以上の結果から, 家族類型と居住関係の変化 (動態) についてみると, 次のことが指摘できる.
(1) 調査対象期間に家族類型に変化のあったものは半数を超え, 高齢夫婦家族と長系家族に2極化している.
そのなかで子供と同居していた家族から高齢者2人だけの夫婦家族へ変化したものが最も多い.
逆に夫婦家族から子供と同居することになった家族は19家族のうち3家族だけと最も少ない.
(2) 居住関係に変化のあったものは約半数であるが, 子供が親から離れて近居非扶養型や別居非扶養型の居住関係をとるものほうが, 同居非扶養型の居住関係になるものよりも多い.
このように, 富山市におけるこの16年間に, 家族類型は高齢夫婦家族と長系家族に大きく2極化しており, とくに同居家族から高齢夫婦家族に変化していく制合が多く, 明らかに同居指向が下がっているといえる.また, 長子以外の「直系家族」もみられ, その意味では, 富山市のような伝統的直系家族が優越するといわれる地方都市においても, 従来の長子相続型の「直系家族」が絶対的にも相対的にも減少し, 家族関係は流動化, 多様化し, それに伴って居住関係も流動化, 多様化の現象をみせていると思われる.
第2報では, さらに高齢者の居住関係の変化による住生活の安定性と課題に関して, 分析と考察を進めることにしたい.
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