1) 家計収入と支出の相関関係を同一属性分類基準で分割単位数を異にして算出した結果は, 全個人相関係数が最も低く, 大分割単位になるほど相関係数は高くなり, 一種の疑似相関を生じる.その代わりに, 相関係数の有意性検定の標本数は単位数であるために検定基準は厳しくなる.
2) 家計収入と支出の相関関係を異なる属性分類基準で算出した場合, 収入階級別では, 階級内収入レンジ (分布幅) は収入分割の間隔幅に制約されているから, 収入と相関のある支出項目の分散も小 (等質的) であり, そのために階級内相関は小さくなり (前ページ脚注を参照), 逆に各収入階級の平均値のレンジは, 収入分割の間隔が存在するから分散が大きくなり (異質的), ために階級間相関係数は大きくなる.
地方別では, 各地方内は低高収入世帯を含み (異質的), そのために地方内相関は大となり, 各地方の収入平均値は近接している (等質的) ために, 地方間相関係数は小さくなる.
3) 1), 2) の算出数値にもとついて, 個々単位内・単位間の分布を5%危険率の等確率長円で図示した.分割の大小, 属性分類基準の相違により相関係数が異なって算出される理由が図解できた.
4) 原データの大半が分布している平均値周辺データを標本に採用し, 極低・高収入データを削除すると, 集団は等質的になり, データの削除数は少なくても, 算出相関係数は全データを標本に採用しだ場合よりもかなり小さくなる (前ページ脚注参照).
分散が大きい異質的集団において, 変数間の相関係数が大きく算出され, 分散の小さい等質的集団において, 変数間の相関係数が小さく算出されるのは, 相関係数算出式に由来することで普遍的であると思う.しかし, 生活価値観の多様化に伴って, 消費実態にかなった分析をおこなうためには, 算出式にあてはめるのに先立って, 事宜に応じたデータの多様な属性分類と分割規模の選択が必要であると考える.
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