安全とは事故による身体障害の発生を防止したり, その影響を軽減することである.危険回避, 予防手段はこの分野の関係者の間で3つのEと呼ばれている.すなわち工学Engineering, 規制Enforcement, 教育Educationである.安全工学は, 安全な環境作りに役立つような設計を行うこと, レイアウト, 建築構造を研究することなどである.安全規制は関係法令の適用である.安全教育は事故防止を目的とする大衆の指導, 説明会, マスメディアによるキャンペーンを含んでいる.住居の居住者に対して, 直接規制を加えることは難しいが, 住宅の設計, 施工, 什器の取り付けに対し規制は重要である.殆どの国では居住者の安全を確保する為の法律がある.特に居住する側からの法律が大切であり, 市民章命のあった国では「住居法」がある.わが国にはこれに相当する法律は無く, 「建築基準法」があるにすぎない.これは必ずしも居住者の立場にたった法律ではなく建築を設計したり, 施工する立場の人の為の法律である.
また住居の危険には雑多なものがあるので, 安全教育の果たす役割は大きくなる.住宅の安全については, いろいろな面からの検討が必要である.構造的に大丈夫か, 火災に対して大丈夫か, あるいは日常の使用に対して危険な事が無いかなどである.多くの物については, 法規などの規制あるいは構造計算などのマニュアルに従っていれば問題は起こらないだろうが, それはあくまで「最低基準」であり, 建築物の個別の状況, 使われ方により, より厳密に考えなければならない場合もある.ここでは特に「自然災害に対する安全」, 「火災に対する安全」と「日常安全」について基本的な考えを述べる.
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