以上の結果から次のようなことが明らかになった.
1) 男女がともに被服教育で学びたいと答えたものが多かった内容は, 上手な被服の着方, 既製服の選び方・組合せ方, 服装のデザインや色彩などで, 服装やおしゃれへの関心が高いことがうかがえる.
2) 服装に関して知りたい知識・情報では男女ともに自分に似合う服装の色・形について, 個性的に着こなすための知識を得たいと期待している.
3) コンピュータでは自分の体型や個性に合った服装の色・形など, 被服の美的表現に関した内容を知りたいとする生徒が多いので, このような内容を学べるようなソフトの開発が今後の課題である.
4) 男女別のクロス集計結果では男女差がみられた.被服教育では製作に関して女子は関心を示し学習したいと答えた生徒が多く, 女子の特性として注目したい.一方, 男子は従来の教育課程の影響からか, 女子にくらべて被服製作や洗濯, しまい方, 手入れなどには関心が低い.そこで男女がともに学ぶことのできる内容としては, 自分にとって似合う服装の色・形, 個性的な着こなし方, 既製服の選び方や組合せ方, 衣服の取扱いや手入れなどがあげられ, 男女がともに学びたいと望んでいる傾向のものとして重視したい.
5) タイプ別の特性では, 女子の多いタイプ3は被服教育では学習意欲が旺盛で, 被服の着方, 服の選び方やデザイン・色彩などに関しては強い関心を示し, コンピュータでも自分の体型・個性に合った色・形を知りたい意欲がタイプ中ではいちばん高くみられた.男子の多いタイプ1は, 被服教育では学習意欲はあまりないが, 服装に関しては被服の着方, 自分に似合う個性的な服装の着こなし方に興味をもっているのがうかがえる.
第1報から第3報までを通して高校生の服装と被服教育に関する調査結果をみると, 現代の高校生は服装に対する関心が高く, おしゃれやファッションを楽しみ, よりよく自分を表現しようとしており, 衣服の購買行動においても情報に関心が高く, 感覚的なものを重視している.好きな服装のイメージでは窮屈なものより, ゆったりとした自由な服装を求めている.さらに被服教育で学びたいこと, 服装に関して知りたい知識・情報, コンピュータを使って知りたいことなど幅広い内容について, 学ぶ側の高校生が抱く興味・関心・意見を知ることができ, 今後の被服教育に対する方向をさぐるうえで多くの手がかりを得ることができた.
以上の調査結果から, 今後の男女共学の場合に考えられる被服教育の内容としては, 男女別, タイプ別のまとめにみられる男女の特性からも明らかなように, 男女がともに興味, 関心を示している衣服の選び方や着こなし方, 服装デザイン, 色彩に関するものなど, 消費者教育やデザイン教育に関する内容があげられる.また高校生は自分の体型や個性に合った個性的な着こなし方などに関しての知識・情報を得たいとしており, 被服を美しく装うことで自分をよりよく表現したいと望んでいるので幅広い感性の育成や, 消費者としての自覚や重要さを認識させたいものである.
教育課程の改訂により高等学校の家庭科は生徒の多様な能力・適性, 興味・関心等に応じることができるよう「家庭一般」のほかに新たな科目を設け, その中からすべての生徒に選択履修させることになる.また現行においても家庭科では情報処理に関する新しい科目を設置者が設け, 情報処理に必要な基礎知識を習得させるとともに情報化に対応する教育の充実が図られている.また「食物」, 「被服」, 「家庭経営・住居」などの科目や「服飾デザイン」, 「被服製作」などの専門科目でもコンピュータを使った指導が進められている.デザイン教育や感性教育にコンピュータを手軽な道具として取り入れ, コンピュータ-ラフィックスの学習を行うことは, その効果をあげるうえで有効だと考える.これらは時代の変化に対応した新しい教育環境を少しずつ具体化しているものと思われ, 今回の研究結果をふまえて男女の特性に応じ, 男女がともに学ぶ被服教育の具体的な内容のあり方をさらに追求してゆきたい.
日研究の大要は昭和62年度日本家政学会第39回大会において発表した.
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