日本家政学会誌
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42 巻, 11 号
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  • 佐藤 真弓
    1991 年 42 巻 11 号 p. 927-936
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    以上, 『家政学雑誌』の1巻~40巻の掲載報文の引用文献について分析を行ったが, 本研究で得られたおもな知見は次のとおりである.
    (1) 引用文献数および1報文あたり引用件数は経年的には増加していること, 雑誌引用と単行本引用では雑誌引用件数が多く, とくに和書雑誌引用件数が多いこと, 全引用件数における『家政学雑誌』引用件数の比率が年代的には漸減傾向にあること, 等の諸点については岡本らと同様の結果が得られた.
    (2) 食物学において洋書雑誌引用の比率が比較的高く, 家族関係学において和書単行本, 大部分の領域で和書雑誌からの引用が多い.
    (4) 引用文献雑誌のなかでは, 年次的にみても, 領域別にみても『家政学雑誌』が最も多い.上位10誌の全体に占める割合は漸増傾向を示す.また, 引用雑誌の種類は年代的に増えながらも, ある一定の主要雑誌に引用が集中する傾向がある.
    (4) 洋書引用率は他雑誌と比較して非常に低いので, 外国への依存という点からみれば家政学の国際的独立性, 国際間の知識の交流という点からみれば孤立性が強いといえよう.
    (5) 雑誌引用率 (全引用文献件数のうち雑誌を引用している比率) について, 図3に示す図書館・清報学における調査結果による科学分類により, 先行文献の比率と比較すると, 家政学全体は技術とほぼ同じ値を示し, 工学に近い値を示す.よって図書館・情報学における科学分類に従った場合, 家政学は技術・工学に似た科学的特質として考えられる応用科学的性格を有すると思われる.
    (6) 雑誌引用率について内部領域をみると, 家政学原論は社会科学よりもさらに低い値を示し, 家族関係学はほぼ社会科学, 食物学, 被服学は技術, 自然科学の値に近い.その他の領域は自然科学と社会科学との中間に位置しているが, 工学に近い.
    (7) 自誌引用率 (引用文献の雑誌件数のなかで, 『家政学雑誌』の論文を引用している比率) について, この比率が高いほど, プラス面として学問としての自律性, あるいはプラス・マイナス両面として自己依存性, マイナス面として孤立性, 閉鎖性が強いと考えると, 他雑誌と比較して『家政学雑誌』は自誌引用率が高く, これも家政学の特質であると考えられる.家政学原論, 家庭経営学・家庭管理学, 家庭経済学, 家政教育学の領域においてとくにこの傾向が強い.
    以上, 本研究においては『家政学雑誌』の報文の引用分析を行い, 他雑誌と比較・検討することによって, 家政学の特質を考察した.このような『家政学雑誌』の報文の引用分析をはじめとして, 客観性・実証性をもつ科学的手法, たとえば, 学問の研究成果・業績に関する質的・量的分析といった科学社会学的手法, また, 学問を情報の一形態としてとらえ, 情報学的手法でを用いて学的特質を把握する, などのような科学的手法で, さらに家政学に関するさまざまな文献を分析することにより, 家政学の特質をつかむことができるのではないかと考える.
  • 佐藤 真弓
    1991 年 42 巻 11 号 p. 937-948
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究においては家政学を形作っているひとつひとつの新知識を, 『家政学雑誌』の報文を単位として量的側面でとらえた.そして報文数を分析することによって家政学の知識量の歴史的推移をとらえてきた.本研究で得られた知見は次のとおりである.
    (1) 1951年~1989年の『家政学雑誌』に掲載された報文数は2,944編であり, 年次的に漸次増加傾向にあり知識量は増加している.1冊の『家政学雑誌』に掲載されている報文数は, 資料, ノート掲載数増加のためか, 減少傾向にある.雑誌は現在月刊誌となっているが, このペースを確立するまでには創刊以来約30年かかっている.
    (2) 食物学, 被服学両領域で全体の報文数の80%以上を占める.食物学, 被服学領域の報文が量的に多いということは40年間全体を通じていえることである.また, とくに食物学の報文数は急激に増加しつつある.
    (3) 研究方法別にみると実験的方法による報文数が約8割と圧倒的に多いが, これは自然科学の性格の強い食物学, 被服学両領域の報文数が多いためと思われる.
    (4) 自然科学系の報文は図を多用し, 社会科学系の報文は表を多用し, 人文科学系の報文は図表を用いることが少ない.
    (5) 領域間の知識量の勢力関係, 年代変化をとらえながら, 知識構造体を図示し, 検討した結果, 食物学, 被服学領域の知識量が家政学の知識量の大部分を占め, 量的意味において家政学全体に多大な影響を与えている現状が認められる.よって家政学という学問の統合性を高めるためにも, この両領域における研究者の家政学原論への関心がますます要請されるところである.
    これから家政学の学問的発達に従って『家政学雑誌』が研究成果発表の場としてますます重要な役割を担うことになるであろう.また逆に『家政学雑誌』のあり方が家政学の発展に大きく影響していく場合も十分考えられるので, 今回の結果を家政学の現状として受け止めると同時に, 家政学の発展のために家政学の研究成果を反映すべく『家政学雑誌』のあり方を検討し, これからも家政学の研究成果を公表する場として有効に機能するようにしなければならないと考える.
    今回は家政学で得られた知識が表れているものとして『家政学雑誌』の掲載報文を用い, 知識の量的側面のみについて分析を行った.家政学の体系化への第一歩として家政学の現状把握を行うための手段としては, このような実証的, 客観的な科学的方法は有効であると考える.しかし, 知識の質的側面についての分析もあわせて行っていくことが現状把握にとって不可欠であろう.また, 家政学の知識は『家政学雑誌』のほかにも, 著書や, 学会における研究発表, その他出版物にもあらわれているであろうが, 今後はその部分の調査も必要であろうと思われる.
  • -男女間のギャップを中心に-
    長津 美代子
    1991 年 42 巻 11 号 p. 949-959
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study is to explore gaps between attitudes toward gender roles of male and female students, by using such criteria as attitudes toward role relationships between male and female, the double standard of sexual morals, men's leadership in dating, and energy allocation to occupation and homemaking after marriage. The survey was conducted in January, 1990 to 735 university students in Tokyo and its outskirts. The major findings are as follows :
    (1) ISRO (The Index of Sex-Role Orientation, E.A. Dreyer et al.) scores on attitudes toward role relationships between male and female point out that 45% of the female students are innovative type, but about the half of the male students are traditional one.
    (2) Compared with female students, male students tend to accept the double standard of sexual morals.
    (3) Female students expect that males play leadership roles when they go out together more than male students themselves intend to.
    (4) Male students wish to allocate less energy to occupation than their fathers do, and female students hope to allocate less energy to homemaking than their mothers. As a result, the present tendency to give too much attachment to occupation for males and homemaking for females will be relieved in their married life.
  • 金 和子, 小林 彰夫, 久保田 紀久枝
    1991 年 42 巻 11 号 p. 961-966
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    生大根の辛味のある刺激臭の主因であるMTBeIの加熱による変化を煮大根の香気形成との関連から検討した.煮大根の香気濃縮物をエーテル振とう抽出法とSDE法により調製し, GCおよびGC-MSを用いて香気成分を検索した.煮大根の香気は低沸点化合物に由来する硫化水素様の強い匂いのほか, 好ましい煮大根様の香気が得られたが, おもな香気成分は生大根とほぼ同じであった.前者の匂いには, MTBeIが分解して生じたメチルメルカプタン, ジメチルジスルフィド等の揮発性低沸点化合物が, 後者の匂いにはメチルチオブチルイソチオシアネートが関与しているものと思われた.生大根を加熱すると, まず熱的に不安定なMTBelの急激な分解が起こり, メチルメルカプタンやメタノール, エタノール等が生じ, 2次的にジメチルジスルフィドやジメチルトリスルフィドが形成されるが, 煮大根の加熱調理中に揮散してしまう.一方, 熱的にやや安定な生大根の微量成分は残存し, または一部生成されて好ましい煮大根香気を形成することが示唆された.
  • 田島 真理子, 三橋 富子, 妻鹿 絢子, 荒川 信彦
    1991 年 42 巻 11 号 p. 967-971
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    スープストック調製時に加熱によっておこる肉中のコラーゲンのゼラチン化と筋原繊維タンパク質の可溶化について検討した.スープストック中の全可溶性タンパク質量に対するコラーゲン由来のゼラチンの割合は6時間加熱で約30%であった.精製した筋原繊維を加熱すると, ほとんどのタンパク質は変性してSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動パターンから消失し, 加熱可溶性画分には40,000, 23,000, 10,000~18,000ダルトンのタンパク質のみが認められた.これらのタンパク質の分子量はスープストック中のタンバク質の分子量に近似していた.また, 筋原繊維タンパク質を加熱した後の可溶性タンパク質量は加熱時間の増加につれて次第に増加した.
    筋漿タンパク質と筋原繊維タンパク質の混合物を加熱した場合, 可溶性タンパク質量は, それぞれを加熱した場合より減少した.筋原繊維タンパク質に対する筋漿タンパク質の割合が高い場合, 加熱可溶性タンパク質のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動パターンでは10,000~18,000ダルトンのバンドがより強く現れた.また, 加熱時間の増加につれて低分子タンパク質が増加した.
    これらの結果から, スープストック中には筋漿タンパク質, 筋原繊維タンパク質, 結合組織タンパク質に由来するそれぞれのタンパク質が存在していると考えられる.
  • 鈴木 雅夫
    1991 年 42 巻 11 号 p. 973-977
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    考察の結果を要約すると次のようになる.
    (1) 調査の対象とした町営住宅は, 従来の標準設計によるものではなく, 高温多湿の気候条件の下で, 厳しい暑さに適応させるために, バルコニーの代わりにテラスを設け, 風通しと強い日射を和らげ, 接地性を確保しようとしたもので, 地域型設計とみなされる.
    (2) テラス付き町営住宅は, 住戸へのアクセス方式で二つのタイプに分けられる.一つは, 北玄関型であるが住棟を雁行させている.もう一つは, 南に階段室を移しテラスからアクセスする南テラス型であり, 鹿児島では最初の事例である.
    (3) 住戸へのアクセス方式の差異についての評価をみると, テラスの形と大きさについては, 「現状でよい」という比率は, 南テラス型の約79%に対して, 北玄関型は約68%である.テラス面積が南テラス型で3m2広いことが, 11ポイント差になってあらわれていると思われる.
    階段位置が北か南かという点については, 「現状でよい」という比率は, 南テラス型の約85%に対して, 北玄関型は約81%であり, 両者に大きな差異はみられない.
    住戸への入り方については, 「現状でよい」という比率は, 南テラス型の約29%に対して, 北玄関型は約71%である.南テラス型の住戸への入り方がよくないという理由は, 玄関が付いていないこと, 洗たく物が来客に見えることなどである.したがって, 南テラス型のアクセス方式そのものがよくないわけでなく, 玄関を付け, 洗たく物の干し場を区別すれば, 評価はよくなると思われる.
    (4) アクセス方式からみた住まい方の差異を部屋の使われ方を通じた考察では, 南テラス型は, テラスから各部屋に直接入れるので, 家族と来客のアクセスと部屋の使われ方を区分できるという利点がある.これに対して北玄関型は玄関からD・Kを通り抜けて各部屋に入るのとは大きく異なっている.通路となるD・Kは, 部屋の安定性が損なわれやすい.
    南テラス型の部屋の使われ方は, D・Kが食事室に, 押入付き和室が寝室に, 茶の間は家族の集まりと接客の部屋に, 洋室は寝室等に使われている.テラスアクセス方式の住戸平面では, テラスに面した2室のうち1室は接客に使えるような部屋とすることによって, 家族と来客のアクセスおよび部屋の使い分けが可能になる.しかし, 南テラス型は, テラスに面して洋室を配置したため, 接客室に使いにくく, さらに, 洗たく物を出入口から離して洋室に接した部分に干すため, いっそう, 洋室の接客利用を困難にし, 茶の間が多目的に使われるようになっている.
    北玄関型の部屋の使われ方は, D・Kは食事室のほか家族の集まり部屋に, 押入付き和室は寝室のほか, 家族の集まりや接客の部屋に使われている.茶の間は, 寝室, 家族の集まりや接客の部屋など比率は高くないが多目的に使われている.北玄関型は, D・Kが通り抜けになるため, 安定した使われ方がされないと予想していたが, D・Kは朝・夕食とも食事室として, 高い比率で使われ, さらに家族の集まりにも使われている.食事のとり方をみると, 約30%は坐式であることから, D・Kの広さは通り抜けになってもじゃまにならずに十分間に合うためではないかと考えられる.
    (5) 鹿児島県において, 地域型設計として考案されたテラス付き町営住宅ではあるが, この考え方は, 同じ亜熱帯地域に属する沖縄県の公営住宅の設計にとっても十分適用できるものであり, 問題点を改良すれば, テラスアクセス方式は有効な設計手法となりうると考える.
  • 木下 英明, 吉田 大介
    1991 年 42 巻 11 号 p. 979-982
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    グラファイトペースト電極表面に透析膜を被覆した電極を用いることで, 多くの生物試料に存在するタンパク質の影響を受けることなくアスコルビン酸の酸化電流を得ることができた.本電極では定電位での測定が可能で, 電圧掃引法に比べて再現性が良好で簡便・迅速であった.定電位 (0.2~0.5V) での電流値はアスコルビン酸濃度に1μM~1mMの間で直線的に比例した.より酸性溶液および, より負の電位で測定すれば, 共存する可能性のある物質の影響を少なくすることができた.
  • 新原 立子, 針谷 順子
    1991 年 42 巻 11 号 p. 983-987
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    パン用粉と麺用粉を半々に混合した小麦粉から脂質, グルテン, およびデンプンを分離し, それらを再添加する方法によりタンパク質含量または脂質含量の異なる小麦粉を調製した.それらの小麦粉からパンおよび乾麺を調製し, タンパク質および脂質含量の影響を調べ, 次のような結果を得た.
    (1) タンパク質含量と, パンのローフボリュームおよびゆで麺のかたさ, 凝集性, 膨潤度の間には顕著な相関が認められた.
    (2) 脂質含量もパンおよび麺に影響を与えたが, ゆで麺の凝集性の場合を除き直線的な関係は認められなかった.
    (3) 含量の変動率を考慮に入れたとき, タンパク質含量の影響は脂質含量に比べて大きく, パンのローフボリュームとゆで麺のテクスチャー変化をそれぞれの平均値に対する相対的な変化率で比較したとき, パンのほうが影響が大きかった.
  • 家政科における大学院の設置状況と問題
    荒川 千恵子
    1991 年 42 巻 11 号 p. 999-1001
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 高部 和子
    1991 年 42 巻 11 号 p. 1001-1002
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 宮下 美智子
    1991 年 42 巻 11 号 p. 1003-1004
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 岩垂 芳男
    1991 年 42 巻 11 号 p. 1004-1006
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
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