バタースポンジケーキの連続圧縮試験の結果に対し, そのレオロジー的特性を示す実験式を導いた.すなわち, 毎回の圧縮で得る応力の最大値を結ぶ曲線を「最大圧縮応力曲線」とよび, 数式モデルを最小二乗法により統計的に求め, その後理論的な解釈を試み, パラメータの値と官能評価とを比較した.
(1) 最大圧縮応力曲線は, 試料および圧縮部位により形状が異なるが, 圧縮回数が増大するほど圧縮応力は指数関数的に低下した.
(2) 最大圧縮応力 (
y) と圧縮回数 (
n) との関係式として求めた,
y=
AnceBnが実験値との適合性がきわめて高かった.パラメータ
Aは「硬さ」,
Bは「変形のしやすさ (もろさ, 砕けやすさ) 」,
Cは「変形に対する抵抗性 (変形回復力, しっとりさ) 」であると解釈できる.
(3)
Aは, バター添加量80%で総じて低い値を示した.
Bは, バター添加量0%で最低値を示し, バター添加量の増大に伴い値が大きくなり, 試料は変形しやすくなった.
Cは
Bと逆の傾向を示し, バター添加量の増大に伴い値は低下し, 変形回復力が弱くなることが示され, バター添加によりスポンジケーキのもろさや砕けやすさを増すことが理論的に説明できた.
(4) 官能評価は, バター添加量80%の試料が最も良かった.この試料のパラメータの値は,
Aが低く,
B,
Cは中間であり, レオロジー的には, 硬さはやわらかめで, もろさ, 砕けやすさおよびしっとりさは中程度であることを示している.
抄録全体を表示