日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
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56回大会:口頭発表
  • -小学校5年生「できるようになったよすごろく」作りからの考察
    岡部 雅子, 堀内 かおる
    セッションID: A1-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    〈研究の背景と目的〉家庭科初年度である小学校5年生の1年間の授業は,教師も子どもも初めて行う調理実習や裁縫実習などに目が向きがちで,学びの成果を振り返り互いに共有することがないまま個々の子どもの活動に収束してしまいがちである。家庭科学習のスタートで行ったガイダンスを受けて、5年次の終わりには1年間の学びを振り返り,互いの成長を認め合い,6年次へとつながる課題を持てるようになるための時間を位置づけたいと考えた。そこで,この1年間の学習で自分ができるようになったことをすごろくに作り,発表しあう活動を取り入れることを試みた。
    学習のまとめを作品化する先行研究としては「家庭科推奨CM制作による学びの終結からガイダンスをつなぐ試み」(堀内,種村2012)があり,すごろくの教材化では「生活設計教育における『人生すごろく』作りの意義」(齋藤,岡村,上野,牧野1999)「教材『食育すごろくゲーム』活用の一考察」(石澤,名嘉,得丸2012)などがある。発表者は小学校低学年生活科の学習ですごろく作りの実践をした経験から,学びの足跡をすごろくに作品化することに意義を見出していた。すごろくを作る活動を通して家庭科学習による学びの過程と成果や課題を可視化させ,それを発表し合うことによって互いの成長と家庭科を学ぶ意義を友だちと共有する単元を開発することを本研究の目的とする。
    〈方法〉授業実践は国立大学附属小学校5年A組(児童数31名)において平成25年2月に行った。題材名は「できるようになったことを発表しよう―できるようになったよすごろくを作ろう―」である。授業数は全10時間,単元の流れは次のようである。
    ・学級で1年間の学習内容を振り返る。(1時間)
    ・自分ができるようになったことを学級で共有する。(1時間)
    ・4人グループですごろくを作る。(6時間)
    ・すごろくを発表しあい,1年間の成長を共に振り返り,来年度に向けての課題を持つ。すごろくで遊ぶ。(2時間)
    〈結果と考察〉導入で5年生の1年間の学習を通してできるようになったこと,分かったこと,失敗した経験などを話し合った後,クラスですごろくのテーマを決めた。内容が多岐にわたった個人の振り返りを生かし,すごろくのテーマは「山あり谷あり針さしづくりすごろく」「ミシンを使えるようになろう 袋作りへの道すごろく」「調理できるかな?すごろく」「部屋のクリーンぼうけんすごろく」「家族のためにがんばろうすごろく」「1年のまとめ~金メダルへの道~すごろく」「まとめテストすごろく」「りっぱな小学生すごろく」の8種類に決まり,1年間の学習内容が網羅された。
    すごろくのチェックポイントを作るときには具体的に学習を想起する様子が見られ,それらをすごろくに投影し作り上げていく過程においては,友だち同士の意見交換や議論が盛んに行われていた。また,アイディアが目に見える形で表れているため,他グループとの交流も自然な形で行われており,互いに刺激を受けながら子どもたちは意欲的に活動している様子が見られた。できあがったすごろくのチェックポイントには,友だちや自分の失敗談,成功例,獲得した知識などが可視化され,子どもたちの学びの履歴が時系列にあるいは段階を経て示された。失敗しても戻ればまた進めるというすごろくの特徴から,失敗もネガティブな捉え方をされることなく,むしろ楽しみながらすごろくに盛り込んでいた。
    これらのことからすごろくは,学びの過程や成長を可視化し子どもたち同士で共有することのできる教材であるといえる。友だちと協力して楽しみながら学習を振り返り,家庭科という教科で身につけた力を総括し,家庭科で学ぶ意味に気づいた。また,完成したすごろくは,教師にとってこの1年間の授業評価とも読み取れた。(なお、本研究は,小玉亮子お茶の水女子大学教授と堀内かおる横浜国立大学教授との共同研究の成果の一部である。)
  • 小川 裕子, 中島 喜代子, 石井 仁, 田中 勝, 杉浦 淳吉, 小川 正光
    セッションID: A1-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    目的:本研究では、先に行った教員を対象とした調査に続けて、中学生を対象とした住生活に関する学習要求を明らかにする調査を実施した。住生活の学習について学習者サイドの要求を明らかにすることによって、今後の住生活の学習内容や教材、学習方法の改善に資することを目的とする。
    方法:先の教員調査と同様に、東海地方4県に所在する公立中学校計14校(静岡県4校、三重県3校、岐阜県4校、愛知県3校)の一部または全生徒を対象とした。回答者は計3,302名である。調査は、2011年10月から2012年2月にかけて実施した。
    結果:回答者の基本属性は、学年は1年生1,593名、2年生679名、3年生1,030名、性別は男子1,626名、女子1,657名、不明19名である。学校の立地を基にして、居住地域を市街地、住宅地、郊外の3地域類型に分類したところ、それぞれの該当者は、市街地983名、住宅地1,268名、郊外1,051名である。回答者の中学校での住生活の学習状況は、学習前1,272名、学習中364名、学習後1,666名である。 まず、家庭科全学習内容(1998年告示学習指導要領の12項目)に対する生徒の「関心」の結果における住生活の位置は、調理、食品に次いで高く、決して低くはない。ただし、学年が上がるにつれて「大変関心がある」と回答した割合が低くなる。以上の結果には顕著な男女差が認められ、家庭科の多くの内容に女子の方が男子より高い関心を示しているが、住生活に関してのみ「大変関心がある」と回答した割合は男子の方が女子より顕著に高いという特徴がある。
     次に、住生活に関する学習内容を16挙げ、それぞれについて学習の必要性と共に、必要と思う場合についてそう思う理由(好き・楽しいから、今の自分の生活に役に立つ、将来の自分の生活に役に立つ、将来の社会に役に立つ、その他)を問うた。全体で学習の必要性が最も高い内容は、「災害に対する安全対策、防犯対策」であり、「住まいの維持・管理」「家庭内の事故と安全対策」が続く。その後は「環境に配慮した住まい」「バリアフリー・ユニバーサルデザイン」「家族の生活と住み方」「通風・換気」である(これらの内容について、7割以上が「必要」と回答)。これらの学習が必要だと考える理由に関して、「将来の社会に役に立つ」とする回答が多い内容は「バリアフリー・ユニバーサルデザイン」「環境に配慮した住まい」「災害に対する安全対策、防犯対策」である。「将来の自分の生活に役に立つ」という理由を多くが挙げた内容は、「家庭内の事故と安全対策」「災害に対する安全対策、防犯対策」「住まいの計画」「住まいの維持・管理」「気候・風土と住まい」「通風・換気」である。「今の自分の生活に役に立つ」という理由を多くが挙げた内容は、「住まいの維持・管理」「通風・換気」である。「好き・楽しいから」という理由の挙がった内容は、全体に少ないものの「住まいの計画」と「生活行為と住空間」でやや多い。以上の結果には、性別や住生活の学習状況によって有意差が認められた学習内容も少なくない。
     さらに、住生活学習の方法について11例を挙げて学習したいかどうかを尋ねた。全体の6割以上が「学習したい」と回答した学習方法は、「インターネットや本での調べ学習」「地震体験」「視聴覚教材による学習」、そして「学校外での実験・調査・観察」である。これらを含め11件の学習方法すべてにおいて、住生活の学習状況によって有意差が認められた。「学習したい」と回答した割合は、学習中が最も高く、次いで学習前、学習後が最も低い値であった。また、以上の学習方法に関する希望についても男女間で有意差の認められた項目は11中9件を占めた。
  • 小野 恭子, 鎌田 浩子, 川邊 淳子
    セッションID: A1-3
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    研究の目的
     現代の日本では,これまでの終身雇用制度が崩れ,契約社員などの非正規雇用者が増加してきている。これらの人々は,限られた収入をやりくりしながら生活をしている。北海道地区においても,不安定な収入で生計を立てている人もいる。したがって,限られた収入の中でどのように生活設計をしていくか,生活の自立の立場から,計画的な金銭の使い方や持続可能な社会の構築を目指し,環境に配慮した消費生活を行うための知識を身につけさせたいと考えた。また,平成24年に消費者教育推進法が定められ,消費者が自分の消費行動と社会・環境との結びつきを考えて,商品を選択できる能力が求められている。 
     中学校家庭科学習指導要領では,「D身近な消費生活と環境」において,(1)家庭生活と消費,(2)家庭生活と環境について学ばせることとされている。家庭科ではこれまでも,消費者教育を基軸にし,消費者トラブルの防止やその対処方法を指導することが多かった。そこで本研究では,中学校家庭科において,生徒に計画的な金銭の使い方や,環境に配慮した商品選択について考えさせる授業を実践し,生徒がどのような観点に注目し,理解を深めていったのかを明らかにすることを目的とした。

     研究の方法 
     授業対象者は北海道K市N中学校3年生85名であり,授業実践時期は2013年2~3月である。授業は全8時間で計画し実施した。授業計画は,第1次「消費生活について理解する」(1時間),第2次「自分にあった商品選択や購入場所・購入方法を考える」(2時間),第3次「支払い方法について知り自分にあった支払い方法を考える」(2時間),第4次「家計簿のつけ方について知りそのよさを考える」(1時間),第5次「消費者としての権利と義務について考える」(2時間)であった。授業分析としては,授業実践を記録したビデオを基に生徒の発言や呟きを起こしたプロトコルとワークシートの記述内容を用い,生徒の学びについて検討した。

    研究の結果
     お小遣いをもらっている生徒は全体の約7割であり,お小遣いの金額は2,001~3,000円が最も多く40%,次に501~2,000円で31%であった。従ってお小遣いを持っている生徒の約7割が,3,000円以下であることが分かった。またお小遣いの使い道は貯金が最も多く,高額な商品,例えばゲーム機やゲームソフトなどを買うために貯金をしているようであった。しかし欲しいものが自分の貯金金額を超える場合には,お金が貯まるまで待つ生徒よりも,親や兄弟,祖父母などにお願いをして不足分を補っている生徒の方が多いという現状も明らかになった。このような生徒の実態を踏まえ,冷蔵庫を選択することをストーリー仕立てにしたワークブックを作成し,授業実践を行った。 
     生徒は,冷蔵庫を選択する時に,まず金額に注目をした。その後,グループでの話し合いを行う中で,容量,年間使用電気代,年間消費電力などの商品選択の視点を増やしていった。さらに,冷蔵庫の支払い方法を学ぶ中で,収入と支出のバランスを考えることに及んだ。ローンを組んだ場合には,購入額よりも多くの金額を支払わなければならないことを知り,自分の収入や予算金額から計画的に購入計画を立てなければならないことを理解していた。また,商品の性能比較をすることから,販売金額だけでなく,購入後にかかる経費としての電気代,さらには排出する二酸化炭素量などにも気づき,環境に配慮した商品を購入することが必要であることも理解していた。
  • 勝海 由里子
    セッションID: A1-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    【研究の目的】
     生徒が主体的に実践できる能力と態度を育成するための手段の一つとして文部科学省(2010)は自己の生活課題を見つめ,学習したことを生活に生かすための工夫を求めている。 
     しかし,大場(2009)は子どもの生活体験の減少などの要因から,課題設定を学習者自身が行うことの困難さを指摘している。この問題に対して,井波ら(2007)は「自らの生活体験が学習対象とどのような関係にあるのか意識化」させることで「学習者は学習対象を自らの生活に引き寄せて理解することが可能である」ことを示唆している。学習者が学習対象を自分自身に関連するものとして捉えるための方策として,岡本(2008)は,話し合い活動に着目し「生活形式への視点を明確にし,話し合い活動と一体化」することで,話し合い活動が問題解決探究過程としての学習活動を充実させると述べている。また,伊藤ら(2012)は,話し合いを軸とした学習デザインの中で「目標と学習の評価の一体化」を目指した授業実践を行った結果,学習者が主体的・自律的に本時の目標の達成に向け話し合う姿が見られることを報告している。しかし,英語での実践であり家庭科での効果についての検証は十分に行われていない。
     また,家庭科における評価に関し, 岡本(2008)は家庭科の実験・実習において指導と評価を同時に行うことは困難であると指摘している。実験・実習に多くの時間を割く教科の特性もあるが,授業の目標の達成度を評価し,指導に生かしていく事は全ての教科で大切なことと考えられる。国立教育政策研究所(2011)は,評価方法の工夫・改善策の中で生徒同士の相互評価の工夫を挙げている。植野(2005)は,自分の所属するコミュニティー内の評価を学習者が受け入れることは日常生活で行われる評価活動同様,最も自然な評価体系であるとし相互評価の有効性を述べている。
     そこで,本研究では目標を明確にした授業における「話し合い活動」に着目し,そこでまとまった意見を発表し,学習者相互で評価する授業実践を行い,それが学習者の生活改善意識に与える効果について検証することを研究の目的とする。
    【方法】
     新潟県公立中学校1年生28名を対象に,「食生活を考える」の単元において話し合い活動を取り入れた授業を5時間行った。(1)授業初めに授業者と学習者が目標を共有し,終了前に振り返りシートの記述を行い,その記述からカテゴリー分けを行い検証した。(2)学習者が生活課題について話し合ったことをポスターにまとめて発表を行った。その後,アドバイス等を記入した付箋をポスターに添付し相互評価を行わせた。その時の話し合いについて,ICRに記録した会話を基にその意識について分析した。(3)話し合い前と相互評価後と授業1か月後に生活意識に関するアンケート調査を4件法で行い,生活改善意識の変化を分析した。
    【結果と考察】
     振り返りシートの記述からは,話し合い活動により自分の生活課題を意識し授業の中から新しい知識を吸収しようとする記述が見られた。また,話し合い活動において生活課題を自分の問題とする場面が見られた。さらに,アンケートから生活に関する関心・生活課題・生活改善意識の変化について調査したところ,話し合い活動をして課題を共有したことにより関心・生活課題・生活改善意識は上昇するが,時間が経過しても関心・生活課題と比較して生活改善意識が下がりにくいことが明らかになった。これは,学習者が他の学習者の生活経験を話し合うことや学習者間で相互評価を共有する過程で,生活課題を想起できたことや,授業を通して生活に必要な様々な知識を理解しようとする意識が高まったことによると考えられる。そして,向上した生活改善意識は日常生活で常に意識化されることで定着し,時間が経過しても下がりにくくなったと考える。このことから,家庭科の特性を生かし,目標に基づいた話し合い活動と適切な評価を取り入れた授業デザインを構想・実践し,継続していくことが重要であると考える。
  • 小集団学習による献立作成に注目して
    小林 陽子, 松尾 優貴
    セッションID: A1-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    1 目的
      PISA調査の学力低下問題や子どもたちのコミュニケーション能力の実態から、平成20年告示「中学校学習指導要領」では、国語科での言語活動を核としながら、各教科において「言語活動の充実」が求められた。本研究では、小集団学習による献立作成における生徒の言語活動の実態から、中学校家庭科の学習目標を達成するにあたり、言語活動の充実を取り入れるにはどのような課題があるのかを検討したい。
    2 研究方法 
      本研究では調査1と調査2を行い、その結果を総合的に分析した。
    (1)調査1 家庭科についての意識調査
     対象者を群馬県I市内の公立中学校に在籍する1年生212名(男子97名、女子115名)とし、質問紙調査を行った。項目や問題は「ぐんまの子どもの基礎・基本習得状況調査」(2011)を参考に作成した。
    (2)調査2 小集団による献立作成中の発話についての実態調査
     先に示した対象者から、19班(男子33名、女子45名)を選出し、班の机上にボイスレコーダーを置き会話を記録した。逐語記録を作成し、カテゴリー分析をした。迎(2005)の先行研究を参考に発話を16項目の内容に分類した。本発表では家庭科における言語活動の観点を重視し、「肯定」「否定」「説明」「質問」「提案」「気づき」「雑談」の7項目を抽出し、分析対象にした。なお、調査期間は調査1・2ともに2012年10月である。
    3 結果
      調査1の結果から、家庭科が好きな生徒は68%おり、家庭科の学習に意欲的であった。また、半数の生徒が献立を作成することに自信がない。さらに、8%(16名)の生徒が自分や相手の考えを言ったり聞いたりすることを大切だと思わないと感じていることは、注目に値する。知識を問う問題では、9点満点中全問正解の生徒は全体の39%であり、4点以下の生徒は全体の10%(23名)であった。大半の生徒が今までの学習内容を理解していることが分かった。 
     調査2の結果は、全発話回数は7926回で、1人あたりの発話数は101回であった。ただし、分析対象を7項目にしたため、分析対象となる発話数は4156回である。以下に献立作成学習時にみられた生徒の実態と言語活動の課題について述べたい。
    (1)基礎的基本的な知識の定着
      9点満点の知識を問う問題で、高得点の生徒ほど発話数が多い(p<0.001)。また、発話内容別回数をみても、高得点の生徒は低得点の生徒と比べて有意な差が認められた。
    (2)学習に対する自信 
     「1食分の献立を考えることができますか」という問いに対して、「できる」と思っている生徒を「自信あり生徒」、「できない」と思っている生徒を「自信なし生徒」とした。発話回数の平均は「自信あり生徒」の方が「自信なし生徒」よりも多かった(p<0.05)。先の知識を問う問題との有意差は認められなかった。
    (3)小集団学習の進め方 
      献立を決める際に、全19班中9班は栄養素や食品群について考えながら話し合いを行っていた。それ以外の10班は話し合いをせずにジャンケンや多数決、人任せで決めていた。すなわち、多くのグループが話し合う過程で献立選択の理由を説明したり、考えたりしていなかった。また、話し合いをせず献立を決める班は「雑談」が有意に多い(p<0.05)。
    (4)マナーや傾聴の必要性 
     自分や相手の考えを言ったり聞いたりすることを大切だと思わないと感じている生徒は、大切だと思う生徒より「提案」平均回数が少なかった(p<0.01)。逆に、「雑談」平均回数は多かった(p<0.05)。
  • 米澤 千尋
    セッションID: A1-6
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    【目的】
    現代社会において若者は激しい社会変動の中で、社会的孤立に陥り、社会の一員としての自覚や自立の必要性が問われるようになってきている。 自立的な市民が自律的に生活できるようにすることは、家庭科の学習のねらいと一致する。そのためにも、近い将来社会に出ていく高校生が、自己の生活を見つめ、社会との接点を見出し、自立した生活を送れるようになることは必要なことといえる。そこで、家庭科においてシティズンシップ教育を進めるために、高校生がどのような意識を持っているかを明らかにすることを目的とした。シティズンシップ教育とは、市民一人ひとりが社会の一員として、地域や社会での課題を見つけその解決やサービス提供に関わることによって、急速に変化する社会の中でも自分を守ると同時に他者との適切な関係を築き、職に就いて豊かな生活を送り、個性を発揮し、自己実現を行い、更により良い社会づくりに参加・貢献する為に、必要な能力を身につけることと定義した。よって 本研究では、シティズンシップ育成に必要な能力を、次の7つのカテゴリーに分類した。1)自己管理力 2)生活設計力 3)人間関係形成力、連帯・協働 4)地域・社会活動に参画できる行動力・実践力 5)批判的思考力 6)政治的判断力 7)グリーンコンシューマ
    現代の高校生がどのような意識を持っているのかを明らかにし、家庭科の指導を円滑に進めることの一資料としたいと考えた。  
    【方法】
    東京都内の高校生を対象に、2013年2月~3月にかけて、留置法によるアンケート調査を実施した。シティズンシップに関する意識を測定する66項目を設定し、4件法で回答させた。
    【結果及び考察】
    アンケート結果を平均値より検討してみると、2)生活設計力に属する質問項目の「将来、安定した収入を得たい」では平均値が3.37であり、多くの生徒が自分の将来について収入の面から考えていることが分かる。また「インターネットをよく利用する」では3.25という結果になった。これは昨今の情報化社会への急速な進行によるところも大きいと考えられるが、生徒一人ひとりの情報収集への柔軟性や情報リテラシーの高さが分かる。また6)政治的判断力では、「消費税を払うのは当然のことだと思う」で2.95、「20歳になったら、選挙に行きたいと思う」では2.55と、有権者として最低限の知識や態度の育成、また社会の常識やルール、法律を遵守する意識が備わっていることが分かる。また7)グリーンコンシューマに関する質問項目では、「スーパーなどで買い物をする時は、エコバッグを使うようにしている」の項目で1.50、「料理をする時は、出来るだけゴミが出ないように工夫している」では1.76という低い結果となった。しかし他の質問項目で7)グリーンコンシューマに属する「どこかへ移動する時は、電車やバスなどの公共交通機関を使うようにしている」では3.04、「好き嫌いをせず、残さず食べるようにしている」では2.90という高い結果となった。これは生徒が高校生であるという所属から考えると、前者の低い数値を記録した質問項目では高校生の日々の生活からは離れた内容の質問項目となっており、それとは逆に後者の質問項目の内容では高校生の日々の生活と密接に関係していると捉えられるので、こういった結果になったのではないかと考えられる。今回の調査では、高校生にとってある部分ではシティズンシップ意識が十分に備わっており、また質問項目によってはシティズンシップ意識の低さを表す結果も得られた。今後はそれらを複合的かつ総合的に分析・考察し、高校生が家庭科を通してシティズンシップ意識を獲得していくためにはどのようにしていけば良いのかについて、研究を進めていきたい。
  • 山崎 真澄, 池﨑 喜美惠
    セッションID: A1-7
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    目的

    全国の中学校から生徒が入学する高校で勤務し、5年が経過した。被服実習や調理実習を取り入れた授業を高校2年生の「家庭基礎」で実施している。

    しかしながら、毎年、授業を実施する際、中学校での実習経験の差が大きいためか、生徒の進度差が大きいことを実感する。全国の中学校から入学していることもあり、それぞれの中学校での授業実施内容に差があるのではないかと感じた。

    本研究では、家庭科の学習内容・実習内容に差があるかを調査し、その調査結果をふまえ、授業が円滑に実施できるように検討することを目的とする。
     方法

    2013年2月~4月にアンケート調査を実施した。

    神奈川県A高校全校生徒約900名を対象に、高校生の段階で中学校時に学習したことを想起させて回答させた。
     本校生徒の特性

    全国の中学校から生徒が入学し、全寮制の男子高校である。そのため、日常生活における洗濯やアイロンかけなど身の回りのことはすべて生徒たち自身が行う。

    1日の日課に沿った生活を日々送っており、生活においての指導が行われている。 

    結果及び考察 
    1 出身都道府県 

    八地方区分に分けてみたところ、一番多い地域は九州地方約30%、次いで関東地方約20%中部地方約15%の順となった。また各都道府県別にみると北海道や福岡県、熊本県などの出身者が多い傾向にあった。
    2 実習室及び実習の有無

    調理室はどの学校もほとんど保有していたが、被服室は80%の充足率であった。また、調理実習は約90%、被服実習は約80%、保育実習は約50%の生徒が経験していることが分かった。保育実習に関しては実施日数から判断すると、職場体験として参加しているものも含まれていると推測できる。
    3 各分野の学習経験状況 
    (1) 食物分野  

    「献立作成」を除いて約90%の生徒が学習したと回答した。 
    (2) 被服分野

    「衣服の目的」「衣服製作」は約50%であり、そのほかの項目に関しては約70%の生徒が学習したと回答した。

    被服実習は約80%の生徒が参加したと回答しているが、「衣服製作」は約50%の生徒が実施したと回答していた。この差の原因は、被服分野の中の「衣服の簡単な修理」や保育分野の中の「おもちゃ作り」を被服の実習と考えている生徒がいるためと考えられる。
    (3) 住居分野

    「住まいの働き」「快適な室内環境」は約60%、「安全な室内環境」は約50%の生徒が学習したと回答した。 
    (4) 保育・家族分野   

    保育分野の中で「幼児の心身の発達の特徴」については最も多く取り上げられており約70%であった。家族分野では「家庭生活と地域の関わり」に関しては約40%であった。 
    (5) 消費・環境分野   

    消費・環境に関する分野においては約70%の生徒が学習したと回答した。
    まとめ 

    食物分野に関しては約90%の生徒が学習したと回答したが、他の分野は約40~70%と経験の少ない項目もあった。学習経験に差がある生徒たちに授業をするにあたり、中学校の積み重ねができない学習内容がある。また、「家庭科を好きではない」と回答した生徒は実習に対して消極的な参加であることが明らかとなった。

    中学校での学習経験が高校の家庭科教育に及ぼす影響があると考えられる。限られた高校での授業を実施するためには、生徒に身につけさせたい能力をふまえ、どの部分に焦点をあて授業実施したらよいかを検討する必要がある。
    今後の課題

    アンケート結果において「実習室がない」「実習を行っていない」「家庭科の先生がいない」という意見が少数だがあった。昨年の家庭科教育学会パネル・ディスカッションでも中西氏が「中学校家庭科教員実態調査」の中間発表において「専任教諭が少ない」「免許を持っていない教員が授業を実施している」という現状が報告された。

    今後は、中学校の教員の現状と地域ごとの生徒のアンケート結果を比較し、学習経験の差は教員の現状と関連があるのかを検討したいと考えている。
  • 池﨑 喜美惠
    セッションID: A1-8
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    【目的】
     これまでに各国の日本人学校の家庭科教育の現状について報告をしてきた。国により教育環境が異なり、また同じ国の中でも学校規模により教育事情に特徴があった。本研究では、ドイツのヘッセン州とバイエルン州に開校されている日本人学校で学ぶ児童・生徒の家庭生活の実態から海外で生活する上での問題点を探り、家庭科学習の経験が在外で生活する児童・生徒にとって役に立つ学習となりうる可能性を追求することを目的とした。また、今後の家庭科指導に対する課題等を検討した。
    【方法】
     研究方法は次の3つのアプローチにより遂行した。
    1)2012年9月にドイツに設置されているフランクフルト日本人国際学校とミュンヘン日本人国際学校を訪問した。そして2校の家庭科室等の施設・設備の設置状況を見聞した。
    2)家庭科の授業を参観し、さらに家庭科教員に日本人学校における家庭科指導の現状についてヒヤリングを行った。
    3)小学部第5・6学年、中学部第1~3学年の児童・生徒176名を対象にドイツにおける家庭生活の現状や家庭科について、質問紙調査を実施した。調査期間は2012年9~10月、調査の概要はドイツでの日常生活の評価、家庭科学習に対する意識、家庭科観などである。
    【結果及び考察】
    1)フランクフルト日本人国際学校及びミュンヘン日本人国際学校は中規模校で、静かな住宅街に佇んでいる。家庭科指導をする上で必要な家庭科の施設・設備は、比較的整備されていた。特に、ミュンヘン日本人国際学校の調理室は、小・中学生が使用するためには十分すぎると思われるほど整備されていた。また、校舎の屋上にソーラーパネルが設置され、環境に配慮されていた。
    2)前者は家庭科を専門としない派遣教員が兼任しており、後者は現地採用の10年の経験を有する教員が指導していた。例えば、家庭科の授業では、自己の朝食を想起させ、日本の食料自給率を考えさせる授業が行われていた。海外にいながら日本での生活をふりかえることにより、ドイツでの生活を改善していくことをめざしたり、絶えず日本での生活を回想させながら海外生活を送るよう示唆していた。また、現地料理を扱ったり、地域の環境整備をするなど、現地理解教育を家庭科の授業に取り入れていた。
    3)ドイツで家事の手伝いをしているかを3件法で尋ねたところ、「食事のしたく」や「後かたづけ」は約半数が「よくする」と回答していた。しかし、「ボタン付け」や「洗濯」は1割弱の児童・生徒しか「よくする」と回答していなかった。ほとんどの児童・生徒の家庭では、家庭内の仕事を手伝う人を雇用しておらず、東南アジアの日本人学校の児童・生徒の生活環境とは異なっていた。
    4)ドイツでの生活では、7~8割が住生活や家族のつながりについて満足感を表明していた。そして3割が、ゴミの分類やドイツの環境保護などについて、ドイツの生活を活用・参考にしたいと述べていた。しかし、ドイツで生活したことを家庭科の学習に役立たせようという意識は高くはなかった。
    5)家庭科をどのようにとらえているか、12項目から複数回答させたところ、「生活に関連の深い教科である(80.9%)」「男女ともに学習する必要がある(79.2%)」「毎日の生活に役立つ(77.5%)」「生活に必要な技術の学習をする教科である(76.3%)」と回答した。また、中学部の生徒に家庭科学習についてどのように感じているかを11項目から複数回答させた。その結果、「調理実習が楽しい(86.2%)」「授業が将来役立つ(53.8%)」「授業が楽しい(42.5%)」「生活に役立つ内容が多い(42.5%)」をあげていた。
     今後の課題として、グローバルな視点から生活を見つめることにより多様な考え方ができることから、海外生活経験を有効に活用した家庭科指導を模索していくことが必要である。
  • -小学生,大学生を対象にした調査から-
    渡瀬 典子
    セッションID: A2-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】家族構成,家庭のライフスタイルの変化に伴い,安価で少人数にも対応した半調理品やレトルト,冷凍食品の多様化,食の外部化が近年さらに進んでいる。これらの変化は,家庭にある調理器具の扱いにも影響を与え,既に80年代には「りんごの皮が適切にむける児童は28.6%」(文部省1984)との指摘もあった。1985(昭和60)年に家庭科教育学会東北地区会が実施した「家庭生活技術の実技調査(調理技能)」の手法を用い,当時の小学生と現在の小学生が食材や調理器具をどのように扱い,食事を整えることができるかという「調理技術力」と「献立作成力」について検討した結果,1985年の児童と比べ,食材使用種類の増加や味付け,盛り付けの仕方に工夫が認められたものの,依然「包丁による皮むき」,「ガスレンジの使い方」に不安が見られること,生鮮食品の扱い・可食部の見極め,調理に必要な食材量のイメージ形成が課題として抽出された(渡瀬他2010)。そこで本報告では,教員養成課程で小学校教員の免許取得を希望する大学生に対し,先行研究で実施した「1人分の昼ごはん」の考案,調理,自己評価を実施し,大学生が小学生と比べて伸びた/伸びなかった力について明らかにする。また,小学校家庭科で扱う調理技術の「自己評価」と「小学生への調理指導の不安」との比較から,教員養成における「調理技術力」,「献立作成力」育成の課題を検討する。【方法】調査1~3は小学校免許取得希望の大学3,4年生,大学院生を対象に2011年7月に実施した(調査1:食事記録調査34名,調査2:質問紙調査34名,調査3:「1人分の昼ごはん(献立作成,調理,自己評価)」47名)。調査4は小学校家庭科の教材として扱われることが多い「温野菜サラダ」「卵料理」の調理実技調査を調査1~3とは別集団の大学3,4年生と大学院生28名を対象に2012年7月に実施した。なお,調査3では必ず使用する指定食材3品目(卵,ほうれん草,じゃがいも)を設定し,そのほか自由選択食材13品目,調味料13品目を選んで必要なものが使用できるように設置した。【結果および考察】「国民健康・栄養調査」によれば,大学生の年代が含まれる20歳代の食習慣が他年代と比べて崩れやすい傾向にあることが明らかになっている。調査1から対象者の食生活状況を見ると,一人暮らしの学生の「朝食の欠食率の高さ」が目立った。また,1日当たりの料理の品数も平均6品目程度で複数の料理で構成された「食事を整える」ことに意識が向きにくい状況だった。調査2では調査対象者の9割は「調理が好き」と回答していたが,「料理にあわせて味を付ける」ことに自信があるのは2割のみだった。この結果は,調査1の調理場面で味見をせず調理した結果,味付けがうまくできず自己評価を低くつけた学生の存在にも現れている。以上のことから,調査対象者は味をみる行動実践が定着していないことがうかがわれた。調査3,4の調理では,小学生を対象にした先行研究と同じく盛り付けに工夫がなされていたが,野菜の可食部の見極めにやや課題が見られ,調理に必要な食材量の把握には個人差があった。また,6割が「バランスがとれた献立作成ができた」と自己評価し,「バランスがとれている」イメージとして「(様々な)栄養素が揃っている」「主食・主菜・副菜・汁物がある」「野菜が入っている」ことを挙げていた。調査対象者は「ご飯を炊く」等,日常的な調理技術は自分に身についていると自己評価していたが,これらを授業で「指導する」のが「全く不安でない」という回答は極めて少ない。とくに包丁の扱い,計量方法の指導に不安を感じており,自分が「できる」という自己認識と授業場面で指導することに意識の面で大きな隔たりがあることが明らかとなった。
  • インタビューデータのKJ法による分類から
    野田 聡子, 大竹 美登利
    セッションID: A2-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    平成17年制定の食育基本法を踏まえ、東京都では平成18年9月に
    東京都食育推進計画を、A市では平成20年6月にA市食育推進計画
    を策定した。これらの中では特に、学校における食育の充実を提案
    している。中学校での食育推進を図る上では、食領域が教科の学習
    内容に含まれる家庭科の教員と、自校式給食の運営を担う学校栄養
    士の存在が大きい。そこで本研究では、A市の中学校において、家庭
    科教員や栄養士を中心に行われている食育活動の実態と、その課題
    を探ることを目的とする。
    方法
    【調査方法】東京都A市内の公立中学校にて、各校の家庭科教員や
    栄養士に対し、校内での食育取り組み状況や課題に関する半構造化
    インタビューを行った。インタビュー内容はICレコーダーで録音し
    た。その後録音データを全て文字に起こし、KJ法をもとに分類した。
    【分類方法】分類にはKJ法を使用した。インタビューデータをラベ
    リングし、そのラベルをもとに表札作り、島作りを行い、図解を作
    成した。その後、図解を文章にて説明する文章化を行った。
    【インタビュー対象者】A市立中学校全5校に調査協力を依頼し、
    了承が得られた4校を本研究の対象とした。インタビュー対象者の
    内訳は、4校に所属する家庭科教諭4名、栄養士2名の計6名である。
    結果 
    (1)中学校では、教科中心の学校文化が栄養士の持つ食育への期待を
    跳ね返す構造がある。
    中学校で働く栄養士は、小学校勤務時と同様
    に中学校でも食の専門性を生かし、機会があれば授業に参加して食
    育を行いたいと、<食育への期待>を抱いている。しかし、義務教
    育の中でも教科担任制を背景とする中学校では、学校全体で何かに
    取り組むよりも、各教科がそれぞれの役割を担うといった≪教科中
    心の学校文化≫があり、小学校とは異なっている。教科中心の学校
    文化の中で、家庭科は食育と関連の深い教科であり、ゆえに家庭科
    の果たす役割は大きいと思われる。家庭科の教員も、食に関する学
    びが教科の主な学習領域の1つであることから、校内における食育
    の中心は家庭科教員の自分自身であると認識している。しかし家庭
    科では以前から食の学習を行っており、それに「食育」という冠が
    付いたにすぎないこと、限られた授業時数の中でこれまで以上に食
    ばかりに時間を割くのは難しいと考え、学校全体で新たに食育に取
    り組む必要性を感じていない。したがって、食育推進の新たな展開
    を目指す栄養士とは必ずしも食育に取り組む姿勢が一致せず、栄養
    士から見ると、家庭科の教員は食育を好意的には捉えていないと受
    け止めていた。また栄養士は各教科の年間指導計画から、家庭科の
    他にも理科や社会、保健などが食育に関連することを把握している
    が、これらの専門教科で食育を行うには<教科に結びつけることの
    難しさ>があると認識している。以上のことから、栄養士の抱く<
    食育への期待>は、中学校では≪教科中心の学校文化≫の中で専門
    性ある教員や<教科中心>の厚い壁に跳ね返される実態が見出され
    た。(2)栄養士の独自性を生かすことで、教科を越えた広い学びの展
    開が期待できる。
    A市の教員は全員東京都採用であるが、栄養士の多
    くはA市が独自に雇い各校に配置している。ゆえに教員とは異なり、
    栄養士の多くはA市に密着した存在である。<‘地域’の視点>を
    強く持つ栄養士は、給食メニューの工夫や地域人材を活用した食育
    の取り組みなど、特徴的な実践を行っていた。また、学年や教科の
    枠を超えて生徒を把握している点は栄養士の特徴の一つであり、各
    教科の指導を踏まえ、教科横断的な食に関する掲示物などの<学習
    環境作り>を学校図書館司書などと共に行った事例もある。このよ
    うに中学校でも地域に密着し、学校を広く見つめることのできる栄
    養士の専門性やネットワークを生かすことで、校内でより広がりや
    深まりのある食育活動の展開が期待できるといえよう。
  • 森山 三千江, 本山 ひふみ
    セッションID: A2-3
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的
    近年、不規則な食習慣や朝食欠食などによる生活習慣病が低年齢化し、小学校などで食育が盛んに行なわれている。また、低年齢の児童は食事を家族あるいは誰ととともに食べるかという共食形態が児童の自己効力感に影響を与え、学校生活の中で協調性や学力などにも違いが生じるという報告もされている。そこで、本研究では低年齢である児童にも分かりやすい食育の手法である「食まるファイブ」による食育を6年間通して受けた6年生の児童と受けていない6年生児童に自己効力感、食事習慣、家族との共食形態および食事歴調査を行い、食品の摂取頻度摂取量、食習慣や共食形態および自己効力感に差が生じるかどうか調べる事を目的とした。
    2.方法
    食まるファイブによる食育を6年間受けた知立西小学校6年生124名と受けていない同市内A小学校6年生75名を対象に食事習慣・家族との共食形態に関する14項目からなる質問紙調査を独自に作成し、セルフエフィカシ-(自己効力感)については10項目からなる児童用コンピテンス尺度(桜井 1992)を使用し、食生活や意識および自己効力感に違いが生じるかどうかを分析した。また食品の摂取頻度や摂取エネルギー量および栄養素摂取量についてはBDHQ10y(brief-type self-administered diet history questionnaire簡易型自記式食事歴法)を用いて両小学校の児童でこれらの結果に違いが有るかどうかを検討した。
    3.結果および考察
    食事習慣としては「野菜をたくさん食べる」、「家でコンビニ弁当を全く食べない」と答えた児童が知立西小学校の方が多く、その一方で「お菓子をよく食べる」と答えた児童はA小学校の方が多かった。生活習慣では「体を動かことが好き」と答えた児童が知立西小学校の方が多く、食習慣に関する意識や行動ついて6年間の食育がこのような変化をもたらしたと考えられた。また、自己効力感については、「今の自分に満足していますか」には知立西小学校の方が『はい』と答えた児童が多く、また逆転項目である「何をやってもうまく行かないような気がしますか」、「自分はあまり役に立たないと思いますか」、「自分にはあまり良い所がないと思いますか」については、知立西小学校の児童の方が『いいえ』と答えた児童が多かった。食事習慣と自己効力感の相関関係を見ると、男子では「野菜を食べない」と「何をやってもうまく行かないような気がする」の項目間、また「夜食を食べない」と「今の自分に満足している」あるいは「自分の意見を自信を持って言える」の項目間などで相関傾向が見られた。また女子では「食べている時間が楽しい」と「自分に自信がある」、「食事の手伝いを良くする」と「たいていの事は人よりうまく行く」のそれぞれの項目間で相関関係が見られた。このことから日頃の食習慣が児童の自己効力感に何らかの影響を与え、さらにそこから学力や日常生活の態度や集団行動での他者との関わり方などに影響を与えるのではないかと示唆された。BDHQの結果による食品摂取頻度では、知立西小学校の児童は男子・女子児童ともエネルギー摂取量および三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物および複数のビタミンやミネラルについても摂取量がA小学校の児童よりも多かった。体を動かす事が好きと答えた児童が多かったことと考え合わせると、摂取エネルギーは多いが運動でエネルギーをより消費し、健康的な生活を送っていると考えられる。この食習慣は将来の生活習慣病の予防にも繋がると考えられ、また、近年、増加している若年層の肥満問題にも解決策の一つにもなるのではないであろうか。食まるファイブを用いた継続的な食育は食習慣・意識のみならず運動習慣、さらには学力や集団内での行動にも何らかの影響を与えるのではないかと考えられる。
  • 家庭科教育への意識及び実践状況との関連に着目して
    藤田 智子
    セッションID: A2-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     現代は必要な食べ物がいつでもどこでも簡単に手に入る環境である。さらに共働きや塾通いの増加などの社会環境の変化に伴い、中学生自身が食事選択をする機会が増加している。そのため食の洋風化による米離れや児童期からの生活習慣病の増加、朝食欠食をはじめとする食習慣の乱れなどのさまざまな問題が指摘されている。近年ではこのような現状を踏まえ、文部科学省が食育推進基本計画を出すなど、国家政策として幼児期からの食育が推進されている。また学校給食においても「地産地消」の充実が図られている。
     よって本研究では、中学生の食生活行動の現状を、特に主食に着目して明らかにする。また、中学生の食生活行動には、家庭科の学習内容や食育で勧められている内容が影響しているのかを分析することによって、今後のよりよい食生活に関する教育に繋げたい。
    【方法】
     2012年6月に豊田市立中学校の2年生122名(男子50名、女子72名)に対し、質問紙調査を実施した。調査項目は、主食の好み、自らの食事選択(購入場所、購入理由、重要視する項目等)、1週間の朝食実態、学校給食(主食の理想頻度、配布物への意識等)、食料自給率と地産地消に対する知識、家庭科教育への意識及び実践状況である。
    【結果および考察】
     朝食の主食として何を選択しているかを回答してもらった結果を、週5回以上「主食が米」、週5回以上「主食がパン」、それ以外と分けたところ、米食派が28.7%、パン食派が28.7%、それ以外(半分派)が42.4%であった。また朝食欠食回数は「0回」が93.9%であった。近年問題視されている若者の米離れや朝食欠食率の増加などは、今回の調査では顕著ではなかった。
     自分で食事を選択する際、何を重要視するか尋ねたところ、「とても重要視する」の回答が多かったのは「味」「価格」「量」であり、なかでも「味」は75.2%と各項目の中で1番多かった。「付属品」「パッケージタレント」は「重要視しない」との回答が半数を超えており、商品の中身の方に着目して選択していることがわかる。
     地産地消については84.4%が「言葉も意味も知っている」と回答した。食料自給率については36.9%が「言葉も意味も知っている」と回答し、45.9%が「聞いたことはあるが意味はわからない」と回答した。地産地消についての理解度が高かったのは、調査を行った中学校では、地産地消について家庭科教育の中で夏休みの調理実践課題にするなど大きく取り上げているためと考えられる。一方、食糧自給率に関する理解度が、地産地消と比較すると低かったのは、調査時までに家庭科教育の中であまり取り上げられていなかったためと考えられる。
     調理実習の家庭実践状況において、「調理実習を家庭で実践したことがある」と回答した生徒は57.1%であり、そのうちの76.5%が家庭科を「好き」「どちらかというと好き」とし、86.8%が家庭科を「役に立つ」「どちらかというと役に立つ」と考えていた。
     本調査では、近年の食生活において指摘されている米離れや朝食欠食などの問題は顕著にみられなかった。しかし日本の食糧自給率に対する関心を高めること、商品選択の際の意識項目を増やすことなど、改善すべき点は多くある。家庭科教育の内容を家庭生活に結びつけ、日頃から問題意識をもって自らの食行動を考えさせる教育が必要である。
     なお、本研究を行うにあたり、名古屋女子大学家政学部の加藤紗希さんに、データ収集および分析において御協力いただいた。心より感謝申し上げる。
  • ―京都府の中学校教員への調査から―
    中須 晴南, 湯川 夏子, 中西 洋子
    セッションID: A2-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】中学校技術・家庭科の技術分野において、新学習指導要領より生物育成が必修となった。生物育成の中には、野菜の栽培も含まれる。また、家庭分野の調理実習においては、野菜を使った料理を取り上げることもできる。したがって自分たちで食材を栽培し、調理して食べるという連携の授業ができると考えた。しかし、連携の授業を行うにあたっては課題も多いことが考えられる。
     そこで本研究では、技術科および家庭科担当教員が栽培や調理実習を行うにあたり考慮していることや、連携に関してどのような意識を持っているのかを明らかにし、栽培と調理実習を連携した授業を効果的に行うための方法を考えることを目的とする。
    【方法】2012年9月~10月に、京都府下の全中学校(国立、公立、私立)計199校の技術科および家庭科担当教員を対象に調査を行った。調査票は技術科1部家庭科1部の計2部を送付した。有効回答数及び有効回収率はそれぞれ技術科60部(30.1%)、家庭科56部(28.1%)であった。調査内容は、1.教員および勤務校、2.技術分野または家庭分野の担当学級数及び授業時数、3.「C 生物育成に関する技術」または「B 食生活と自立」の内容、4.技術分野(栽培)と家庭分野(調理)の連携、5.今後生物育成または調理実習の授業を行うにあたっての希望である。
    【結果】
    (1)栽培および調理実習の内容
     実習の題材を決める際の考慮点は、技術科の栽培では「育成が容易」「場所の準備ができる」「生徒が取り組みやすい」の順に多く、家庭科の調理実習では、「生徒が取り組みやすい」「短時間でできる」「家でも作れそう」の順に多かった。「学習内容が多い」、「学年の学習度に合っている」は、技術科はどちらも7名であるが、家庭科はそれぞれ22名と15名であり差があった。また、「生物育成技術があがる」「調理技術があがる」の技術向上に関する項目は、技術科は4名に対し家庭科は21名であり差がみられた。技術科の栽培は経験に、家庭科の調理実習は技術の習得に重きを置いているようである。
     実習の問題・課題点は、技術科は「評価の方法」「場所がない」「天候」「管理ができない」の順に多く家庭科は「準備・後片付けの時間不足」「調理の時間不足」「授業時間数」の順に多かった。栽培または調理実習というそれぞれの教科の特徴を踏まえた課題がみられた。
    (2)栽培と調理実習の連携
     栽培と調理実習の連携授業は技術科18名、家庭科13名が実施しており、内容は栽培したさつまいもで大学いも・スイートポテト作りや、水菜で餃子・お焼きを作る実習等があった。
     自分で栽培したものを自分で調理して食べるという授業で、生徒自身が習得できると思うことについて尋ねたところ「生産から消費までの一連の流れ」「栽培の達成感」は技術科の方が多く、「食べ物に対する感謝の気持ち」「食材や料理を作ってくれている人に対する感謝の気持ち」は家庭科の方が多かった。これらは、技術・家庭科の視点の違いがみられた。
     栽培と調理実習の連携を行う利点は、どちらも「技術と家庭科の内容を関連付けることができる」「生徒が意欲的に取り組むことができる」の順に多かった。連携の利点が多くあげられる一方で、問題・課題点としては、どちらも「収穫時期・量が調理実習と合わない」が特に多く、次いで「授業時数の分担が難しい」「教員同士の話し合いの時間がとれない」が多かった。「収穫時期・量」を解決することで、連携がしやすくなるとも考えられる。
     このように栽培と調理実習の連携授業で生徒が様々なことを習得できると思っている教員が多いにもかかわらず、課題が多く実践に至っていない学校が多いことが分かった。今後はこのような課題を解消しつつ、それぞれの教科で学ばせたい内容を含めた、栽培と調理実習を連携した教材の提案等を行いたい。
  • マリア・フェルド教諭の授業を事例として
    綿引 伴子, 荒井 紀子, 鈴木 真由子
    セッションID: A2-6
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    スウェーデンでは、世界的にみて福祉水準が高く、男女平等が進み、環境問題や消費者問題への国民の関心が高い。家庭科では、自主協働を根底に据え、生活を中心において生活の場から社会への視点の広がりや過去から未来へ、地域から地球への時間的、空間的な広がりを意識した視点から教科が捉えられており、自律的に行動する市民としてのシティズンシップを育てる教育がめざされている。また、家庭科のなかでは、特に食の学習が中心となっている。本研究では、上述した背景をもつスウェーデンでは思考を促す学習が、実際の授業のなかで具体的にどのように展開されているのか、また、教師や学校のどのような考え方のもとに実践されているのかについてマリア・フェルド教諭の実践をもとに明らかにする。
    【方法】
    1.授業参観および資料分析:2010年10月4日および2011年10月28日に、ストックホルム市ホグサトゥ中学校にて、家庭科の授業を参観し、授業用資料等を収集した。
    2.授業担当教師へのヒアリング:2010年10月4日および2011年10月28日に、授業者である家庭科教師Maria Feld氏にヒアリングを行った。
    【結果および考察】
    1.2010年に参観した授業の概要
    1)日時:2010年10月4日12:30~14:30、1コマ(120分)
    2)対象:中学校8年生(日本の中学1年生)10名(男子5名・女子5名)(24名のクラスだが、調理実習は半数ずつ行っている)
    3)題材名:栄養バランスを考えた3品の調理実習
    4)ねらい:・栄養のバランスを理解する ・バランスを考えた簡単な調理ができる ・導入学習なので調理に慣れる
    5)授業の流れ:ⅰ)栄養のバランス3分類について、紙製食品模型を用いて、教師が様々な状況を示し、過不足やバランスについて問いかけながら復習する。 ⅱ)「サーモン・ポテト・野菜」と「リンゴのデザート」の組み合わせで、「野菜」と「りんご」について、教師の用意した材料(玉ねぎ、にんじん、グリンピース、りんご)を選択して、グループで調理法を考えて調理する。 ⅲ)試食し、PCソフトを使って作った献立の栄養を分析し、プリントに記入する。
    2.授業およびヒアリングの考察
    ・年齢や生活状況など多様な生活場面に応じた食品の組み合わせについて、生徒に問いかけ、食品模型の組み合わせをいろいろ試しながら考えさせている。
    ・指導計画以外でも、状況やタイミングをとらえて、教育のあらゆる場面で生徒に思考させ判断させることを意図している(ベジタリアンの場合の肉の代用、腐りかけた玉ねぎへの対処等)。
    ・フェルド教諭が重視していることは、生徒に考えさせ省察させること、教え込みでなく1人ひとりとコミュニケーションを取りながらいろいろなやり方を認め向上させること、自信と責任をもたせることである。
    ・食事を作ることから、消費者教育や環境教育につなげ、社会の問題を明示している。
    ・前学習指導要領で示された「健康」「リソースマネージメント」「ジェンダー」「文化」の4観点を常に考慮し、学習の視点に加えている。4観点において、ヨーロッパでは?、北欧では?、スウェーデンでは?、あなたは?、と、視点や視野を拡げて考えさせようとしている。
    ・地方行政カリキュラムには、「教育において生徒の参与を増やすようにする」と明記され、学校評議会は教員・保護者・生徒の代表・校長から編成され、学期に2回会議をもっている。
  • 長谷川 真由美, 小桝 由美, 長谷中 久美, 鈴木 明子
    セッションID: A2-7
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】新学習指導要領では,専門科目「フードデザイン」の目標として新たに「食生活を総合的にデザインするとともに食育の推進に寄与する能力と態度を育てる」ことが加わり,内容の構成に「食育と食育推進活動」が取り入れられ,学習内容を生かし家庭や地域において食育に関する実践活動に積極的に取り組むことができるようにすることが求められている。このような食育推進の視点をふまえた教科指導のために,また個々の生活実践につなぐためには,生徒の学習意欲を高める単元構成と指導の工夫が不可欠である。そこで,①生徒自身が課題だと考えている基本的な技術の定着をめざし,技術の向上から生徒の自信へとつなげ,意欲を高める,②調理実習の進め方を工夫することで,生徒の思考力・判断力,表現力を高める,③個別に作る調理実習を行い,個々の実践力を高めるという3つの内容を取り入れた「フードデザイン」の単元を提案し,教材及び指導方法の工夫の成果を検証することを目的とした。<BR>【方法】広島県立高校の家庭に関する専門学科の3年生を対象とし(2年次に2単位,3年次に3単位,5単位履修),2012年の2学期に12時間と10時間の題材で実施した。<BR>実践1(2012年10,11月)本単元は,小麦粉料理の単元で行う3回の調理実習において,調理技術の定着を図ることを目的に,全員に「切る」作業を行わせる内容を設定した。また,生徒の思考力・判断力・表現力を高める取り組みとして,切った野菜やその切り方を生かし,調理実習で作る他の献立に合う料理を考え,調理する内容も取り入れた。調理実習ごとに自己評価をさせ,最後に3回の「切る」作業の個々の変化を写真で確認しながらまとめの評価をおこなった。<BR>実践2(2012年11,12月)単元名は「一汁二菜のワンプレートクッキング」とし,これまでの「フードデザイン」の学習の集大成として,卒業後に一人暮らしすることを想定し,1人分の一汁二菜の献立を考えて作る単元を設定した。調理は,片づけを考慮して,1つのプレートに全てをのせるワンプレート調理を基本とした。個々のレシピをまとめ,レシピ集を作成し,生徒に配布することとした。実習では,個々に自分の考えた献立のレシピを使って調理した後,献立を改善し,2回目の調理実習は,他の生徒が作ったレシピを見て調理する様式で行った。実習後の評価レポート並びに2回の調理実習での個々の調理作品を活用して成果をとらえた。<BR>【結果】実践1後のアンケートから「切る作業を通して上達したと思う」生徒は,あてはまる56.4%,ややあてはまる41.0%おり,ほとんどの生徒が,以前より上達したと実感したようである。「切る作業が上手くできると調理に自信がつく」の項目については,ほぼあてはまるを含め全ての生徒が,あてはまると答えている。確かな技術を身につけることが自信につながるといえる。また,「習得した調理技術を日常生活で生かしていると答えた生徒は,あてはまるが33.3%,ほぼあてはまるが51.3%おり,8割を越える生徒が習得した技術を日常生活で生かしていることがわかった。実践2後の生徒の評価レポートでは,自分の考えた献立の課題として,調理作品の色どり(12名),量(11名)を挙げている生徒が最も多かった。切り方や段取りについて挙げている生徒はおらず,実践1を経て,以前より自信を持って調理ができているのではないかと推察される。科目履修後の調査では,「調理技術が向上した」と答える生徒が97.5%,「家庭で調理する機会が増えた」80%,「日常の食事で栄養バランスを考えるようになった」92.5%等,学んだことが自分や家族の食生活に生かすことへとつながっている様子が伺えた。また,「調理に関することをもっと学びたい」と考えている生徒も92.5%おり,「フードデザイン」の学習が,単元構成の工夫によって, 調理技術の向上と自信につながり,生徒の意欲を高め,家庭での生活実践へと結びつくことが明らかになった。
  • 速水 多佳子, 前田  英雄
    セッションID: A2-8
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     新学習指導要領の総則に,「学校における食育の推進」が明確に位置付けられ,家庭科の改善の基本方針の中にも,「食育の推進を図る」ことが記載された。家庭科は従前から食生活に関する学習を扱っているが,今回の改訂により,小学校・中学校・高等学校をとおして,さらなる内容の充実が図られている。家庭科は食生活を家庭生活の中で総合的に捉えることができることから,教科の特質を生かした指導をしていく必要がある。
     食生活に関する学習の中で,栄養素の種類と働きについては,基礎的・基本的な内容であり,小学校・中学校・高等学校のすべての学校種で学習する。五大栄養素の中の無機質は,体の構成や生理作用の調節に欠かせない栄養素であるが,体内で合成することができず,食事によって体内に取り入れる必要がある。しかし,無機質は食品に微量にしか含まれていないため,どの食品に多く含まれているのかを実感するのは難しく,無機質そのものを視覚的に認識することができない。そこで,無機質をより理解しやすくすることを目的として,食品に含まれる鉄分の可視化を試みた。(第55回大会にて報告)本研究では,その教材を用いた学校教育現場での授業実践について報告する。
    【方法】
     平成24年9月~10月に,県立I高等学校1年生8クラス計318名(男子168名,女子150名)を対象とした「家庭基礎」の授業の中で,鉄分の可視化に関する実験を取り入れた実践を各クラス1時間行った。授業の目標は,(1)無機質の特徴を理解すること,(2)実験をとおして食品に含まれている鉄を実感し,鉄のはたらきを理解すること,であった。授業内容は,開発教材である鉄分を多く含む食品を灰化したものがネオジウム磁石に付着する様子をスライドで見せ,その後に2種類の実験を行い,鉄のはたらきについて確認をした。実験内容は,ふるいにかけた青のりをネオジウム磁石に反応させる実験と,紅茶と鉄の反応を視覚的に比較する実験である。授業はワークシートを用いて行い,授業の前後にアンケート調査を実施して授業の効果を検討した。
    【結果】
     アンケートの有効回答が得られたのは309名(有効回収率97.2%)であった。事前アンケートによると,これまでに家庭科の授業で実験の経験があると回答した生徒は,わずか14名(4.5%)と少なかった。事後アンケートでは,実験に対して興味をもって取り組めた230名(74.4%),今回の実験の手順や方法が理解できた253名(81.9%),今後も実験を取り入れた授業を受けてみたい259名(83.8%)と肯定的な回答が多く見られた。実験を取り入れたことで,わかりやすかった,グループで楽しく参加できた,興味をもつことができた等の記述があり,今回の授業実践での実験が生徒に受け入れられたことがわかる。
     事前アンケートで,毎日の食事の中で食品に含まれている栄養素を実感することがあるかの問いに対して,254名(83.3%)がないと回答していたが,事後アンケートでは,今回の実験で食品の中に鉄が含まれていることを実感することができたと230名(74.4%)に肯定的な回答が見られた。しかし,青のりのネオジウム磁石への反応については,生徒が期待しているほどの多量な付着が見られなかったこともあり,よく理解できなかった生徒もいることから,さらなる工夫が必要である。
    参考文献
    前田英雄・速水多佳子,「食品に含まれる鉄分の可視化に関する教材開発と授業実践」,日本家庭科教育学会第55回大会研究発表要旨集pp.74-75
  • 「ファイナンシャル・プランニング技能士」試験の導入と展開
    神山 久美
    セッションID: A3-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    [ 研究の背景と目的 ]
     大学では、家庭科における生涯の生活経営に関する内容をさらに発展させ、深く高度な内容の学習が必要である。
     ファイナンシャル・プランニング技能士(FP技能士)とは、職業能力開発促進法に基づく、FPの技能に関して包括的で専門的な知識・技術をもつことを証明する国家資格である。導入資格である3級FP技能士の資格取得を目指すことにより、生涯の生活設計で必要となる6分野(ライフプランニングと資金計画、リスク管理、.金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継)についての幅広い内容を、体系的に学ぶことができる。FP技能士試験には、学科試験及び実技試験の2つがあり、学生にとって、これらの知識・技能を獲得することは生涯の生活設計のために役立ち、また、FPに関する上位資格を取得することにより、金融関係の仕事(銀行、保険、証券、不動産など)にも役立つものとなる。
     2012年12月に「消費者教育の推進に関する法律」が施行された。消費者教育を「消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育及びこれに準ずる啓発活動」と定義し、特に、「消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理解及び関心を深めるための教育を含む」と加え、消費者の消費者市民社会形成の参画を重視していることが特徴である。この消費者教育の定義より、大学における消費者教育は、学生に、消費者の自立に必要な消費生活知識の修得や実践的能力を育成し、消費者市民社会の形成への参画を意識させることが目標となる。このような視点での大学における授業開発が必要であり、特に、大学生に自主的・積極的な消費者市民社会への参画意識を持たせることが重要と考えられる。
     そこで本研究は、大学授業において、国家資格のFP技能士資格取得に関わる内容を導入して学生の金融経済に関する幅広い知識・技能の獲得をめざし、その学生の学びを、社会参画のためにも活かすという展開の実践を試みることを目的とした。

    [
    方法 ]
     2012年度、私立A大学家政学部家政経済学科2年生の専門科目である前期授業の「ファイナンシャルプランニング論」及び後期授業の「ファイナンシャルプランニング演習」において、1年間に渡り実践を行った。前期授業では、FP技能士の9月試験の合格を目指した内容の授業を実施し、後期授業では、子どもを対象としたおこづかいに関する内容について、学生が企画・運営した、地域の消費生活展の参加や児童館での講座等を実施した。
     これらの授業過程と授業記録などの結果から、大学における金融経済教育としてのFP技能士試験の導入とその展開のあり方について、考察を行った。

    [
    結果と考察 ]
     今回の前期授業の終了後に、授業の前に金融経済教育を受けたことがあるか質問したところ、「受けたと思うがよく覚えていない」、「ほとんど受けていない」を選んだ学生が80%を超えた。前期授業で行った内容について、大学生として学ぶ必要があると思うか尋ねたところ、全員が「とても必要」、「少し必要」を選択し、「あまり必要でない」、「全く必要でない」を選んだ学生はいなかった。その理由としては、「自分の普段の生活に役立つ」、社会人として知っておくべき内容」、「就職活動で役立つ」などが挙がり、これらの内容の導入の意義があると考えられた。
     前期授業と後期授業を組み合わせた今回の取組については、学生全員が肯定的に捉えていた。その理由として、「前期に学んだことが活かせてよかった」と書いた学生が多かった。学生は、単に自分たちが知識をつけることのみを重視したのではなかった。今回の取組を通して、社会に貢献する自分たちの役割の自覚や学ぶ動機づけにもつながっていると考えられた。消費者市民として社会への参画意識を持たせるような実践をしていくことが、大学教育における展開として重要なことが示唆された。
  • 大原 弘子, 赤塚 朋子, 友田 薫, 萩原 葉子
    セッションID: A3-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    <目的>
     高等学校家庭科の学びが、高等学校の基礎学力の総体というシチズンシップ教育と関連が深く、「将来の多様な選択肢を提示し、その土台をつくり、踏み出す1歩を支える教科」という位置づけを提案してきた観点から、本研究では、高等学校家庭科と大学入試センター試験問題とのかかわりをさらに探り、高等学校家庭科の学びが高等学校の基礎学力の総体とどのような関係にあるのかを明らかにすることを目的とした。
    <方法>
     2008年~2013年における大学入試センター試験問題のうち、2012年を基準に、国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語の各教科のうち、1000人以上の受験者があった24科目の問題を対象とし、高等学校家庭科教科書との関係に注目して、キーワード検索を行い、分析検討した。教科書は、栃木県の履修率が65.9%(「高等学校家庭科の履修単位数をめぐる現状と課題」日本家庭科教育学会誌 第54巻第3号)を占める「家庭基礎」を用い、教科書出版社の教育図書、大修館、実教出版、開隆堂、東京書籍、第一学習社の各社1冊ずつの計6冊を対象とした。
    <結果>
     前回の大会で「高等学校家庭科の位置づけの再検討―大学入試センター試験問題とのかかわりから―」を研究発表した後、反響が大きく、年数を5年間として再度調査することとした。大学入試センター試験問題は、高等学校段階における基礎学力をはかる手段となる。そのため、実際に、センター試験問題と家庭科教科書を照らし合わせてみたところ、家庭科の学びが、24科目のうち平均9.6科目と関係があり、センター試験問題を解く際には、かなりの頻度で思考の助けになっていることが明らかとなった。
     試験問題に関係するキーワードを、教科書の該当ページに領域別に色分けした付箋で貼っていく作業を行った。各社の教科書の編集方針によって、その違いはあるものの、概ねどの教科書にも領域別に色分けした付箋が貼られた。
     キーワードの5年間の平均数は、65であった。そのうち、毎年出てきたキーワードは、「遺伝子組み換え」、「食の安全」、「世界の食生活」、「子育て」、「介護」、「社会保障」、「地球環境問題」、また「環境」、「家族」、「男女平等」に関することであった。4年間出てきたキーワードは、「消費者」、「少子高齢化」、「トレーサビリティ」、「年金」、「フェアトレード」、「ワークシェアリング」であった。近年の傾向としては、「NPO」、「世界の衣服」、「待機児童」があがってきた。今回の英語の試験問題には「まちづくり」が登場している。
     教科としては、現代社会、地理、歴史、政治経済などの社会科や理科総合、化学などの理科について予想通り多く見られた。新学習指導要領から登場する理科の「科学と人間生活」とのマッチングが今後予想される。高校生に他教科と家庭科の関係が深いことを知ってもらうことで、家庭科に対する印象がかわることを示唆している。
     高等学校家庭科の現状は、「家庭基礎」2単位履修を選択する傾向も否めず、高等学校の1学年のみの時間数という厳しさもみられる。教員配置も各学校に1名のところが多く、「受験に関係ない」教科という意識が大多数の学校では、家庭科の学びの意識そのものが停滞する雰囲気が学校全体を覆っているといわざるをえない。
     本研究の結果をふまえ、家庭科の学びが、高等学校の基礎学力の総体と関連が深く、大学入試センター試験問題を解くうえで、総合的なヒントになることがわかった。高等学校家庭科の授業は、実は、大学入試センター試験問題を解くうえで、これまでの学びの総復習になるともとらえることができる。また、1学年より2学年や3学年での履修や、2単位よりも4単位の履修の方がより確実に学びが生かされるのではないだろうか。大学入試センター試験問題が、高等学校家庭科の学びと関係が深いことが明らかになったことで、この両者が現代生活に資するものであることも確認できた。
  • ―学校家庭クラブ活動の現状と課題―
    藤原 容子, 永田 智子
    セッションID: A3-3
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    家庭科教育の充実に向けた学校家庭クラブ活動のあり方―学校家庭クラブ活動の現状と課題―

    兵庫県立西脇高等学校 藤原容子
    兵庫教育大学大学院  永田智子

    [目的]平成22年学習指導要領において、「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動を一層充実させる。」とあり、「家庭基礎」においては、3つの柱の一つに、「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」が明記されている。しかし、高等学校家庭科において「家庭基礎」2単位の実施が大半を占めるようになった現在、今まで行っていたホームプロジェクトも、時間不足からますます実施できなくなり、学校家庭クラブ活動に対しては、意識も低く全く行ったことがない教員も増えている。さまざまな研修は実施されているが、家庭科教育そのものの指導内容や家庭基礎2単位の在り方を検討する機会はない。ただ4単位の内容を2単位に収める工夫ではなく、家庭科教育そのものを見直し、その指導方法を検討しなければならないと思う。その鍵がホームプロジェクトや学校家庭クラブ活動にあると考える。そこで、本研究では、高等学校家庭科教育の充実のために、学校家庭クラブ活動をとりあげ、その現状を把握し、その課題を明らかにする。

    [方法]①各都道府県の学校家庭クラブ連盟の加入状況、②兵庫県における家庭科教員10年目研修者への学校家庭クラブ活動に対するアンケート調査、③兵庫県家庭科教員の意識調査、から実施状況や認識などの現状を把握する。また、学習指導要領・解説や教科書における学校家庭クラブ活動のとり扱われ方についても分析する。

    [結果]現状を把握することにより、以下の問題点が明らかになった。1)家庭科教育の充実のために発足した学校家庭クラブ連盟のあり方が問題である。加入率100%の県もあるが、全く加入していない県があることは、家庭科教育に位置づけられ全国組織として活性化させていくことは困難である。また年々加入率が低下していることから、家庭科教育のあり方として、足並みを揃えた取り組みができるように、学校家庭クラブ活動と学校家庭クラブ連盟についての共通理解を図る必要がある。2)家庭科教育における学校家庭クラブ活動の意義や目的が家庭科教員に認識されていない。家庭科教員10年の経験者であっても、学校家庭クラブ活動について十分な理解ができていない。また、兵庫県家庭科教員意識調査においても、学校家庭クラブ活動についてほとんど理解していないとする層が多い。3)学校家庭クラブ活動を実践していくための具体的な方法が理解できていない。各学校の特色ある取り組みや総合的な学習、生徒会活動やインターアクトの活動やボランティア活動など、さまざまな組織と連携し、学校家庭クラブ活動を位置づけることが難しい。また、地域連携などを考え、家庭科教育にどのように位置づけて行っていくべきか具体的な方法が分かっていない家庭科教員が多い。4)学習指導要領や教科書からでは、学校家庭クラブ活動の意義や目的、具体的な指導内容や指導方法が理解できない。今後の課題として、学校家庭クラブ活動の意義や目的を整理し、具体的指導内容や指導方法を検討の上、研修を行う必要がある。また、兵庫県の学校家庭クラブ連盟加入状況では、普通科での加入はほとんどないため、普通科で最も履修の多い「家庭基礎」2単位での学校家庭クラブ活動の実施方法についても検討の上、研修する必要がある。以上の課題解決に取り組み、主体的に家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育む家庭科教育について、学校家庭クラブ活動を手がかりに追求していきたい。
  • 鄭 暁静, 大竹 美登利
    セッションID: A3-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    1.目的 戦後、韓国と日本の高等学校家庭科は数回改訂が行われ、現在の教育課程に至っている。中でも、戦後直後は男女平等の教育課程から、女子のみ履修に変更され、さらに男女平等への社会の変化に応じて、男女とともに履修する科目となったという変化の過程が共通している。本研究では、韓国と日本のこうした高等学校家庭科の男女別、男女共通の履修制度の歴史的な経緯とその社会的背景を比較分析し、現在の韓国と日本の高等学校家庭科をめぐる状況の類似性と相違を確認し、その課題を明らかにすることを目的とした。
    2.方法 韓国の中学校及び高等学校の家庭科の男女共修にいたる歴史的な変遷とその背景については、すでに日本家庭科教育学会例会などで発表を行った。一方日本の高等学校家庭科の男女共修への変遷とその背景については多くの研究論文で明らかにされている。本報告ではこれらを用いて、韓日の高等学校家庭科の変遷とその時代的・社会的背景を分析する。
    3.結果(1)韓国の戦後最初の第1次教育課程は1955年の教科課程の制定・公布により確立し、高等学校「実業・家政」は、男女区別なく必修として出発した。しかし、1963年改訂の第2次教育課程では、男子は「実業」を、女子は「家政」と性別に履修するように変更された。1960年代の新聞記事により、この時代の韓国では実業科目の必要性が社会で求められていたことが確認できる。すなわち性別役割分業意識が根強く残っていた韓国では、戦後復興にむけて特に男子技術者の育成に重点をおいた教育課程への変更を機に、「実業・家政」に男女別の履修制度が導入されたことが確認できた。日本の高等学校家庭科も、1947年の教育課程では男女ともに「実業(家庭)」を選択履修する男女平等な教育課程として出発したが、1956年改訂の学習指導要領では「履修させることが望ましい」として女子向けの家庭科へと方向づけられ、1958年の教育課程審議会答申では科学技術の向上を目指して技術科が新設され、さらに1974年改訂の学習指導要領で女子のみの必修科目に変更された。このように韓国と日本の高等学校家庭科は、男女共通履修から、工業振興を背景にした技術教育に重点をおく社会的背景を受けて、男子には技術力が、女子にはその家庭を支える力の育成が要請され、家庭科は女子のみ履修へと変わっていった。(2) 1970年代後半に入ると、国際婦人年を迎え、国連により男女平等が推進される中で、韓国と日本両国とも家庭科は男女がともに学ぶ必要があると議論されるようになった。韓国においては、1979年から教育課程の研究を担った韓国教育開発院により、「教育課程上の男女差異撤廃」が推進された。その結果、1981年改訂の第4次教育課程で、「実業・家政」の男女区別表示をなくしたが選択履修となった。日本では1972年に「家庭科の男女共修をすすめる会」が発足し男女共修の家庭科に向けた活発な取り組みがなされていたが、1979年に提案された国連の「女子差別撤廃条約」の提案を契機に、1989年改訂の学習指導要領で高等学校家庭科は男女必修に変更された。このように日本も韓国も国際婦人年を契機に男女共修になったことは共通している。しかし、日本では民間の動きが活発であったことに対し、韓国では国の研究所における男女平等教育へ向けた取り組みが中心となって男女共修へ変化していったことに相違がある。(3)現在、男女必修の家庭科に変化が始まっている。韓国の1997年改訂の第7次教育課程では、「実業・家政」が「技術・家政」という教科名に変更され、初等学校5年生から高等学校1年生まで男女が必修として履修する科目となった。しかし、2009年に改訂された2009改訂教育課程では、高等学校「技術・家政」が選択になっている。一方日本では、1999年告知の学習指導要領によって2単位科目が設置され、現在その科目の履修が増加している。これらの結果、両国とも家庭科の平均的な履修単位は減少していることが共通の問題となっている。
  • ―府立研究会の指導資料についてー
    井上 えり子, 田中 任代
    セッションID: A3-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    目的:本研究は、1973年4月に始まり1994年3月まで継続された京都府立高等学校の男女共修家庭科について、関係資料を収集整理するとともに初期実践者からの聞き取り調査を行い、全資料を大学図書館で保管し閲覧を可能にすることを目的としている。そして、これらの作業を通じて、京都府立高等学校の男女共修家庭科の全容を解明し、その歴史的意義を明らかにする。  
    本報告では、昨年度(2012年12月)例会での報告(「資料保存と府立研究会の組織体制について」)に引き続き、共修実践を牽引した京都府立高等学校家庭科研究会(以下、府立研究会)によって作成され、共修実践の主要な教材であった『男女共修「家庭一般」指導資料』(以下、指導資料)の分析結果を中心に報告する。 
    方法:府立研究会および関係者より提供された指導資料に関する文書の分析と指導資料の作成と出版の経緯を知る関係者2名への聞き取り調査により、指導資料作成の経緯とその内容及び全国の共修実践に及ぼした影響について検討する。なお、聞き取り調査は、府立研究会で指導資料作成委員を務めた中野慧子を対象として2012年9月13日に2時間、指導資料の出版経緯を知る元出版者社員Aを対象として同年7月26日と9月25日に計4時間実施した。
    結果:1971年12月に府立研究会内に指導資料作成委員会が設置された。委員は府内4ブロックから選出された13名で構成された。委員会は1972年2月~1973年3月まで22回の会議を開催、各ブロックの研究結果を整理し下記の観点から指導資料の原案をまとめた。  
    ①女子必修4単位「家庭一般」の実践交流、②「家庭一般」教科書検討、③関連する教科の教科書検討、④小学校・中学校家庭科の内容検討、⑤各領域の内容と時間配分の検討および文献資料の収集、⑥教育課程編成上の位置づけの検討。  
    作成された原案は府立研究会で協議され、課題が出た場合は再度、指導資料作成委員会で検討され訂正の上再提案された。こうした府立研究会の大多数の教員が作成に関わる過程を経て、指導資料(初版)は1973年4月に完成した。初版は教師用として作成された。 初版の内容は、Ⅰ生活と家族、Ⅱ生活と経済、Ⅲ生活と衣食住から構成され、主として女子用「家庭一般」教科書には記載されていない社会科学的事項に関する教授資料が掲載されていた。例えば、家族史、婦人労働、物価高騰の要因、消費者運動、社会保障制度、公害問題に関わる著書や新聞記事から抜粋された文書や図表などである。こうした資料をもとに、社会科学的視点から生活を認識する家庭科の授業が展開された。  
    1975年3月には、初版をもとに生徒用の指導資料(第2版)が発行された。翌1976年3月発行の生徒用(第3版)から実教出版の関連会社より発行販売されるようになった。聞き取り調査によると、発行当初は共修家庭科に対する批判から実教出版の社名を記すことが難しく、第3版には奥付が記載されなかったが、元指導主事森幸枝の要請により第4版以降は関連会社の社名が記載されることとなった。その後、増刷と改訂を経て1981年3月発行の改訂版3刷まで実教出版関連会社より発行された。  
    しかし、1981年6月に起こった野中広務副知事による指導資料に対する批判発言により、生徒用指導資料は使用出来なくなった。府立研究会は、指導資料を全面的に見直し、1982年4月に教師用指導資料(手書き版)を作成、共修家庭科実践の継続を計った。  
    また、野中事件以降、府立研究会は生徒用指導資料の版権を無償で実教出版に譲渡した。実教出版はその内容をもとに、新たに新家庭科教育研究会著『新しい家庭科資料』(新家庭科研究会)を1983年に出版、同書は全国で共修実践が始まる1990年代初頭まで版を重ねて発行され、西日本を中心に毎年、3万部から5万部が販売されたという。 このことから、『新しい家庭科資料』を通じて京都府立高等学校の共修家庭科実践の成果は全国に普及したと考えられる。
  • 石島 恵美子
    セッションID: A3-6
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    問題の所在と研究目的【BR】若者が社会から乖離していることは,様々な現代社会問題の要因となっている。社会参画の学習経験が,将来における地域への主体的参加につながり、社会と有機的に結びついて家庭生活を創造する力となると考える。【BR】先行研究では,高校家庭科教育で社会参画意識を育むことを目的とし,「高校生の社会参画意識調査」の質問紙調査(量的研究)を実施し,高 校生の社会参画意識の構造を明らかにした。その結果を元に高校生の社会参画意識を高めるための授業改善を行い、授業前と後の社会参画意識を問う「社会参画 意識変容」の質問紙調査(質的、量的研究)を実施し、この授業が高校生の社会参画意識育成に関して,教育的効果が高いことを検証した。これらの研究成果か ら,社会参画教育を視野に入れた家庭科教育が発展するためには,家庭科教員の意識変容のための教員教育の構築が重要であることが示唆された。高校家庭科教 育においては,社会参画の視点からの授業実践例は,まだ僅かであり,社会参画教育のための教員教育の研究は,さらに数少ない。【BR】以上のことから,本研究は,特に,教員教育に焦点をあてることとする。高校家庭科教員の社会参画教育に対する意識構造を明らかにし,教員がどのように家庭科の授業内で社会参画教育に取り組んでいけばいいのかという課題に対しての実践的で有益な知見を得たいと考えている。【BR】研究方法【BR】千葉県の公立高校の家庭科教員15名 を対象に「社会参画教育に対する意識調査」インタビュー調査と「社会参画授業に関するアンケート」質問紙調査を行った。調査内容は,インタビューでは、 「高校生の社会参画のイメージ」という問いをたて,関連要因として「専門科目」「教員経験(専門学科かどうかなどの勤務校の特徴)」「自身の社会参画の経 験」「自身の社会参画意識を高める大学での授業やこれまでの研修歴」等について詳しく聞き取った。インタビューの録音記録から,スクリプトを作成し,質的分析データとした。質問紙では、「社会参画教育に対する意識」,「自身の社会参画教育の視点からの授業評価」という問いを立てた。また、指導案を社会参画の視点として、分析を行った。調査時期は,2011年7月から9月である。【BR】研究結果【BR】質的研究として,高校家庭科教員のインタビュー、質問紙、指導案など多角度から,それぞれの教員の社会参画教育への意識を考察した。【BR】分析の結果,以下のように要約できる。【BR】(1)自分が受けた大学時代の教育で,社会を意識した授業を受けたことが,実現要因になっている。この頃に,家庭科の教員としての価値観が形成されるのではないかと考えられる。【BR】(2)社会参画教育の重要性は,認識しているものの様々な障壁のため,実現していない。家庭科教員にとって,社会参画教育は負担感が大きい。現在それぞれの教員が行っている授業プログラムの社会参画を視点とした再構築を支援することが重要である。【BR】(3)家政科では,家庭クラブで社会参画の機会は多いものの,授業では,資格取得の内容に追われ,社会参画教育を実現していない。【BR】(4)社会参画教育に対する意識は,教員自身の社会参画経験の有無に影響されていない。これは,家庭科で社会参画意識を育む必要があるのか否かという意識「家庭科で教えるべきもの」という教員の固定化された意識が問題であり,研修の機会が必要である。【BR】
  • 女子高等学校での取り組みから
    千葉  眞智子, 堀内 かおる
    セッションID: A3-7
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    【研究目的】
     男女共同参画社会の実現と言われながらも、授業で接している女子高校2年生のジェンダー意識は大変低いと感じている。「玉の輿にのる」「夫に働かせ、楽に専業主婦をする」というように、現実を軽く考える生徒が少なからずいる。また、結婚を女性の幸せの終着点とみなしている生徒が多いようにも感じられる。ひとりの自立した女性として、どのように生きていくかという自覚が、間もなく社会に出ていこうとする生徒の中にあまり育っていないことを痛感している。そこで、一人ひとりが自己実現を可能にし、自分らしい生き方をするために男女共同参画社会の実現が急務であることを生徒に喚起する授業開発を試みた。授業後、生徒のジェンダー意識の変容を分析し、男女共同参画社会を実現させるために家庭科教育の果たす役割について検討することを本研究の目的とする。
    【研究方法】
    1対象者:横浜市内 私立の女子高校2年生 160名
    2調査期間:2012年11月~2013年2月
    3授業実践の実施とその分析・考察:男女共同参画社会をめざす意識改革を目的とした授業(6時間分)を実施した。授業後に書いた生徒のふりかえりの記述をもとに、生徒の意識変容と授業の成果を考察する。
    【結果と考察】 
    生徒のふりかえりの記述を分析してみると大きく4つに分類できた。
    (1)性別役割分業意識に賛成
     「家事は基本的に自分でやりたい」「日本の文化であり、抵抗を感じない」という意見に代表されるように、賛成、あるいは抵抗を感じないとする生徒は、反対であると考える生徒より多かった。このタイプは、性別役割分業意に抵抗を感じない、あるいは仕方がないとあきらめている者と平等であるよりむしろ今のままの方が楽であると考える者に大別できた。
    (2)性別役割分業意識に反対
     性別役割分業に反対とする生徒たちは「女性も固定観念にとらわれず、人間らしく生きたい」「この立場に甘んじている女性たちがいることを腹だたしく思う」というような意見を書いているが、(1)の意見の生徒に比べて明らかに少数だった。反対意見の生徒たちを見てみると、部活動の部長や生徒会の執行部員など、学校内において責任のある役割についている者が多い。また、母親が有職者である者も多い。
    (3)性別役割分業意識に対する認識が変わった
     一連の授業を受けて、今までの自分の常識や考え方に変化があったとする生徒たちは、「将来は専業主婦になるのが当たり前と思っていたが、そうでない世界があることを知って、そちらの方がいいと思った」「性別役割分業意識は別に悪いことではないと思っていたが、なくすことが男女共に有益であると知って、考えが変わった」というような記述をしている。授業を通して今までの自分の常識が変化している。
    (4)男女共同参画社会の意義を知った 
     生徒のふりかえりの中で一番多く書かれていたのが、今まで知らなかったジェンダー観を知ったという生徒たちである。「女性の社会進出が男性の労働を変える」「男女の格差をなくす対策を推し進めるのは私たちの世代だ」「女性の平等を求めることは、女性の責任を重くすることでもある」というように、意見が変わったとはいかなくとも、授業が生徒の認識を刺激したことがわかる。この層は授業を受けることで様々な情報を得て、男女の働き方、生き方の多様性を知った。そしてその刺激が今後の自らの生き方を考えるうえで一つの礎になったといえよう。
    【結論】
     今回の授業ではグループでのワークショップを多く取り入れ、グループで話し合われたことをクラス全体で共有する機会も設けた。そのことにより、生徒の潜在的なジェンダー意識に揺さぶりをかけ、今までより広い視野で物事を考えられるようになったと思われる。今回の授業開発により、生徒の意識に変容があったことが明らかであった。 今後は生徒がさらにジェンダーに関して広い視野を持ち、生徒自身が意思決定していく力を養うためのさらなる授業開発を追究したい。 
  • 山野 美咲, 岡田 真衣, 秋武 由子
    セッションID: A4-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     近年、わが国では物が豊かになり、何でも簡単に手に入る時代になった。衣生活においても、流行遅れなどの理由から着用しなくなったり、ボタンが取れた、裾がほつれたなど少し補修すれば着用できるものでもすぐに廃棄したりし、新しいものを購入するという傾向がみられ、一つの物を大切に扱い、修繕しながら長く着用するという意識が失われつつある。この原因の一つとして、被服製作に関する基礎的な技能が低下したことが考えられる。そこで本研究では、高校生に対して、小・中学校家庭科で学習する基礎的な被服製作技能の実態を明らかにするため、アンケート調査及び実技調査を行った。
    【方法】
     高校1年生80名(男子48名、女子32名)を対象に、小学校で学習する玉結び、玉どめ、なみ縫い、ボタンつけ、中学校で学習する布目、まつり縫いの6項目について、知っているか否か、できるか否か、誰に教えてもらったか、いつできるようになったかを尋ねるアンケート調査を行った。次に同じく6項目の実技調査を行い、最後にできたか否かとできなかった理由を尋ねた。調査は2011年7月に実施し、有効回答率は93.8%(男子89.6%、女子100%)であった。
    【結果】
    (1)アンケート調査
     「できる」と回答した生徒の割合が、玉結び、玉どめ、なみ縫いでは80%以上、ボタンつけでは65.8%と高く、布目の方向、まつり縫いでは35%以下と低かった。誰から教えてもらったかを複数回答で尋ねたところ、玉結び、玉どめ、なみ縫い、まつり縫い、ボタンつけにおいて「学校:家庭科」という回答が最も多く75%以上を占めた。布目においては、「習っていない」という回答が最も多く41.3%であった。また、いつできるようになったかを尋ねたところ、すべての項目において「小学校」との回答が最も多かった。
    (2)実技調査
     布目では、54.7%の生徒が「適切」であった。しかし、アンケート調査では「できなかった」という回答が73.3%あることから、布目の判断はできていないと考えられる。
     玉結びでは、53.8%が「適切」であった。「不適切」と評価されたものは、玉結びにループがあるものであった。
     玉どめでは、51.6%の生徒が「不適切」であった。「不適切」と評価されたものは、玉どめにループがあるもの、布からの位置が離れているものであった。
     なみ縫いでは、82.7%の生徒が「不適切」であった。「不適切」と評価されたものは、針目がやや長い(0.5~0.7cm)ものや長い(0.8cm以上)もの、針目の間隔が不均等なもの、糸こきがされておらず布が縮んでいるものであった。
     まつり縫いでは、96.0%の生徒が「評価不可能」であった。「評価不可能」と評価されたもののうち56名が「かがり縫い」を行っていた。
     ボタンつけでは、58.7%の生徒が「不適切」であった。「不適切」と評価されたものは、ボタンの裏や脇にループがあるもの、ボタンの糸がゆるいもの、布とボタンの間に糸が巻けていないもの、布との間に浮きがないものであった。
     これらの結果から、小・中学校で学習する基礎的な被服製作技能は主に「学校:家庭科」で学習されており、家庭科での指導が重要であることが分かった。玉結び、玉どめ、なみ縫い、ボタンつけにおいては、名称は認識されていたが技能は習得できていないということが明らかとなった。まつり縫いにおいては、名称・技能ともに習得されていないことが明らかとなった。
  • 金子 京子, 倉持 清美, 阿部 睦子, 妹尾 理子, 望月 一枝
    セッションID: A4-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    問題と目的
    これまで、本研究グループは、家庭科でのふれ合い体験の事後の授業や調理実習後に、生徒にナラティブを書かせることについての有効性を授業実践の中で精査してきた(金子ら、2011,2012)。その結果、ナラティブは体験を振り返り、学びを深めクラスの中で体験を共有できるツールとなり得ることを確認した。本研究では、被服製作においても、ナラティブを書かせることで、実習を時系列的に捉えて学びを振り返ることが可能となり、共有できるのではないかと考えた。
     被服製作で体験したことを振り返り、生徒がそこで何を学んだのかを意識化し、学びを共有化する取り組みは重要である。現代は、衣服は作るより購入する方が主流になっているため、必修領域も、「目的に応じた着用や個性を生かす着用の工夫」や「衣服の計画的な活用と適切な選択」「衣服の材料や状態に応じた日常着の手入れ」となっている。そのため、被服製作は、少ない授業数の中で完成できる物が主流になっているが、技能の個人差を考慮した指導法を工夫することにより、新鮮な体験活動として男女の性差なく、一生懸命に取り組むことができる授業内容となっている。
     しかし、被服を製作し完成することにのみ追われてしまっているのが現状である。「製作に必要な材料,用具,製作手順,時間などの見通しをもち,目的に応じた縫い方や製作方法などについて工夫し実践」できるためには、被服製作を振り返る機会を持ち、生徒がそこで何を学んでいるのかを明らかにすること、クラスの中で体験を共有し学びを深めていくことが必要である。これまで検討してきたナラティブではそのような効果があることが示唆されたが、被服製作では、どのような学びが経験されるのか、書かれたナラティブから授業をデザインすることが有効なのかどうかを検討することを本研究の第一の目的とする。
     また、被服製作を体験と位置づけると、ふれ合い体験や調理と異なる側面が見えてくる。被服製作は個人で行う作業がほとんどあり、個人と物とが向き合う体験と言うことができる。この特長を活かした振り返り方があると思われる。本研究では、その方法として図と説明を用いて製作過程を表す「指示書」を作成することにし、被服制作の体験を意識化したうえでナラティブを書かせた。ナラティブでは生徒の被服製作の学習過程が可視化でき、生徒と教師にどのような有効性が見出されるか、ナラティブを用いた授業デザインの特徴と有効性について検討する。
    研究方法
    対象:中学校2年生指導計画:「修学旅行に持参する袋を製作しよう」袋の製作に6時間、その後ナラティブの作成と指示書作成を実施し、クラスの中で共有化する時間をとった。
    ナラティブ:ふれ合い体験や調理実習後に書かせた方法と同様である。
    指示書:図と説明を用い、制作中に注意すべき点についても書き加えたものを作成。
    手続き:ナラティブ、指示書の内容、共有化の授業での生徒の発言や感想を分析の対象とした。
    結果と考察
    ・ナラティブについて:教師が書かれたナラティブを読むことによって、袋の製作について生徒が製作手順をどの程度理解していることを評価することはできた。しかし、ナラティブからは、生徒が自分の作品を完成させるためにした工夫や思いが見いだせず、生徒の学びにすることは困難であることが示唆された。被服製作と言う活動に何を足場かけすると学習過程が充実するのかを明らかにすることが必要である。
    ・指示書について:指示書を書かせた後は、次の手順にしたがって授業を進めた。1、特徴ある指示書を一人2枚から3枚配布する。2、指示書を見ながら気が付いたことを個人でまとめさせる。3、班で共有後、黒板に班毎に記入このような進め方によって、生徒は指示書から、分かりやすいものとそうでないものとがあり、その違いを読み取り、被服製作に必要な手順とは何か、工夫はどういうところに必要なのかをクラスの中で共有することができた。また、授業で、袋物の指示書としてより良いものを検討することで、被服製作を通して身につくものや意義について、自分達でまとめていくことができた。
  • 山本 夏帆, 寳達 佑美, 鳴海 多恵子
    セッションID: A4-3
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    針と糸を使う縫製技術の習得は、日常生活が既製品で賄うようになった今日でも、被服管理を中心とする衣生活の自立の面から不可欠である。家庭生活の中で糸と針を使う場面に出会う機会が減少している現状では家庭科の布を使った製作学習は縫製に関する知識と技術を学ぶ希少な機会となった。裾のほつれ直しなど、日常生活で活用する機会が多いまつり縫いは中学校で学習しているが、技能を確実に定着させるために必要な布を用いた製作活動を繰り返し設けることは授業時間数の減少や日常生活での縫製機会が減少した現状では困難である。 本研究では、まつり縫いの縫製技術を確実に習得し、定着させるために、家庭科の授業内で短時間の反復練習を行うことを試み、反復練習に対する生徒の意識および練習効果について考察した。

    まつり縫いの学習は、まず、まつり縫いの形状および縫い方を理解するために、本研究で開発した学習布を用いた授業を行った。この学習布は33cm幅の花木綿を用い、布に縫い方や作業内容を印刷したものである。上下両端を2cm幅の三つ折りにし、一端は三分の一ずつ作業内容のコメントと縫う位置を記した。すなわち、最初に(1)「縫い方を理解しよう」と印刷し、縫い方の理解のために間隔の広い縫い目で針を刺す位置を示す点や順番を印刷した。次に(2)「細かくまつってみよう」と印刷し、理想的な縫い目形状を理解するために8mm間隔に針を刺す位置に点を印刷した。最後に(3)「自分の力でやってみよう」のコメント以外の印刷はしなかった。次の授業では学習布の反対側の端を用いて10分間の時間制限の中でまつり縫いを行い、前時の学習の確認を行った。その後は25cm幅の布を用い、5分間ずつの反復練習を5回行った。また、生徒の繰り返し練習に対する意識調査および手指の巧緻性への効果を計る糸結びテストを反復練習開始前と終了後に実施した。反復練習の技能面の効果はまつり縫いの目視評価により検討した。実施対象は都内公立中学校1年生83名である。

    (1)生徒は反復練習に対して、開始前には技術上達への期待や楽しさに対して肯定的であり、練習後には、速く縫えるようになったことを自己評価し、ズボンやスカートの裾がほつれたら自分で直せるなど、生活に応用できる自信を持っていた。また、反復練習に対する面倒な意識は練習後には低下した。 (2)反復練習に対しては女子のほうが肯定的であった。(3)糸結びテストの成績は、女子において有意に向上した。 (4)反復練習による技能面での効果は、時間内で縫える長さの増加において顕著であった。縫い目の形状については指導上の課題が残されたが、生徒個々の中での縫い目の統一感があり、縫うことへの慣れがうかがえた。 (5)縫い目の形状については、20%程度の生徒に反復練習による確実な上達が見られた。しかし、自己流の縫い目が定着している傾向も多く見られた。自己流の縫い目としては、三つ折りの折り山をすくう位置が深すぎる、表目をすくう位置が折り山から離れている、縫い目の間隔が極端に広い、表目が大きいなどである。
    まつり縫いは既製服の縫い目のほつれを直すなど活用機会は多いが、既製服には手縫いのまつり縫いが使用されていることはまれであることなどから、生徒がまつり縫いの形状を知る機会は少ない。本研究の結果から、反復練習は縫製作業への慣れと生徒の意識の面では有効であったが、まつり縫いの形状理解が指導上の留意点として示された。
  • 薩本 弥生, 井野 真友美, 川端 博子, 斉藤 秀子
    セッションID: A4-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 情報社会の進展により日本に関する多くの情報がテレビやインターネットなど様々な手段で世界に発信され、文化交流が進んでいる。著者らは、日本の中学、高校におけるゆかたの着装を体験する授業実践を行い、その内容について検討するとともに、イギリス、中国において、ゆかたを着装するワークショップを実施、その成果についての分析を進めてきた。今回、USAのサンフランシスコ(SFと略記)にある中学校、高校、大学および日本のY大学在籍の留学生を対象にゆかた着装ワークショップを実施する機会を得たので、その内容および同時に実施した調査の分析結果を報告する。これらは、日本における中学、高校でのゆかたを着装する体験学習の内容の検討に寄与するものである。また、ゆかたの着装を学習した生徒の海外との文化交流の一つの方法として、国際交流の様々な場面で利用することができると考えられる。[方法] 2012年8月にY大学在学の留学生(28名)を対象に、2012年9月にUSAのSFで中学生(49名)、高校生(46名)、大学生(59名)を対象に、大学研究者3名、学生16名によるワークショップを実施した。日本の現代文化と伝統文化についての認知度と各々の情報源、着物について知りたいことについて調査し、事後調査ではゆかたを着てみての「着装感」や「興味・意欲」、「理解・習得」などに関する19項目を5件法で調査した。 [結果と考察] 事前調査の結果から現代文化では海外の生徒もマンガやアニメなどを知っている割合が高く、情報源ではインターネットが最も高く自ら意欲的に調べる生徒が多いことが示唆されたが、伝統文化では日本で暮らす留学生の方が、知識が広かった。また、伝統文化の情報源としては「TV」と並んで「学校」と答える人が多く、伝統文化の伝承に関する学校の役割の大きさが示唆された。 きゆかたを着てみての「着装感」や「興味・意欲」、「理解・習得」などに関する調査結果を因子分析し、その結果をもとにパス解析を行った。昨年度、著者らが日本の中学校で行った実践では理解習得意識および高揚感が興味・関心に影響しているという結果が得られたが、今回、理解(習得)因子からのパスは各校で有意であったが、高揚感から興味関心への直接のパスが有意だったのは大学のみであった。どの学校でもゆかたを着て嬉しそうな生徒たちの笑顔が印象的で、実際に高揚感に関する項目はどの校種でも高かったが、それが興味関心に結びつかなかったのが、現段階での海外で行う実践の限界を示している。しかし、参加者が全員希望者でワークショップの雰囲気も盛り上がっていた日本への留学生とSFの高校生のワークショップでは、高揚感が他の2校に比べ高く、それに伴い意欲も高かった。また、この2校は比較的時間に余裕があり、留学生のワークショップでは着つけ後に浴衣で学内を散策する時間を設け、高校ではお茶を立てて何人かが飲んでみるといった時間を設けた。この結果から、ワークショップに対するモチベーションの違いと、着装後の活動が、高揚感やその後の学習意欲にも影響することがわかった。さらに、日本の伝統文化について認知度が高い人と低い人で比較するために、4校合同で「伝統文化認知度」を定め5個以上知っている人を高値群、それ以下を低値群として分類したところ、高値群の意欲項目の方が高くなることが分かった。また、ワークショップを担当した学生自身が海外の人々にきもの文化を紹介する中で,きもの文化に対して誇りと愛着をもつようになったと述べており、日本での中学、高校でのゆかたの着装を体験する授業に、自分たちが学ぶだけでなく、誰かに教えるという課題を設定する方法の有効性が示唆された。今後、異文化交流等での発信を目指した授業実践も検討したい。
  • 齋藤 弘子, 高木 直
    セッションID: A4-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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     【目的】
     中央教育審議会第1次答申(1996年7月)において「生きる力」が重視され,問題解決能力が注目された。1998年改訂,中学校技術・家庭科学習指導要領においても「生徒が自分の生活と結びつけて学習できるよう,問題解決的な学習を充実すること」と明記され,家庭科での問題解決的な授業実践は一層重視されるようになった。しかし,中学校の衣生活学習での問題解決的な授業実践は見あたらず,衣生活学習で生徒がどのような力を獲得しているのか,問題解決型の衣生活学習の学びを記録したものもない。そこで,本研究では,衣生活学習に問題解決的な学習を取り入れたカリキュラムを作成し,授業実践し,学習前後の生徒の記述から学びの変容を読み取り,問題解決的な学習の成果と課題を見出すことを目的とする。
    【方法】
     調査対象は山形市内の中学校第1学年40名(男子19名,女子21名)であり,実施期間は2012年4月~9月,12月~1月である。題材名は「『自分らしく着る』~本当の“おしゃれ”を見つけよう~」であり,17時間計画である。問題解決的な学習のプロセスを,探求のプロセスを大切にした実践的推論プロセスを取り入れ,①問題発見,②情報収集・検証・比較検討,③選択肢の検討・決定,④行動・省察の4段階に各学習活動を当てはめ,実施した。毎授業後の振り返りカードに,「学習内容」,「印象に残ったこと」,「さらに疑問に思ったこと」を記入させた。また,授業第1回目と最終回に「自分にとって本当の“おしゃれとは”なにか」について記載させた。
    【結果および考察】
     振り返りカードに記載された内容のうち,毎時間,生徒から出された新たな疑問は,全体を通し最も多かったのは「衣服の歴史・未来」であり,「自分自身について」,「流行」,「色(働き,似合う色」と続く。これらをまとめると「自分自身の着装」に関する記述が最も多く,次に「衣服の社会的な関心」に関する記述が多かった。
     8,9時間目に実施した話し合い活動では,各テーブルごとに5つのテーマ(追い人,社会面,経済面,環境,未来)を設け,ワールド・カフェ形式で行い,模造紙に自由に記述された内容は「流行を追う不安」,「未来への期待」,「環境の悪化」などの記述が多く見られた。数人での話し合いだけではなく,多くの生徒と話し合うことで流行がもたらす様々な側面に気づいていることが明らかになった。
     「自分にとって“本当のおしゃれ”とは」の質問に対する考えは学習前と後とで変化が見られ,「自分の好きな服・似合う服」が学習前後ともに最も多く記述されたものの,学習後に大幅に増えた内容は「環境を考えた服」であった。また,学習前は「色・服の組み合わせが上手」が2割近くあったが,学習後は0%となった。
     以上のことから,学習によって,おしゃれに対する考え方に変容が見られ,単に“着飾る”という視点だけでなく,多角的な視点から衣服を捉えられるようになったといえる。
  • 理科,図画工作科及び家庭科の製作活動の指導実態調査から
    鈴木 明子
    セッションID: A4-6
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】  中央教育審議会(2008)は「生きる力」を育むために,教科等を横断して取り組むべき事項に「ものづくり」を挙げ,幼稚園から高等学校までの教育課程において「ものづくり」に関する指導の充実が図られている。多々納ら(2006)によると,小学校家庭科を指導した教員は,家庭科の製作の意義として,「生活技能の習得」と「達成感・満足感」の二つを挙げている。しかしながら,家庭科における「ものづくり」教育の意義を明らかにするためには,教育課程全体の中で教科の製作活動の独自性や共通性をとらえ,製作活動を学習内容としている複数の教科の指導実態をふまえて,家庭科の意義を検討する必要がある。本研究では,小学校教育課程における製作活動の実態と課題を,文献研究と質問紙調査によって明らかにすることを目的とした。それらの結果に基づいて,小学校家庭科の製作活動の意義を教育課程全体の中で追究し,指導方法への示唆を得たい。
    【方法】   小学校教育における理科,図画工作科及び家庭科の各教科の製作活動について,文献をもとに現状や課題を追究した。また,広島県3市の小学校教員(第6学年担任,3教科を指導している39名)を対象に,理科,図画工作科及び家庭科の各教科の製作活動について,指導の目的や方法を問う質問紙調査を行い,小学校教育課程における製作活動の実態を把握し考察した。それらの結果をふまえて,家庭科の製作活動の意義を追究し効果的な製作活動の指導方法について検討した。
    【結果】 1 我が国の「ものづくり」に関する公教育は,明治時代以降,諸外国からの影響を受けながら,技能訓練と人格形成の間でどちらに価値を置くか揺らいだり,どの教科で扱うのか議論されたりしてきた。その時点では,フランスの手工とスウェーデンのスロイド手工の長所を折半した「普通教育としての側面だけでなく,職業教育としての側面も併せ持つ手工教育」が導入された。現在は,複数教科で二側面を志向する形を取っていると考えられる。  2 衣生活の変化や家庭科の教科目標の変化,児童の製作技術の低下を背景として,家庭科の製作活動は学習指導要領の改訂を重ねるにつれ製作物が簡易化し,技能に関する記述も減少した。  3 小学校教員対象の調査結果から,「達成感を味わわせる」,「学習意欲・関心を高める」及び「安全に気を付ける態度を育てる」などの意義は,3教科に共通して重視されていた。小学校教員は複数教科を指導できるという点を生かして「ものづくり」の指導を繰り返し継続して効果的に計画することが必要である。  4 製作活動は,理科では認知的変容の場として,図画工作科では発想・構想を表現する場として,家庭科では知識や技能の基礎・基本を習得する場として捉えられており,多くの小学校教員は学習指導要領に準じて各教科の指導を行っていた。  5 家庭科の製作活動の指導では,理科のように各製作工程の意味や順番を実感を伴って理解させたり,図画工作科のように発想や構想を大切にしながら計画を改善させたりして,ものづくりの知識や技能及び感性や態度を総合的に育むための工夫が可能であり,そのような展開によって独自の工夫が考えられる。  6 現在の小学校教育課程全体における家庭科における製作活動の意義は,生活者としての育ちを支えることにあると考えられる。関連の基礎的・基本的な知識及び技能の習得ばかりではなく,製作題材に向き合う中で児童が自分の日常生活に関心をもって生活を振り返り,製作物の用途に見通しをもって製作する過程で自己や家族のよりよい生活について考える機会を提供することが必要である。そのためには,製作計画及び製作過程における題材との向き合わせ方を再考することが不可欠である。
  • 潮田 ひとみ, 赤松 純子, 今村 律子, 與倉 弘子, 深沢 太香子, 山田 由佳子
    セッションID: A4-7
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的
     日本家庭科教育学会第55回大会にて,発表者らは,小学校家庭科教科書に記されている「洗う・洗浄」について,衣生活だけでなく,小学校家庭科全般での記載について被服管理学の視点から精査した結果,学習の順序性が考慮されていないこと,内容について学習者に誤解を生じさせる記載があることを指摘し,洗浄・洗うことに関する系統的学習の必要性を述べた.
     今回は,小・中学校の学習指導要領ならびに家庭科教科書の記載内容の検討を衣生活領域だけでなく,食・住生活領域に広げ,「洗う・洗浄」に関する記載内容を省察し,被服管理学の視点を加えることによって,洗浄に関する系統的学習を提案することを目的とする.

    2
    .方法
     小学校および中学校の新学習指導要領解説と2011年度から使用されている2社の小学校家庭科教科書,ならびに2012年度から使用されている3社の中学校家庭科教科書の内容と洗浄に関する記載を省察した.
     次に指導要領と家庭科教科書の記載内容の省察により,系統的学習がなされていないと推測された内容を中心とする,洗浄に関するテスト問題を含んだ洗浄に関するアンケートを実施した.

    3
    .結果及び考察
    (1)小中の学習指導要領解説・家庭科教科書の「洗う」学習に関する記載内容の比較
     小中の学習指導要領解説の記載内容について問題点を指摘する.
     第1の問題点は,従来から指摘している事項であるが,品質表示に示された「手洗い」と学習指導要領解説で定義する「手洗い」とが異なることである.学習指導要領で定義される手洗いは,電気洗濯機の中で行われている工程を実践するというものである.
     第2の問題点としては,小学校学習指導要領解説「C 快適な衣服と住まい- (2)ア住まい方に関心をもって,整理・整頓や清掃の仕方が分かり工夫できること」の内容に「清掃の指導に当たっては,例えば,学校内での汚れ調べの活動などを通して,汚れの種類や汚れ方に応じた清掃の仕方を考え,身につけるようにするとともに,汚れは時間が経つと落ちにくくなることや,住居用洗剤は使い方の表示をよく見て使用する必要があることなどにも気づくように配慮する.」とあるが,中学校学習指導要領解説では,「C 衣生活・住生活と自立-(2)イ家族の安全を考えた室内環境の整え方を知り,快適な住まい方を工夫できること.」の内容「室内の安全については,自然災害を含む家庭内の事故やその原因について考え,災害への備えや事故の防ぎ方などの安全管理の方法が分かり,安全な住まい方の工夫ができるようにする.」となり,整理・整頓や清掃の仕方については,記載がない.
     更に,この2領域の記載内容を比較すると,住生活では,小学校にて,「汚れの種類や汚れ方に応じた清掃の仕方を考え」とあり,衣生活では,中学校にて,「衣服の材料や汚れ方に応じた洗い方が分かるようにする.」とある.これを第3の問題点として挙げたい.
    (2)「洗う・洗浄」に関するアンケート
     これらの3つの問題点を考慮した上で,「洗う・洗浄」に関するアンケートを小学校教員養成課程に所属する大学生に対して実施した.アンケートでは,小学校・中学校・高等学校での「洗う・洗浄」に関する実習・実験経験とその内容,小学校の学習における「洗う・洗浄学習の有用性」,「洗う」に関する知識について調査した.アンケートは集合調査法により, 181名に対して実施した.回収率は100%である.
     その結果,「洗う」学習は,生活の中で重要な項目であり,自立につながる学習であると考えられていることが分かった.しかし,品質表示の手洗いマークの意味に関する正答率は39%,住居用洗剤の使い方に関する正答率は6.6%と低く,系統的学習の必要性が示された.
  • KJ法を用いた質的分析
    大矢 英世, 大竹 美登利
    セッションID: B1-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
       1994年度から高校家庭科が男女共修となり、小・中・高を通して家庭科は男子も女子も共に学ぶ教科となっている。しかし、現実には、男子校は未だに規定通りの履修ができていないところも多い。  そこで、これまではおもに男子進学校の家庭科担当教員へのインタビューデータからはM-GTAを用いて男子進学校における家庭科の定着をめざすプロセスについて分析してきた。その結果、家庭科担当教員が男子進学校の実態に合わせた教材や授業のスタイルを工夫していくことで、家庭科に対する「生徒の学ぶ意識の向上」が見られ、こうした生徒の前向きな姿勢によって「他教科教員の理解と協力」が生まれ、その結果、実習室等設置などの「教育環境の充実」がはかられ、この教育環境の充実によって家庭科の学習内容の幅が広がって、さらなる「生徒の学ぶ意識の向上」につながっていくという流れが循環していき、家庭科定着への推進力が高められていく構図が析出された。この流れへと向かう過程で「生徒の学ぶ意識の向上」は重要なポイントであり、流れを動かす原動力となる。そこで男子進学校で家庭科を受講してきた生徒が家庭科を前向きに捉え学ぶ意欲を持ってきたか、あるいはその逆であったかといった、生徒が捉える家庭科観を明らかにし、男子進学校における学ぶ意欲を生み出す家庭科の授業のあり方を追究したいと考えた。そこで本研究では、男子進学校出身者の家庭科観について調査分析し、今後の男子進学校での家庭科の教育内容の充実に活かしていくべき示唆を得ることを目的とした。
     
    【方法】
       調査対象者は、5名の男子進学校出身者である。いずれも高校家庭科が男女共修となった1994年以降に高校に入学して、高校で2単位以上の家庭科を履修したことになっている世代である。この5名に半構造化面接を行い、川喜多二郎が考案したKJ法を用いて分析した。なお、分析あたっては川喜多研究所公認KJ法研究会で検討してもらい、分析の正確性を確保した。分析は、(1)インタビュー逐語録を1つの意味のまとまりにより細分化し、調査対象者の家庭科観に関するデータのエッセンスを書き込み、元ラベルをつくる (2)その元ラベルをひろげ、さらに同じ志をもっていると感じられる元ラベル同士をセットしていき「核融合法」を用いて表札づくりを行い、表札をつけた元ラベルは表札の下に重ね、クリップでとめる (3)その表札をつけたラベルの束を並べてラベル拡げ、ラベル集め、表札つけを繰り返し、ラベルの束が3枚になるまで統合する (4)空間配置、島どり、関係記号の記入し図解化を描く、の順で行った。 

    【結果】
      分析の結果、次のことが明らかとなった。彼らは家庭科を《不要 》《家事の知識は、今は使わない》と考え、学校は家庭科を《軽私》《私的生活の学びより社会で活躍するための学びを重視》しているが、一方で彼らは《自分の意思》に沿う学びをしたい《家庭科は自由に主体的に学びたい》と考えている関係図が描き出された。彼らは家庭科を《不要》(家事の知識は、今は使わない)と考え、学校は家庭科を《軽私》(進学校は私的生活の学びより社会で活躍するための学びを重視)しているが、彼らは《自分の意思》に沿う学びをしたい(家庭科は自由に主体的に学びたい)と考えている構図が描き出された。すなわち、彼らは高校生の時に家庭科を学ぶ必要性を感じておらず、進学校では私的な家庭生活について学ぶことより社会のリーダーになるための学習や受験勉強の方を重視しているが、一方で知識の詰め込みになりがちな受験教科とは違って家庭科は自分で考え、自分で探求する学びであるので、そうした教科に対する支持もあるということが明らかになった。
  • 室 雅子
    セッションID: B1-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     私立大学の小学校教員養成課程は、教科ごとの専修分けがない場合が多く、これまでの家政系学部における中高家庭科免許取得の学生と比較して家庭科に対する教科観や課題意識、苦手意識などに違いが感じられる。本研究ではこの違いを明らかにし、指導の課題を見つけることを目的とした。

    【方法】
     大学入学後、家庭科の指導法を学ぶ前(履修初回)に質問紙調査を実施し、小~高の家庭科の教科観、役に立った・役に立たなかったと思われる内容、印象に残った授業、家庭科教員のイメージ等を尋ねた。調査対象者は、小学校免許取得希望者(教員養成系学部)および中高家庭科教員免許取得希望者(家政系学部)の合計121名(回収率76%)であり、うち小学校免許希望者91名、中高家庭科希望者30名であった。また、中高の家庭科免許希望者には、学期末に教科観や教える立場から見て印象深かった授業を再び尋ねた。実施時期は事前調査が2012年9月、事後調査が2013年1月である。

    【結果・考察】
     小学校の一科目としての家庭科と免許科目としての家庭科を目指すものを比較したところ、次のような結果が得られた。
     “家庭科のイメージ”については、双方にこれまでの多くの研究に違わず「調理(実習)/裁縫」もしくは「衣食住を学ぶ教科」と多く表記され、家族・家庭や保育の領域はみられなかった。これまでに”印象に残った内容”も”役に立った内容”も衣・食領域に偏っていた。教科自体のイメージは、「生活に役立つ教科」という表現またはこれに近い言葉を記述した者は両学部ともにみられたが、中高免許の者が7割であったのに対し、小学免許の者は2割程度であった。小学免許者によく見られた上記以外の回答は「楽しい教科」という表現であったが調理実習と結びついている者が多く、「主婦や家庭を持った時のための知識」「家事を学ぶ教科」「家庭的」「勉強ではないから楽しい」「主要教科でない」「簡単」といった回答も見られた。
     一方、中高免許者には、「楽しい」と表記したものは1%ほどしかいなかった。「花嫁修業」「生活の豆知識」「副教科である」「内職される教科」「息抜き」といった表現が各1名みられた。ゆえに小学免許者は“教科”学習の意識が低く簡単にとらえており、中高免許者は簡単ではなく役立つ科目と捉えているがサブ教科意識が強い。
      “役に立たなかった内容”としては、「特になし」が大半であったが、少数意見として「間取り/設計図をかいたこと」「収入・支出」「ライフコース」「高齢者」といった住・家庭領域、さらに衣・食領域でも「栄養素の種類や分類」、「カロリー計算」、「刺繍」「染色」「繊維の種類」「機織り」が挙げられていた。家庭科教員としては手を動かして考えたり、必要な基礎知識として工夫したりした内容であるように思われるが、いずれも学生の理由は「使うことがない」「試験のために覚えたが忘れたので使えない」といった即時的に活用できないことを示しており、学習意義が伝わっていなかった。
     対象者は男女共修の世代であるが、「男子はできなくてもいいが女子はできなくてはいけない」「女子教科」「女ならできた方がいい」など、ジェンダーバイアスのある表現が散見された。この認識をもった原因追究は今後の課題である。
     事後調査として、中高免許希望者に実施した調査では、教科観では「役立つ」より「生活に密着した」「生活に課題と改善を見つける」教科の認識が増え、他教科との関連も指摘があった。また、印象に残っている過去の授業を再考させたところ、事前調査では見られなかった家族・家庭、保育等領域の過去の授業にも言及がみられた。中高の免許取得者であるがゆえに専門性への意識が高くなり、授業準備学習の大変さと自分の学科専門以外への指導力の不足感から不安が高まっていた。これは良い傾向であると考えられる。負イメージの再生産を防ぐために、特に小学免許者に多い簡単意識やhow to意識の者にも学問に立脚した科学であることを認識させ、専門学習の必要性を自覚させる必要があるだろう。
  • 永田 智子, 赤松 純子, 榊原 典子, 鈴木 真由子, 鈴木 洋子, 田中 宏子, 山本 奈美
    セッションID: B1-3
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    1.問題の所在と研究の目的
      家庭科教員を取り巻く現状は厳しい。小学校においては継続的に家庭科の実践研究を行う教員は少なく,家庭科授業の手本を示してくれる先輩教員や情報交換できる同僚が身近にいないことが多い。別の方法で小学校家庭科の授業者を支援する手立てが必要である。
      小倉ら(2007)は,全国の小中学校における日々の理科授業の改善に役立てるため,優れた特徴をもつ理科授業をビデオ収録するとともに,その実践の何が優れているかを具体的に示すことによって,理科を指導する教師が参考にすることを目的とした研究を行った。本研究の基本的な発想は小倉らの研究に依拠する。つまり家庭科授業をビデオ収録し,その指導案を集めるだけでなく,家庭科教育の有識者が,その授業の何が優れており,何が課題なのかを具体的に示すことによって,家庭科の授業実施や改善を支援できると考えた。
      ただし,小倉らの研究では,授業ビデオと報告書に掲載された評価コメントを,視聴者自身が対応付けながら視聴しなければならない点で不自由がある。そこで,共有された授業風景動画の特定場面と討論中の発言内容の対応を明示化する動画共有システムVISCO(小川ほか2009)を利用することにした。VISCOではコメントを具体的な映像場面に直接付与すると,吹き出しのように表示することなどが可能になるため,視聴しやすくなることが期待できる。
      そこで,小学校家庭科授業の実施・改善を支援することを目指し,優れた点や課題点などのコメントを授業ビデオとともに閲覧することのできる動画共有システムと家庭科授業ビデオを一つのパッケージとして開発することを本研究の目的とした。
    2.パッケージの開発手順と特徴
      今回開発したパッケージには,VISCOおよび7本の小学校家庭科授業の動画ファイル,各授業の指導案が含まれている。
      VISCOはWindows7を推奨環境とするシステムで,動画の映像場面にコメントを付与すると,インターネットを通じてコメント情報がサーバに蓄積される。視聴時には,インターネットを通じて,蓄積された複数人のコメント情報を動画上に吹き出しの様に重ねて表示させることができる。またコメントはリスト表示され,そこからコメントを挿入した場面に動画を移動させることもできる。
      小学校家庭科授業およびその指導案は日本家庭科教育学会近畿地区会の有志によって収集・編集された。授業は学習内容A~Dから各1本以上とし(A=1本,B=2本,C=3本,D=1本),題材(テーマ)は重ならないように調整した。授業は学校長の許諾を得た上で撮影し,かつ子どもの名前や顔にはモザイク加工を施した。音声が聞き取りにくい場面にはテロップを付け,授業内容がわかる程度の長さにカットした(最短約16分,最長約38分,平均約24分)。
      このように編集された7本の授業ビデオに,教員養成系大学・学部で家庭科教育に携わる研究者7名が分担して,VISCOを使って優れた点や課題・助言,解説等のコメントを付与した。1本当たりのコメント者数は3名,コメント数は平均48.3±11.5件であった。
    3.今後の課題
    小学校と同様の手続きで中学校・高等学校家庭科教育のパッケージを開発するとともに,研究者の付与したコメントの妥当性や有効性を検証することが今後の課題である。
    本研究はJSPS科研費 24531124の助成を受けたものである。
    参考文献
    小倉康ほか(2007)優れた小中学校理科授業構成要素に関する授業ビデオ分析とその教師教育への適用,平成 15 年度~18 年度科学研究費補助金 基盤研究(A)(1) 研究成果報告書
    小川修史・小川弘・掛川淳一・石田翼・森広浩一郎(2009)協調的授業改善を支援するための動画共有システムVISCO 開発に向けた実践的検討,日本教育工学会論文誌,Vol.33, Suppl., 101-104
  • 私立大学における事例をもとに
    永田 晴子
    セッションID: B1-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    【目的】 近年、教員養成と教職課程の在り方等について精力的に審議がおこなわれおり、実践的指導力をいかにして養うかが課題とされている。模擬授業は、教員養成の課程において有用性の高い学習方法として取り入れられてきている。家庭科教員養成においても、模擬授業を取り入れた授業実践の効果や相互評価を取り入れた模擬授業実践の有効性などが先行研究で指摘されており、その多くは教員養成系大学における実践となっている。そこで、本研究では、教員養成系大学ではない私立大学における模擬授業実践の記録をもとに、模擬授業の実践方法および相互評価の活用の課題について検討を試みた。
    【方法】 2012年度後期に開講された家庭科教育法Ⅳ(受講者女子29名)において実施した模擬授業の評価コメント用紙による相互評価の記録をもとに分析をおこなう。評価コメント用紙には、内容(ねらい・難易度)、学習内容の活用、指導方法(学習方法・教材教具の工夫)、板書のしかた、教師の話し方に関する10項目の5段階評価および、「この授業の良い所」「もう少し改善した方がよいと思う所」の自由記述欄が含まれている。 模擬授業は3~4名1グループで、高校生向けの家庭科の授業について指導計画の立案をおこない、内1名が教師役となり10間の模擬授業をおこなった。90分で7グループが模擬授業を実施している。「指導計画の立案」→「模擬授業の実施(1回目)」→「模擬授業のVTRおよび評価コメントによる振り返り・改善点の検討」→「同一テーマによる模擬授業の実践(2回目)」→「2回目模擬授業のVTRおよび評価コメントによる振り返り」の流れで授業を進めて行った。評価コメントによる振り返りでは、上記10項目の5段階評価を点数化しレーザーチャートを作成し振り返りに活用させている。本研究では、7つの模擬授業実践の相互評価の記録を分析対象とする。 
    【結果と考察】 1回目模擬授業の振り返りをおこなう際に、家庭科の授業を行う上で大切だと思う項目の習得状況を4段階でたずねると、どの項目についても、半数以上の学生が、ほとんど身に付いていないまたは身に付いていないと自己評価していた。これまで、授業実践を経験した学生はほとんどおらず、どの学生も、自分の教授技術について強い不安感を抱いている傾向があることが伺えた。 
     板書の仕方や話し方、教具の使用などの教授技術については、1回目、2回目の両方で、良かった点・改善点として指摘の多い項目であり、模擬授業の振り返りを通して、改善し問題点を克服しやすい内容となっていた。教授技術に関する改善の成果は、レーザーチャートの比較でも確認でき、授業実施者にとっても改善の達成を実感しやすい項目となっていた。声のトーンや生徒への目線など教師としての態度についても、相互評価における指摘はVTRを通して確認することで、2回目の模擬授業で改善につながっていた。
     授業内容、学習方法、教材・教具の工夫などの授業構成力については、1回目の模擬授業における改善点としての指摘が目立。また、授業内容の難易度は、1回目、2回目ともレーザーチャートで「高校生の家庭科の授業としては、内容がやさしい」という方向に寄ってしまう傾向に大きな変化は見られず、改善点として「やさしすぎる」という指摘がある一方で「難しすぎる」という指摘も登場しており、学校段階や生徒の発達段階に応じた適切な授業内容を設定する力が不足していることがわかった。 
     10分間という限られた時間ではあるが、学生は、同一テーマによる2回の模擬授業実践を行うことで相互評価をもとに教授技術や教師としての態度の改善点に気づき課題を克服することはできるが、学習者に適した学習内容の難易度を判断し設定できる力を付けさせる必要性があることが課題としてみられた。
  • 学生調査にみる家庭科履修者の特徴
    青木 幸子
    セッションID: B1-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>
      グローバル化の進展が著しい現代社会において,人材の育成は最重要課題であり,教育をめぐる改革のスピードが増している。2006(平成18)年,中央教育審議会は「今後の教員養成・免許制度の在り方について」を答申し,教職に関する科目として「教職実践演習」の導入を提言した。この科目は,教育実習を終えた最終学年の後期に開設することとし,教員に必要とされる最低限度の基本的な資質能力を修得させることを目的としている。そのため,「教職実践演習」の履修にあたりその前提条件として,それまでの学修を記録する「履修カルテ」の作成が義務づけられた。
      そこで,本学では,幼稚園・小学校・中学校・高等学校の各教諭、栄養・養護教諭など多様な免許状の教員養成を担い、しかも教職課程履修者数が多いことに鑑み,教員養成教育推進室を中心に検討を進め,幼稚園教諭を主免許とする学科を除く教職課程履修者を対象に「履修カルテ」として「教職eポートフォリオ」を導入した。システム構築から運用3年目を迎えた2012(平成24)年度に,教職eポートフォリオの導入初期段階における実態を把握するため学生を対象とした第一次調査を実施した。そのうち,家庭科履修者の特徴を明らかにすることを目的とする。
    <方法>
    1. 対象者:T女子大学3年生 教職課程履修者415名(内、家庭科免許状取得予定者79名)
    2. 調査時期:2012年6月
    3. 調査方法:集合調査;調査配票数415名、有効票412、有効回答回収率99.3%
    4. 研究方法:
    a.調査項目について,家庭科履修者の結果を単純集計する。
    b.さらに,就業意志との関係についてクロス集計を行い、本学における家庭科履修者の特徴を把握する。
    c.導入初期段階における教職eポートフォリオの効果と課題について考察する。
    <結果>
    1.教職eポートフォリオの作成は、「学修の振り返り」と「学修目標の設定」に約8割、「将来の進路」や「成績評価への関心」に約5割の学生が効果ありと肯定的に評価している。
    2.これらの効果を教職への就業意志で比較すると、「必ず就きたい」と強い意志を持っている学生は、「教員としての資質力量形成」「学習意欲の向上」「成績評価の向上」で高い割合を示している。
    3.教員に求められる能力の獲得については、「教育実践力」と「課題探求力」を除き、約6割の学生が肯定的に評価している。
    4.各能力指標を教職への就業意志で比較すると、「必ず就きたい」と強い意志を持っている学生は、「学校教育についての理解力」「教科・教育課程に関する知識・技能」「教育実践力」「課題探求力」の獲得が著しく高いことがわかった。
    5.教職への就業意志が大きく関与するのは、教職eポートフォリオ作成の効果としては「教員としての資質力量形成」であり、獲得能力では「教科・教育課程に関する知識・技能」であった。学修開始から2年を経た段階での一つの傾向として把握される。
    6.その他の効果として、学修を振り返るだけでなく、自分自身を振り返り見つめなおす契機となったことである。
    7.教職への就業意志のない学生は、教職eポートフォリオの作成による達成感も、教員に求められる能力の獲得にも否定的評価の割合が高い結果となった。
  • 「小学校家庭科教育法」での実践事例から
    佐々木 貴子
    セッションID: B1-6
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    〔目 的〕
      教育実習が学生にもたらす影響は大きく,教育実習において学生が教師として授業を実践する力量を形成していくことは明らかである。しかし現在、札幌校では学生が小学校での教育実習中に「家庭科」の授業実践をすることは非常に少ない状況にある。すべての学年に位置づけられている教科とは異なり,「家庭科」は5,6年生で履修する教科であるため,その学年を担当しなければ授業実践をすることはない。しかし,5,6年生を担当したとしても,学生が積極的に「家庭科」の授業実践を望まないためか,研究授業で「家庭科」が実践されることはほとんどない。学生に「家庭科」の授業を実践しないない理由を尋ねると,「家庭科の授業をどのように実践したらよいかわからない」という返答があり,大学での指導のあり方を見直す必要性が求められた。「家庭科」の授業を実践できる力を身につけるためには,現場での優れた授業実践を数多く観察すること。さらに,観察した授業展開を基に,教師の働きかけやそれに対する子どもの学習行動,また子どもの学習活動とそれに対する教師の支援などを分析・考察することができる力を身につけることである。しかし,優れた授業実践を参観する機会を得ることは,大変に難しい。本学では,三橋氏が「小学校算数科教育法」において観察した授業記録の読解を基にした授業研究を行っており,学生たちはこの講義を通して,算数科に必要な授業実践力を身につけられると評価している。 そこで、本研究は、「小学校家庭科教育法」において観察した授業記録の読解を基に授業研究を実施することで、学生たちに「家庭科」の授業を実践する力を育成することができるかどうかを検証することを目的とした。本発表では、授業の観察記録を作成する力について報告する。
    〔方 法〕
      三橋(1993)の実践例を参考に,「小学校家庭科教育法」(2010年度後期)を受講する学生50名(男子26人、女子24人)を対象とした。2010年10月に札幌市内の小学校教員が研究大会で実施した「くふうしよう!季節に合うくらし」(6年生)を録画し、観察対象の授業とした。学生には(1)録画した授業を観察(視聴)させた。規格用紙を配布し、授業中に生じているすべての行動を時間的な流れに沿って鉛筆等で自由記述する(行動描写法)ように指示した。次に、(2)事前に観察対象の授業を文字で起こした「記述された授業記録」を学生に配布し、(1)で記入できなかった箇所を赤字(黒以外の色)で補足するように指示した。(1)と(2)の作業を通して作成した「授業記録」を基に、学生が記録した教師・学習者の言語・非言語行動(挨拶を除く)の「記録量」とその記録の「正確さ」を行動のカテゴリー(行動目録法)により分析・検討した。
    〔結 果〕
       観察した授業では、教授・学習行動が教師62件,学習者57件,講師4件,合わせて123件であった。学生が観察して作成した記録用紙に、教授・学習行動が何件記録されているか(記録率)を分析した。教育実習経験のある3,4年生は全123件のうち平均50.1件(40.8%),実習経験のない2年生は平均42.1件(33.3%)であり,実習経験のある学生の方が若干多く記録をしていた。 また,実習経験の有無と,教師,児童,講師の「正確」記述の関係をみたところ,いずれも実習経験のある学生の方が,記述した件数が高いことがわかった。記録件数が最も多かった者は、実習経験者の4年生で72件(58.5%)であるのに対し、最も少なかった者は2年生で13件(10.5%)であった。一方、教師の非言語行動として「板書」や「机間巡視」「DVD視聴」「資料配付」がみられたが、「板書」や「DVD視聴」については、実習経験の有無に関わらず、全体の68%が記述していたものの、「机間巡視」や「資料配付」は全体の40%であり、これらの記述量は経験者の方が多い傾向にあった。
       三橋(1993) 観察記録の方法、『教育実習ハンドブック』,57-65,ぎょうせい
  • ―学びの過程の実態をふまえて―
    伊波 富久美
    セッションID: B1-7
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    近年、家庭科教育においても授業前後の学習者の内的変化のみならず、そこでの学びの過程そのものへの関心が高まり、学習者がどのように家庭科の授業において学びを深めていくのか明らかにされつつある。 そのような一つの授業あるいは一つの題材における学びの過程の実態把握にもとづき、本研究では人が家庭生活について理解を深めていく過程をモデル化し、そのどこに教師が家庭科の授業において働きかけていくことになるのか位置づけることによって、家庭科指導の方向性を明確にすることを目的とした。
    【方法】
    1.題材「どう作る?マイレシピ(玉ねぎの調理)」の授業分析注1)などによって明らかになった、家庭科の授業における「即自」から「対他」を経て「対自」に至る過程をふまえ、人が生涯にわたって、家庭生活について理解を深めていく過程のモデルをヴィゴツキーの「精神発達の理論」に基づいて構築する。
    2.その過程のどこに、教師が家庭科の授業で働きかけていることになるのか、これまで分析を行ってきた様々な授業場面に照らし合わせながらその位置を示す。それとともに、学習者が家庭生活についての理解を深めていく各局面において求められる、教師の学習者に対するかかわり方の方向性について検討する。
    【結果及び考察】 
    1. 家庭科の授業(題材「どう作る?マイレシピ(玉ねぎの調理)」)においては、学習者が対象に対して「無意識的」あるは「わかったつもり」になっている「即自」の状態を外部化させ、他者やモノとの相互作用を通して、自分にとっての対象の意味を確定し(「対自」)、対象についての理解を深めていることが授業分析によって明らかになった。それをふまえ、ヴィゴツキーの「精神間機能から精神内機能へ」という「精神発達の理論」、及びそれを補足して佐伯(2007)注2)が述べた、それらの更なる段階への繰り返しという視点に基づき、人が生涯にわたって対象(家庭生活)に対して理解を深めていく過程をモデル化することができた。
    2. その過程に家庭科授業を位置づけると、次の3つの局面への働きかけとして捉えることが可能であった。
    (1) 対象(家庭生活)に対して無意識的な状態から、対象を意識化する局面
    (2)  対象について「よくわからない」状態から、他者やモノとのかかわりを通して「わかった」に移行する局面  
    (3)  学習者の「わかった(つもり)」が揺さぶられ、「わからなくなった」に移行する局面
    以上のように家庭科授業の場を捉えることができたが、他教科においては主に(2)の局面への働きかけであるのに対し、家庭科の授業では、学習を開始する以前から対象(家庭生活)とのかかわりを持っているという特異性から、(1)及び(3)の局面での支援、すなわち、無意識の意識化及び「わかったつもり」への働きかけに、家庭科教育の独自性を見出すことができた。そこに特に重点を置いた家庭科指導をめざすことによって、学習者が自らにとっての対象の意味(自分の生活における対象の意味)を確定していく学びを可能にすることが示された。また、その場を「対他」の過程として構成していくことの重要性も明らかになった。
    【注】
    1)授業実践内容及びその分析の詳細は、伊波富久美.(2012).自らの生活を捉え直す学びの過程.日本家庭科教育学会誌,55(2),112-123.
    2)佐伯胖(2007).人間発達の軸としての「共感」. (佐伯胖編).共感.京都:ミネルヴァ書房.  



  • -「防災・減災」に関する教科書分析およびアンケート調査から-
    遠藤 恵, 武井 玲子, 深谷 笑子, 難波 めぐみ, 佐藤 典子
    セッションID: B2-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    目的
     家庭科は、衣食住、環境、福祉などの単元を生活者視点で学習する教科として、如何なる生活環境下にあっても、力強く主体的に生活できる「生きる力」をもった生徒の育成に努めなければならないと考える。そこで、東日本大震災から得た生活体験を、教育的価値あるものとして、今後の家庭科教育に活かすことを目的とする。
     そこで、基礎情報を得るために高等学校家庭科教科書より震災に関する単元とその学習内容を抽出し、「防災」および「減災」への意識とその傾向を把握・考察する。次に、「東日本大震災と生活」アンケートを実施し、非日常的な生活から得た知恵・反省、体験等を調査し、これを基に今後の防災・減災教育に必要となり得る学習内容を検討する。
    方法
    1.平成11年文部科学省告示58号に基づいて採択された、高等学校家庭科教科書、家庭基礎11冊・家庭総合8冊・生活技術2冊の計21冊を対象とし、震災に関する記述内容の傾向を調査する。
    2.福島県立高等学校家庭科教諭18名から得た「東日本大震災と生活」アンケート調査から、非日常的な生活から得た知恵等を抽出し、今後の防災・減災教育に必要となる学習内容を検討する。
    結果及び考察
    1.高等学校家庭科教科書計21冊を対象に、震災に関する記述について抽出した結果、震災に関する記述は「住」の単元に限って取り上げられていた。それは、自然災害の定義や、それに付随して起こる生活問題が記されるに留まっている。災害に関する記述の一部をあげると、「耐震」11冊、「建物の補強・補修」10冊、「避難所の確認」8冊、「家族との連絡方法の確認」6冊、などであり、ほとんどの教科書が建物の耐震構造や補強、家具の固定などを中心に記述していることが分かった。しかし、被災体験を紹介している教科書はなかったが、「震災への備え」や「震災関連の新聞雑誌等を探してみよう」と題して、演習を促している教科書もある。教科書調査より、まずは住居の崩壊を未然に防ぎ生命を第一に守ること、被災を最小限にする準備・方法、を優先的に記していることがうかがえる。しかし、被災後の生活に関する記述はみられず、非日常的な生活を強いられた際の知識・技術の学習内容は、十分とはいえないと考える。
    2.福島県家庭科教員18名対象のアンケート調査結果では、東日本大震災で経験した非日常的な生活状況及びその対処法についての記述がみられた。「ライフラインが影響を受けていた時に、生活行動はどのようにしていたか」では、「パンを手作りした」「保存食を食べた」などの非日常時の生活行動が記されている。被災体験を経て、「家庭科として何をどのように教えるのが望ましいか」では、「洗濯機や炊飯器に頼らない、洗濯方法や炊飯方法などを、実習を通して体験させることが必要と感じた」「応用力で生活できるスキルを身に付けさせる必要がある」との回答が得られた。この二つの設問に対する回答から、非日常的な生活環境下においても生活を営むことができるよう、防災・減災教育をあらゆる生活領域から学習する必要があると考える。生活を学ぶ教科だからこそ、衣食住、消費生活、福祉など、多面から防災・減災教育を推し進めることが必要である。以上より、東日本大震災から得た教訓を基に、防災・減災教育を衣食住・福祉など広域な学習範囲において、生活者視点をもった記述内容を検討し、“家庭科教育だからこそ”学習できる防災・減災教育の発展に寄与したい。
  • -福島県家庭科教員対象調査を踏まえて-
    佐藤 典子, 武井 玲子, 深谷 笑子, 難波 めぐみ, 遠藤 恵
    セッションID: B2-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    目的:東日本大震災は、福島県、宮城県、岩手県をはじめとする広域な地域に甚大な被害をもたらした。復興にあたり、この震災で経験したことからの学びを活かすことは、これからの学校教育の重要な課題のひとつとして位置づけられると考える。そこで、本研究では、福島県家庭科教員を対象としたアンケート調査を実施し、震災直後から1年半経過した今までに起こったさまざまな被害の状況を冷静に振り返ること、および家庭科教員の目をとおした児童・生徒の変容の実態把握を行うことを目的とする。
    方法:1.先行実態調査の検討  
     2012年8月にKGCサマーリフレッシュプログラム(教員免許状更新講習)に参加した教員を対象に実施した。
    2.家庭科教員対象アンケート調査の実施  
     2013年12月~1月に福島県内の高等学校の家庭科教員51名に「東日本大震災と生活」アンケート調査を郵送にて実施した。
    結果:1.先行実態調査の検討
     小学校教員からの現状報告として、「家族を大切に思う」「外で自由に遊べない」や「転校児童の増加」が挙げられた。特に外で遊べないことは運動不足につながり、この1年で肥満児が増えたとの報告があり、教育現場においては速やかに対応すべき課題となっている。 
     中学校教員からは「避難訓練を真剣に行う生徒の増加」が挙げられ、防災教育の重要性が浮き彫りになった。このことから、防災や減災について、住居分野だけでなく複数の単元で取り上げることが望まれる。 
     また、「敏感に反応する保護者」を挙げた教員がおり、教員自身が、食の安全や原子力発電など「リスク管理」に関する考え方を学ぶ必要があると同時に、これらの考え方を保護者にわかりやすく伝えるためのコミュニケーション能力が課題となっていることがわかった。 
     高等学校教員からは、「水」、「防災・技術の必要性」が挙げられた。特別支援校教員は、「今を大切に生きる」「水、食料、電気の大切さ」などを挙げており、校種ごとにさまざまな課題に向き合っていることが浮き彫りになった。以上の事例についての検討をもとに、教員自身の体験記録も兼ねた「東日本大震災と生活」アンケート調査を実施した。
    2.家庭科教員対象アンケート調査の分析・検討 
     福島県は、大きく「浜通り」「中通り」「会津」に分けられる。アンケートの回答者18名は、「中通り」が多数を占めた。よって本報告における実態は、郡山市、福島市を中心としたエリアの状況である。
    (1) 勤務先の被害状況 
     被害ありと回答した教員は、1名で建物にひびが入った程度であった。
    (2) 避難所設営・運営の中での家庭科教諭の役割 
     家庭科だからという特別な役割ではなく、全職員が、食事作りなどを行ったが、鍋ややかんなどの調理器具の貸出しを行い活躍した。 
    (3)生徒の震災前後の意識、言動・行動の変化 
     まずは、慣れない避難生活などに伴う心理的な不安定が挙げられた。 次に、前向きな変化として、感謝の念や一生懸命に取り組むことが挙げられた。しかし、その変化も徐々に薄れつつあるようだ。また、ネガティブな変化としては、原発問題に関連して、食材の産地や食事、出産等を心配している様子が伺えた。
    (4)震災時に家庭科で教えている実践力や応用力が活かされた場面 
     例えば、食生活に関しては、「火を使わない実習」の報告があり、生徒からもこのことが震災の時に役に立ったとのことであった。
    (5)ご自身の体験から家庭科として何をどのように教えるか 
     自らの力で生きていけるようにする「生きる力」、具体的には非常時の備えや持ち出し袋、炊飯や洗濯、身の守り方、生命の尊さ、助け合う気持ちなどを、実習を多く取り入れて教えることが挙げられた。
    考察と今後の課題: 
     今回のアンケートは、主に「中通り」の先生方からの回答であったため、今後は津波の被害や避難地域が含まれる「浜通り」の先生方へのインタビュー調査を行い、具体的な授業計画および実践を行いたい。
     
  • -福島県家庭科教員対象調査を中心として-
    難波 めぐみ, 佐藤 典子, 武井 玲子, 深谷 笑子, 遠藤 恵
    セッションID: B2-3
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    目的:東日本大震災は、震災を経験した福島の私たちに防災教育の重要性を再認識させた。阪神大震災以来、小・中・高等学校で防災教育への取り組みが強化され、家庭科においても、住生活の単元で「安全な住まい」や「災害に備えた住まい方」などとして、災害への啓発が実施されてきた。その後、各都道府県においても、独自に補助教材を作成し配布するなどの実践的な取り組みが行われている。
      今回、福島県高等学校家庭科教員を対象に、「東日本大震災と生活」についてアンケート調査を行った。その中で、震災前の緊急時持出袋(以後、防災袋)の所持について質問したところ、所持していると答えたのはわずかであり、震災後の現在までの間で準備したと答えた人は3割に満たない結果となった。
      その結果から、家庭科教員自らも災害を風化させることなく、強く減災につなげる教育に取り組むべきであることを感じた。まさに、家庭科教育ならではの取り組みが、今こそ必要であり求められていると考える。そこで本研究では、高等学校家庭科「衣生活」の単元を活用して、防災、減災に繋がる働きかけが出来る力を育むための、教材を開発することを目的とする。
    方法:
    1.家庭科教員対象アンケート調査の実施(2013年12月~1月に福島県内の高等学校の家庭科教諭51名を対象)、2.授業実践、対象本学家庭科教員養成課程履修学生3名。
    結果:
    1.家庭科教員対象アンケート調査の分析・検討
      震災に対する防災・減災教育の必要性と実施状況について調査したところ、「必要性あり」と回答した人が8割であった。その内、以前から学校全体の取り組みとして実施していたが6割、家庭科では3割を割り、その他の教科として約1割となった。また、震災のような非日常的な生活の知識やスキルを教える必要性を感じ実施しているかを調査したところ、「必要性あり」と回答した人が9割にのぼり、その内の約8割が震災以前から実施されていたことが明らかとなり、福島においても防災教育が各高等学校で行われていることを知ることができた。
      また、災害時準備しておいて良かった物の中で、マスク約4割、所持金4割、懐中電灯4割と半数を割り、緊急時持出袋の所持率では1割を下回った。いつ、どこで、どのような災害が起こり、その時どのように動くことが必要であるのかなど、防災時必要となるスキルやツールの準備ができていない結果が得られた。
    2.授業実践 
       東日本大震災以降、更に、多岐に渡った防災袋を目にするようになった。今回調査した35種類の防災袋の形態で最も多かったのは、リュック型で、移動時両手が自由になるなどの理由が大半を占めた。しかし、震災は、学校や家庭にいる時に起こるとは限らない。1.の家庭科教員対象のアンケート調査の分析で、家庭外で起こった震災への備えが不十分であることが明らかとなったが、この結果を踏まえ本学家庭科教員養成課程履修学生を対象に、教材開発としての防災袋の制作を授業の中で実施した。設定内容は、1)防災袋の所持対象、2)内容物、3)教材としての制作方法、4)評価である。いわゆる今後家庭科が一層進める、See(気づき)→plan(計画)→Do(行動)→See(評価)の活用である。 
      この授業実践により、学生の防災に対する意識の啓発へとつながったとともに、教材を開発するといった実践的態度を育成する授業展開が可能となった。
    今後の課題: 
      防災に対する学校全体の取り組みによって、生徒の意識が高くなっているものの、それらが継続して行くことは難しいのが現状である。減災につなげるためにも、防災に対する知識の習得、減災に向けての働きかけ、いざという時に慌てることなく行動できるといった、防災・減災へ向けた意識の安全サイクルを作りあげることが必要となる。
      大震災を経験した福島の家庭科教員であるからこそ、強く家庭科の重要性を発信できるような、教材内容の検討を今後の課題としていきたい。
  • 武井   玲子, 深谷   笑子, 佐藤   典子, 難波  めぐみ, 遠藤    恵
    セッションID: B2-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    目的:東日本大震災により多大な人的被害、建物被害等を受けたが、原子力発電所事故によっても人間や農林水産品、生活環境等の放射性物質汚染(放射能汚染)が社会問題化している。放射能汚染に対する不安や風評被害等は、2年経過した現在でも福島県民を依然として悩まし続けている。不安は個人の心理状態・主観的感情であり、風評被害等は科学的根拠が全く無いといえる。リスク管理(リスクマネジメント)の考え方に基づいた知識を有し行動することで風評被害等の問題解決が期待できることから、リスク管理の考え方を持つことの必要性をあらためて実感した。日常生活には自然災害リスク、人為的災害リスクに加えて、快適で便利な生活には化学物質、花粉、微生物・カビ、交通事故等様々なリスクが存在している。そこで「防災・減災」や「安全・安心」問題が、教育や生活上の重要な課題となっている。このようにリスクが存在する生活に対して、生活者が「リスクがゼロで、100%絶対安全な生活はありえない。現在の科学水準に基づいて定性的、定量的にリスクを考え、自己責任でリスク削減対策を講じる」、というリスク管理の方法を実践できることが理想である。
      本調査では、リスク管理の考え方(潜在リスク認識、暴露評価、リスク評価、リスク対策、リスクコミュニケーション)を「生きる力」を育む家庭科の学習内容として提言することを目的に、東日本大震災に関するアンケート調査や教科書記述内容調査を実施する。
    方法:2011年12月に本学女子学生189名を対象としたアンケート調査、2.平成11年文部科学省告示58号に基づいて編集された高等学校家庭科教科書、家庭基礎・家庭総合・生活技術の計21冊を対象として、リスク関連記述調査および先行文献調査、に基づいて検討した。
    結果:1.女子学生を対象としたアンケート調査結果の分析・検討 
      放射能汚染を考える基本単位(シーベルト、ベクレル)の理解度をみると、「良く知っている~大体知っている」が30.1%、「聞いたことがある」44.4%、「良く知らない~まったくわからない」24.9%であった。放射能汚染に対して、「非常に気にしている~気にしている」は59.3%であり、「気にしていない~全然気にしていない」は27.0%であった。「内部汚染及び外部汚染の両方を気にしている」は60.8%、「両方気にしない」7.9%であった。これらの結果をみると、基本的な知識の理解度が低いため、知らないから不安、わからないから不安が高まり、気にしている割合を高めていることが推測された。また、風評被害に対しては、「偏見・差別と思う」60.3%、「仕方ない」24.9%、「よくわからない」14.3%であった。この風評被害は、まさしくリスク管理の基本となる放射能リスクに関する知識不足、リスクコミュニケーション不足の実態を浮彫りにした事例と考える。
    2.教科書の「安全・安心」記述とリスク管理視点からの検討 
       川嶋ら(2013)の『高等学校「家庭」教科書及び学習指導要領における衣生活の「安全・安心」に関する記述分析』のように精査された報告や今回調査対象とした教科書には、安全・安心の記述が見られた。しかしながら、リスク評価に基づいてどのように安全と評価しているのか、「安全」と「安心」の意味は全く異なるにもかかわらず「安全・安心」とまとめて記述される等、ともすれば科学的根拠が示されずに使用されていた。また、安全・安心の学習内容が単元毎にそれぞれの視点から記述されており、リスク管理の視点からは一貫性に乏しい結果であった。
    今後の課題:リスク管理は家庭科のみならず教科横断的に実施することも必要ではあるが、家庭科は知識にとどまらず実践力・応用力を高める教科として重要であることから、リスク管理の考え方を学習させる意義があると考える。そのためには、経済的リスク、飛行機・自動車など移動手段のリスク等生活全般の潜在リスクを抽出し、暴露評価やリスク評価を実施し、その結果と有用性をバランスしたり、リスクの低減化対策を考え実行する、という一連のリスク管理をシステム化した学習内容の検討が、今後の課題である。
  • ―家庭科「家族・家庭」の学習内容の検討―
    深谷 笑子, 武井 玲子, 難波 めぐみ, 佐藤 典子, 遠藤 恵
    セッションID: B2-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    目的:家庭科の最も重要な特徴は、生活に密着していることである。また、生活という概念は、住むこと、生きること、暮らすことと大きくかかわっていることであり、それは、家や家族に人間が護り護られてこそ成り立つことでもある。そこで、家の役割と家族の意義について,東日本大震災に関する調査から家庭科「家族・家庭」の学習内容を検討することを目的とする。
    方法:1.2012年7月本学生311名を対象にアンケート調査を実施、2.学生の震災体験記録 3.2012年8月にKGCサマーリフレッシュプログラム(教員免許状更新講習)の教員を対象にしたアンケート調査 4.県内の高等学校家庭科教員対象アンケート調査の実施
    結果及び考察:1.本学生を対象にしたアンケート結果から1)震災時、どのようなことを考えたか、の自由記述で一番多かったのは、「家族・友人の安否」「自宅の心配」と、自分自身のことではなく他人、身内などの安否を心配していたことがわかった。2)震災前後の意識の変化では、家族を思う気持ちが強くなった、が7割以上であった。このことから普段家族は空気のようなものだが、困難な時ほど家族の存在が大きいことがわかった。2.本学生の震災体験記録から1)大変なときこそ家族といることが安心だと実感した。2)家族と連絡が取れなかったが、家族は家があることで、遅くなっても帰ってきた。家は家族が帰ってくるところ、家があることのありがたさに気づかされた。3)家があるとことは、家族がひとつになれることでもある。4)家に家族がいたから安心だった。5)家に一人でいたので怖かった。6)家族間に政治の話題が多くなった、など家族を守る器として、また住むということは、どこに出かけてもまた戻ってくる所で根を張っている住まいと家の役割があげられていることがわかる。3.サマーフレッシュから(児童・生徒の変化)1)小学校教諭からは、家族を大切に思う子が増えた。2)中学校教諭からは、日々の生活に感謝。防災意識が出た。3)高等学校教諭からは、子供の生活に変化が見られなかったのは、母親がずーとそばにいることができたおかげと思う。4)特別支援学校教諭からは、何かあれば家の人を思い出し、助けてくれる頼りになる人は家の人、など生徒は、日頃考えないことが、この時を境に家族や防災意識そして正常の生活に感謝する気持ちがわいたことがわかった。4.家庭科教員対象アンケート調査結果から1)緊急時は夫婦それぞれ実家を優先に行動した。2)家や家族の大切さを改めて感じた。3)家族を大切にするようになった。4)より団結力が強くなった。5)連絡が密になったなど、教員自身も実家の親を心配したリ家族を意識したり家族の存在の大きさを実感したことがわかった。体験記録(2名)から1)津波の予測で避難所へ、その後まもなく原発で避難場所を次々移動、現在も落ち着いた生活ではなく、5人がばらばらに生活している。2)地震当時頭をよぎったのは、家族、友達、生徒のこと。生活の基盤は家族。離れ離れになった家族がたくさんいることは胸が痛い。家族と共に普通の生活を送ることがいかに幸せなことなのかを感じることができた。いずれも、福島県が他と異なる東日本大震災の特徴である、地震・津波・福島原子力発電事故によって、家族がバラバラに過ごさざるを得ない不安定な状況が述べられている。
    今後の課題: 高校『家庭基礎』の内容を見ると、家や家族の意義についての記載が乏しい。そこで、家や家族の存在について、住むことの本質と上記のような非日常的なときこそ強さを持つ家族についての説明、そして体験記録の掲載を期待する。
  • 黒光 貴峰
    セッションID: B2-6
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    目的
     2011年3月11日に発生した東日本大震災から2年が経過した。東日本大震災に関しては、被災者の支援が求められる中、震災に関わる検証や教訓の抽出が重要である。文部科学省では、防災教育を効果的に推進するための視点として、防災に関して各教科で行えることの整理と教科や特別活動等との横断的・総合的な関連を図ることをあげている。我々の関連する家庭科教育においては、住居領域に「家族の安全を考えた室内環境の整え方」、「安全で環境に配慮した住生活」等の内容が設定されており、防災教育の視点からも指導の充実が望まれる。
     以上のような背景から、本研究では、防災の視点を取り入れた中学校技術・家庭科(家庭分野)住居領域の授業開発を行うことを目的としている。
    方法
     研究方法は、1)国民の防災に関する意識の実態の把握、2)学校教育における防災教育の実態の把握、3)防災の視点を取り入れた授業開発、4)開発した教材の検討、である。1)は、主に政府が行った世論調査を中心に、経年比較など、防災に関する調査報告の分析を行った。2)は、鹿児島市の学校を調査対象としアンケート調査を行った。3)は、授業開発に向けた防災教材の収集と分析、教員へのヒアリング調査、中学校技術・家庭科(家庭分野)学習指導要領および教科書の分析を行い、具体的な教材の開発と授業計画の作成を行った。4)は、専門家へのヒアリング調査を行い、開発した教材の有効性の検討を行った。
    結果と考察
     1)国民の防災に関する意識の実態の把握(2012年6月~9月)から、「防災意識に行動が直結していない」、「風化する防災意識」、「防災意識の地域格差」の3つの課題が浮き彫りとなった。
     2)学校教育における防災教育の実態の把握(2012年5月~6月)から、「教科教育の中で防災教育を行っていない」学校は22校(全124校)みられ、理由として、「時間がとれない」、「適切な教材がない」等があげられた。防災教育を行うにあたっての課題としても同様な理由があげられた。
     3)防災の視点を取り入れた授業開発(2012年8月~12月)から、現在、様々な防災教材が開発されているが、それらの教材は、「費用がかかる」、「具体的にどの教科で取り入れたら良いか明確でない」といった課題があげられた。また、教員へのヒアリング調査から、教育現場で効果的な防災教材としては、「費用がかからない」、「体験できる」、「生徒が試行錯誤、工夫できる」という視点があげられた。教科書分析では、住居領域の目次構成、防災に関するキーワード、図、写真の抽出を行った。具体的な開発教材は、8畳の間取りとベッド、机、椅子、棚などの家具の立体模型を1/10の縮尺で作成し、自由に配置できるものにした。開発した教材は、「出入り口をふさがない」、「寝ているところに家具が倒れたり物が落ちてきたりしない」といった安全に住まうための方法の検討や、家庭内における事故について考えを深めることができるものである。また、開発した教材を導入した指導計画案と学習指導案を作成した。
     4)開発した教材の検討(2013年1月)から、鹿児島県教育庁指導主事から「教材の機能性」、「使いやすさ」等の一定の評価が得られた。
     今後の課題は、教育現場で有効性の検討を行い、より現状に合ったものにしていくことが考えられる。
  • 萬谷 恵三子, 佐桑 あずさ
    セッションID: B2-7
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】
     東日本大震災後、中学校段階における防災教育は、「地域の過去の災害や他の地域の災害例から危険を理解し、災害への日頃の備えや的確な避難行動ができるようにすること」、「学校、地域の防災や災害時のボランティア活動の大切さについて理解を深めるようにする」という方針が文部科学省により示された。中学生は災害時に活動の担い手となる事が期待できるが、防災という視点で有益となる地域情報は日常生活の中では得にくい状況であると考える。
     そこで本研究では、災害時に中学生が地域で活動できる具体的な内容とそのために必要な地域情報を理解するための授業計画・実践を行い、防災力を育む事を主眼においた中学校家庭科の授業開発を目的とする。
    【調査方法】
    (1)自宅から防災拠点校までの避難ルート、安全または危険な箇所、災害時に必要な人的資源の情報を1つにまとめた地域防災マップを作成した。授業は2012年12月から2013年の1月の期間に、横浜市内の中学校2年生130名を対象に行った。
    (2)家庭、学校、地域における防災対策や意識についてアンケート調査を実施した。また授業前と授業後で防災チェックシートに記入させ、授業評価を行った。
    【調査結果】
    (1)防災意識と対策の実態
     家庭内で食糧や衣料品の備蓄や家具の転倒防止対策は50%以上が「している」と回答しており災害に備えている事が分かった。また家庭で避難方法・連絡の取り方について話しているかについては「はい」と「いいえ」が50%の同率であった。学校での防災教育で具体的に学びたい内容としては「災害時にとるべき行動」「非常食」などの被災後の対応や生活に関する事が多く、次いで「地域で起こりやすい災害」「地域の安全・危険な場所」など身近な場所の実態に関する内容となった。地域で発生しそうな災害については「家の倒壊」が最も多く、次いで「地すべり」「がけ崩れ」の順に多かった。地域の避難場所については80%の人が知っているが、食糧・道具の備蓄状況や避難訓練・防災訓練の実施状況については50%以上の人が「わからない」と回答しており、中学生にとっては得にくい情報であることが分かった。
    (2)授業後の防災チェックシートから見る意識の変化
      防災意識についての自己評価は、[自然災害や被災後の生活の不安]、[自然災害についての知識]、[自身・家庭・地域の防災意識]、[自身・家庭・地域の防災対策]、[災害について話し合うことの必要性]、[地域の理解]、[災害時の自身の役割]に関する合計30項目とした。30項目に対し、授業前と授業後に「とてもそう思う」から「思わない」の5段階で回答を求め、平均値を出し比較した。授業後に評価が低くなったのは9項目、高くなったのは21項目であった。
     評価が低くなった項目は、「被災後の生活」「地域の自然災害」「自然災害」への不安、「自身・家庭・学校の防災意識」、「日頃から被災した場合の行動・地域のことを家族と話す必要性」、「地域がすき」である。防災知識を得た事で、より学校や家庭での防災対策の必要性を感じると同時に災害に対する不安は少なくなったと考えられる。
     最も評価が高くなった項目は、「地域の安全な場所・危険な場所を知っているか」「地域に住んでいる人とコミュニケーションをとれているか」であり、次に「災害時に役に立てる」「災害について友達や学校で話し合うことの必要性」であった。地域防災マップを作ることを通じて地域への理解が深まり、またグループで災害時に中学生ができることについて話し合う事で自身の役割について考えた事が評価につながったと考える。
     防災に関して自身、学校、地域についての理解が深まり、話し合う必要性を確認できた一方で、家庭内で災害や被災後の生活について話し合う必要性についての評価が低くなった。学んだ事を家庭でも共有し、具体的な対策へも発展させる授業展開について今後検討する必要がある。
  • -ニュージーランドの保育実践に着目して-
    飯野 祐樹
    セッションID: B3-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的
       近年、わが国の子育て支援において「親性」という概念が注目されている。「親性」について伊藤(2006)は、「母性や父性を超えた概念であり、育ちゆく命である子どもを慈しみ育もうとする心、性別や年齢、能力、生みの親か否かに関わらず、すべての人が持ちうる心性」と定義している。また、谷向(2010)は、「親性」と同義の言葉として「親になる準備性」、「育児性」、そして、「養護性」等を提示し、「親性」は本能によってのみ規定されるものではなく、むしろ生育過程において育成されていく面が大きいと示している。さらに、「親性」を基に導き出された概念として、「親世代性」が見受けられる。「親世代性」について金田(2003)は、「親になってもならなくてもすべての大人に不可欠な資質」であり、その背景には養護性や育児性が据えられていることを示している。
       このように、今日わが国における「親性」に対する議論は、家庭に主眼を置きながら「親準備」的な観点に意義を見出すのではなく、地域資源を生かし、人と人との繋がりの中で子育てにおけるネットワーク形成を目的とした論が多数見受けられる。もちろん、ネットワークの形成というものは、偶発的に発生するものもあるが、そのほとんどは、意図的な働きかけを基に人々が共通認識を抱きながら成立している。つまり、わが国の家庭科教育において今日求められている要素の1つに、親になってもならなくてもすべての児童・生徒が将来的に親世代として地域、或いは、コミュニティ内の子育てに携わることのできる資質の土台作りというものが求められていると言えるだろう。では、わが国の家庭科において「親世代性」を育む授業とはいかなる視点から形成していくことが求められているのか。本発表では、ニュージーランドの保育施設で補助教員として勤務した発表者の経験を基に、家庭科において「親世代性」を育む際に求められる観点について検討することを目的とする。

    2.ニュージーランドの保育実践
       発表者はニュージーランドの保育施設で約半年間補助教員として勤務した。そこで、保育者が多く用いていた言葉は、「探求(Exploration)」と「学びの機会(Learning Opportunity)」という2つの言葉であった。この保育施設で重視されていたのは、子ども達に経験させ、探求心の生起を持ち、そこから新たな学びへ繋げていこうとする観点であった。例えば、保育者は、砂場で泥水のついたスコップを舐めたり、砂利を口に入れたりしている2歳児を見ながら重要な「学びの機会」になっていることを発表者に伝えた。おそらく、わが国の保育施設では止められるであろう子どもの行為が発表者の勤務した保育施設では許容されていたのである。勤務当初、このような光景に対して発表者はニュージーランドの子育てにおける大胆さとしてとらえていた。しかしながら、保育経験を重ねる中で、上述したニュージーランドの子育て観(保育観)が「ゆとり」を持ったもの、或いは、一定の振れ幅(柔軟性)を持ったものとして理解するようになると共に、わが国の保育においても示唆的な観点であると考えるようになった。

    3.考察
       ニュージーランドの保育経験を基に日本の保育を見た際、わが国の保育においては「危ない」、「汚い」、或いは、「みっともない」といった「安全第一主義」を背景に、知識偏重型の保育観が拡がっているような認識を抱いた。これらわが国で見受けられる保育観に対してニュージーランドの保育観は、子どもの「主体性」を大切にしながら、一定の柔軟性を持っていることが示された。このようなニュージーランドの保育に見られる「スロー保育」とも言える概念は、わが国の保育に対して示唆的な観点となり得ると共に、家庭科内での保育分野においても新たな「親世代性」を育む授業展開に繋がるものと考える。

    引用文献
    伊藤葉子. (2006). 中・高校生の親準備性の発達と保育体験学習. 風間書房.
    金田利子(編). (2003). 育てられている時代に育てることを学ぶこと. 新読書社.
    谷向みつえ. (2010). 子育て広場における臨床心理学実習の実践報告: 大学生の親性教育の試みについて. 総合福祉科学研究, 1, 243-248.
  • ナラティブの記述分析から
    叶内 茜, 倉持 清美, 金子 京子
    セッションID: B3-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年,子どもの自尊感情が低いことが指摘されており,学校における自尊感情を育む取り組みの充実が重視されている。本研究では,家庭科における自尊感情向上のための一方法として,幼児とのふれあい体験学習に着目する。ふれあい体験では,中学生が幼児とのかかわりを通して幼児に頼られる経験をすることで,中学生が自己をかけがえのない存在,価値ある存在として受け止めることができ,自尊感情の向上につながるのではないかと考えられる。本研究では,ふれあい体験後に書いた生徒のナラティブを読み取ることで,自尊感情上位群と下位群の生徒のふれあい体験に対する幼児へのかかわり方や感情の変化を明らかにすることを目的とする。
    方法 中学校技術・家庭「家庭分野」の「幼児の生活と家族」の位置づけで幼児とのふれあい体験を実施した。埼玉県内の公立中学校第3学年の1クラス38名を対象とし,家庭科教諭の協力のもと事前に質問紙調査を行い,自尊感情上位群(上位25%)と下位群(下位25%)を抽出し,ふれあい体験後のナラティブ記述の比較をおこなった。ふれあい体験は,中学校近隣の私立幼稚園でおこなった。ふれあい体験は全体で2時間半程度,活動の流れは次のとおりである。場面1:園に到着 → 場面2:あいさつ,ペア決め(中学生と5歳児がペアをつくる) → 場面3:園の先生が用意したゲーム → 場面4:中学生が用意してきた食育活動(代表班による食育クイズ・食育劇) → 場面5:ペアの幼児と班で昼食をとる → 場面6:自由遊び(ペアの幼児と自由に遊ぶ) → 場面7:お別れのあいさつ,園を出る。 ふれあい体験終了後,最初の家庭科の授業で生徒にナラティブを書かせ,ナラティブを上記の場面1~場面7の各場面ごとに区切り,カテゴリー分けをして分析をおこなった。
    結果 ナラティブは一文ごとにカテゴリー分けをおこない,次のA~Fの大カテゴリーに分けられた。「A 活動の流れ・行動に関する記述」「B 幼児の行動・反応に関する記述」「C 幼児の気持ちに関する記述」「D 中学生自身の気持ちに関する記述」「E ふれあい体験を通じた中学生の気づきに関する記述」「F 園の先生の行動に関する記述」。今回は中学生の自尊感情に焦点をあてたため,これらの中から中学生の気づきや心情の変化に関するD,Eを中心にナラティブを読み取った。ナラティブの下位カテゴリーは次の4つに分けられた。1.「嬉しかった」「楽しかった」など,中学生の肯定的感情に関するもの。2.「不安だった」「悲しかった」「嫌だった」など,中学生の否定的な感情に関するもの。3.「階段の段差は小さく,幼稚園児にものぼりやすいようになっているんだなと思った」など,ふれあい体験を通して得られた気づきに関するもの。4.「(幼児は)明るくてうらやましい」など,気づきから生じた中学生の感情に関するもの。これらの下位カテゴリー数を場面ごとにまとめたところ,自尊感情上位群と下位群では,次のような違いがみられた。
    ・場面1では,上位群はふれあい体験に対して「楽しみ」などといった肯定的な記述が多いのに対し,下位群は「小さい子があまり好きではない」「嫌だなぁ」などといった否定的な感情が目立った。
    ・全体的な否定的感情の記述について,上位群では「木のぼりときいて危ないし,(幼児が)落ちたらどうしよう」など,幼児のことに関する記述が中心であったが,下位群では「自分のせいで,みんなに迷わくをかけないようにという心配心」といったように,中学生自身に関する気持ちの記述が中心であった。
    ・下位群では,ふれあい体験を通して「誰にでもちゃんと悪いところは悪いっていえるところとか正直うらやましかった」など,自分の気持ちを素直に表現できる自由な幼児の行動を見て感じた幼児への羨ましさや,自分もこうしたいといった願望がナラティブの記述に表れているのが特徴的であった。
    ・場面7では,上位群,下位群のいずれも「また来たい」「嬉しかった」といった肯定的感情が多くみられた。
  • 中学校技術・家庭科における実践から
    堀内 かおる, 花岡 美紀, 小笠原 由紀, 太田 ひとみ
    セッションID: B3-3
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
      中学校技術・家庭科家庭分野の「A家族・家庭と子どもの成長」は、家庭分野の導入として、ガイダンスの位置づけとすることになっている。しかしこの内容に含まれている「自分の成長と家族とのかかわり」は、中学校入学当初のみならず、家庭分野の学習を通して生徒に見つめさせていきたい内容である。中学生の時期に自立の概念をとらえ、今後の自分の人生を展望することは極めて重要であり、キャリア教育の視点も加味しつつ、家庭科学習との関わりで自らの成長を振り返る契機としたいと考えた。以上の授業観に基づき、中学生が自らの成長を家族との関わりを可視化することを通して考える授業を設定し、その効果と課題を明らかにすることを目的として、「絵本」を教材とした授業実践とその分析・考察を試みた。
    【方法】
     2012年10月に、国立大学附属K中学校第1学年4クラスの生徒を対象として、家族と家庭生活に関する内容の絵本を教材とした授業を試みた。授業は2時間続きで行われ、1時間目には本授業のために制作されたオリジナルのデジタル絵本『「なりたい自分」になるために必要なこと』を、2時間目には、レイフ・クリスチャンソン:文(にいもんじまさあき:訳)、ディック・ステンベリ:絵の『じぶん』(岩崎書店、1997年)という絵本を使用し、他者とのかかわりの中で、相手意識をもって「自分に何ができるのか」を考えるように促した。 授業の中では、現在に至るまでの、家族とのかかわりに着目させることとし、自分の成長の背景には、家族をはじめとする身近な大人たちの存在が不可欠であり、そうした人々との関わりを通して今の「自分」を形成してきたのだということに生徒たちが気づくための手立てを考え、授業の内容が組み立てられた。本授業における生徒の気づきをワークシートや授業後の感想から読み取り、分析を行った。
    【結果と考察】
    1.生徒にとっての「自立」: 1時間目の授業の冒頭で、教師は「自立」のイメージマップを生徒たちに書かせた。その結果、「自立」という言葉から直接枝分かれして書かれている言葉は、「一人暮らし」「視野が広がる」「自分の意思をもつ」「自分の力で生活する」ということであった。自立には、生活的な自立、精神的自立、経済的自立があることをとらえていることが分かった。しかし、「自分の力で生活する」と言う言葉から派生しているのは、「自分のことは自分でやる」ということであって、「一人でできるようになる」ということが自立の根本的な考え方として捉えられていた。「誰かと共に助け合って生活する」「誰かのために役立つ自分になる」という「共生」の概念は、この「自立」のマップからは見取ることができなかった。
    2.「共生」というコンセプトについての生徒の理解: 1時間目の授業では、「自立」の概念に続いて、「共生」の意味についても生徒に提示している。「共生」の概念を押さえたうえで、2時間目の「いまの自分・これからの自分と家族とのかかわりについて考えてみよう」という小題材へと学習は展開した。「自分の成長と家族とのかかわり年表」は、自分の成長とともに家族それぞれも年齢を重ねていくということを可視化させる手がかりとなり、家族とのかかわりを見つめ直した様子がうかがえた。
    3.教材としての絵本の効果: 授業後のアンケートにより、生徒たちの絵本教材に対する意識を把握したところ、約4割の者が絵本に対する関心を持っていた。しかしほぼ同率で「あまり関心がない」と回答する者もおり、授業にあたり、絵本それ自体に対しては、自発的な興味・関心を抱いている学習者ではなかった。しかし、それにもかかわらず、今回使用したデジタル絵本に対しては肯定的な評価が得られ、約6割が「わかりやすかった」と回答し、約4割が「いまの自分のことを考える手がかりになった」「文章(言葉)がよかった」と回答している。「将来の自分のことを考える手がかりになった」という回答も約4割見られ、これからの自分の生活を考える視点を持つきっかけになったと推察された。
  • 石澤 美代子, 得丸 定子
    セッションID: B3-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    【目的】食育基本法(平成17年)や新小学校学習指導要領解説(平成22年)等において食育の重要性がうたわれている。この現状下、筆者らはその知識習得や日常の食生活への波及効果を期待し「食育すごろくゲーム」を開発し、平成23年1月、小学校6年生家庭科の授業において実践し好評を得た(第54回本大会にて報告)。今回、実施から1年以上経過した時の本教材の影響や印象を調べるため、中学1年生となった対象児童(以降生徒)にアンケートを行ったので、報告する。
    【方法】調査時期は平成24年3月で、授業実践から1年1ヶ月が経過していた。対象者は、授業実施小学校から全児童が進学する長野県T中学校の1年生72名のうち、他小学校から転入した生徒や授業当日欠席だった生徒を除く、62名(男子29、女子33名)である。調査は、授業実施の記憶やその内容、授業実施後食事について変わったことがあるか等6項目からなる記名式アンケートである。なお、アンケートの配布・回収は生徒の担任が担当し、当時の授業等について全く触れずに行ってもらった。分析は、集計数については独立性の検定を、自由記述についてはテキストマイニングにより行った。
    【結果】「去年1月に『食育すごろくゲーム』を使った授業を覚えていますか」の問いに、「覚えている」との回答は42名(67.7%)で、男子15名(51.7%)、女子27名(81.8%)であり、女子の方が有意(p<0.05)に多く覚えていた。「強く印象に残っているものは何ですか」の問いには、40名(男子15、女子25名)が記述し、最多ワードは「コマ(食品サンプル)」であった。「今でも覚えている知識は何か」の問いには、36名(男子15、女子21名)が記述し、最多ワードは「特にない」であり、次いで「三色群」であった。「またやるとしたら誰とやりたいか」の問いでは、複数回答で、「友だち」が33名(男子14、女子19名)、次いで「きょうだい」が11名(男子2、女子9名)、以下、祖父3名、祖母3名、母2名等と続いた。「授業をきっかけに食事のことで変わったことがあるか」の問いには、複数回答で、「1日三食食べるようにし欠食しない」が17名(男子6、女子11名)、「今までより料理を手伝うようにした」が16名(男子5、女子11名)、「家族と食事について話すことが増えた」が15名(男子7、女子8名)、「食事のことで注意されることが減った」が14名(男子7、女子7名)、以下「三色の群を気にして食べるようにした」、「今までより栄養や食事のことを気にするようになった」「今までより郷土食に興味がでてきた」「(ツールのひとつである)くりだし六角形に興味が出てきた」であった。
    【まとめと考察】1年以上経過したが、本教材を使った授業について67.7%の生徒が記憶しており、女子の方が有意に多かった。印象に残っていることは「コマ(食品サンプル)」であった。覚えている知識は「三色群(食品を三つの色の群に分けること)」が多くあったが、「特にない」との記述も多くあり、授業や教材を覚えてはいるが知識として習得されていない可能性が示唆された。また、授業をきっかけに食意識が向上したり、食についての家族との会話や料理手伝い等が増えたとの回答が多く、本教材による食生活への波及効果が示唆された。
  • ―絵本を用いた配膳に関する学習とその効果―
    葭内 ありさ, 石原 愛子
    セッションID: B3-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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      本実践は、高校家庭科に於いて食領域の学習である配膳の方法を、保育領域の教材制作を用いながら学習し、さらに小学校・幼稚園と学校種を超えた連携授業として試みたものである。
      近年、正しい食事の配膳の理解に乏しい生徒が多いことが調理実習時の配膳の様子からも見受けられる。また、和洋中の食器の区別をせずに用いようとする生徒もいる。食生活の文化に関心を持ち、配膳を生活文化として継承していくためには、家庭のみならず学校教育での実践が必要である。このため、本校高校家庭科の授業では、生徒の配膳に対する意識を高め、正しい配膳方法を楽しんで習得するために、絵本制作を用いた実践を行い、その効果を検証した。  
      方法は、高校1年次夏から2年次冬にかけての1年間余りにわたって授業実践を行い、その前後に学習内容がどのように定着したか分析した。まず、1年次の生徒の夏休みの課題として、白無地の絵本を配布し、和食の正しい配膳についての絵本制作を行った。その後正しい配膳がどの程度理解できているかを調査した。絵本制作は、家庭科の保育分野の教材として長年扱われており、子どもへの理解を深めるために、布絵本の制作等が行われてきた。しかし、ここでは、特に配膳方法に注目した絵本を制作することで、生徒自身が工夫し考える中での食分野の学習の定着を主眼とした。  
      さらに、この学習はその後2年次に続く保育分野の学習の導入としても構想した。絵本は、読み手を幼児と設定し、色彩豊かなもの、立体化したもの、くり抜いたもの、マグネットや布、マジックテープを用いたものなど、生徒それぞれの工夫と発想を生かした表現力豊かな作品が出来上がった。 また、絵本という素材をより効果的な授業題材とするために、附属校間の連携した取り組みを行った。附属小学校に依頼し、高校生が制作した絵本を、小学5年生に読んで貰い、それぞれの絵本に感想を書き、高校生へのフィードバックとした。さらに、小学生4人グループで1冊の絵本を、「幼児が興味をもてるか、わかりやすいか」、をポイントに選んで貰った。この試みからは、時に高校生の視点と小学生の視点が異なることがわかった。この際、事前に小学生にも高校生と同様の配膳知識の調査を行ったところ、給食で用いている、主菜副菜兼用皿の盛りつけの影響と見られる配膳方法を提示する児童もおり、給食での配膳指導が児童の知識に影響を与えている様子がわかった。
       高校2年次になってから、附属の保育所や幼稚園訪問実習を行う際に、制作した絵本を持参し、5歳児へ絵本の読み聞かせを行った。保育分野の学習の後、経験をふまえて、再度高校生は8人グループで配膳絵本の絵コンテを作成した。ここにおいては、観察した幼児を念頭に置き、配膳が幼児にもわかりやすく、読み聞かせに適した絵本の制作を目指した。この授業は、最初の絵本制作から1年以上が経過している。そこで、再度同じ高校生に配膳方法の定着の調査を行ったところ、約7割弱の生徒が正しい配膳を覚えていた。一方、教師からの座学のみでの配膳方法の学習を行った学年では、学習後3ヶ月経過した時点での調査でも定着率は低かった。
       このように、絵本制作を通した配膳学習は有効であることが認められた。しかし、絵本制作を行っても1年後に配膳が身についていない生徒も認められる為、家庭での日々の実践の促しや、学校でのさらなる反復学習が必要と思われる。
       なお、本研究は、お茶の水女子大学附属小学校・高校石原講師との共同研究として実施された。
  • 伊藤 葉子, 中山 節子
    セッションID: B4-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
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    【研究の背景と目的】【BR】ESD (Education for Sustainable Development)、すなわち持続可能な開発のための教育に関しては、様々な活動を進められており、ESD実践も蓄積されつつある。この活動のなかで、現職の教員に対し、ESDを指導する際に必要な技術・知識を研修・養成することは緊急の課題だと言える。そこで、 本研究では、家庭科のおけるESD実践の促進のために、ESDが目指す「子どもたちに育みたい力」をどのような「学びの手法」で実践していくのかという実践的な見地から、ESD指導の専門性の向上を目指す現職教員への教育プログラムを開発し、その教育的効果を検証することを目的とする。【BR】【方法】【BR】国立教育政策研究所が提示しているチェックシート型アプローチの方法を援用し、NPO法人持続可能な開発のための教育の10年推進会議(ESD―J)が示しているESDが大切にしている「育みたい力」に示されている内容に依拠した現職小学校教員向けの教育プログラムを開発した。具体的には、13の「育みたい力」を示した教師用教材を用いた指導案作成→相互評価→指導案改善というプロセスが中心となっている。【BR】13の「育みたい力」は、自分で感じ考える力、経験・実体験をもとに感覚的に考える力、自分・家庭・学校など身近なレベルで課題をみつけ考える力、多様な価値観をみとめ尊重する力、相手の気持ちや考えに共感する力、物事にとらわれずに柔軟に発想する力、具体的な解決方法を生み出す力、現在の行動の結果、起こることを見通す力、自分が望む社会を思い描く力、自ら実践する力、他者と協力して物事を進める力、物事を多角的にみる力、事実や証拠に基づいて判断する力である。このプログラムの教育的効果については、教師用教材・指導案・参加者の感想をもとに分析した。【BR】プログラムの参加者は、平成24年8月に実施した千葉県教育委員会免許法認定講習「小学校家庭科教育法」の受講生96名で、本プログラムは講習の一部に組み込まれている。なお、ここ数年間に実施した教育学部で学ぶ学生(小学校教員養成課程)向けの教育プログラムの成果の集約を行った上で、比較考察もおこなった。【BR】【結果】【BR】まず、本プログラムの参加者は、食分野で指導案を作成し、次に、各自が作成した指導案をESDが指標とする13項目の「子どもたちに育みたい力」について自己評価を行い、グループで意見交換をして相互評価をしてもらい、各自の指導案を改善した。最後に再度、教師用教材を用いて、自己評価を行った。【BR】最初の自己評価では、「他者と協力して物事を進める力」「自ら実践する力」「経験・実体験をもとに感覚的に考える力」を選んだ参加者が多かった。最後の自己評価では、「多様な価値観をみとめ、尊重する力」等の項目を選択する参加者が増加した。指導案の改善、参加者の感想も含めて、このプログラムの教育的効果の主なものは、以下のようにまとめられる。【BR】1.「子どもたちに育みたい力」という抽象的な指標と、実際の授業を結び付ける作業によって、授業を学び手側からとらえることができる【BR】2.グループでの意見交換による相互評価によって、各自の授業に対して客観性が生まれ、さらに自己評価を繰り返すことにより、自分の授業をESDという観点も加えて、見つめ直す機会となる【BR】3.教員各自がおこなっている授業とESDを結び付けることで、ESDへの理解が高まり、ESD指導の専門性の向上が認められる【BR】 一方、自分が望む社会を思い描く力や、物事にとらわれずに柔軟に発想する力は2回の自己評価でも、指標とする項目として選ばれなかったことから、実践に結びつけにくい項目であると言える。項目間の偏りに関しては、小学校という発達段階の適時性という点も含めて検討課題だと考える。さらに、教育学部生への同様の教育プログラムの教育的効果との比較考察により、経験知の違いを考慮した上での改善の方向性も示唆された。
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