日本家政学会誌
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43 巻, 11 号
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  • 分析対象論文の特定
    吉本 敏子, 東 珠実, 大石 美晴, 鈴木 真由子, 古寺 浩, 菅原 亜子, 村尾 勇之
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1067-1075
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本報告の目的は, アメリカ家政学会誌の目次にみる構成項目の時系列分析を行い, アメリカ家政学の研究内容の分析に有用であると思われる項目 (対象論文) を特定することであった.そこでアメリカ家政学会誌としてJournal of Home Economics (1909~1989) 724冊, Home Economics Research Journal (1972~1989) 76冊を対象に分析を行った.その結果, 以下のようなことが明らかになった.
    (1) アメリカ家政学会誌の目次にみる構成項目は, 非常に多様かつ流動的であるが, これらを整理すると, 大きくはアメリカ家政学会誌の今日的大分類によるところのResearch, Articles に属するもの, AHEA Todayに属するもの, Departments に属するものに分類された.またこれらの構成項目の推移から, アメリカの家政学と家政学会の動向の全体像を把握することができた.
    (2) 上記の3大分類の中から, 本報告においてはResearch, Articlesに属するもの, すなわち純粋な研究論文にそれに準ずると思われる総説的な報文を加えて, 合計5,765本を研究の分析対象論文とした.
    以下, 第2報においては, 対象論文全体について年代別, 領域別に量的, 質的分析を行う.
  • 分析対象論文の年代別・ 領域別分析
    東 珠実, 大石 美晴, 鈴木 真由子, 吉本 敏子, 古寺 浩, 菅原 亜子, 村尾 勇之
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1077-1085
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    1909年から1989年までに発行されたアメリカ家政学会誌Journal of Home EconomicsとHome EconomicsResearch Journalに掲載された論文等のうち, 今日的大分類によるところのResearch, Articlesに属するいわゆる研究論文5,765本を対象に年代別・領域別の分析を行った結果, 以下の諸点が明らかとなった.
    (1) 対象論文の年代別論文数についてみると, 1920~1930年代の論文数がとくに少なく, 1940~1970年代の論文数が相対的に多い.論文数がもっとも多いのは, 第二次世界大戦を含む1940年代である.
    (2) 領域別論文数の時系列的推移についてみると, 論文数が時系列を追って安定的に推移しているのは, 家政学の本質にかかわる家政学原論や家庭経営学・家庭管理学および総合であり, 減少傾向を示しているのは, 初期の論文数が非常に多い食物学と家政教育学である.その他の領域についてはいずれも論文数の時系列的増大傾向が認められるが, とくに増大の割合が高いのは初期の論文数がきわめて少ない家族関係である.また家庭経済学や被服学は年代間の格差が大きく, 児童学や住居学は社会的背景とのかかわりから特定の年代における論文数が突出して多いという特徴をもつ.
    (3) 領域別論文構成比の時系列的推移の特徴は, 初期の極端な食物学・家政教育学偏重のパターンから, 近年の10領域問のバランスが比較的整っているパターンへの変化の過程にみることができる.すなわち, 家政学生成期における食物学と家政教育学への極端な構成比の偏りは時系列を追って小さくなるのであるが, これに伴い, 1930年代あたりには家政学原論や家庭経済学の構成比が高くなり, 1940年代から1980年代に至る間に, 総合や被服学, 家庭経営学・家庭管理学等が順次その相対的な割合を増大させる.また, 初期において非常に構成比の低かった家族関係および児童学も時系列を追って構成比を高める.他方, 家政教育学は構成比を低下させながらも, 時系列を通して常に10領域中1位または2位を維持しつづけている.結果として, 近年の研究論文は, 家政教育学を中心に多領域のバランスよく分散するようになってきている.
    (4) 領域別論文構成比の年代間の類似性に基づいて, 年代の区分を試みると, 1910~1930年代は食物学・家政教育学偏重型の家政学形成期, 1950~1980年代は家政学原論, 家庭経営学・家庭管理学, 家庭経済学, 食物学, 被服学, 家政教育学, 総合等の多領域充実型の家政学成熟期としてとらえることができる.また, 1940年代は家政学の形成期から成熟期に至る移行期として位置付けられる.
  • 家庭教育との関連
    岡野 雅子
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1087-1097
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究は, 子どもが金銭について及びそれに代表される社岳機構について発達とともにどのような認識を形成していくのかを探ることにより, 消費者教育のための基礎的資料に資することを日的とする.本報では, 幼児期 (幼稚園年長児) と児童期 (小学3年生) の家庭生活に焦点を当てて, 子どもにとっての人的環境として最も身近である母親と子どもの関連を取り上げた.
    (1) 子どもの家庭教育についての認識は, 幼児と小学3年生を比べると, 「お手伝いをする」や「おかあさんは『もったいない』と言う」, についての回答は増加していることから, 小学3年生段階になると価値観を含む判断が形成されるようになるようである.また, 母親回答と子ども回答の比較から, 家庭教育の担い手 (母親) と受け手 (子ども) の間には, 認識についてのかなりのズレが存在している.発信者 (母親) 側は, 助言示唆を行っていると思っているが, 子ども側は自覚的には充分に受信していないようである.しかし, 発達とともに子どもの受信状態は変化して行き, 幼児に比べて小学3年生は, お金の使い方についての助言や浪費に対する戒めの示唆はより多く受信するようになる.しかしながら, より抽象性の高い内容を含む金銭と勤労の関係についての示唆は, 小学3年生段階での理解の割合は未だ低い.
    (2) 金銭感覚について, それぞれの母親と子どもをペアにして回答を見ると, ほとんど有意な相関は見いだせず, 母-子の間にストレートな関係があるとは言い難い.しかし, 幼児母-幼児ペアと小3母-小3ペアを比べると, 幼児の場合には質問項目によって相関係数の高低のバラツキが大きいことから, 幼児は母親の影響を強く受ける側面とほとんど受けない側面を持ち, 発達とともに, 子どもの金銭感覚と母親の金銭感覚の関係は一様になっていくことが考えられる.
    (3) 子どもの金銭感覚を4タイプに類型化したところ, 小学3年生では「堅実志向・伝統反応型」が過半数を占め, また, 母親の金銭感覚は「社岳関連・人志向・貯蓄型」が7割を超えた.大多数の母-子は, 堅実な金銭感覚を形成していると思われる.
    (4) 子どもの金銭感覚のタイプを母親のタイプと関連させて見ると, 母親の消費者意識との関係は全く認められない.消費者意識はきわめて抽象的であり, 母親自身も充分に自覚しているとは言い難く, 子どもの金銭感覚の形成に及ぼす影響は小学生段階では顕在化してはいない.そして, 母親の金銭感覚が「個人関連モノ志向消費型」の場合に子どもの金銭感覚のタイプは若干「名声見栄志向伝統反応型」である傾向が見られ, 母親が家庭教育について「子どもに助言示唆せず, 子どもは手伝いをせずこづかいに不満」と認識している場合には「堅実志向時代即応型」のタイプの子どもとの関連が若干認められた.
  • 黒田 正治郎
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1099-1102
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    今回試作した体積計は, 急速に水を吸収する物質や水と反応する物質などの体積は測定することはできないが, 重量が0.2g, 体積が0.1mlまでの固体の体積を, 0.5%の測定精度で測定することができる。また, 今回の体積計では, 容器3と測定用の目盛りだけが交換することができるが, 試料体積の大小により目盛りと容器2を取り替えられるように製作すると, さらに広い範囲の体積が測定可能となる.
    さらに, 1回の計測に要する時間が1分以内であるために, 応用として豆類を浸漬した時, 時間と共に膨潤する試料の体積測定や, 椎茸, きくらげ, 乾燥なまこ, 乾燥貝柱, わかめなどの乾物類の膨張率の時間的な振る舞いを調べることができる。さらに体積計に使用する液体を変更すれば, その液体の吸収量なども測定することができるので, 活用していきたい (特許出願中).
  • 冨岡 文枝, 森岡 真希
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1103-1110
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    マイクロ波加熱と従来法加熱による食品中の脂質劣化に与える影響の違いを知りたいと考え, サンマの切り身を電子レンジと電気オーブンで加熱し, 加熱魚肉から総脂質を抽出し, 中性脂質区分とリン脂質区分に分けてその劣化を過酸化物価, カルボニル価, 蛍光強度, 着色度, 脂肪酸組成の測定と薄層クロマトグラフィーを行い調べた.
    その結果, 総脂質については魚肉の内部温度100℃付近の試料では両加熱法による劣化に大きな差はなかったが, 170℃付近の試料ではマイクロ波加熱のものの方が劣化が進んでいた.そして中性脂質区分の劣化はあまり大きくなく, 両加熱法による差も大きくなかった.しかしリン脂質区分の加熱による劣化は中性脂質区分に比べてかなり大きく, その劣化に対しマイクロ波加熱の方が電気オーブン加熱より大きな影響を与え, 熱酸化に加え, 水溶性リン化合物への変化もより進行することがわかった.リン脂質の加熱劣化は著しい褐変を伴うことから, マイクロ波加熱の特徴である温度むらによる焼きむらをより顕著にする一因になっていると思われた.
  • 新井 映子, 石川 由里子, 伊東 清枝
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1111-1116
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    米味噌に含まれるα-アミラーゼの各種調理における活性の変化について検討を行った.
    (1) 米味噌水溶性タンパク質中で, 分子量53,000 daltonsと推定されたものは, α-アミラービであった.
    (2) 味噌けんだく液中の米味噌α-アミテーゼは, 精製物の状態より熱安定性が高く, 活性は味噌濃度10~20%のけんだく液では75℃, 40%では80℃, 50~60%では85℃, 80%では90℃まで残存した.
    (3) 米味噌α-アミラーゼの熱安定性は, 砂糖を味噌重量の30%以上添加すると向上した.
    (4) 米味噌α-アミラーゼは, 食酢を添加した低pHで加熱すると失活したが, 味噌重量の150%以上の砂糖を共存させると, 活性は保持された.
  • フレアー量がシルエットに及ぼす影響
    佐藤 悦子, 小林 茂雄
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1117-1124
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    The purposes of this study were to clarify : 1) the flaring effect of skirts on silhouettes by using different lengths of hem-line (that is, waist size remains constant while hem-lines vary from 3 times to 6 times the waist size respectively); 2) what types of flared skirts were favored from data in the sensory evaluation procedure. The skirts were produced by three kind of fabrics.
    The results obtained were as follows : 1) As the length of the hem-line of the flare was increased, the length of the side line tended to increase also, while the length of the center line increased when the hem-line length was up to 4 times the waist size and came to a constant value after that length; 2) The wave-height also showed a tendency to increase when the hem-line length was up to 4 times the waist size. The minimum values of the variation ratio of wave-height varied from each other according to the different types of fabrics; 3) The sensory evaluation showed that the shorter hemline was not favored. The most favorable length for the hem-line was not found because different types of fabrics produced different favored hem-line lengths.
  • 深山 雅代, 安田 武, Hirotsugu YASUDA
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1125-1131
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    これまで, 一般に透湿性は, 1つの平面状の布の表面に水蒸気圧差をもうけて, 一定時間にその窃を透過する水蒸気量によって評価し, 透湿性が大きければ快適であると考えられがちであったが, 皮膚表面空間層の水蒸気圧をできるだけ低くすることが快適性につながるとの考えのもとに, 低温プラズマ処理により表面のみを親水化あるいは疎水化した場合に, 重ね着した衣服の層間水蒸気圧にどのような影響をおよぼすかについて, ミズリー型シミュレーターを用い, 短時間に起こる水蒸気圧変化を動的に測定して, 次のようなことをみいだした.
    (1) 不感蒸泄に相当する水蒸気法の場合, 繊維自身の吸湿性に比例して層間水蒸気圧は低くなるが, 表面親水化および表面疎水化のいずれも層間水蒸気圧には大きな影響はおよぼさない.
    (2) 発汗に相当する水滴法の場合, 布がぬれやすけれぼ水が速く蒸散する.ウールやポリエステルの表面親水化は有効で, 布がぬれやすくなって水滴が広がり, 皮膚表面空間層の水を速やかに蒸散する.
    (3) 水滴法の場合, アクリルの表面疎水化は有効である.綿は初期においては疎水化の効果が認められる.しかしその効果は持続せず, 時間の経過とともに綿本来の性質を示すようになる.
    (4) 一般的に, 透湿性がよいから快適だと考えることはできない.
  • 共用施設・サービスの利用
    瀬渡 章子, 湯川 利和, 田中 智子, 山岸 雅子
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1133-1141
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本報では, 超高層住宅における今後の共用空間, 共用施設・サービスのあり方を探るために, 居住者の利用実態, 評価, およびニーズについて解析した.その結果は以下の通りである.
    (1) 幼児・小学生のいる世帯や団地内に知人・友人の多い社交的な世帯は, 1階の共用空間 (ラウンジ, プレイルーム, トイレ) や共用施設 (展望室, ホビールーム, AVルーム) をよく利用していた.逆に, 利用率が低かったのは, 高年齢世帯, 単身世帯, 夫婦のみの世帯, 非社交的な世帯であった.
    (2) 居住階別の利用状況をみると, 29階の展望室は下層階世帯ほど利用率が高かったが, 1階共用空間に関しては居住階別の差異はみられなかった.
    (3) 共用空間・共用施設にたいする居住者の評価は高く, 利用状況を反映したものであった.しかし, 誰もが自由にアクセスできる空間では防犯性, 快適性の問題が指摘されていた.
    (4) 家事支援のためのサービスセンターはよく利用されていた.特に利用率が高かったのは, DPE, 宅配便取次ぎ, 切手等の販売, コピー, クリーニング取次ぎ等のサービスであった.センターのサービスは, 特に共働き世帯の支援を考慮したものではないので, 主婦就労の有無で利用に差異はみられなかった.また家族型では, 幼児・小学生のいる世帯の利用率が最も高かった.
    (5) 超高層住宅居住者が, 多少の費用負担をしても利用したいと考える共用施設は, テニスコート・プール等のスポーツ施設, 来客用の宿泊施設, トランクルームであった.その他, 幼児・小学生のいる世帯では, 子どもの遊戯施設や幼児の一時預かり施設の要求も強かった.サービスにたいする要求では, 現在サービスセンターで利用率の高いサービスとともに, 宅配物の留守預かりが多く, それは特に単身世帯に顕著であった.
  • 鶴田 栄作
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1143-1154
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
  • <その5> 第17回国際家政学会におけるIYF情報
    日本家政学会国際交流委員会
    1992 年 43 巻 11 号 p. 1157-1158
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
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