日本家政学会誌
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40 巻, 10 号
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  • -山陰農村の場合-
    田結庄 順子
    1989 年 40 巻 10 号 p. 855-868
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    山陰の農村地域における家族再生の課題とかかわらせ, 家庭の教育力のあり方を, 家族に民主主義的で平等な人間関係を確立するという視点から実態調査で得られたデータに基づき検討したところ, 次のような知見を得た.
    1) 家庭生活を家族全員でつくりあげる視点にてらして, 子どもの家事労働への参加度を分析したところ, 性によりその到達度に差がみられ, 家庭教育を家庭経営学や家庭科教育学の視点でとらえ直すことが必要となる.
    2) 父母の家事・育児, 子育ての意識は考え方の次元では「家族責任・家庭生活は両性で平等に」と父母とも多くが意識しているが, 日常のしつけの場面では, 性による役割固定を認める意見をもつ人が多い.子どものうちから性による固定的な役割撤廃の教育を, 学校のみならず家庭でも意識して実施するための具体的な指針を, 地域の実態に合わせ, 家庭経営学, 家庭科教育学関係者が作成しなければならない.
    3) 父母のしつけ不安は「親の影響力の低下」, 「親自身が重要視していない」という形であらわれ, しつけの自信のなさと責任を, 学校教育への依存, 学校の先生への依存で補完する傾向にある.
    4) 子どもと親との関係において, 母親の就労は母に対して「働く人」という認識をもたせるまでには至らず, 家庭教育における, 人間が働く意味を考える労働観の育成の教育が必要となる.
    5) 子どもの親に対する評価たは父親と母親では大幅なずれがみられ, 親と子のコミュニケーションの時間の結果とも関連し, 家族の再生のためには親の労働時間の短縮や休暇の増加など, 家族をとりまいている生活の条件を大幅に変えない限りは保障されないという, 新たな課題が指摘される.
  • 市販緑茶の料理の素材としての利用
    桑野 和民, 酒巻 千波, 三田村 敏男
    1989 年 40 巻 10 号 p. 869-875
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    嗜好飲料として定着している緑茶の, 優れた生理作用や栄養素を有効に利用するために, 市販緑茶を料理の素材として直接利用することを検討した.すなわち, 嗜好性, 栄養素や食物繊維の供給量, また, ラットの成長や飼料効率等について検討し, 以下の結果を得た.
    すり鉢であたり, 10メッシュのフルイを通した煎茶を, 素材の一つとして使用した料理4点を作り, 本学学生 23名による嗜好度調査を行った結果, 味付けを好みに合わせれば, 本提案は十分に可能であると考えられた.また, 種々の料理に, 素材, 装飾として煎茶を利用して試食した結果, 1人前の煎茶使用量は1~59が適当であったことから, 1日あたり59の直接摂取は無理なく可能であると考えられた.
    煎茶5gの直接摂取による栄養素供給量を算出した結果, 成人男子の栄養所要量に対して, カルシウム4%, 鉄10%, ビタミンA, B2, ナイアシンおよびCが, それぞれ18, 8.8, 14および25%, また, ビタミンE も, 米国の所要量の28~36%供給できることがわかった.各種煎茶27種の総食物繊維定量値の平均は, 30.5%であった.したがって, 上記と同じ5gの直接摂取により, 1.53g, 日本人の食物繊維摂取量の8.2%を供給できることがわかった.
    ラットに煎茶粉末を1%および5%添加した飼料を与えて行った長期 (6ヵ月) 飼育試験の結果, 成長や飼料効率に悪影響はなかった.解剖所見や血液の生化学試験による確認も必要であるが, ヒトが長期にわたり58程度の煎茶を直接摂取したとしても, とくに問題はないと考えられた.
  • 粟津原 宏子
    1989 年 40 巻 10 号 p. 877-882
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    全卵の泡立ち性について基礎的実験を行い, 卵白および卵黄の泡立ち性と比較考察した.
    全卵は卵黄と同様, 起泡力は高いが, 流動性のある安定性の低い泡沫を形成した.
    全卵および卵黄では卵白に比べて試料濃度やpH, 塩化ナトリウム添加量による泡立ち性への影響が大きく, またこれらの条件変化による泡立ち性の変化において全卵と卵黄の間にいくつかの類似点がみられた.
    全卵の泡立ち性に対するコーン油添加の影響は卵液濃度によって異なるが, 少量の油の存在で著しく泡立ち性が阻害される卵白に比べて, その影響は小さいことが認められ, これは位相差顕微鏡により卵黄の乳化性によるものであることが観察された.
    以上の結果から, 全卵の泡立ち性において起泡力の主体となるのは, 卵白タンパク質よりもむしろ卵黄タンパク質であろうと推察される.
  • 松本 仲子, 加藤 尚巳, 甲田 道子, 菅原 龍幸
    1989 年 40 巻 10 号 p. 883-889
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    抽出温度, 時間を変えてこんぶだし汁を調製し, 溶出成分を分析するとともに, 官能検査を行って成分と呈味の関係を検討した結果は, 次のように要約された.
    1) 抽出時間が30~60分の間では, 抽出温度が高いほど, また抽出時間が長いほど溶出する成分量が増加した.
    2) だし汁の成分と官能検査の総合評価値の関係については, だし汁中グルタミン酸量が30mg/100ml前後のものが好まれ, 10mg/100ml以下のものではうま味不足として好まれず, 50mg/100mlを越えるものではうま味が強いとして好まれなかった.
    3) でき上がりだし汁量に対して4%重量のこんぶを用いてだし汁をとった場合, 高い評価を得ただし汁は10℃60分間, 10→100℃5分間, 100℃5分間の抽出条件によったものであった.
    4) だし汁中のグルタミン酸と5'-ヌクレオチドとの間には相乗効果は期待できなかった.
  • 煮干しだし汁に関する研究 (第1報)
    平田 裕子, 脇田 美佳, 長野 美根, 畑江 敬子, 島田 淳子
    1989 年 40 巻 10 号 p. 891-895
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    沸騰継続時間, 浸水時間の異なる3%煮干しだし汁を調製し官能検査を行った結果, 沸騰継続時間10~30分あるいは浸水時間2時間で嗜好性の高いだし汁が得られることが明らかになった.全エキス分, 含N化合物, 有機酸のだし汁中への溶出は, 沸騰継続時間30~60分, 浸水時間2時間まで増加し, その後一定となり, この結果は官能検査の結果とよく一致した.だし汁中の食塩量は沸騰継続時間, 浸水時間によらずほぼ一定であった.
  • 炊飯における蒸らし中の温度の影響
    貝沼 やす子, 江間 章子
    1989 年 40 巻 10 号 p. 897-904
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 厚手鍋, 薄手鍋ともに加熱を延長し蒸らしを短縮した飯は, 最終温度が高くなり, 飯層中心部と空間部の温度差は小さくなった。しかし薄手鍋では消火後の温度低下が厚手鍋に比べ急激であり, 飯層中心部と空間部の温度差も大きく, 空間部の極端な温度低下が目立った.
    2) 蒸らし中の鍋内重量の変化は, 厚手鍋の場合は蒸らし時間の延長に伴い重量が減少する傾向があり, 蒸らし中の水分の蒸発のためと考えられた.しかし薄手鍋の場合は蒸らし中の重量減少はほとんど測定されなかった.
    3) 赤外線水分計による脱水率の測定結果は, 光沢計によるつやの測定値と対応しており, 厚手鍋, 薄手鍋ともに蒸らしのない飯は高い脱水率を示し, つやの値も高かった。また, 薄手鍋の蒸らしの長い飯は鍋内の部位間で脱水率に差が生じ, もどり水による影響がみられた.
    4) 飯のかたさは厚手鍋の場合, 加熱延長によりややかたくなるが15分間の蒸らしにより緩和される傾向があった。薄手鍋の場合は加熱延長のない飯あるいは短い飯がややかたく, 98℃以上におくときの環境条件が十分ではなかったことが考えられた.飯の付着性は厚手鍋, 薄手鍋ともに, 加熱を延長し蒸らしのない飯は強く現れ, 非常に扱いにくい飯であったが, 蒸らすことにより適度な付着性になると思われた。また, 薄手鍋の加熱延長10分, 蒸らし5分の飯は厚手鍋の蒸らし15分の飯と, かたさ, 付着性ともにほぼ同値であり, 興味深い結果であった.
    5) 厚手鍋, 薄手鍋それぞれにおいて好ましいと判断された飯の鍋内の温度変化を比較したところ, 最終温度が飯層中心部で93℃, 鍋内空間部で86~88℃とほぼ等しかった.以上より, 鍋の保温性を考慮した上で, 鍋内をこの温度に近い状態に導くように加熱時間と蒸らし時間を設定することが炊飯の最終段階として望ましいと考えられた.
  • -人間ドック受診者の朝食内容を通して-
    渡辺 満利子, 久我 昌子, 山岡 和枝
    1989 年 40 巻 10 号 p. 905-912
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    料理・食品および嗜好を要素として構成される朝食の「食事パターン」と食習慣および健康状態との関連性を探索し, 次の結果を得た.
    1) 朝食の「食事パターン」は食事として充実度の高いものから低いものまで和風充実型, 洋風充実型, 洋風偏食型, 辛党偏食型の4タイプに分類された.
    2) 朝食の「食事パターン」と属性および食環境との関連性では, 20~30歳代で洋風偏食型が多く, 50歳代で和風充実型が多かった.また, 孤食の場合は家族と共に食べる場合に比し, 辛党偏食型が多かった.
    3) 朝食の「食事パターン」と食行動との関連性では, 間食, 2回食, 食事時刻の不規則性, 21時以降の飲食, 飲酒回数が多い, 食べる速度が速い, 食べる量が多い等の場合に和, 洋とも充実型が少なく辛党偏食型が多かった.一方, 食事づくりを毎日するものには辛党偏食型が少なく, 洋風充実型が多い傾向が認められた.
    4) 朝食の「食事パターン」と食意識との関連性では, 食生活の満足度が高い, 食事への配慮をしている, 食事に対する自己評価が高い場合に和, 洋とも充実型が多かった.
    5) 朝食の「食事パターン」と臨床データとの関連性では, 有意な関連性は認められなかった.
    6) 朝食の「食事パターン」と運動の習慣との関連性では, 習慣のある場合に和, 洋とも充実型が多い傾向を示した.
    以上より朝食の「食事パターン」は食習慣を評価する尺度として有用であることが示唆された.朝食の「食事パターン」を要素とする栄養教育は今後の社会構造の変化にも対応することが可能であり, 従来からの栄養素を要素とする方法に比較し, より実践性を高める方法として有効であろうと考えられる.
  • 漂白剤によるセルロースの劣化
    大浦 律子
    1989 年 40 巻 10 号 p. 913-918
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    The degradation of cellulose accompanied by bleaching was examined at various levels of pH using cellophane and tea-dyed cellophane. Sodium percarbonate was used as a bleaching agent and sodium hypochlorite was also used for comparison. The degree of degradation of cellulose was determined by measuring the viscosity of bleached cellophane in cuprammonium solution.
    The main results obtained are as follows.
    1) The degree of degradation of cellulose accompanied by bleaching the cellophane with sodium percarbonate was lower than that with sodium hypochlorite.
    This seems to come from the difference in oxidation-reduction potential of the two bleaching agents.
    2) The curve for the degree of degradation of cellulose and pH of the aqueous solution of sodium percarbonate showed a maximum at pH 11.
    3) The rates of decoloration of aqueous extracts from tea and of the tea-dyed cellophane were found to be greatest at pH 11.5.
  • 古松 弥生, 岡田 宣子, 松山 容子, 有馬 澄子
    1989 年 40 巻 10 号 p. 919-925
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    成人女子の体幹の形状特性を, 年齢的変化に着目しながら類型的に把握することを目的としている。工技院の体格調査資料 (484名) を用いて主成分分析を行うことにより, 主成分を代表する計測項目を選定し, クラスター分析を行い体型の類型化を試みた.
    1) 得られた主成分 (Table1) は第1主成分としてはサイズファクター, 第2主成分としては体幹部の厚みに対する肩部の幅のプロポーション, 第3主成分としては体幹の丈と肩部の幅のプロポーション, 第4主成分としては肩部の傾斜度, 第5主成分としては体幹上部の丈と下部の丈とのプロポーションと解釈された.形態特徴を表すこれらの主成分は年齢が加わってもあまり変化しない.しかし, 主成分へのかかわりは年齢により相違すると考えられる.
    2) 計測項目・示数項目の検討から, 体幹の厚みを表す腰部や胸部の矢状径, および体幹の太さを表す胸囲・胴囲などの周径項目は, 加齢とともに増加傾向を示し, 体幹の厚み・太さが著しく増加し, 腰囲/胴囲・腹囲/胴囲などの年齢的変化 (Fig.1, Table4) から, ずん胴型へ移行していることが確認された.
    3) 体幹の形状の情報を表す主成分に強いかかわりをもつ項目として, 胸囲・背肩幅・背丈・B.N.P.-W.L.・W.L-座面・肩傾斜の6項目を選定し, クラスター分析により体型の類型化を行った.その結果12個のクラスターが得られ, 年齢グループ別の分析でもほぼ同様なクラスターが得られた (Fig.2, Fig.4) ことから, クラスターそれぞれは体型の個体差を表す類型であると判断される.一方, 各クラスターの身体部位の計測値 (Table5) や出現率 (Fig.3) には年齢の影響がみられた.これらは, 成人期においては体型の個体的特徴は年齢を越えて持続すること, しかし年齢の影響は同一類型でも具体的なサイズや寸法を変化させ, さらに各類型の出現頻度の変化を引き起こしていることを明示するものである.
  • 山田 幸二, 水野 時子
    1989 年 40 巻 10 号 p. 927-930
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    コレステロール負荷ラットの血漿コレステロール濃度に及ぼす摂取タンパク質の種類と含量 (7%と20%) の違いの影響をカゼイン, 分離大豆タンパク質, 卵アルブミン, 小麦グルテン, 米タンパク質, ゼラチン, メチオニン添加カゼイン, メチオニン添加分離大豆タンパク質をタンパク質源として検討した.
    成長は摂取タンパク質7%で阻害されたが, 20%ではゼラチンを除く他のタンパク質では改善された.
    血漿コレステロール濃度は摂取タンパク質含量の上昇によって, カゼイン, 分離大豆タンパク質, ゼラチン, 小麦グルテンでは低下したが卵アルブミン, 米タンパク質, メチオニン添加カゼインでは上昇した.摂取タンパク質含量の増加によって, 血漿HDL-コレステロール濃度は上昇し, 肝臓1gあたりのコレステロール含量は低下した.
  • 羊毛, ナイロン, 綿, およびポリエステルから, すすぎ液中に脱離してきた界面活性剤量
    木下 英明
    1989 年 40 巻 10 号 p. 931-934
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    実用的な条件に類似した程度に界面活性剤を吸着した布をすすいだとき, 羊毛からはSDS, ヘキサデシル硫酸ナトリウム, ラウリン酸ナトリウムはほとんど脱離せず, テトラデシルおよびヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩も多くは脱離しなかった.トリトンx-100はほとんど脱離した.ナイロンからはこれらの界面活性剤は25~50%が脱離し, 綿からは40~70%が, ポリエステルからは, ほぼ100%が脱離した.
    SDSあるいはラウリン酸ナトリウムを種々の量, 吸着した布をすすいだときに脱離してくる界面活性剤量は, 吸着量の多い布からより多く脱離してくるが, 羊毛では1gあたり7~8mg以下の吸着量の布からは, すすいでもほとんど界面活性剤は脱離せず, ナイロンでは1g あたり1~1.5mg以下の吸着量の布からは脱離量がより少さくなった.
  • 今井 哲夫, 角田 由美子, 岡村 浩
    1989 年 40 巻 10 号 p. 935-943
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 太田 泰弘
    1989 年 40 巻 10 号 p. 959-963
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
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