長にかかわる6カテゴリーからコンピテンシーを抽出し、4段階のルーブリック評価に基づいた到達度評価基準を作成した。この到達度評価基準を基盤に教育支援プログラム試案を作成し、一人前訪問看護師と訪問看護ステーション管理者に実施した。

     結果:一人前訪問看護師は、評価基準によって到達段階の確認、および成長していく上での次なる課題の見極めができていた。また、ルーブリック評価に基づいた到達度評価基準は、一人前訪問看護師だけでなく管理者にとっても指導にあたる上での指針となっていた。

     結論:プログラムの試行により、訪問看護師の背景が多岐に渡ることが再確認でき、個別にプログラムを組み立てるパターンメードの方式や日々の訪問看護実践の中で自分の課題に取り組むOJTの方式は有意義であると考えられた。今後は到達度評価基準の洗練、プログラム実施期間の検証を含めた、より実践者が利用しやすい実用的なプログラムに修正することが課題である。

資料
  • 佐藤 琴美, 野崎 真奈美
    原稿種別: 資  料
    2024 年 21 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

     【目的】国内の看護系大学において、報告されているキャリア教育の実践を文献検討により明らかにし、看護教育実践に向けての今後の課題を見出すことである。

     【方法】医中誌Web版とGoogle Scholarを用い、「看護」、「キャリア」、「教育」のキーワードで文献を検索した。抽出された文献のキャリア教育の実践について、教育目標・教育方法・教育評価の視点で精読して文献検討を行った。

     【結果】医中誌Web版で8件、Google Scholarで2件の計10件が該当した。教育目標として、主体的にキャリアを形成できることや、将来のキャリアデザインを設計できることを目標としている教育が多かった。ポートフォリオやキャリアシートの活用、看護職者の体験談を聞く機会を積極的に設けており、主に授業後のアンケートや個別面談からキャリア教育の効果を評価していた。

     【考察】キャリア形成にはポートフォリオやキャリアシートなどで能力を可視化できるツールが有効であったと考えられ、看護基礎教育課程の早期から継続教育へシームレスにキャリア形成を進めるための教育が求められていることが示唆された。今後は、看護基礎教育課程からシームレスにキャリアを形成していくために求められる能力を明らかにし、具体的な教育的介入を検討する必要性が示唆された。

  • 竹中 奈々, 大月 恵理子
    原稿種別: 資  料
    2024 年 21 巻 1 号 p. 87-97
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

     目的:国内外のペリネイタル・ロスのケアに関わる看護職の受ける心理的影響を文献検討することにより明らかにすること。

    方法:国内外の検索エンジンでのキーワード検索による文献検索を行った。対象文献から、看護職がペリネイタル・ロスを経験した女性やその家族をケアする際に受ける心理的影響について記載のあるものからペリネイタル・ロスに対する感情について、帰納的に集約しコードにまとめ分析した。

     結果・考察:国内文献20件、国外文献11件の計31件を分析対象とした。その結果、ペリネイタル・ロスのケアをする際に看護職は9サブカテゴリ、【死産ケアへの苦手意識】【死産ケアをする際に抱く困難感・心理的負担感】【ケアに対する肯定感】の3カテゴリが見いだされた。看護職は死産のケアを提供する際に悲しみやつらさ、無力感を感じながら自分自身の感情をコントロールしなくてはならないなど葛藤や複雑な感情を抱きながらケアにあたっていることがわかった。

     結論:ペリネイタル・ロスのケアは、看護職にとって心理的な負担が大きいことがわかった。困難を感じながらも肯定的な感情に変化することもある。心理的負担に関して基礎教育やサポート体制を整備することで看護職がペリネイタル・ロスから受ける心理的負担を軽減することや肯定的な感情に変化できる可能性が考えられた。

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