日本家政学会誌
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50 巻, 12 号
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  • 江角 由希子, 小原 郁夫
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1217-1222
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    市販ミネラルウォーターに対する嗜好性を女子短大生と雌ラットで調べた.ミネラルウォーター中のCa, Mg, NaおよびKの含有量は原子吸光分析法, 硬度はキレート滴定法で測定した.次に, 正常な味覚感受性である女子短大生を被験者とし, ミネラルウォーター4種と水道水を試料として官能評価を行った.一方, ラッおは, 8週齢雌を用いて二瓶選択法により嗜好試験を行った.ミネラルウォーター中のCaおよびMgの含有量はラベル表示値よりも低く, NaおよびKは高かった.また, 硬度はCaおよびMgの含有量から算出される値の約1.2倍を示した.官能評価に用いたミネラルウォーターの硬度は11.5, 58.3, 81.3,332.3,534.0mg/lであり, 水道水は38.3mg/lであった.女子短大生, 雌ラットとも硬度58.3mg/lのミネラルウォーターにおいて嗜好性が最も高く, 硬度300mg/l以上では嗜好性が低下した.これらの結果は, 女子短大生と雌ラットにおけるミネラルウォーターの嗜好性は類似しており, 硬度約50mg/lが飲み水として最もおいしいということを示唆した.また, ミネラルウォーターにおいてもおいしさの指標として硬度が使用できることが確認された.
  • 今井 悦子, 榊 いづみ, 畑江 敬子, 島田 淳子
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1223-1232
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    水分含量 (約44~66%) および粒度 (約2~9mm) の異なる加熱挽き肉試料を調製し, 硬さおよび大きさの識別試験を行い, 水分含量, 機器測定の硬さおよび粒度との関係を検討した.粒度が同じ試料間では, 硬さの識別は水分含量5~9%以上の差で可能となった.硬さ識別のウエーバー比は, 水分含量を基準とすると0.16~0.08の範囲にあり, 粒度と負の相関関係があった.また, それは機器による硬さを基準にすると水分含量の高い試料群では0..58~0.20と大きかったが, 水分含量の低い試料群は0.16~0。08であり, 両者とも粒度と負の相関関係があった.水分含量が同じで粒度のみ異なる試料間の大きさの識別は, 粒度が約1.51倍異なる場合はすべて可能であった.約1.23倍異なる場合は識別可否の境が試料の水分含量約56~65%の範囲にあり, 粒度が大きいほど境の所の水分含量は大きかった.この境に位置する試料の機器による硬さと粒度の関係を検討したところ, 機器による硬さは粒度に関係なくある一定の範囲にあった.
  • 粒子の認知と粒度の識別を中心として
    今井 悦子, 畠山 美穂, 中村 紀野, 畑江 敬子, 島田 淳子
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1233-1243
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    19種類の物性の異なる材料を用い, 粒としての認知可能な最小粒度 (認知閾値) と粒度の識別の程度を官能検査により明らかにし, 物性値との関係を明らかにした.認知閾値はセルロースの51μmから道明寺粉の220μmまでの間に分布した.また粒度が約1.19倍異なる二つの粒子の粒度の識別は全材料がある粒度以上で識別できた.そのある粒度 (識別最小粒度) は材料により異なり, セルロースの124μmが最小でそばの482μmが最大であった.しいたけを除いては, すべて認知閾値<識別最小粒度であった.両粒度と各物性値との関係を検討した結果, 比較的強固な構造をもち, 吸水が緩慢で飽和吸水量も少ないような材料は, 両粒度が小さいことが明らかになった.またそのような材料ほど粒度の識別なできなくなってもまだ1粒1粒の認知はできると考えられた.認知閾値は, 非常に高い重相関係数をもって (R=0.93), 七つの物性値を用いた重回帰式で表すことができた.
  • 香川 実恵子, 松本 美鈴, 畑江 敬子
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1245-1254
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    アオリイカ, スルメイカ, ヤリイカの生, 加熱肉より抽出したエキスを用いて, 官能検査とエキス分析を行い, 種類および鮮度による呈味の違いを検討した.3種類のエキスを比較したところ, アオリイカは遊離アミノ酸含量, 特に甘味を有するGlyが他に比べて有意に多く, 官能的にも甘味が強いと判定され, 呈味は最も好まれた.また, スルメイカは, グリシンベタインが多いものの, 苦味を有するHisや不味成分であるHxが多く, 好まれなかった.貯蔵による呈味の変化を検討したところ, 生イカでは24時間貯蔵によりアオリイカで有意に甘味とうま味が増して好ましくなり, 加熱イカではスルメイカで24時間貯蔵によりうま味が増した.
  • 渡邊 敬子, 古松 弥生, 松山 容子
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1255-1264
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    高齢女性用の衣服の身体適合性を改善するために, 高齢女性57名の背面形状について研究した.高齢女性の体幹を3次元的方法で計測し, 背面形状をシルエットと正中線の2種のカーブで表現した.それぞれのカーブを, 数量的に解析するために, 3円弧3直線で近似し, 25のパラメータで表現した.シルエットと正中線カーブの形は肩甲骨付近で異なったが, 両カーブの間の相関は高かった。若年 (松山等 : 家政誌, 49, 69-76, 1998) との比較の結果, 高齢女性は体幹が前傾し, 肩甲上部が前に傾き, 背中が丸く, 腰部から臀部が平らなことが明らかとなった.これらの形態の年齢変化は, 多くの高齢女性が不満とした衣服の身体不適合 (渡邊等 : 家政誌, 48,893-902, 1997) を引き起こすと考えられた.また, 個人の特徴を表す要因を明らかにするため, 主成分分析を行った.第1主成分は “轡部の突出と腰部の偏平さに関わる主成分”, 第2主成分は “体幹の傾きと肩甲上部の傾きに関わる主成分”, 第3主成分は “腰部・轡部のカーブのなだらかさ”, 第4主成分は “ウエストラインよりも上の背面の丸さに関する主成分”と解釈された。これらは先に述べた高齢女性の衣服の不適合部位と深く関わっていると考えられた.このような高齢女性の背面形状の特徴を, ドレスダミーや原型の設計に組み込むことによって, 衣服の適合性を改善することができるものと考えられた.
  • 望月 てる代, 石永 正隆
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1265-1270
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    品種および収穫時期の異なるニンジン (あすべに五寸, 千浜五寸, カロチンキャロット, 向陽二号, ベータリッチ), ホウレンソウ (パンドラ, ディンプル, サンマリノ, サンクスト, TS510-P), コマツナ (夏楽天, 極楽天, 笑天, みすぎ, 浜美2号) の植物ステロール量, 脂肪酸量および脂肪酸組成を調べた.
    ニンジンの総植物ステロール量は品種により多少の差が見られたが, 総脂肪酸量には差は見られなかった.
    ホウレンソウの総植物ステロール量は11月収穫の露地栽培, ハウス栽培ともに2月収穫の露地栽培のものの約2倍量含有されていた.11月収穫のものでは栽培方法および品種による差は見られなかったが, 2月収穫のものでは品種間で有意差が見られた.総脂肪酸量は2月収穫の方が11月収穫のものよりも高かった.
    コマツナの総植物ステロール量は10月収穫の方が2月収穫のものよりも高く, 両者の問に有意差が見られた.10月収穫では「みすぎ」の総植物ステロール量が高く, 他の品種との問に有意差が見られた.総脂肪酸量は2月収穫の方が高かったが, 同じ収穫時期では品種による差は見られなかった.
    ニンジン, ホウレンソウおよびコマツナの総脂肪酸量はいずれの品種・栽培条件・収穫時期においても成分表の値よりも高かった.
    脂肪酸組成に関してはニンジンではリノール酸が64~69%を占め, ホウレンソウとコマツナではα-リノレン酸がそれぞれ50%前後, 47~60%を占めていた.
  • 中嶋 昭正
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1271-1279
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    脱脂乳培地での米胚芽水抽出液の乳酸菌酸生成促進効果について主としてLaobacillus casei YIT 9018, Lactobacillus casei subsp. casei S-1 を用いて検討し, 次の結果を得た.
    (1) 米胚芽水抽出液は, 両菌に著しい酸生成促進効果を示した.白米, 米胚芽油には酸生成促進効果が認められなかった.
    (2) 米胚芽水抽出液を灰化してもかなりの酸生成促進効果が残存した.灰化物含量相当量のMnの添加は灰化物の促進効果に匹敵し, Mnが米胚芽の灰化物中の酸生成促進物質の主体であることは明らかである.米胚芽水抽出液にMnを加えると, Mnのみの場合よりも酸生成促進効果は大きくなったので, 他の有機質の酸生成促進物質の存在が示唆された.
    (3) 米胚芽水抽出液中の酸生成促進物質の大部分はDowex50-X1に吸着された.そのとき, 米胚芽水抽出液中のMnはほとんどDowex50-X1に吸着され, 1N塩酸で溶出された.
    (4) 酸生成促進効果を示す米胚芽, アオノリ, アオサ, シイタケ, 黒大豆, キュウリの灰化物の酸生成促進効果を調べた.これらの灰化物のMn含量が多い方が酸生成促進効果が大きい傾向が認められた.
    (5) 米胚芽水抽出液は, 脱脂乳培地で, L. helveticus B-1, L. delbrueckii subsp. bulgaricus B-5 b, L. acidophilus L-54, L. casei subsp. casei L-14, L. paracasei subsp. paracasei IFO 3533, IFO 3953, L. paracasei subsp. paracasei S-2を著しく促進したが, L. delbrueckii subsp. bulgaricus IFO 13953は阻害した.Lactococcus lactis subsp. lactis 527, Lactococcus lactis subsp. lactis H-61, Streptococcus thermophilus 510はほとんど影響されなかった.
    (6) 米胚芽水抽出液中のMnの存在形態は明らかでないが, 米胚芽水抽出液の酸生成促進にはこのMnが大きく関与していると考えた.
  • 小川 敬子, 木村 利昭, 和田 正夫, 西村 雅子, 伊東 祐博, 山田 満彦
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1281-1289
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    飯の構造を走査電子顕微鏡で観察するための方法として, クライオSEM法, 化学固定法, 凍結乾燥法, 低真空法の4種類の方法を選択し, デンプンの水和・膨潤状態に着目して評価した.
    その結果, 低真空観察法とタンニン酸オスミウム固定法では, 試料本来の構造と考えられる緻密な構造であったが, デンプンの水和状態を考察できるような情報は得られなかった.また, 凍結乾燥法は胚乳細胞内部全体が網目状構造になり, その網目の大きさは凍結速度依存性が大きく, 凍結時の氷結晶の大きさに由来する2次的構造であった.一方, 凍結する点では類似のクライオSEM法は, デンプンの水和・膨潤状態を明瞭に観察でき, 他の3法と比較して情報量の多い結果であった.
    この結果からクライオSEM法で食味の異なる飯を観察し, 硬くて粘りの少ない飯のデンプンは膨潤の程度が少ないことがわかり, クライオSEM法の観察結果はテクスチャー, 官能的な評価と関連性もあり, 有効な観察方法であった.
  • ピヒラー ゲルトラウド
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1291-1301
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    「生活の質」はまず食・住・仕事・人間関係・趣味等の基本的ニーズ充足の状況により決定される.次に生産的である物質的資源・標準的といえる消費者的資源・社会生活能力や労働能力等の人的資源という3種の生活資源の創造と活用が, 個人・家族・社会での「生活の質」に影響を与える.さらに収入の減少や生活能力の低下を引き起こした社会現況が, 豊かな暮らしと社会保障の維持を困難にしている.そこで, 個人・家族・社会での「生活の質」の向上にとって, 家政学教育とそれを基盤として成立するコンサルタント業が求められることになる.
    科学技術の発展した現代社会での生活とは「生活の質」にとり重要で必要な生活技術であり生活益を構成する知識・敏感さ等から有機的に組織化される.それに影響するArt of Livingの基準は生活での落ち着きで, 環境問題を考慮したエコロジカルな生活を実践させる.
    IFHEは, 家族・家庭に関する事象について, 国際レベルで研究・教育し, 国連等国際組織にその問題解決を働きかけている。家政学関係者は世界的視野のネットワークの下で, 最も重要なシステムである家族・家庭の「生活の質」の向上に向けて, 過去も現在も将来も継続して活動し, 「生活の質」の向上に重要な役割を果たしていくことになる.
  • 吉川 弘之
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1303-1307
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    人間の生活はテクノロジーによって支えられてきた.エンジニアリングは, テクノロジーを体系化するための学問分野であり, 産業革命後, 知の体系が確立された.以来, 未知の領域の開拓・開発が驚異的に進められ, 多くの領域を包含する今日のエンジニアリングが形成された.様々な分野の独立した先端技術の拡大は必然的に学問の細分化を促した.1つの学問領域における最初の効果だけに主眼がおかれた結果, 相互関連のない個々のテクノロジーの量, 質の拡大とともに, 副次効果として環境に悪影響が与えられるようになった.すなわち環境の人工化の限界にきたといえる.そこで, エンジニアリングサイエンスにおけるこれらの細分化された学問を, 未知の領域を拡大する側面と, もう一方は, 環境との調和の上に知を再構築するという2側面から捉えることが必要である.先端技術の拡大のみの追究から, 個々の立場から離れ, 鳥瞰的・総合的な見方をすることが重要だというテクノロジーパラダイムの変換が, 持続可能な社会の創造のために今求められている.そして国際化は, 21世紀に向けて日本の役割を開発から循環に移すための大きな必要条件である.
  • 滝沢 真美
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1309-1310
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 沼形 泰枝
    1999 年 50 巻 12 号 p. 1311-1312
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
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