日本家政学会誌
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48 巻, 5 号
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  • 益本 仁雄, 笠井 直美, 大澤 清二, 國土 将平
    1997 年 48 巻 5 号 p. 371-382
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/11
    ジャーナル フリー
    筆者らが1994年11月に実施した北タイ・チェンマイ県の学童を対象にした家庭の耐久消費財普及調査から, この地域に居住する五つの民族の特徴が次のように明らかになった.
    (1) 耐久消費財の普及品目数および有意差検定と各品目の普及率比較から, 平地民と山地民との問, および民族間にも有意差があることが析出された.漢族は, この地域における経済的優位性を示し, タイ族の消費生活はそれに次いで高水準であった.一方, 山地民のカレン・モン・リスの3族は, 平地民の漢・タイ2 族とはかけ離れた貧困な生活に甘んじていることが明らかになった.
    (2) 一世帯あたり耐久消費財の保有額については, 各民族とも2極分化がみられる.なお, 平地民では富裕層が多いが, 山地民では貧困層が多数を占めていた.
    (3) 父親の職業では, 平地民は商店主, 役人, 経営者・管理職など, 農業より比較的収入が高く, 多様な職業についているのに対し, 山地民では, 農業関連に集中していた.母親の職業でも, 父親のそれと似た傾向にあるが, 平地民では, 専業主婦や無職が1/4に達するのに対し, 山地民では専業主婦や無職は皆無か極めてわずかで, 女性も生産労働に参加していた.
  • 新原 立子
    1997 年 48 巻 5 号 p. 383-389
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    (1) 原料小麦粉としてタンパク質含量 9% および11% の 2 種類を使用し, アルカリ剤 (炭酸ナトリウムを小麦粉の 0.7%) 添加および無添加, オレイン酸添加 (小麦粉の 0.5%) および無添加とし, これらの組合せで合計 8 種類の生麺を調製した. その際すべての試料に食塩を小麦粉の 1.5% 量添加した. これらの試料についてオレイン酸の添加がゆで麺の物性に与える影響をしらべた結果, オレイン酸の添加効果はアルカリ剤との併用で顕著になり, ゆで麺のかたさ, ヤング率, 引っ張り強度および伸び率が増加し, 凝集性は低下した.
    (2) 小麦粉および小麦デンプンについて, 食塩水およびアルカリ食塩水中における糊化時の溶解度と膨潤度に対するオレイン酸添加の影響を調べた結果, アルカリ剤の存在が小麦粉および小麦デンプンの溶解度や膨潤度を増大させたが, オレイン酸にはこれを強く抑制する作用があることが認められた.
    (3) 小麦粉について同様な実験を 30℃ で行った場合には, 溶解度および膨潤度に対するオレイン酸の添加効果はほとんど認められなかった. しかし, タンパク質の溶解性がアルカリ剤の存在によって増加し, オレイン酸の存在によってもいくぶん増加した.
    (4) 小麦粉生地から湿グルテンを取り出してしらべた結果, アルカリ剤およびオレイン酸の存在により湿グルテンは集塊を形成しにくく取り出すのが困難な状態となり, 回収量が減少した.その影響は, オレイン酸 + アルカリ剤の添加が最も大きく, 次いでアルカリ剤, オレイン酸の順であった.
    (5) 以上の結果から, オレイン酸はアミロースとの複合体形成によってゆで時のデンプン粒の膨潤を抑制し, グルテンに結合してその構造を変化させ, ゆで麺の物性に影響を与えると考えられるが, 中華麺においては, アルカリ剤によりオレイン酸の大半がイオンに解離するため, その影響は一般の麺に比べて大きいと推察した.
  • 粥の調理に関する研究 (第 2 報)
    江間 章子, 貝沼 やす子
    1997 年 48 巻 5 号 p. 391-398
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    The effect of heating conditions on the physical and chemical properties of “zengayu” were studied by analytical methods and sensory tests.
    Rice gruel cooked at a low heating rate had lower water absorption and swelling, and was harder during the initial period of heating. While rice gruel cooked at high heating rate had higher water absorption and swelling, and quickly became softer during the initial period of heating, it did not soften homogeneously throughout the whole rice grain with prolonged heating time.
    In contrast rice gruel cooked at a medium heating rate had the greatest adhesiveness throughout the heating period, and rice gruel cooked at the low heating rate had a larger quantity of reducing sugar.
    Sensory tests indicated that all the rice gruel samples heated for 50 min had a similar taste from all the heating conditions and such rice gruel was preferred most.
  • 高正 晴子
    1997 年 48 巻 5 号 p. 399-406
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    A survey was made of various cookery books from the Middle Ages to modern times to identify the consumption of whale meat in Japan.
    During the Muromachi Period, whales were considered valuable because of their sheer size, and the meat was served to high-ranking people like the Shogun.
    In the middle of the Edo Period, whale meat was served to the most important and least important members of a Korean delegation. Whalecatching had developed from harpooning to netting, enabling whales to be caught in large numbers so that whale meat became available for common consumption.
    Until recently, whale meat had been a common local food in many areas of Japan. Its size made it considered suitable for serving at important events, and it stood as a popular food source.
    The results of this survey clearly show that whale meat has been an important part of the Japanese diet over a long period of time.
  • 片山 倫子, 飯本 時子, 今村 和枝, 岩崎 日和, 別府 輝彦
    1997 年 48 巻 5 号 p. 407-413
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    銅フタロシアニン染料の生分解性を土壌環流法により検討し, 分解菌の検索を試みた.分解菌の分離にはこの染料を単一炭素源とする寒天培地を用いた. 本染料により予備吸着処理および馴養処理を施した土壌に染料水溶液を 292 日環流したところ, 環流開始後 2 週間で環流液の吸光度と Cu 2+率濃度が並行して減少し 0に近い値を示した. 一方, 滅菌土壌に本染料を環流した場合にはこのような変化はまったく生じず, 染料の分解は認められなかった.
    環流土壌より本染料を単一炭素源として生育しコロニー周辺に著明な脱色域を生ずる糸状菌を分離した.この菌株の各種の性状に基づき Myrothecium verrucaria と同定した. 本菌はこの染料を部分分解して生育に利用すると共に, 生成する Cu2+を菌体中に蓄積するものと考えられる.
  • 住居移動による世帯構成の変化と高齢者の住生活課題 (第 1 報)
    鈴木 博志, 宮崎 幸恵
    1997 年 48 巻 5 号 p. 415-426
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    以上の分析結果は, 以下のごとく要約される.
    (1) 近年, 高齢者世帯の移動が増加傾向にあり, とくに高齢者のみ世帯の移動の増加が著しい. この世帯の移動が増加する家族構成上の原因は, 単身, 夫婦のみの小規模世帯の移動の増加にある.
    住居移動の形態は多様であるが, 移動前後の世帯構成は大きく 4 タイプに類型化され, さらに 10 タイプの家族移動型に類別できる. これを分析軸にして, 高齢者に特有な住居移動の発生メカニズムや居住課題を明らかにすることが可能となる.
    (2) 近年では, 高齢者世帯移動のうち, 同居や別居を伴わない不変型の移動が増加しており, なかでも移動後に単身や夫婦のみの小規模高齢者世帯を形成する不変型 a1 の伸長が著しい. 別居型 a も同様の傾向にあるが, こうした変化は, 家族形態の視点から判断した場合, 移動後の住生活の安定性に欠ける小規模な高齢者世帯の増加を意味する.
    以下, 高齢者世帯のなかでも, とくに住生活課題を多く抱える可能性が高い不変型 a1, 別居型 a の移動に注目して整理する.
    (3) 高齢者世帯に関わる移動は, 家族移動型によってそれぞれ特徴的な階層的特性をもつ. 不変型 a1 は, 女性の世帯主が多いこと, 75歳以上の後期高齢者が約 3 割を占めること, 無職や低収入層が多いことに集約される. 別居型 a が, 不変型 a1 と階層的に相違する点は, 収入が相対的に高いことにある. 不変型 a1, 別居型 a とも, 体力の衰えや経済的能力の低下が進む年齢層であり, 日常生活におけるケアの必要性が高い.しかも, 単身や夫婦のみの高齢者世帯 (高齢者のみ世帯を多く含む) の移動であるため, 外部から何らかの住生活上の支援を要する状況に置かれている.
    (4) 移動の契機となる主な移動理由は, 家族移動型別に異なる内容を示す. 不変型 a1 は, 住宅上と家族上の理由が多い. 住宅上では, 住宅の老朽化と立ち退き要求の比重が高く, とりわけ立ち退き要求は, その内容や程度によって深刻な事態に直面していた高齢者世帯の存在を推測させる. 家族上は, 家族との近接居住の比重が高い. 自立した生活を送りながら一方で家族とのきずなを強めたいとする居住立地志向の表れであり, 近年の不変型の移動の増加に寄与する要因の一つとみられる.
    (5) 居住状況の変化に関しても, 家族移動型によってそれぞれ異なる傾向を示す. 不変型 a1 の特徴は, 前住宅から現住宅への変化で持家居住が減少していることにある. 移動後は, 公営住宅, 公団・公社への入居が多く, 公的住宅が高齢者の居住の安定性を確保するのに果たしている役割が大きいことを示唆する. 別居型 a も移動後は持家居住が減少しており, 公団・公社への入居がわずかに増加する. 不変型 a1, 別居型a とも, 住宅選択理由では買物・医療に便利など利便性の高い居住立地志向が強く, これは高齢者の住宅対策上重視すべき点である.
    (6) 移動による居住状況の改善は, 家族移動型によって異なる. 不変型 a1 の移動後の居住水準の変化は, 住宅規模, 通勤時間, ローン・ 家賃とも低下する方向にあり, 必ずしも居住状況の改善が図られているわけではない. 移動の主要な理由が, 立ち退き要求や近接居住志向にあるため, 居住状況の改善が第二義的とされることに起因する. これは, 移動することによって, 住宅規模の向上や通勤時間の改善が図られている他の家族移動型とは基本的に異なる.
  • 竹原 広実, 梁瀬 度子
    1997 年 48 巻 5 号 p. 427-436
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    住宅居間の実態調査を行い, 居住者の属性およびインテリアに対する意識と居間における装備要因の色彩との関連を検討した結果, 次のような知見が得られた.
    (1) 居間に使用されている色彩は, 設計計画的な要因である壁や床には限られた色彩が用いられており, 一方ソファ, カーテン, クッションといった装備要因には多様な色彩が用いられていることが明らかとなった.
    (2) 居住者のインテリアに対する意識については, インテリアに対する関心は全体的に高いものの, 現在の居間が自分の好みでないとするものは約半数を占める. また年齢が若くなるにつれて, 自分の好みのインテリアがつくりだせていない者の割合が多くなる傾向が認められた.
    (3) カーテンの色彩は壁を基準として選択されており居住者の好みが表れにくく, 一方, ソファの色彩は個人の好みが生かされやすく, 年齢が若いほど多様な色彩が用いられている. また, 高年群では各要因問で同系の色相が多く用いられ, 居間の主な装備要因を同系の色相で揃えようとする傾向が他の年齢群より強いことが明らかとなった.
  • 林 一也, 津久井 亜紀夫
    1997 年 48 巻 5 号 p. 437-441
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    グリチルリチン添加のアントシアニン色素の安定化を検討した.
    グリチルリチン添加によりアントシアニン色素の高い濃色効果が示された. また, 耐熱性, 耐光性が向上し, 低濃度で α-シクロデキストリンや α-グルコシルルチンよりもアントシアニン色素の色調の安定性に及ぼす効果が高いものであった.
  • 四十九院 成子, 吉田 恵子, 永野 衣絵, 福場 博保
    1997 年 48 巻 5 号 p. 443-447
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    (1) 加熱による大豆の軟化とタンパク質の変化を検討するため, 大豆を一晩浸漬後経時的に加熱し, PAGE パターンの変化を観察した. その結果, 加熱に伴い移動度の最も速い低分子領域のバンドの増加が認められた.
    (2) 生大豆および経時的に加熱した大豆の各粗抽出液の ACE 阻害活性を測定したところ, 生大豆には阻害活性は認められず, 1時間加熱によって, 未加熱 (浸漬のみ) 大豆に比較し約7倍の阻害活性の増加が認められた.
    (3) 未加熱および 1時間加熱大豆粗抽出液のSephadex G-100 によるゲルろ過のパターンを比較したところ, 加熱により高分子量領域のピークが減少し, 低分子量領域のピークが増大したが, ACE 阻害活性はいずれも分子量1万以下の低分子量領域に認められた.
    (4) 1時間加熱大豆粗抽出液をペプシン消化させたものを Sephadex G-100 によるゲルろ過を行ったところ, ACE 阻害活性は未処理のものと同様に低分子量領域に認められ, 本阻害活性はペプシン消化後も残存していた.
  • 藤田 直美
    1997 年 48 巻 5 号 p. 449-450
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
  • 岩波 君代
    1997 年 48 巻 5 号 p. 451-452
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
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